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郁乃専属メイド ~ep2~ :小牧郁乃


まぁ最大の難関といっても、登る事がじゃない。
どれだけ平然と登れるか。他人の力は借りない。
これが最近の私の中でのルール。
気をつけないとどっかのお節介な姉が助けにくるから気をつかう。
今日は近くにいないんだから気にする事ないとも思うけど
もう習慣みたいになっていた。

教室に入ると最近よく一緒にいるこのみが近づいてくる。

「郁乃ちゃん、おはよー」
「おはよ。今日は早いのね。雨降らないかしら」
「うう、郁乃ちゃんひどいでありますよー」

心なしか元気がない。どうしたんだろう。
気になったものの、その理由はすぐに本人から語られる事はわかっていた。

「今日ね、タカくん達のお見送りしたんだ」

あぁ、そういう事ね。
お見送りしたはいいけど寂しくなってきた、という事か。
いかにもこのみらしい。
でも恋人の妹に貴明への愛情をアピールするのはどうかと思うんだけど…。

寂しがるこのみが友達を家に呼んだから私にも来いと誘う。
たまには出掛けてみるのもいいかな、今はシルファと顔合わせたくないし。

「やたー!じゃあ今日は一緒に帰るでありますよー!」

「ただいまー!おかーさん、今日は友達連れてきた!」
「ちゃるちゃんとよっちちゃんでしょ?聞いてるわよ」
「今日は郁乃ちゃんもだよー」

あまり人の家に来りする事がないので、少しタイミングを見計らう。

「お邪魔します」
「いらっしゃい。貴女が郁乃ちゃんね、このみから話は聞いてるわ。ゆっくりしてってね」
「ありがとうございます」
「もー!おかーさん、変な事言わないでよ?」
「はいはい、それよりもこのみ!靴は揃えなさいって何度言わせるの!」

このみの母親は容赦なく手にしたおたまで友人の頭を叩く。
あ、いい音。

「うー、そんな思いっきり叩かなくてもいいのに」
「いいから早く手を洗ってらっしゃい。郁乃ちゃんも」
「はーい。行こ郁乃ちゃん」

くるくるとよく表情が変わる子だ。
さっきは涙目だったかと思うともう笑顔。
ずっと入院してたのもあって、こういう温かい空気が少し羨ましい。
もちろんウチが温かくない訳ではないけど、
こういう元気よさだったり、遠慮のなさみたいなものはウチにはない。
私がもう少し元気になって、今の生活に慣れてきたらこんな感じになれるのかな…

「じゃあ、私の部屋に行こうよ」

わざわざ手をひいてくれるこのみに苦笑しつつもそれについて行く。

このみの中学時代からの友達、吉岡さんと山田さんも合流した今の話題。

「へぇー!郁乃ちゃん今メイドロボにお世話してもらってるんだぁ」
「朝挨拶したぐらいで何も世話されてないわよ」
「それでも羨ましいっしょ!メイドロボにお世話される高校生なんてそういないし」
「同意」
「でも、タカくんもお世話されてるよ?」
「え?」

そんなの初耳だ。びっくりするのも当然だと思うんだけど。
私のあげた声に皆は意外そうな顔で覗き込んでくる。

「郁乃ちゃん知らなかったんだ。この春からタカくんちにいるんだよー」
「先輩の彼女の妹だから知ってると思ってたっしょ」
「姉の彼氏の事なんてそんな根掘り葉掘り聞いたりしないわよ。何でも知ってる訳ないでしょ」

半分嘘をついた。メイドロボの事は知らなかったけど、
大体の事はこちらか聞かなくても姉から話してくるので結構知ってたりする。

気づけば陽はすっかり落ちて、夕食の時間となる。
もうこんな時間かぁ、そろそろ帰らないと。
今の話題にひと段落ついたら帰る準備をしよう、そう考えていた時

コンコン

ふいにドアがノックされ、顔を出したのはこのみのお母さんだった。

「貴女達、問題なければ今日はウチで晩ご飯食べて行きなさい」
「全然モウマンタイっす!春夏さんのご飯おいしいんすよねぇ。」
「私も問題ない」
「やたー!今日は皆で食べる晩御飯はおいしいのでありますよー!」
「キツネ、これはもうゴチになるしかないっしょ」
「うむ。親に連絡は入れておかないと」
「そうだった!春夏さん、電話お借りしていいですか?」
「いいわよ。いってらっしゃい」

ドタドタと二人は階下に降りて行った。
当たり前といえば当たり前なんだけど、この食事会の対象に私も入っていたみたいだ。

「郁乃ちゃんはどうする?」
「え、わ私?」
「あ、でもシルファさんがいるんだよね」
「それは、多分大丈夫…だと思う」
「変な遠慮はいらないわよ。あ、でも連絡はちゃんとしなさいね」
「あ、ぅ…はい」

帰らないといけない、という事はないけど柚原家の勢いに飲まれてしまったのが少し悔しい。