「仮面ライダーダーク」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

仮面ライダーダーク」(2006/08/13 (日) 18:21:20) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

赤い光が俺を照らす。 逃げ惑う人々、泣き叫ぶ子供、すでに動かなくなった肉塊。 こんな光景を見飽きてから、どのくらいが経ったのだろうか。 突然、昔の光景が浮かび上がる。 『待てッ! その娘に手を出すな!』 ……あの頃は楽しかった。 当時の俺に言っても認めないだろうが、昔は確かに楽しかったんだ。 自分が助けているという実感があった。 自分にしか出来ないことがあるという自信があった。 自分は、正しいのだという確信を持っていた。 俺がショッカーに戻って、何年経ったのだろう。 数年しか経っていないはずなのに、もう何十年もこうしている気がする。 「隊長。目的物の奪取に成功しました」 副官である女怪人が報告に来る。 「……そうか。撤退するぞ」 「了解しました」 俺の命令を受けた彼女は、テキパキと周りの下っ端へと指示を飛ばす。 実際、隊長なんて飾りみたいなものだ。 大抵の作戦は彼女が立てているし俺は承認をするだけの存在。 ぶっちゃけいなくても支障は無い。むしろ効率が上がるだろう。 それでも、どこの隊にも隊長は存在する。 戦闘力で選ばれたエリート怪人の隊長たちが。 その理由は。 「隊長! 敵襲です!」 こんな荒事を片付ける、汚れ役が必要だからだ。 「状況を報告しろ! 相手はどこだ? 自衛隊か?」 「いえ、それが……」 何故か言いよどむ彼女を叱咤する。 「報告は迅速に行え!」 「は、はい! 敵は強化人間が一体! 外見から、……ライダーと思われます!」 俺は一瞬だけ動きを止める。 それは過去に清算してきたはずの事実。 見逃したはずの無い、俺を縛る鎖の原因。 「……出陣るぞ!」 「っ、はい!」 関係ない。 逃したのならば、処理すれば良いだけの話だ。 俺は上着を脱ぎ捨てて、交戦場所へと向かった。 破壊され廃墟寸前となった工場に爆音が響く。 戦闘員たちが足止めをしているのだろうか。 無駄なことだ。本物のライダーに、銃器なんかが効く訳が無い。 「ここを左です。気を付けてくださいね」 「わかった」 俺は、あえて人間体のまま戦場にでる。 知り合いならば戸惑うはずだ。 知り合いでないのなら様子を見てくるだろう。 ライダーとは、そんな甘い人間なのだ。 「あ、隊長殿!」 「戦況はどうなっている?」 俺はすぐそこで銃を連射している戦闘員に話しかける。 こっちを向いて挨拶をする時でも撃っているあたり、効いていないのだろう。 「正直無理っす。ロケットランチャー直撃でも無傷なんて、どんな装甲っすか」 やはり、本物らしい。 そうなるとサポートは必要ない。むしろ邪魔だ。 「わかった。どいていろ」 「了解したっす。全員、射撃止めー!」 号令と共に爆音と金属音がやむ。 先ほどまでの喧しさが嘘のように、工場は静寂に包まれていた。 「…………」 その中心に、ヤツがいる。 俺はバリケードを出て、そいつに話かけた。 「お前は誰だ? ライダーはすでに全滅しているはずだが」 「…………」 ヤツは答えない。 「何も言わないつもりか。ライダーも愛想が悪くなったものだ」 「…………な」 「ん?」 返り血で真っ赤に染まった戦士は、何事かを呟いた。 「――――私を、ライダーと呼ぶな」 「ほぅ。何故だライダー。お前の装甲はライダーシリーズの物だろう?」 「私を……ライダーと呼ぶなッ!」 形状からして女性だろう――ライダーは、一直線に俺へと突進してくる。 そのスピードは見事だ。全盛期のライダー達でもこれ程の速さを出せた者は少ない。 だが、 「阿呆」 軌道を見切れば簡単に避けれる。 俺は相手に対して半身となり、左手で体をずらしてやった。 「ッ!」 制御を一瞬だけ失い、壁に突っ込むライダー。 この程度で傷を負うはずも無い。だが実力差くらいは理解できただろう。 「く、……」 その証拠に瓦礫から出てきても、俺を襲おうとはしない。 「理由を聞いているんだ、ライダー。何故、ライダーであることを拒絶する?」 赤き戦士は少し悩み、おそらくは時間稼ぎだろうが、理由を話し始めた。 「……二年前。ライダーの全てが死に絶えた。  怪人との戦いではない。誰かを助けようとしたのでもない。    たった一人のライダーに、他の全員が殺されたのだ!  そいつは仲間たちが攻撃できないのをいいことに、一方的な惨殺を繰り返した!  その中に私の兄がいた! よく話をする友もいた!  だから……私は皆を殺したライダーになど、死んでもなってやるものか!!」 悲痛に叫びながら感情を吐露するライダー。 親しい者の死を思い出して、仮面の下の顔は悲しく歪んでいることだろう。 ああ――――なんて、偶然。 もしコイツが別部隊を襲っていたら。 もし俺の隊がこの任務についていなかったら。 この出会いは成されなかったに違いないのに。 「一つだけ、間違いがあるな」 「何……?」 俺は右手を振り上げ、左手を腰に添える。 「攻撃できなかったから、惨殺されたんじゃない」 そのまま右手を横に滑らせる。 「…………弱かったから、惨殺されたんだよッ!」 そして。 両手を腰のベルトに打ち付けた。 「変身ッ!」 バックルの中から音が鳴る。 それはライダーシステムの起動を表す特殊な音だ。 音が鳴り始めるのとほぼ同時に、俺の体を装甲が包む。 「貴様ッ!!」 相手が俺を、俺の装甲を睨み付ける。 バッタを思わせる仮面。 重量を減らした細身の鎧。 パワー不足を補うための武器の数々。 全てが漆黒に染まったそれらを見、ライダーは再度吼えた。 「お前が、お前がアイツだったのか――――仮面ライダー、ダーク!」 俺は、いたずらが成功した時の子供のように、ニヤリと笑った。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: