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「こうなってよかったのかも知れんな」
白煙が立ち上る部屋の中、アポロ様は静かにそう呟いた。
「前首領様が亡くなった時に私が諦めておけば良かったのだ。それを私があの小さな子を首領にしてまで…」
自嘲気味に笑みを浮かべる。俺はその肩に手を伸ばそうとして…止めた。
「だがこうして皆、私達を残して避難していった。そして私がここで死ねばそれで終いだ。我社には統率する能のある者はいない」
分を弁えろ、彼女がどんな存在であるか思い出せ。
俺の目の前で、アポロ様が、俺の上司が、悪の女幹部が、鉄の女と呼ばれた人が、俺の愛した彼女が――泣いている。
「栄一、お前も私に付き合うことは無いぞやつらが来る前に早く逃げろ」
なら俺は何だ? 分を弁えて、俺はどうするべきなんだ?
俺は庄家栄一で、新人社員で、悪の戦闘員で、なんの取り柄もないけど…好きな女の涙を見過ごせるような甲斐性無しではないつもりだ。
だから、俺は…
「行きます」
「ああ、さよならだ」
アポロ様は諦めたように笑っている。その笑顔が酷く悲しい。俺は貴女にそんな顔をして欲しく無いんです。
「…おい、栄一。そっちは出口では無いぞ」
訝しげなアポロ様の声に振り向くことなく、扉の方を向いたまま応対する。
「俺が奴らを引き付けます、アポロ様はその間に培養怪人の用意を」
「な――っ!
 何を言っているのだこのたわけが! 誰がそんな事を言った! 私一人でいい、誰もこれ以上巻き込もうとは思っていない…!」
アポロ様は泣いている。涙を流す事なく泣いている。
だったら俺はそれを止める手伝いをするだけだ。
「決戦用の虎の子が二つあるらしいじゃないですか。どうせですし、それも使っちまいましょう。
 俺だって実はドクに色々改造して貰ってるし、並の怪人くらいの働きはできるつもりです。
 二人で、奴らに一泡ふかせてやりましょう」
言いたいことを言って、俺はさっさとドアを開けて言ってしまう
もうアポロ様は何も言わない。そのことに安心しながらも、一抹の淋しさを覚えていた。
俺は後ろでに扉を閉めて、こ少しの間にすっかりお馴染みになってしまった言葉を静かに唱えた。
「イクイップ」
一瞬の後、そこにはもう庄家栄一はいない。そこにいるのは、仮面ライダーにはなり得ない一人の戦闘員が立っているだけ。
さあ決戦だ。さっさと終わらせて、彼女と行きつけの店に行こう―――