75話

第75話:幼子との会話


「ゲホッ…ゲホッ」
「だ、だいじょうぶ?」
「………」
咳き込み、血を吐くピサロ。そんなピサロの顔を覗き込み、心配の声をかけるビビだが変わらず返事は無い。
ピサロはあれからも変わらず冷たい空気を纏っている。ずっと黙ったままだ。
きっとこの人は、あまり人に心配されるのがすきじゃないんじゃないかな、とビビは思ったが、
だからといって目の前で血を吐かれて心配しないなんて無理だ。
…はやく、回復魔法がつかえるといいのに。見ていてとってもつらそうで、なんだかそわそわしてしまう。

「ねえ、魔法がつかいにくいのはなおるのかな?」
ビビの質問に、ピサロはふと顔を上げる。エリア達と遭遇して以来、初めて心配以外の声をかけられた。
「…先程も言ったが…この大陸全体に魔法を妨害する働きがあるようでな。
 魔力が高めにくいのはもちろん怪我の所為もあるだろうが…呪文を使いにくいのはおそらく私だけではないはずだ」
「でも、さっき…」
ピサロの答えに、ビビは少し悲しそうな目でさらに疑問を投げかける。
それを見てピサロは、ビビが先程の人間共に使った魔法のことを言っているのだと解った。
「そうだな…あの程度の攻撃魔法なら特に問題なく使えた…妨害されているのは回復魔法だけなのかもしれん」
「…回復魔法だけ?」
「ああ。そう考えれば合点がいくだろう?」
攻撃魔法は通常通りに使え、回復魔法の力は制限される。
つまりここでは、攻撃は全力で行えるが、その結果として怪我を負ったとしても中々回復することが出来ないという事だ。
そしてそれは、少なからず死亡者の増加に繋がっていくだろう。
おそらくは、ゲームを盛り上げるための主催者の意図か。
―――それとも、他に何かあるのか…?それは今は解らないが。

「…えっと、よくわからないけど、攻撃はできるけど、けがはなおせない…?」
ビビが不安そうに頭をひねる。よくわからないと言ってはいるが、何となくなら理解はしているのだろう。
ビビにとっての戦いは、結果たとえ傷ついてたとしてもその傷は仲間が癒して、支えてくれるものだった。
―――それができなかったら、けがはなおらなくて死んでしまうんじゃないの?

「…当然といえば当然だな…これはそういうゲームだ…」
「そんなの、ひどい」
ビビが首を横に振る。
「ねえ、こんなゲームしなくていいよ!ぼく、友達が死ぬのはぜったいやだ!」
「………」
ピサロは何も答えない。ただ、悲しそうなビビを見つめるだけだ。
この幼子が必死で訴えている事は、解らないでも無い。
だが、この状況の中、ゲームを「しなくていい」というのは、とても難しいことに思える。
うつむいているビビを見やりながら、ピサロはまた、目を閉じた。

…ピサロはビビの言葉を聞いて、ふと、ロザリーは今どうしているだろうかと思った。

【ピサロ 所持品:スプラッシャー、魔石バハムート(召喚可)、爆弾(爆発後消滅)
 行動方針:ある程度回復するまで待機】
【ビビ 所持品:不明
 行動方針:ピサロと共にいる】
【現在位置:レーベ東の森中央付近】

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最終更新:2008年02月17日 21:44
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