355話

第355話:全ての流れ


旅の扉から吐き出され、浮遊大陸に降り立った賢者クリムト。

視力を失った彼に、新しい大地を見ることはかなわない。
彼はその場で、全てを感じるように静かに手を広げた。

「ふむ…水の匂い」
僅かに香る水の香り。
どうやら近くに川か湖があるようだ。

「風も、強い…」
吹き降ろすような強い風。
近くに山があるのだろう。

目の見えない自分には、地図の確認は出来ない。
町や村の位置はおろか現在地の把握すらできない。
だが、それはたいした問題では無い。

全ては流れ。
風の流れ。
自然の流れ。
気の流れ。
人の流れ。

視覚を失って改めて強く感じる。
全ての流れ、その流れを読み取れば何も恐れるものなどは無い。
流れを辿り、流される方向を決めれば。
自ずと望む方向に向かうことだろう。

そしてまた全ての流れを辿る。

この大地の流れ。
暗く沈み、憎しみと死に満ちた淀んだ流れ。

人の流れ。
大陸に点在し何かを求め激しい流れ。

この流れを正しき方向に導くのが、私の使命なのだろう。

近くに人の流れを感じる。
そこに向かってみるとしよう。

その流れが悪しき者か良き者かを見極め。
良き者なら共に向かい。
悪しき者なら流れを正す。

そして彼は、目の見えぬ者とは思えぬほど確かな足取りで歩き始めた。

【クリムト(失明) 所持品:力の杖
 基本行動方針:誰も殺さない。
 最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】
【現在位置:カナーン北東】

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最終更新:2008年02月17日 23:48
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