546話

第546話:惨害の痕で寄り添って


《1》

「ピアスが鳴ったんだが、赤い奴は逃げたしって少し油断してたのかもしれない。
 俺は振り返れたと思うんだがな、暗いもんで顔が見えなかったんだ。
 だから、本当に振り返れたのかどうかはわからないな。
 どっちにしたって、あっというまに腕を捻り上げられて地面に押し付けられたよ。
 あれは兵士とか傭兵とか、とにかく軍人のやり方だ。
 初めて本物を体験したんだけど、なんていうか、痛いってモンじゃないね。辛い、だな。
 こんな痛いなら肩なんて外れてしまえー、あーすいません降伏しますギブギブ、って感じ。
 それで『いぃぃぃぃっ!?』みたいな声あげちまってなあ……恥ずかしいのなんの。
 確かに、あの状況じゃ俺がエリアを襲った敵だと勘違いされても仕方ないんだが、
 一言くらい謝って欲しいもんだぜ。なあ?」


192 名前: 惨害の痕で寄り添って 2/9+α 投稿日: 2007/11/11(日) 13:14:14 ID:pHMqXV5n0
そう言ってヘンリーは隣を歩く男、サックスの反応を窺う。
サックスに肩を借りて歩いているエリアが苦笑を浮かべるが、
当のサックスは何の感情の動きも表さず、先行している話題の中心……
眠ったままのリュックを背負い、全方位を警戒しながら一行を引率するスコールを見つめていた。
ヘンリーもまたその視線を追いかける。その胸には微かに嫉妬と怒りの気持ちが浮かびあがってくる。
非力な人間が危険に晒され、力のある人間が特に怪我もなくいる。
もちろんこの二日間、スコールにどんなことがあったのかなんてわかりゃしない、
彼が何を思い何を行ってきたかなんて知ることは出来ない。
けれど元気そうなスコールの様子と、ヘンリーの腕の中の小さな遺骸を見比べるたび、
こんな子まで犠牲になってるってーのにお前は何をやってきたんだ?
という文句も湧いてくるというものだ。
……勿論、それが自分や頑張っているほかのみんなにだって当てはまることは理屈で理解できている、
けれども。


《2》

「でも、ヘンリーさんを助けてくれたのもスコールさんみたいですよ。
 ……結局、間に合わなかった、けど。
 ウルが大変な事だってことも見れば分かったはずなのに、
 スコールさん、ここまで来てくれましたし。
 私、スコールさんもきっと今のヘンリーさんと同じ事を感じているんだと思います。
 どこで何が起こっているか~、なんて誰にもわからないですよ。
 だからきっとみんなを守ろうとあちらこちら走り回って、それでも何も出来なくて……
 出来なかったことを悔やんで、だんだん自信がなくなって……
 …………
 えへへ、わかったようなことを言っちゃいました。
 実を言うとレナさんが、同じようなことで悩んでいたんです。
 ギルバートさんを守れなかった、わたしには何にも出来なかった、って。
 私なんかより全然強いのに。誰かを、私を、守ってくれていたのに。
 …………
 ほら、ヘンリーさんとサックスだって助けに来てくれたじゃないですか。
 そういう気持ち、スコールさんだって同じなんですよ。
 いえきっと、みんな同じ、もういなくなった人だって同じなんです。
 ……あ、そういえば……」



何かを言いかけたエリアは、けれど目の前に現れたそれに言葉を止める。
ヘンリーも、サックスも、ターニアも、スコールも、それぞれに立ち止まっていた。
燃えている村を迂回するように時計回りに進んできた一行、
その目の前に、そんな場所にはありえない丘――いや、小山が聳え立っていた。

「占い、当たらなかったな」

言葉もなく、全員がその奇妙な光景に足を止めて立ちすくむ中、
サックスにようやく聴こえるくらいの小声で、エリアはそう呟いた。


《3》

「何やってやがった? ああ? 何てザマだよ?
 …………
 仲間一人突っ込ませて任務達成だなんざ立派なことだな、え、班長さん!?
 なんだ?
 そのキレイなツラはよ……どういうこと…どういうことだ、ああ? 答えろッ!?
 こんな時に先頭切って戦わねぇでお前それであいつの騎士かよ!
 気にいらねぇ……お前がやるべきことだろうが。
 そんなんで何が出来た? 何が出来たよ、ここまで!
 言ってみろ!
 …………
 今のお前を見てると、あまりのカッコ悪さに同情が止まらねえ……
 自分でもよ~く解ってるハズだぜ?
 あの魔女にこんなやられっぱなしでよくんな冷静な顔してられるもんだ!
 解ってんだろうが、ああ? スコールッ!!」



