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信じられるだろうか?
俺には、最早あの頃の情熱など一欠片すら残っていなかった。
組織の連中からは黒い悪魔とすら呼ばれていたこの俺が、だ。
「くそッ」
手元にあったブランデーの瓶を取り、その中身を口へと流し込む。
焼けるような熱さが喉から胃へと染み渡った。
体が火照る。
だが、それも一瞬。
安酒らしく、さっきからいくら飲んでいてもまるで酔えやしなかった。
気分だけが飲んだ酒の量と反比例してどんどん悪くなってくる。
俺は一体何をしている?
「ふ、ふははは……」
思わず笑いが沸いてきた。
俺は何をしているかだって?
そんな事は決まりきっている。
酒に溺れ、堕落している。
ただ、それだけの事だ。
「はは、ははははははは!」
突然の衝動。
俺は空になったブランデーの瓶を、思わず壁へと叩きつけていた。
派手な音と共に、狭い部屋中に瓶の破片が舞い散っていく。
ふと、俺は手のひらに鋭い痛みを感じて目をやった。
そこには一本の赤い線。
じわり、と漏れ出してくるかすかな血。
「赤い……血……?」
手のひらから滲み出す血は赤い。
死人のような俺の血でも、こうまで赤いものなのか。
生きる事すら、半ば放棄したというのに。
震える体を強引に起こし、立ち上がる。
目の前の戸棚の上の写真立てが自然と俺の目に入ってくる。
写真に写るのは、あの頃と変わらない面影の仲間。
そして、今とはまるで違う俺の姿。
まるでお笑い種だ。
全てを捨てたはずなのに。
そのはずだったのに。
こうも未練がましく、俺はこんな写真を残している。
「畜生……」
畜生……畜生!
何でこうなっちまったんだよ。
「何でだよ……。何で俺だけ生き残っちまったんだよ……」
写真に問いかけても、もちろん答えなど返っては来ない。
それは分かっている。
だが、俺は問いかけずにはいられなかった。
そうするしかなかった。
「答えてくれよ。何か言ってくれよ。なぁ、何とか言えよレッドォォォ!?」
俺の叫びは、いつしか慟哭へと変わっていった……。

最後に覚えているのは赤。
目の前に広がる、一面の赤。
立ち昇る炎。
肌を焦がす熱気。
そして、鼻をつく肉の焦げる臭気。
瓦解していく建物の音と、狂ったような誰かの叫び声が辺りには反響していた。
「お前は生きろ」
あいつは、そう言って炎の中へと消えていった。
そう、俺をただ一人残して。
こんな時までリーダー風を吹かすあいつが憎かった。
だが、一番憎かったのは俺自身。
何もできずにその場を動けなかった俺自身だ。
無力。
ただ、ひたすらの無力。
「畜生……」
俺は、何のために戦ってきたんだ?
なぜ俺は、あの時あいつと一緒に行かなかったのか。
仲間一人守れずに、何がヒーローだ。
こんなに悔やむのなら。
こんなにも無力なら。
ヒーローになど……。
ヒーローになど、なるのではなかった……!!