41話

第41話:責任


森を駆ける二人の少女。
エアリスとターニアだ。
エアリスは後ろを振り返り、剣士が追いかけて来ない事を確認する。
「もう、大丈夫みたい」
そうターニアに告げると、ゆっくりと足を止めた。
ターニアもそれに習い、足を止める。
「怪我はない?」
エアリスが聞くと、少女は少しだけ頷いた。
呼吸は、少し荒い。
少し赤く染まった頬に、涙が流れた跡。
未だ潤んだままのその瞳で、ターニアは礼を言った。
「ありがとう…」
「いいのいいの。ホラ、こんなゲームだし、助け合わなきゃ…」

エアリスの声が、止まる。
ターニアとは違い幾らか戦闘経験のある彼女は、人間の気配を察知した。
「誰かこっちに来るみたい…」
ふきとばしの杖を握ると、神経を集中させる。
(二人くらい…殺気は無し)
エアリスは少しホッとしたが、まだ油断はできない。
人を見つけると急変する可能性だって、ある。
ターニアと共に、茂みの中に身を隠した。

ターニアを茂みの奥のほうへやると、エアリスは葉の隙間から外の様子を見た。
やって来るのは予想通り二人。
軽い身のこなしの金髪の美女と、剣を手にした金髪で体格のいい青年。
なにやら明るく話をしている。どちらも、人を殺せるようには見えない。
…と、そう考えていると、美女のほうがゆったりした口調で言った。
「其処においでの方、私達に戦う意思はありません。出てきていただけませんか?」

見つかった!とエアリスが思ったその瞬間、ターニアは既に立ち上がっていた。
(この声には、聞き覚えがある。あの人なら、テリーさんのようにはならないはず!)
「ミレーユさん!」
ターニアは叫び、エアリスの横を一気に走り抜けるとその美女に抱きついた。
「ターニアちゃん!?無事だった!?」
ミレーユは、ターニアの予想通り、ターニアを抱きとめた。

「知り合いなのね?」
エアリスもまた、ゆっくりと立ち上がった。
四人が戦う意思が無いことを示しあうと、座り込んで自己紹介をした。



ターニアがテリーに襲われたことを話している間、ミレーユはとても険しい顔をし、
エアリスと金髪の青年…ティーダも表情を曇らせていた。

「やっぱり、そうなのね…」
ミレーユが、ふっ、と呟く。
「参加者リストのテリーは…」
彼女はリストを開き、テリーの写真を指差す。
「…赤い目をしているの。それは、デュランの手下になっていた時のテリーの目…」
「えっ?」
「多分彼は、デュランの手下だった時のテリーとしてこのゲームに参加しているの。
だから彼には正義がない。そしてきっと、ターニアちゃんのことも…私のことも、わからないはず。
なぜならその彼にとって私達は、未来に出会うはずだった人達だから…」
ミレーユが物憂げに溜息をつき、エアリスとティーダは顔を見合わせる。

「…ティーダ君?」
ミレーユに不意に呼ばれ、ティーダは慌てる。
「な、何スか?」
「…その二人を守ってあげて。私は…行かなきゃ」
そう言い残し、ミレーユは立ち上がると、履いていた靴のおかげか信じられないスピードで何処かへ走り去った。


「ミレーユさん!!」
背中から聞こえるターニアの悲痛な声を聞くまいと、ミレーユはなおもスピードを上げる。
(テリーをあんな風にしたのは、私のせい。だから私が止めなくちゃいけない。)

あの時…ヘルクラウドでのテリーとの再会は、不意だった。
でもその時は仲間達がいて、だからテリーを止められた。
…でも私は、私を許せなかった。
彼の行動の全ては…私の責任なの。
だから、止めなくちゃ、いけない。
――私の命に換えても。

金色の髪を振り乱し、ミレーユはテリーの向かうであろうレーベへと、走る。
悲しくも美しい姿は、木々の向こうへと消えていった。

【ターニア 所持品:ゴディアスの剣 理性の種
 行動方針:休憩?/兄(DQ6主人公)に会う】
【エアリス 所持品:ふきとばしの杖 青銅の盾
 行動方針:休憩?/クラウドたちと合流】
【ティーダ 所持品:鋼の剣 麦わら帽子 微笑みの杖
 行動方針:休憩?/仲間と合流】
【現在位置:レーベ北東の森の中】

【ミレーユ 所持品:月の扇 エルメスの靴
 行動方針:テリーと会い、自分の命に換えてもテリーを更正させる】
【現在位置:レーベ北東の森からレーベに移動中】

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最終更新:2008年02月16日 15:51
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