102話

第102話:神様と元召喚士


「困ったことになりましたね……」
男は空を仰ぎ見ながら、ぼんやりと呟いた。
彼の名はマスタードラゴン。
天空の城にて世界を見通し、地上を護り続けている竜神である。
――本来ならば。

「どうしたんですか、プサンさん?」
隣を歩いていた女性、ユウナが首を傾げる。彼は苦笑しながら答えた。
「いや、今の状況のことですよ。私、この通り戦闘やら何やらは苦手でして。
 お恥ずかしい話ですが、剣もまともに振るったことがないのですよ」
彼にはわかっている。目の前にいる女性が、次元すらも違う異世界に住む人間だということに。
だから本当のことは話さない。いつも通りにプサンという仮初の名を使い、市井に生きる人間らしくふるまう。
もっとも、こんな場末の酒場のバーテンダーとしか見えぬ中年男の風体では、
正体を打ち明けたところで狂人扱いされて終わりだろうが。

「大丈夫、いざと言う時は私に任せてください。
 戦えない人を守るのも、お助け屋カモメ団の役目です!」
プサン=マスタードラゴンの考えなど知る由もないユウナは、はりきって胸を叩く。
「頼もしいお言葉ですねぇ。お嬢さんのような方と出会えて、心強い限りですよ」
そう言って笑いながら、彼は心の中で自嘲した。
(本来ならば、私の方が罪なき人々を助けてやらねばならぬというに……我が身ながら何と言う不甲斐なさだ!
 せめてドラゴンオーブが手元にあれば、脱出は無理でも、首輪の解除ぐらいできるものを)
会場のどこかに、己の竜神としての姿と力を封印した宝珠が眠っている。それは間違いない。
だが、どこにあるのか、誰が持っているのかまでは、今の彼ではわかりようがない。
(何も知らぬ人間が持っているなら構わない。だが……もし、オーブが悪しき心を持つ者に渡っていたら?)
考えかけて、プサンは首を振った。
考えてもどうしようもない。
自分がやるべきことは、一刻も早くオーブを取り戻すこと。それだけだ。

【ユウナ(ジョブ:魔銃士) 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子
 第一行動方針:仲間を探しつつ、困ってる人は率先して助ける 第二行動方針:ゲーム脱出】
【プサン 所持品:不明
 第一行動方針:ドラゴンオーブを手に入れる 第二行動方針:心正しい人達を助ける】
【現在位置:岬の洞窟北西の海岸付近】

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最終更新:2008年02月17日 22:01
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