192話

第192話:長い夜


気づけば、闇の中で佇んでいた。
何もない、虚空の中で。
誰も、いない。
声がするだけ。自分を責める声が、するだけ。

――あなたはエアリスさんを殺したの…
蒼い髪の女の子の冷たい声が。
――次に会ったら…仇をとる。
暗い響きを帯びた、金髪の青年の声が。
――なんだ…まだ死んでいなかったの?
火傷を作った、顔も見ていない少年の声が。
――誰も殺せてないんだねぇ。役に立たないなぁ。
コートを着た男の声が。
――人殺しの仲間なんだな!
失意の少年の声が。

微塵にも優しさのこもっていない、それらの声。
自分の心の中で作り出した声。

私は殺人者だから?
エアリスを殺したから?
…誰からも許される事無く。
…誰からも愛される事無く。

――ティファ、なんて事をしたんだ!
あぁ、クラウド、ごめんなさい…
――謝って済むと思っているのか!?
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…

怒る事で忘れてくれるなら、そして忘れさせてくれるなら、心の限り怒って――。

消えない…いつまでも。
血。この手に、銃に、心にこびり付いた、エアリスの、血。
顔の火傷は治っても、治すことのできない傷。
この心と、エアリスの胸に刻まれた傷。

――ティファ、私は許してあげるわ。
…エアリス?
――そのかわり、どんな力でも治せない傷を背負うの。
嫌ダ。忘レサセテ…。オネガイ、オネガイ…。
――忘れさせたりなんかしない。
――私はいつまでも消えないであなたの心の中にいるから。
――血に濡れたまま、ずっと、あなたの傍にいるから。
――あなたの影となって。
…私ヲ、呪ウノ?
――私があなたを呪うんじゃない。あなたがあなた自身を呪うの。
――消えることの無い自身への恨みを、あなたは一生背負い続けるの。

エアリスの胸に、穴が開く。
確実に、自分が撃ち抜いた場所に。
一瞬後に、彼女の身体は粉々に砕けた。
恐ろしいくらいに、綺麗に。
真っ赤に。粉末のように。

――自分のした事から目を逸らさないで――
エアリスの声は、痛い。自分に突き刺さるようで。


「…どうしたの?大丈夫?」
私の身体をゆする人がいる。
眼を開ければ、黒髪の女性がいる。
「アイラ…」
「凄い魘されていたんだぜ…?」
その横に、マッシュ。
二人が、私の顔を覗き込んでいる――

「…大丈夫」
…何が、大丈夫?
「ちょっと…夢を見ただけ」
身体の震えが止まらない。
「寒くない?大丈夫?」
アイラの優しい声も、今はちょっと耳障りで。
「大丈夫だから、放っておいて…」

打ち明けたくは、ない。こんなもの。
誰に共有されることもない、私の、罪。
嫌だ。忘れてしまいたい。
でも、忘れることはできない。

「…そう。話がしたくなったら、いつでも聞いてあげるから。
 えっと、今、私の話をしてるんだけど、聞く?」
アイラは、優しい。
だからこそ、話したくない。
捨てられるのは嫌だから――

今、捨てられた子猫の気分が、わかる気がした。

小さく頷いて、アイラの話に耳を傾ける。

まだ、この長い夜は、明けない。

【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石
 第一行動方針:アイラの話を聞く 第二行動方針:ゲームを止める】
【アイラ 所持品:ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ
 第一行動方針:話をする 第二行動方針:ゲームを止める】
【ティファ 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ
 第一行動方針:アイラの話を聞く】
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
 第一行動方針:出来れば寝ておきたい 第二行動方針:ゲームを止める】 
【現在位置:東山脈中央部の森・川辺付近】

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最終更新:2008年02月16日 14:27
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