FFDQバトルロワイアル3rd資料編@wiki 203話


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

第203話:奪い続けた結果


ギルダーは目の前にある不利な状況に、舌打ちをした。


数時間前。ギルダーは山沿いに東南方向へと向かっていた。
地図によると近くに湖があるらしいという事が判ったからだ。
飲み水の心配が無くなりそうではあるし、何より戦いで有利そうだ。
闇夜に紛れて湖の中へと放り込む等の、基本的で効果のありそうな策が使える。

だが、そんなギルダーは見つけてしまった。
近くにあった地下へと続く階段。闇に紛れて見逃しそうな建物にそれはあった。
中には地下室への扉がある。丁度良い。何か良い物があるかもしれない。
しかも誰かが潜伏していれば…急襲をかけて殺せば良い。

ギルダーは決心した。
中へ入って、良さそうであればそこでの潜伏も考えよう。


「成程ねぇ。全く、今日はお客さん多すぎだっての」
「セージさん、私も手伝うわ」
「いや、僕一人で良いや。タバサを頼んだよ」

無理矢理鍵を破壊して扉を開いたは良いものの、
そこには人間が3人もいた。だが女性が2人に軟弱そうな男が1人。
まずは軽く牽制をするかとサンダーを撃った物の、奇妙な魔法で跳ね返された挙句…。

「ここは狭いしねぇ…特に僕らみたいな魔道の者には」

そう言うなり奴はバシルーラとかいう奇妙な魔法で、俺を外に押し出したのだ。
なんとかそれ以上吹っ飛ぶのは堪えたが、室内での奇襲は失敗に終わってしまった。


そして今に至る。


「降参した方が良いんじゃないの?幸先悪いし」
「それは無理な相談だ。もうしわけないがお前達には死んでもらう」
「子どもを騒音で起こしておいてそんな言い草は…もう駄目だね君」

殺すわけにはいかないからねぇ…とセージは呟いた。
一応奇襲を受けたはずだが、あの余裕。ギルダーは少し妙にも思えた。
魔力を感じる故に、魔法に自信があるのだと思った。只者ではないと思った。

「仕方ない。全身全霊で行くぞ」
「ねぇ、もしかして既に人殺したりしてるの?」

セージの問いには一切答えずに、ライトブリンガーを持ってギルダーは突進した。
それを刹那で避けるセージ。左腕に少し傷が出来た。
だがセージがそれを気にする暇も与えずギルダーはまた近づいてくる。

「まずはさ、何か言いたい事とか無いわけ?」
「下らないことを言うな!」

またも斬撃。だが、今度は避けた。
やはり早く済まそうと思うと単調な攻撃になってしまう。
ならば次は間合いを取って魔法を使うか…と、集中しだした瞬間…セージが口を開いた。

「仕方ないねぇ…久々に本気出すか。『ピオリム』」

その言葉を最後に、ギルダーの視線からセージは消えた。

しまった、速度上昇魔法か!
ギルダーは間髪いれずに気配を察そうと、神経を研ぎ澄ました。
どこか遠くに行ったか。背後を取ろうとしているかもしれない。

その時。
遠くから、何か朱いものが飛んでくるのに気付いた。
大きい、熱い…あれは……。
ギルダーは思考を止め、前に足を踏み込んだ。
そして手榴弾のピンを外し、火球が飛んできた位置へと投げた。

「ありゃ、当たってないや。流石になめてたかな…でも今の炎の光で位置はつかめた」

先刻ギルダーを襲ったのはセージのメラミの火球だった。
祠から少し離れ、狙いをつけて唱えたのだった。
それがギルダーと祠から外れたのを確認すると、次はその彼が居るはずの場所に走っていった。
そしてその後に、先ほどセージがいた位置で手榴弾が炸裂した。それにより微妙にセージの影が光によって見えた。


ファイアビュートを構えるセージの姿が見える。
手榴弾の光で位置は確認し、走ってくるルートを推測。更に目が慣れた為にもう狙撃は効かない。
またライトブリンガーを構え、じっと相手を待つ。
近づいてきた。カウンターを合わせる…今だ!