憔悴したような4人(といっても2人は動ける状態じゃない)と合流したのは、
死してなお山のように残っている巨大なモンスターの遺体のそばで。
そこには何故か、昼間南と北へ別れたはずのサイファーがいて、
依然眠ったままのリュックを下ろすとすぐに――思い切り拳で殴られた。

最初の一発、クリーンヒット……は敢えて一切何もせずに受けた。
リノアには会うことも叶わず、マッシュはそこで動けない2人の方に入っている。
その百分の一にも足りないだろうが、これはその償いだと思った。
後は、叫び散らしながら挑みかかってくるサイファーの攻撃を
時に受け、時に避け、時に殴られながら、スコールは一言もしゃべらずに応戦していた。
スコールの拳がサイファーに打ち込まれることもあったがそのことについてはサイファーは一切言及せず、
ただどうしてリノアを守れなかったのか、仲間さえ守れなかったのかというニュアンスが
繰り返されて喧嘩が続けられていた。

(そういえば、お喋りなヤツだった)

サイファーが、本当に責めているのは――責めたいのは誰なのか。
スコールが気付いたのは、何発目かの拳が腹に突き刺さった後だった。


《4》

「ビビと、レナと、わたぼうか……
 ソロもあんなだし、結局マッシュが命張ってようやくあのデカブツを止められたわけだけど。
 ……けど、失ったものは余りに大きいな……
 …………
 なあ、レナの話、少ししてもいいかい?
 レナはさ、タイクーンってとこのお姫様なんだけど
 なんていうか、うん。普段は本当におしとやかで、お姫様って感じなんだけど
 やらなきゃってことに突き当たると考えるより先に身体の方が動いちゃうんだよな。
 いろいろあって海賊やってたレナの姉さんがいるんだけど、行動力はさすがに姉妹ってとこだよ。
 ……だから、さ。
 最初にあの怪物にぶつかったレナは思っちまったんだろうな。
 私が、やらなくちゃ、ってな。
 こんな化物だったんだから逃げてくれれば良かったんだけど、
 そんなこと、できる、性格じゃない、もんな……
 ああ、いや、こんな世界じゃなきゃ案外仲良くなっちまったかもしれないな。
 飛竜なんかに妙に懐かれてたし、……わたぼうとも相性良かったみたいだしな……」

相変わらず、スコールとサイファーがガチで大喧嘩をやっているのを見守りながら、
バッツは淡々とそんな話を2人を除く全員に聞かせていた。
全員といっても、ろくに休息なんか取れなかったせいだろうがリュックは昏々と眠り続けているし、
とにかくパーティの一番前で身を張り続けてきたソロなんかは、むしろ積極的に休ませてやりたい。
右腕のないマッシュにいたっては生きているのがおかしく思えるくらい。
ビビはもう目を閉じたままだし、
最後に連れてきたレナとわたぼうは元の形からはずいぶん変わってしまっていた。
三人…いや、あの怪物も入れて四人分。
あとで簡単でいいからお墓でも作ってあげよう、なんてバッツはぼんやりと考えた。

《5》

「あーくそ。魔女の奴……許さねえ。
 なんにもいい手は思いつかないけど、絶対に何とかしてやる。
 ……デールとも約束したしな」
「わたしは、お兄ちゃんと会いたいです。きっとどこかで頑張ってるから」
「俺は三人の仲間は行っちまったけど……ギルガメッシュとギードがまだいるし、
 それにもうみんな、ヘンリーもソロもエリアもターニアもロックもピサロも、
 サイファーやスコールや勿論サックスだってもう仲間だ。……ザンデも……そうかな。
 だから、『みんな』で生き残りたい。難しくたって」
「私は……サックスには会えましたから。
 勝手かもしれないですが、私にとってはそれでも十分なんです。
 でも、あとは――あとは頑張ってる人がみんな幸せになるといいなって思います。
 もう不幸せは要らないですよね。………サックスは?」
「僕は………」

