20話

第20話:独自の美の感覚


アリアハン王城謁見の間。
鎖国しているとはいっても、自国民、他国民に威厳を見せつけるために様々な装飾品や絵画が飾られている。
窓から見える美しき町並みと広大な平野は、ここが殺し合いの舞台であると忘れさせてくれるくらいの、のびのびとした風景である。
そして、その向こうには、太陽の光を受けてきらきらと輝く湖、荘厳さを感じさせる古き塔。
さらに向こうに広がる、岬を覆い尽くす森林地帯の鮮やかな緑色との相乗効果もあいまって、絶妙な美しさを醸し出している。

そして、その風景を見ている者がいる。
その男は豪華なマントを身にまとい、頭には羽の付いた帽子をかぶり、右手の指には赤い石の付いた大きな指輪をはめている。
後ろにはレオタードを着た、緑色の髪をした女。旅の扉に飛び込んでこの世界に到達するやいなや、
このわけの分からない人物に出会い、対応に困っているらしい。
「素晴らしい… 邪悪な闇に包まれた景観もいいが、朝の光にやわらかくくるみ込まれた景観もよい。そうは思わぬか?」
男は女性に背を向けたまま、尋ねる。
女は、何も答えない。答えられない。何しろ、意味が分からないのだから。
男が豪華な鏡を取り出す。破壊の鏡。あまりにも映ったものの出来がいいため、
映し出された本物がこの世に存在できなくなると伝えられる、人魚族の秘宝である。
「美しき鏡に映るものは、やはり美しいものが相応しい。そうだろう?」
鏡の中に映し出された装飾品の数々。その合間に張られた蜘蛛の巣が、鏡の中で消える。そして、現実でも。
鏡は、謁見の間にあるものすべてを映した。玉座を映し、王家の紋章を映し、女を映し、そして男を映す。
鏡に映った男の顔は、人間のものではなかった。いや、厳密に言えば人間だが、生きている人間に
このような顔を持つ者はいない。鏡に映された男の顔は、骨となっていた。

「モンスター!」
女が驚いたように声をあげる。
それに構わず、男が今度は剣を取り出す。氷でできた、青き剣。
「どうだ、この青く、透き通った剣。まるで水晶のようだ…美しいだろう?」
男が振り向く。男の顔がみるみるうちに溶け、鏡に映っていたのと同じ、骸骨となる。
「だが、これだけではもの足りないな。このような剣とは、使われてこそ真の美しさを発揮するものなのだよ。
 透き通るような青には、真紅の色をした血がよく似合うと思わぬか。美しき乙女の血ならば、なおさらな…」
男…魔道師ハインがマントをひるがえし、剣…氷の刃を女…リディアに向ける。

リディアは逃げだそうと、階段へ通じる扉へ駆け出す。
「逃がしはしない…」
ハインはブリザラを唱え、扉を凍りつかせる。
「それとも」
ゾッとするような笑みを浮かべながら、ハインが近づいてくる。
「氷漬けの女神像として、この城の一部となるのを選ぶか?」

「冗談じゃないわ。こんなところで死にたくなんかない!」
相手はどう見てもアンデッド。アンデッドには炎が効果的。
「ファイラ!」
相手は完全に炎に包まれたかに見えた。しかし、何かに弾かれたかのように炎が四散する。
「余に魔法は通用しない。余には相手をいたぶるのを楽しむような趣味もない。
 おとなしくしていれば、すぐに終わる」
「ブリザラ!」
炎がダメなら氷で攻める。謁見の間の気温は下がり、ハインの周りは凍りつく。
しかしハインがマントを返すと、またも魔法は四散した。
「あきらめの悪い娘だ。美しいものではないな…おや?」
ハインの周り、特に足下が凍りついたことで、身動きが取りづらくなったらしい。
チャンス。リディアはファイアで扉の氷を溶かし、一目散に階下へ逃げた。
「ふん、逃がしたか。それにしても…」
またも悦に入るハイン。
「氷で覆われた部屋もよいものよな…」

【ハイン 所持品:破壊の鏡、氷の刃、ルビーの指輪
 次行動方針:氷の刃で人を殺す 現在、謁見の間で色々眺めています】
【現在位置:アリアハン王城謁見の間】

【リディア 所持品:?
 第一行動方針:ハインから逃げる 第二行動方針:仲間を捜す】
【現在位置:アリアハン王城1F】

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最終更新:2008年02月15日 22:14
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