セージの動きに合わせて切り裂くよう手を動かした。
だが、何故か攻撃は当たらかった。また避けられたのか。

―――だが、真実は違っていた。
ただ単にピオリムの効果が切れ、急にスピードが遅くなったためカウンターが失敗しただけなのだ。
自分の予想していた位置よりも少し向こうに相手が居ることに落胆するギルダー。
だが、それならば今度はこちらから攻める番だ。

「行くぞ男!次はこちらの番だ」

「『ブリザガ』!!」

ギルダーの詠唱は思ったより早く完成し、すぐさま発動させた。
氷と吹雪が一帯を支配する。凍てつく寒さと冷たい氷がセージを襲う。
はずだが…

「なんでそんな気合入って叫んでんの?………『ベギラゴン』」

セージのいる方角から強烈な閃光が発せられた。
と、同時に広範囲に火炎が広がり、バリケートのようになっていた。
そこにブリザガが突撃してしまった。二つの相反するものが消えうせ、水蒸気が発生する。
しかもこれはただ事ではない。霧の様に辺りを覆い尽くし、何も見えない。

「殺さない様にしておいてあげるよ…『メラ』」
「何!?」

セージが水蒸気の中から姿を現した。
既に避けられないほど近くにいる。ギルダーはあっさりとメラを喰らってしまった。
だが根性で、刹那にライドブリンガーを振った。その所為かセージの右の脇腹から鮮血が飛ぶ。

「っていうか本当疲れるねぇ。……『イオラ』」
「………っ!」

だが彼は、それを尻目に間髪いれずギルダーの上空に爆発を発生させる。
衝撃波にやられギルダーは地面に打ち付けられる。

「詠唱速度が速過ぎる……馬鹿な…」
「だから言ったじゃん。もう終わりだよ、ゆっくりとお休み――。『ラリホー』」

手負い、集中力を乱している彼はあっさりと睡魔を受け入れた……。
霞んでいく景色の中で、ギルダーは吹っ飛んだ自分の帽子を被ってみるセージを見た。

「はいはい、起きる起きる。『ザメハ』」
「…………?」

ギルダーが目を覚ますと、そこは先ほど突貫した地下室だった。
ベッドに寝かされている。状況を把握しすぐに身を起こすと彼はすぐさまファイラを唱えた。
だが、発動しない。何度唱えても発動しない。目の前ではセージがニヤニヤしている。

「マホトーン。呪文を封じ込める為の呪文だ。寝てる間にちょっと耳打ちしておいた。
 あとやっぱ君の攻撃は効いたなぁ。今さっきベホマ4回くらいやってやっと傷塞いだよ」

ふはははははは!とワザトらしく高笑いをするセージをよく見ると、
後ろ手にライトブリンガーを持っていた。すぐに取り返そうと身を乗り出すが、ひょいひょい避けられる。

「返せ!…というより、何故俺は生きているんだ……」
「生きててよかったじゃないか」
「そうじゃない!確かに俺は生きてやらなければならないこともある…だが!」

無視してセージはギルダーの支給品を全て自分の袋にしまい込むと、椅子に座った。
隣にはビアンカが座っている。灯りの前で2人が奇妙に座っている。

「話そう。とりあえず君は僕の向かいね」
「なんのつもりだ…敵だぞ俺は!!」

イライラしてしまうが、手負いで魔法も武器も無い今、丸腰で相手できる状態ではない。
言われるがままにセージのとなりの椅子に座った。

「本音を語るには灯りを囲むのが一番だと、どっかの息子さんが言ってたものでね」
「敵と楽しく談笑か?」
「僕と2人っきりでね。他の人たちは疲れてるだろうから寝かせることにした」

成程、見るといつの間にか2人は寝ていた。タバサの方は素晴らしい。ちゃっかり布団を占領している。
そんな2人を尻目にセージは口を開いた。

「仲間にならない?君だったら凄い戦力だよ。」

奇妙な事を口走る、ギルダーは心底そう思った。先ほど殺し合いをした相手に言うことではない。

「敵でもなんでもどうでも良い。どうせ君、生き残るために仕方なくやってたんでしょ?
 君が生きてやりたい事があるなら、もう少し別の方法があるんじゃないかと言いたいんだ」

ギルダーは、静かに自分の行動を思い返した。
会いたい人に会う為に、殺しを決意した自分。決意を胸に遂に人を殺した自分。
そして、今ここに敗北者として座っている自分。ここの世界に来る前の自分と照らし合わせると…とても悲しくなって。

「………もう俺は既に人を殺している。罠として使った女性に兵士風の男、そしてあのベッドの子どもくらいの女の子に長髪の男だ」

そして何故か、打ち明けてしまった。

「兵士風の男を殺して名簿を見ると、紅い線が引かれていた…これで俺は殺したことを実感したよ」
「名前は?」
「……ピピン、だ」
「そっか。後で2人にやんわりと、それなりに伝えておくよ」
「知り合いだったのか、そこの2人の」
「とっても素敵なお城の兵士さんだったってさ。その辺のよりはまぁ強いんじゃない?」
「……そうか。ならなおさら俺はお前と相容れることが出来そうに無いな。あの女達が許しはしないだろう」