風が吹いていく。
故郷だった場所、変わり果てた場所。惨害の跡で寄り添いあうサックス達をなでて、
浮遊大陸ウルの谷に特有の思い出と変わらない風が吹き抜けていく。
サックスは、洞窟の奥に彼女の死と一緒に捨ててきた気持ちを思い出しかけて、
それが表面に浮き出てこないように。
軽く、明るくなりたがる心を押さえるために、冷えきった重い決意を込めて口を開く。

「僕は、もう一度みんなに逢いたいよ」

今はまだ、その言葉の裏にあるものを悟る者はここには誰もいない。



【ヘンリー  所持品:アラームピアス(対人) リフレクトリング バリアントナイフ
 第一行動方針:みんなを守りながら、朝を待つ
 基本行動方針:ゲームを壊す(ゲームに乗る奴は倒す)】
【ターニア(血への恐怖を若干克服。完治はしていない)
 所持品:なし
 第一行動方針:リュック、ソロ、マッシュの看病をしながら朝を待つ
 基本行動方針:イザを探す】
【エリア(体力消耗、下半身を動かしづらい)
 所持品:スパス ひそひ草
 第一行動方針:リュック、ソロ、マッシュの看病をしながら朝を待つ
 基本行動方針:仲間と一緒に行動】
【バッツ(HP1/6 左足負傷)
 所持品:ライオンハート 銀のフォーク@FF9 アイスブランド うさぎのしっぽ 静寂の玉 ティナの魔石(崩壊寸前)
 第一行動方針:『みんな』助ける
 基本行動方針:生き残る、誰も死なせない】
【サックス (HP半分程度の負傷、軽度の毒状態、左肩負傷)
 所持品:水鏡の盾 スノーマフラー ビーナスゴスペル+マテリア(スピード)  紫の小ビン(飛竜草の液体)
 ねこの手ラケット 拡声器
 第一行動方針:体調と体力の回復
 第二行動方針:タイミングを待ってウルの村にいるメンバーを殺す(エリアも?)
 最終行動方針:優勝して、現実を無かった事にする】

【スコール
 所持品:G.F.カーバンクル(召喚○、コマンドアビリティ×、HP1/4)、G.F.パンデモニウム(召喚×)
 吹雪の剣、ガイアの剣、エアナイフ、ビームライフル、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
 天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、ひそひ草
 ヘンリーの武器(キラーボウ、グレートソード、デスペナルティ、ナイフ)
 アイラの支給品袋(ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ)
 第一行動方針:気が済むまでサイファーとケンカ
 第二行動方針:アーヴァインと緑髪(緑のバンダナ)の男、エドガーを探す/緑髪(ヘンリーとソロ)を警戒
 基本行動方針:ゲームを止める】
【サイファー(右足軽傷)
 所持品:破邪の剣、G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ
 マッシュの支給品袋(ナイトオブタマネギ(レベル3) モップ(FF7) バーバラの首輪)
 レオの支給品袋(アルテマソード 鉄の盾 果物ナイフ 君主の聖衣 鍛冶セット 光の鎧 スタングレネード×6
 第一行動方針:気が済むまでスコールとケンカ
 第二行動方針:協力者を探す/ロザリー・イザと合流
 基本行動方針:マーダーの撃破(セフィロス、アリーナ優先)
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【リュック(パラディン)(眠り)
 所持品:メタルキングの剣 ロトの盾 刃の鎧 クリスタルの小手 ドレスフィア(パラディン)
 チキンナイフ マジカルスカート 毒消し草一式
 第一行動方針:眠る
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【ソロ(HP3/10 魔力0 気絶 体力消耗)
 所持品:ラミアスの剣(天空の剣) 天空の盾 さざなみの剣 ジ・アベンジャー(爪) 水のリング
 第一行動方針:回復
 基本行動方針:PKK含むこれ以上の殺人を防ぐ+仲間を探す
※但し、真剣勝負が必要になる局面が来た場合の事は覚悟しつつあり】
【マッシュ(瀕死、右腕欠損、意識不明) 所持品:なし】
 第一行動方針:-
 第二行動方針:アーヴァインと緑髪(緑のバンダナ)の男、及びエドガーを探す
 第三行動方針:ゲームを止める】
【現在位置:ウルの村西の草原(ブオーンが丘そば)】

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年02月01日 00:09
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。