FFDQバトルロワイアル3rd資料編@wiki 274話


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第274話:絶望的観測


俺たちは走っている。西へと向かって走っている。

(忘れたい)

耳の中で、様々な音が反響している。
無機質に鳴り響く電子音が。迸る炎と、肉が焦げる時の異質な音が。
正確なリズムで打ち出され続ける銃弾の音が。
ぽたぽたと地面に落ちる、涙のしずくの音が。
そして……コルク栓を抜くようなやけに軽い音が、耳から離れない。

(あの音が、耳から離れない)

何が悪かったのか、俺にはわからない。
疲労や眠気が集中力を妨げてしまったのかもしれない。
マシンガン男のような狂った襲撃者の存在が、神経をすり減らせてミスを誘発させてしまったのかもしれない。
……そうじゃなくて、他に理由があるのかもしれない。
俺にはわからない。

(……きっと、最初からバレてたんだ)

俺は後ろを走っているエドガーとデッシュを見る。
二人はずっと、徹夜で対人レーダーの研究を続けていた。
だから俺も二人を信頼する気になれた。
きっと、この二人ならなんとかできるんじゃないかと。

(期待なんか、するんじゃなかった)

希望は絶望の裏返しなのだと、誰かが言った。
今ならわかる。その通りなのだと。

思い出す。今までのことを。

夜明けの放送を聞いた俺たちは、砂漠の旅の扉に向かう事にした。
アリアハンでは待ち伏せされる可能性が高いと、ザックスとエドガーが言い出したからだ。
それで俺たちは小走りで西に向かい……見つけた。
土の塊のような、小さな墓を。

(エドガーが掘り返し始めて、俺も手伝った……止めておけば良かったのに)

中には見慣れない女の遺体があった。
徹底的に切り刻まれて、内臓さえはみ出しているような無残な死体が。
エドガーは顔をしかめながら、それでもガチガチに硬くなった遺体に手をかけた。
首輪の研究をするためには、そうすることが必要だってことぐらい俺にもわかる。
デッシュはもちろん、シンシアもザックスも何も言わなかった。
俺を含めて、めいめいが顔を背けた。
エドガーがコトを終えるまで、誰もが明後日の方向を見つめていた。
――そして、音が聞こえた。コルク栓を抜くような、軽い音が。

(……不注意だって? あれが?)

俺は振り返った。焦げ臭いにおいが鼻についた。
真っ赤な血が撒き散らされていた。
シンシアが悲鳴を上げた。モミジの葉に似た肌色の物体が、俺のすぐ傍に落ちていた。
エドガーが右の手首を抑えてうずくまっていた。

そして、その先にあるべき『モノ』が無くなっていた。

不幸中の幸いというべきか、エドガーの命に別状はなかった。
ザックスとシンシアの手当ても適確だったし、エドガー自身がある程度の回復魔法を使えたってことも幸運だった。
そして、当たり前だが誰かの首輪が爆発させられることもなかった。

(当たり前だって? 本当に?)

そして、こんな『事故』があっても、エドガーとデッシュは首輪の解析を続ける気を無くさなかった。

(事故だって? 本当に?)

エドガーは笑って言った。
今回の事故で逆に確信を持てたことがあると。 
爆発の仕方からしても、使われているのは爆薬と起爆装置とかではなくて、やはり魔法的なギミックなんだとか……
爆破条件は掛かった負荷の大きさではなく、負荷を掛け続けた時間で判定されているようだ、とか……
俺にしてみれば、そんなことが分かってもどうしようもない気がするのだが。
しかし本人たちがやる気だっていうのに、俺がとやかく言っても仕方がない。

(……そんなんだから、目を着けられたんじゃないのか?)

シンシアはずっと押し黙っている。
いくら芯が強いといっても、この光景はさすがにショックが強すぎたのだろう。
逆にザックスは、怯むどころかますます打倒主催者の気持ちを高めたようだ。
元々の性格もあるだろうし、あくまで主催に立ち向かおうとしたエドガーの姿勢に影響されてるのかもしれないし……
そう、さっきの放送で、親友とやらの名前が呼ばれたせいも入っているのかもしれない。
だから今も先頭を走りながら、絶対に一泡吹かせてやるのだと意気込んでいる。

(……あんたがそんな事を言い続けていたから、手を出してきたんじゃないのか?)