そう言うと、ギルダーは机に突っ伏した。
そのまま静かにセージの方を見るように顔を上げ、うつろな表情を浮かべる。

「会いたい人がいた。絶対に会いたい人がいた。だから俺は殺した」
「僕にだって会いたい人はいるけどねぇ…でも殺しをしてないんだよねこれが」
「俺は…前に世界を救ったけれど……既に人殺しの犯罪者だ」
「僕だって前に世界救った賢者だけどさ。やっぱり殺しはしてないんだよねぇ」
「…おちょくっているのか?」
「いや?君と僕を照らし合わせてるだけ。いやぁ、似てるね。特技もやってたことも」

「……君と僕は鏡に写った様なものだ。一歩間違えれば僕もそうなっていた」
「……そうなのか?」
「ああ、重圧に押しつぶされて逃げ道を作ったら…君みたいな事になっただろう」
「俺はもう手遅れだ。殺人という道に走って、こんな醜態を晒してしまうほどじゃ…たかがしれている……」

絶望と悲しみに潰されてしまったように、
ギルダーは顔を上げなくなった。

「おい、お前…」
「セージだ」
「じゃあセージでいい……お前は、これから俺に何を求める?」
「その前に君の名前は?」
「ギルダー…」
「OK。とりあえず僕はギルダーに仲間になってほしい。そして彼女達を僕と護るんだよ」

ギルダーは答えなかった。
耳にタコが出来るほど聞いて呆れたのか、答える気力が無くなったのか…それはわからないが。

「彼女達だけじゃない。かつての君の仲間も護れば良い」
「………」
「生きて、やりたい事があるのなら…僕らみたいに殺しなんかせずに生きてみると良い」
「…………おそらくあの魔女は強いぞ…抗う気か」
「仲間を募ってからね。その時にはいいリーダー格とかも現れて、団結するんじゃない?」
「俺を殺しに来たやつが、お前らにも襲い掛かってくるかもしれないぞ」
「大丈夫、君と僕の実力でちょちょいのちょい」

同じような調子で答え続けるセージを見て、ギルダーには奇妙な感情が生まれた。
―――俺が必死になって、したいことをする為に人を殺めてきた間、
こいつはずっとあの仲間達を護っている……。もう阿呆らしい、俺はもう決断も覚悟もしない方が良いのか。
それで悲劇が生まれるのなら…もういい、自分のために孤独に戦うのは疲れた……。

「………もういい。もう自分が阿呆らしく思えてきた…それにもう俺が何をしていけば良いのか判らない」

そう言った上で、ギルダーはこう続けた。

「あの2人に…俺が殺しをした事を直接教える。
 ピピンとやらがあいつらにとって大切だったのなら、俺が言うべきだ。
 それから先は、もう俺が何をしたいのかさえ見当がつかない……。
 2人に言った後に仇として殺されるかもしれない、あっさりと許されるかもしれない…。
 まぁ、もしその後に俺が生きていたら……とりあえず、お前と一緒に行動してみることにしよう。
 何がしたいのか、何をすれば良いのか判らなければ……それが判るのを生きて待とう。
 だが俺が殺した奴の仲間が俺の命を奪いに来たら、静かに奪われることにする」

そういうと、ギルダーは立ち上がった。
扉を静かに開けて階段を見るようにして座った。

「……階段の見張りは俺がする。あいつらはお前の役目だ、そうだろう?」
「………ストレスに押しつぶされて終わると思ったけど…上出来だね。
 たださ、死にたがり願望は止めなよね。とりあえず僕がなんとか説得するしさ」
「………そうか」

ギルダーは、生きて何をするかを探そうという。
この先もし彼に仇討ちを望むものが出たら…その時は一応ギルダーは護っておこう。
だが、その先なんとかして殺されないような道を取ってほしい。
セージは、そう思った。

セージは俺に新たな道を指し示そうとしている。
穢れた俺に、殺人者にそんな事を言い始める。
酔狂だと思った。なんで俺みたいな人間にそこまでするのか…。
ギルダーは、そう思った。

夜は、長い。

【セージ 所持品:ハリセン・ファイアビュート・ライトブリンガー・雷の指輪・手榴弾×2・ミスリルボウ
 第一行動方針:見張り 基本行動方針:タバサの家族を探す】
【タバサ 所持品:ストロスの杖・キノコ図鑑・悟りの書 
 第一行動方針:睡眠 基本行動方針:同上】
【ビアンカ 所持品:なし
 第一行動方針:睡眠 基本行動方針:不明】
【ギルダー(MP消費) 所持品:なし
 第一行動方針:見張り 第二行動方針:ビアンカとタバサに全てを説明する
 基本行動方針:セージと行動し、存在意義を探す・自分が殺した人の仲間が敵討ちに来たら、殺される】
【現在位置:いざないの洞窟近くの祠内部の部屋】