無題


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ある夜、旅商人であるクラフト・ロレンスは、突然、目を覚ました。

「……なんだ。まだ夜中か」

ロレンスは、再び床につこうとしたが、思いの外しっかりと目が覚めてしまったのか、眠気は一向に訪れない。
隣で人の分の毛布までとって眠っているのは、ひょんな事から一緒に旅をする事になった相棒のホロ。
人の姿でありながら獣の耳と尾を有する少女。一度、本来の姿になれば、神という呼び名に相応しい巨大な狼となるが、今、ロレンスの隣で眠っているそのあどけない顔は、年相応の愛くるしい少女にしか見えない。
(いつも、こうだったらなぁ。)
ロレンスは苦笑しながら、まだ燻っている火を再び起こし、干し肉を取り出し、火を眺めながら、少しずつそれを口にする。
「……ぬし……まだ、起きておったのか?」
パチパチという、焚き火の音に目を覚ましたのか、のそのそと毛布から顔を覗かせるホロ。

「いや…さっき目が覚めた。すまない。起こしてしまったか?」
「気にするでない。わっちも似たようなものじゃ。」
そう言ってどこか遠い場所を眺めるホロ。その横顔には誤魔化しきれない「何か」があった。「どうしたんだ、ホロ?」
ロレンスの問いにホロは、不機嫌そうな声で
「嫌な夢を見た。」
とだけ言って、毛布の中へと潜り込んでしまった。

「そうか…」
ロレンスは短くそう言って、焚き火に枯れ枝を投げ込む。



沈黙のなか、パチパチという枯れ枝の燃える音だけが響く。


そしてしばらくたってから
「聞かぬのか?」
ボソッとホロが呟いた。
「聞いて欲しいのか?」
ロレンスがそう切り返すとホロは不満げに鼻を鳴らした。
「ぬしは相変わらず、女の扱いをわかっておらぬの。」
ホロはそう言いながら毛布から抜け出してロレンスの隣に座る。
「あぁ。しかし、年取った狼の扱いは少しずつ分かってきた。」
そう言ってロレンスが取り出したのは、葡萄酒が並々と注がれた木の器だった。
「ふむ…。これは…」
最初は不愉快そうに顔をしかめていたホロだったが、酒を一口飲むとその表情が途端に緩む。
「…これは…」
「…この間の大儲けの礼だと思ってくれ。」
「ふむ……ならば、遠慮なくいただこうかの」
ホロはそう言って器の中身を一気に飲み干した。
「いい月だ。今夜は飲もう。」
ロレンスがそう言ったのを聞いてホロが空を見上げると、そこには、白銀に光る満月があったのだった。







次の日の朝ホロが二日酔いで動けなかったのは言うまでもない。









































































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