404話

第404話:夢の中へ


「ウネさん、向こうに誰かいるみたい」
「ほう、こんなところで先客かい?読み違えたねぇ」

地獄耳の巻物が切れた聴覚はもどかしいほどに不便だ。
アリアハンではかなり離れた位置の音だって拾うことができたというのに、
今はちょっと向こうで何か会話しているのも聞き取ることができない。
さっき確認した相手の姿は婆さんに女、それに背負われているオッサン。
はっきりと断定できないことが苛立たしいが、こいつらはおそらく殺人者ではない。
それは、まず第一に足手まといになる怪我人を連れている。甘い奴等ってことだ。
そういう発想を誘う偽装ってこともありえるが、こんな僻地でやることじゃない。
次に怪我人以外の数が二人ってこと。
人間てのは怖いもんで、死体なんかに執着する奴もいる。
だが、そういう変態連中はもともと数はいないし、そうは徒党を組まないものだ。
以上二点よりこいつらは襲撃されて逃げてきたパーティってとこだろう。
もっともこの近辺で襲撃されたってんなら俺にとっても楽しい話じゃないが。

とにかく、連中は先ほどからこちらに近づいて来ずに何か相談している。
よほど察しがいいのか、それともアイテムか?
どうやら見つかってはいないまでも自分の存在は感づかれているようだ。
意を決してアルガスは姿を投げ出した。



「おいお前ら、こっちには戦う気は無い。俺の名はアルガスだ」

大声で呼びかけつつ、相手が視認できる範囲へと飛び出す。
突然の動きにやや面食らったようだが、婆さんと視線を交わして女が声を返してきた。

「こっちも戦う気は無いわ。あたしはアリーナ、こっちがウネさんで、後ろがライアン。
 よろしくね、アルガス。
 でもあなた、こんなところで何をやってるの」
「こっちは運悪くここに落とされたってだけだ。お前らこそ何の目的でこんな僻地に来たんだ?」

続けて喋ろうとしたアリーナを制して、婆さんが代わりに答える。

「この男の治療と…ちょいとした目的があってね。まさか人がいるとは思わなんだ」
「半分は答えになってないな。その目的を言えってんだよ」
「言ってもどうせ信じもせんと思うがねぇ」
「あ、ウネさん、あたしも詳しく知りたいな。夢の中とか言ってたけど」
「…仕方ないねぇ。あたしゃ本来の仕事は『夢の世界の管理人』でね。
 今まですっかり忘れておったのだが人がいるならばそこに夢の世界は存在するはず。
 だから一眠りしてちょっと様子を確かめてこようと思っているのさ」
「『夢の世界』!?」
「『夢の世界』、だぁ?」

単純に驚くアリーナ、怪訝そうな表情で固まるアルガス、それぞれの反応を示す。
二人を見回してウネがカラカラと笑い声を上げた。

「アッハッハ、信じられないだろう?
 ま、ともかくこれがあたしの目的だよ。わかったかい」


「あー、わかった。そういうことにしといてやる。
 それで、そんなことをして一体何の役に立つんだ?是非教えて欲しいもんだね」

怪訝そうな表情のまま、硬直の解けたアルガスが尋ねる。

「まあ役に立たんことはないね。
 人の夢にゃ干渉しないのが夢の世界の大原則だが夢であたしを呼ぶなら話は別さ。
 その時夢の世界にあたしがいれば、そこであたしと話すことができる。
 つまり離れていても連絡ができるって事さ」
「へえーっ、すごーいっ!」
「連絡か。確かに情報は力になるが」
「ま、それで少しでも安全に眠れる場所を求めてここに来たってわけだよ。
 これで納得してくれるかい?」
「まあ俄かには信じられないが…とりあえずは納得しておいてやるよ」
「あっ、そうだ!あたしからも伝えておきたいことがあるの。
 実は、あたしとおんなじ顔、姿をした子がいて、戦いに乗ってるわ」
「同じ顔?なんだそりゃ、お前の双子の姉妹か?」
「あー、説明すると長くなるんだけど。
 あたしのアイテムが分裂の壷ってヤツで、入れたものを増やすアイテムだったの。
 それであたしを増やそうとしたのよ。…ほら、自分がもう一人いたら便利じゃない?
 でも、できたのは簡単に人の目を抉っちゃうような残酷な偽者の自分だった。
 あたしはあの子を止めなきゃいけないんだ」
「はん、余計なことをしてくれたものだな。で?おまえと見分ける方法は?」
「…あたしはこの通り手袋をはずしてるけど偽者は着けたままのはずよ。
 あとはこの腕輪ね。手袋をしてて、腕輪を着けていないのが偽者のあたしよ。
 それで見分けられるわ」