――死後硬直で死体が固くなってたから、外すのに手間取った上に力を加えすぎた?
――本当にそれだけの、ただの事故だっていうのか?

――そうじゃないかもしれないとか、考えたりしないのか?

思い出す。
エドガー達は言った。俺らの会話は全て主催者に筒抜けなんだと。
考える。
本当は会話だけじゃなくて、行動自体が全部バレてるんじゃないかと。

(だから、魔女に目を着けられたんだ。きっとそうに決まってる)

けれど、俺は思い出す。
アリアハンで殺しあってた奴らや、銃を乱射した姿もわからない襲撃者を。
あの、女の遺体の惨状を。

(嫌だ……俺は死にたくない)
(殺されるなんて嫌だ。切り刻まれて死ぬなんて、絶対に嫌だ)

俺はまた、思い出す。
先ほどの放送を。
そしてザックス達や、エドガー達と出あった時の事を。

(ターニアも、イザの兄貴も呼ばれてなかった……)
(……嫌だ)
(イザの兄貴やターニアを手にかけるなんて絶対に嫌だし)
(ザックスやシンシアと殺しあうなんて考えたくもない)

そしてまた、考える。
ザックス達といてどうなるかを。

(……こいつらと一緒に、魔女に刃向かったとして首を吹き飛ばされる?)
(それも嫌だ。ゴメンだ。冗談じゃない)

俺は考える。
(ザックスは強いし、エドガーとシンシアも俺よりかは戦えるだろう)
(四人と一緒にいた方が、心強い事は確かだ)
(でも、俺だって……魔王の手下から村を守る程度には戦える)
(それにこっちにはオートボウガンがあるんだ。
 銃弾ってヤツと違って、矢は回収すればまた使えるし、材料さえあれば自作もできる。弾切れの心配はほとんどない)
(レーダーがあれば、死角から襲撃される心配もない……)

俺は考える。
(打倒主催者を公言してるザックスとシンシア、首輪の研究をしてるエドガーとデッシュ……)
(どいつもこいつも、いつ首を吹き飛ばされてもおかしくない。それだけの行動をしてる)
(そんな連中と一緒に居る、俺も……)

考える。俺が取るべき道を。

(なぁ……ゲームに乗ってない人間が、こいつら以外に果たして何人いるっていうんだ?)
(そりゃあ、確かにイザの兄貴やターニア、ザックス達を殺すなんて無理だ。俺には出来ない)
(でも、俺はまだ、死にたくない)
(そう……イザの兄貴達や、ザックス達じゃなかったら……)
(ゲームにもう乗ってる奴だったら……俺の知らない、赤の他人が相手だったら……)

考える。俺が生き延びる術を。

(あのレーダーがあれば、襲撃から身を守ることができる)
(あのレーダーがあれば、相手に気付かれる前に位置を知ることができる)
(あのレーダーがあれば……俺一人でもやっていける……)

(レーダーがあれば……レーダーさえあれば……)

レーダーは今、デッシュが預かっている。
このメンツの中で、唯一俺より弱いと言えそうな奴だ。

(………)

考える。考える。
考えなくてはいけない。誰も助けにはならない。
イザの兄貴も、ターニアも、ここにはいない。
ザックス達も、エドガーも、頼りにするにはあまりにも危険だ。
だから考える。

上手い方法を。
レーダーを手に入れてこいつらから離れるための、上手い方法を。


【エドガー(右手喪失) 所持品:バスタードソード 天空の鎧 ラミアの竪琴 イエローメガホン 
【デッシュ 所持品:ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 対人レーダー
【ザックス 所持品:スネークソード 毛布 
【シンシア 所持品:万能薬 煙幕×2 毛布
 第一行動方針:西部砂漠の旅の扉に急ぐ 第二行動方針:首輪の研究 最終行動方針:ゲームの脱出】
【ランド 所持品:オートボウガン 魔法の玉 毛布
 第一行動方針:ザックス達についていく/レーダーを入手して、ザックス達から離脱する
 第二行動方針:生き延びる(殺人も辞さないが、知り合いは殺さない&戦わない)】

【現在位置:アリアハン北の橋から西の平原→西部砂漠へ】