124話

第124話:遭遇戦、そして発芽


「オレはもう、嫌だ」

ランドは辟易して呟き、ザックスを横目で睨みつけた。

「だから街に残るべきだと言ったんだよ!」
「いまさらしょうがないだろ。いつまでもグチグチいうなよ」

ザックスがめんどくさそうに言うと、ランドは更に忌々しげに言葉を軋らせた。

「愚痴も言いたくなるだろこれじゃあ。あんたのせいだぞ、どうしてくれるんだよ!」
「どうして欲しいんだよ。言ってみろ」
「ケンカは後でいいですからお二人さん。それよりどうするんです!?」

このまま延々と言い争いを続けそうな二人にシンシアはぴしゃりと言い放った。
その刹那、シンシアの顔のすぐ横にあった木の枝が乾いた音を立てて弾けとんだ。


ザックス、シンシア、ランドの三人組は、夜を森で身を潜めるべくアリアハン北部の森林地帯に向かっていた。
そしてザックスの計画通り、日が暮れる前に到着したまでは良かったのだが、
森に入ってしばらくした所で何者かに銃による襲撃を受けていた。
しかもマシンガンによる広範囲の無差別銃撃というものだからたまった物じゃない。
少し大きめの木の影にザックスとシンシアの二人が、そこから二メートルほど離れた木の影にランドが
前方から飛んでくる銃弾から身を守っているという図式だった。

「いいからお前もそのボウガンを撃ち返して、相手の足を止めてろ!」
「ちっくしょう!死んだら化けて出てやるからな!」

悪態をつきながらもランドは銃撃の合間に木の影から身を出して、
オートボウガンを襲撃者がいると思しき場所に乱射した。しかし当てずっぽうな攻撃が当たるはずもなく
お返しとばかりに銃弾が再び飛来してきた。

一方ザックスはシンシアが手に持つ対人レーダーをちらりと確認した。
レーダーには相変わらずザックスたち以外の反応はなかった。
銃撃が始まった時からレーダーには三人の反応しかなく、現状が維持されているのだった。
これはつまり襲撃者はザックスたちから十五メートル以上は離れていることになり、そこから動いていない事となる。
この事実からザックスはこう推測した。

(――相手は戦い慣れしていない人間、それともただの素人だ)

普通マシンガンほど速射に優れた武器を持つ場合、相手の足を止めつつ間合いを詰めていくのが定石だ。
それをしないということは、襲撃者には戦闘経験はほとんどないと言ってもよかった。
そこまで戦況を分析したところでザックスの顔からおどけが消えた。
十代半ばにして神羅の精鋭部隊ソルジャーに選ばれ、瞬く間にその最高ランクであるソルジャー1stまで登り詰め、
あの伝説の英雄セフィロスの片腕を務めていた、強者の顔がそこにはあった。

ザックスは木の影から顔を半分だけ出して、銃弾が飛来してくる方向を一瞥した。
マシンガンによる攻撃のポイントを少しでもそらせることさえなんとかすれば、決して絶望的状況ではない。
――ならばどうする、と考えて、それが不可能に近いとはザックスは思わなかった。

そしてザックスはシンシアから煙幕を一つ受け取ると五メートルほど前方に転がす。
あっという間に白い煙が森の一帯を包み込み、視界が取れなくなる。これならば木の影から動いても
襲撃者には確認出来なくなった。
しかし襲撃者は、これまで攻撃していたザックスたちがいる場所を中心にして、
大きく扇状に銃弾をばら撒いてきた。攻撃の範囲をさらに広くして煙幕による逃亡を阻止するつもりのようだ。

「どうすんだ、これじゃよけい動けねえよ!」
「お前のその腰の物を左側にあった茂みに思いっきり投げ込め!」

ザックスはランドのベルトに挿してあったミスリルスパナを指差し、ランドへと指示を出した。

「…くっ!でえぇぇい!!」

ランドはザックスの言った通り、茂みめがけてミスリルスパナを投げ込んだ。
スパナはぶんぶんと回転しながら茂みへ突っ込み、バキバキガサガサと音を立てる。
その瞬間マシンガンの銃撃がスパナが突っ込んだ茂みの方向へと移動した。
襲撃者は攻撃対象が逃亡の際に発した音だと思い込み、茂みに攻撃を集中させたのだった。

「よし、今だ!逃げるぞ!」

ザックスの言葉と同時に三人は銃撃の反対方向へと一斉に駆け出した。少し行けば木が特に密集している地帯があった。
そこへ逃げ込めばいかにマシンガンだろうと木々に阻まれ攻撃は届かない。
シンシアは木の密集地帯に入る直前、今まで身を隠していた木の影に向かって振り向きざま呪文をはなった。

「イオラ!」

逃亡に気づいた襲撃者の追撃を阻むように、シンシアたちの後方で爆発が立て続けに連続して起こる。
煙幕の煙で白く煙っていた森が爆発による発光で更に白く染め上げていった。



数分後、煙幕の煙も晴れつつある先程まで戦闘が行われていた森の中で、
ザックスたちを攻撃した襲撃者…デールは盛大に舌打ちをしていた。
――なんという失態。不意をつくため森で潜み、先に三人の攻撃目標を見つけ、奇襲を仕掛けたというのに
結局誰一人仕留めることが出来ずに逃げられてしまうとは…。完全に自分のミスだ。
次からはもっと引き付けてから奇襲しなければな。

リュカ一家や兄のヘンリー夫妻のため悪役となることに決めたデールは先程の戦闘を思い出し
興奮冷めやらぬ顔で手にしたマシンガンを見つめた。
デール自身は気づいていなかったが、彼はもうリュカたちのためにゲームに乗ってはいなかった。
すでにこのゲームに魅了されていたのかもしれない。

――あぁ、悪役も悪くないかもな。

【ザックス 所持品:スネークソード 毛布
 第一行動方針:襲撃があった場所から離れる 第二行動方針:主催者に一泡吹かせる】
【シンシア 所持品:万能薬 対人レーダー 煙幕×2 毛布 
 行動方針:ザックスについて行く】
【ランド 所持品:オートボウガン 魔法の玉 毛布 
 行動方針:ザックスたちについて行く】
【現在位置:アリアハン北部の森入り口付近】

【デール 所持品:マシンガン、アラームピアス(対人)
 行動方針:兄夫婦&リュカ一家以外の参加者を殺す(?)】
【現在位置:アリアハン北部の森の中】

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年02月16日 22:07
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。