交渉以前の問題でこいつらは自分らの情報を無償提供してくれるお人よしだ。
だが自分の敵に回るでなし、危険人物の情報提供くらい恩を売っておいても損は無いだろう。
こっちとしても無差別に人を殺して回る連中にはほどほどの所で退場してもらいたい。
そいつらを仕留めたり傷を負わせたりしてくれるだけでも儲け物というもんだ。

「なるほどな。他に危険なやつの情報は無いのか?そうか、ないか。
 じゃあ俺からもいくらか危険人物の情報を教えてやろう。
 まずは銀髪野郎、刀を使うセフィロスってのと銃と魔法を使うクジャって奴がいる。
 まあ銀髪を見たらなるべく逃げた方がいいな。はっきり言って並の強さじゃない。
 それから緑髪のデールって奴だ。見た目は貴族っぽいがすっかり狂っちまってやがる。
 いろんな意味であぶねぇ奴だな。
 あとは、赤魔道士…名前は、ああそうだ、ギルダーか」
「ギルダーじゃと!?」
「知り合いか、婆さん」
「む、まあ…な。それよりも…」
「ああ、確かにそいつは人を殺してるぜ。相手はガキとおっさんだったか。
 見た感じ弱った振りをして油断させての騙し討ちという感じだったな」
「信じられんな…」
「ふん、俺は嘘は言っていないぞ。
 あんたが知らないだけで本当はそういう奴だったんじゃないか?
 普段善人ぶっていてもいざ非常事態になりゃ本性を曝け出す、
 それが現実の人間ってやつだ」
「むう……しかしまさか」


なんだか空気の悪くなった会話をいったんそこで打ち切り、
ライアンを眠らせている岩陰へと移動するウネとアリーナ。
小声でアリーナに耳打ちする。

「さてアリーナ、わしはちょっと一眠りするが…その前にじゃ。
 あのアルガスという奴、確かに戦う気はなさそうだが微妙に信用が置けん。
 ちらりと見たがあやつは一人で複数のザックを持っておる。
 死体漁りなどで拾ったのかもしれんが、油断せん方がいい」
「あ、油断させて後ろから~って事?うん、怪しい動きには気をつけておくわ」
「ああ。じゃあちょっと行ってくるよ。………ZZZZ」

横になって数秒も経たぬうちにあっという間に眠りの世界へ。今はもう起きそうにも無い。

同行している二人はこのとおりだし、なんだか手持ち無沙汰だ。
あんまり好感の持てる相手じゃないけれどアルガスと話でもしてようかな。
同時に監視にもなるし、うん、そうしよっか?



気になったのは分裂の壷の話。
人間を入れるなんてバカなことを考える奴はそういないだろうが、
全体で考えればその壷自体が魔女の仕掛けた罠に見える。
だいたい、どんなものでも二つに増やすなんてうまい話があるだろうか?
魔力での創造なんてのは並大抵の魔法ではないはずだ。
不良品を渡しておいて使うと酷いことになるって寸法の罠だったんじゃないのか。

だとすると、他にも用途の良くわからないアイテムには魔女の罠が含まれている可能性がありえる、
ということになる。
俺の持ち物の中じゃ説明書の無いこの灰と指輪だ。特にこの指輪は危なそうだ。
呪われてゲームオーバーじゃお話にもならない。

正午の空の真ん中にはむかつくくらいに明るく太陽が輝いている。
そろそろ行動すべきか、それともここでやり過ごすべきか。
寝転がりながらアルガスは思考に時間を費やしていた。

【アルガス
 所持品:カヌー(縮小中)、兵士の剣、皆殺しの剣、光の剣、ミスリルシールド、パオームのインク
 妖精の羽ペン、ももんじゃのしっぽ、聖者の灰、高級腕時計(FF7)、インパスの指輪
 マシンガン用予備弾倉×5、猫耳&しっぽアクセ、タークスのスーツ(女性用)
 デジタルカメラ、デジタルカメラ用予備電池×3、変化の杖
 第一行動方針:自分のこれからの行動について考える
 最終行動方針:脱出に便乗してもいいから、とにかく生き残る

【ウネ(HP 1/2程度、MP大幅消費、睡眠) 所持品:癒しの杖(破損)
 第一行動方針:夢の世界へ
 基本行動方針:ドーガとザンデを探し、ゲームを脱出する
【ライアン(外傷は回復、気絶)所持品:レイピア 命のリング】
 行動方針:不明】
【アリーナ 所持品:プロテクトリング
 第一行動方針:アルガスを監視しつつウネとライアンを守る
 第二行動方針:アリーナ2を止める(殺す)】

【現在位置:ジェノラ山山頂】

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最終更新:2008年02月15日 01:40
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