161話

第161話:爆弾


二人が夕飯を食べて寝静まってから、どのくらいたっただろうか。
彼は剣を片手に、敵が来ないか警戒しつづけていた。
体は疲労感につつまれ、正直言って眠い事この上ないが、3人ソロって寝転がるんじゃ無防備過ぎる。
幸か不幸かここは宿屋。たぶん、夜が更けて行くことを考えるとこの先何人かここを訪ねてくるだろう。
それが自分達と同じくゲームに乗ろうとしない人なら願ったり叶ったり、仲間は多いほうが心強い。
喜んで協力を求め、一緒にここを守ってもらおう。相手も同じ事を考える筈だ。
しかし、もしもゲームに乗ったのが来たら…?
ふと、剣を握る手が小刻みに震える。…やめよう。そんなこと考えるのは。
「…寒いなあ…」
だれにともなく、呟いてみる。
勿論、誰も答えない。心細さを紛らわそうと言ってみたが、逆効果だった。

それからしばらくして、来訪者は突然やってきた。

不意に目の前のドアが開いた。
ソロはとっさに剣を構え、「誰だ!」と吼える。辺りが暗く、顔がよく見えない。
それから睨み合うこと十数秒。ふと、影の足元から小さい、妙な帽子を被った子供が歩み寄ってきた。
「安心してお兄ちゃん。ボク達は戦うつもりは無いよ。」
子供がそういうと、影の方もゆっくりとこちらに歩いてきた。
ランプの光に照らされて、ゆっくりと顔が露わになる。鋭い目つきをしたそいつは―――
「ピサロ!」
なんてこった。こんな奴までゲームに参加しているなんて。
「…あまり大きな声を出すな。どこにだれがいるのか判らんのだぞ」
ピサロは名を呼ばれるや、冷静に言った。
考えてみればそれもそうだ。つい今しがた、この宿屋に何人もの人が来るかもしれないと考えていたのは自分じゃないか。
「まあ、それは置いておいて…我々もここで休ませてはくれないか?」

言った。いきなり言った。
ソロが予想したなかで、多分最悪な要望。
しかし、小さい子供が一緒にいるぐらいだ。少なくともこちらに対する戦意はなさそうだ。
それに、ピサロの力はこの状況下では無視できない魅力だ。
「お願い、お兄ちゃん。」
足元の子供はすがるように懇願してくる。「せめて、ターニアちゃんだけは休ませてくれないかな?」
そう言われて初めて、ソロはピサロの小脇に抱えられた少女に気がついた。
「ターニアちゃん…?」
「そうだ。殺されそうになっている所をビビが助けた。血を見ると気が動転するらしい。」
ターニアというらしい少女は、スースーと可愛い寝息を立てている。が、あまりにも弱弱しい。
か弱い、無防備な少女と、子供の懇願するような眼差し…ソロは、ついに折れた。
「…分かりましたよ。でも代わりと言ったらアレだけど、僕の代わりに見張りやってくれません?」
ピサロは少し考えるような素振りを見せたが、やがて「…良かろう」と頷いた。

今夜ロザリーを捜すのは諦めよう。
傷はまだ回復していないし、暗い中無闇に歩き回るのは危険過ぎる。
夜明けに再び魔女が現れた時、ロザリーの名が告げられないことを祈る他無い。
ソロは呪文を何度も使って疲れていたせいか、あれからすぐに眠ってしまった。
目の前ではビビがドアの方を向いて佇んでいる。そこで初めて、ピサロはある事に気がついた。
彼が「おい」と言うと、ビビはピサロを振り向き、「何?」と歩み寄ってきた。
「お前…自分がどんな武器を与えられたか分かっているか?」
言われて初めて気づいたようで、ビビは肩からぶら下げたままのザックを床に下ろした。
「…爆発しないよね?」
ビビが冗談交じりに言うと、ピサロはフンと鼻で息をし、微笑した。
(あ…笑った…)
黒魔導師が知る限り、始めて見る彼の笑顔だった。
恐くて、冷たくて、ちょっと嫌な人だけど…ほんとは優しい人なのかな?
そんなことを考えながら、ザックの中身を探り出した。

初めに出てきたのは、細長くて、刃が曲がってる剣だった。自分はこの類の武器は扱えないので、ピサロさんに預けた。
二つめに出てきたのは、ビビも見たことのある、真っ黒なローブ。どうせだからこれに着替えなよと、これもピサロさんにあげた。
それで、最後に出てきたのは―――
「なんだこれは?」
ピサロが訝しげに最後の武器を手に取った。自分の見たことの無い、なにやら奇怪な道具を。
「棒…いや筒?どっちにしろ使い物にならんな。」
そう言って”使い物にならない道具”をザックに戻す。
「じゃ、ボクもう寝ちゃっていい?疲れた…」
眠そうなあくびをして、ビビはベッドに歩いて行った。
まあ、爆弾ではなかったな…一人残された男は、ビビから受け取ったローブを身に着けた。

しかしこの時、ピサロもビビも気がつかなかった。
最後にザックから出てきた「役立たず」…それが、ある意味では非常に恐ろしい爆弾になりうることに。

【ビビ(睡眠中) 所持品:スパス
第一行動方針:寝て疲れを取る 第二行動方針:仲間達と合流】
【ピサロ(HP3/4程度) 所持品:天の村雲、スプラッシャー、魔石バハムート、黒のローブ
 第一行動方針:宿屋に誰か来ないか見張りつつ、傷と疲れを癒す 第二行動方針:ロザリーを捜す】
【ターニア(睡眠中) 所持品:微笑みのつえ第一行動方針:?】
【アーヴァイン(HP4/5程度、睡眠中) 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) グレートソード
 第一行動方針:休息/銃かボウガンを手に入れる(ビビが銃を持っている事を知ったら…?) 第二行動方針:ゲームに乗る】
【ソロ(MP消費・睡眠) 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング
 第一行動方針:ヘンリーに付き添う/自分の休息】
【ヘンリー(負傷、睡眠) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可) 第一行動方針:傷の治療】
【現在位置(共通):レーベの村・宿屋】

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年02月17日 21:47
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。