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偉人伝の嘘:グリム

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「国中を歩き回って話を採取した」というグリム兄弟の主張は全くの嘘

グリム兄弟は童話集を作る際、国中を歩き回って話を採取したりはせず、
少数の人々、それも上流階級の人々から
伝え聞いた話を彼らの童話集に載せた。

しかもグリム達はこの事実をひた隠しにしたばかりか、
積極的に嘘をついてごまかそうとした。

さらにグリム等は、彼らの集めたメルヘンのほとんどが
ドイツで採取されたものだと述べているにも係わらず、
兄弟は、フランス人ペローが作った童話集から
かなりの数の話を写している。
(例えば有名な「赤ずきんちゃん」はその一つ)。

グリム達はメルヘン提供者が誰なのかを秘密にした。
しかし死後発見されたメモに書かれた人名は
ほとんど中産ないし上流階級の女性であった。

この事実を隠すのに、彼ら自身はもちろん、
その息子も加担した。

例えばメモにある「マリー」という女性について
ヴィルヘルム・グリムの息子ヘルマンは、
ヴィルヘルムの妻の実家で家政婦をしていた
戦争未亡人の「マリーおばあさん」の事だと述べていた。

しかしグリム学の権威レレケが調べた所によれば、
マリー本当は中産階級の家に育った教養のある女性で、
当然家政婦などしているはずもなかった。

しかもマリーはフランス系の人間でフランス語が堪能だった。
つまり彼女から聞いた話が生粋のドイツの話であるはずも
なかったのである。

グリム兄弟は基本的に童話の情報提供者を明かさなかった。
唯一グリム兄弟が直接名前を明かしている提供者である
フィーマンについても兄弟は嘘をついている。

彼等はその著書『子供と家庭の童話』初版第二巻の序文で、
フィーマンはドイツの「カッセル近郊のツヴェールンの農婦」で、
それゆえ彼女から採取した話は
「生粋のヘッセン(=ドイツの一地方)の話とみなす事ができる」
と述べているが、この記述は全く間違っている。

彼女は生粋のドイツ人などではなく、フランス系ドイツ人だったので、
彼女から聞いた話が生粋のヘッセンの話であるはずがなかった。

しかも彼女は農婦ですらなく、読み書きができる中産階級の人物だった。


レレケによれば、「グリム兄弟はメルヘンを求めて
田舎を回る事は一度も無かったし、
単純素朴な人びとのところへ行く事さえしなかった。
兄弟はほとんどいつも、メルヘン提供者に、
自分の所にところへ来てもらっていた。
そうこうするうちに、上流階級の、雄弁な、教養のある、
若い女性達に出会ったのである」。



「集めた童話に手を加えていない」というグリム兄弟の主張は全くの嘘

グリム兄弟は彼らの童話集に載っているメルヘンに関して、
「話の枝葉末梢にいたるまで、何一つ手を加えたり、
粉飾したり、変更したりしてはいない」と童話集に書いているが、
これは真っ赤な嘘である。

実際彼等は版を重ねる毎に話を書き直して行った。

例えばグリム童話の冒頭を飾る『カエルの王さま』の書き出しは、
版を重ねる毎に伸びて行き、
最終的に彼らの最初の草稿の3~4倍程度になった。

また彼らは彼らの童話集を、上流階級に評判がよい上品なものにする為、
版を重ねる毎に、性的な匂いのする描写を徹底的に消して行った。

さらに版を重ねる毎に女性の登場人物からセリフを奪い、
どんどんと無口にしていった。



グリム童話は残酷描写だらけ

しかも彼らは、版を重ねるにつれ残酷描写をどんどんと増やしていった。
前述のようにグリム童話は伝承に忠実なわけではないので、
残酷描写が多いのはグリム兄弟自身の趣味か、
でなければ読者の趣味かのどちらかである。

例えば『フィッチャーの鳥』では、大きな血だらけのタライと、
その中に転がる細切れにされた人間の死体がでてくる。

有名な『灰かぶり(シンデレラ)』にも、かかとを切り取り、
「血が足から湧き出て、白い靴下の上まで真っ赤に滲んで」いたと
書かれた上、ラストでは主人公の義理の姉たちは鳩に両目をえぐられる。

『白雪姫』でも悪いお后は、真っ赤に焼いた鉄の靴を履かされて
死ぬまで踊り続けるという罰を受ける。

『盗賊のお嫁さん』にいたっては、
「盗賊達は女の子の死体から服を剥ぎとり、
テーブルの上に寝かせ、きれいな体を細切れにして、
その上に塩を振りかけ」、指輪を奪う為、
「斧をとって、指を切り落と」す。

そして切られた指が高くはねて、
樽の後ろに隠れてがたがたと震える主人公の膝の上に落ちるという、
実に生々しい描写がなされている。

グリム童話には人肉を食べる話すらあり、『ねずの木の話』では
継母が継子を殺し、スープに煮込んで、帰宅した夫に食べさせるし、

『白雪姫』でも白雪姫の継母(もとの話では実母)が、
白雪姫のものだとされる肺と肝臓を食べる。

こうした話は例外的なものではなく、グリム童話のいたるところに
このような残酷描写が散見されるし、
中には残酷描写のみを目的とし、
話らしい話が無いものも複数含まれている。

もっとも、グリム童話集の残酷描写の責任をグリム等のみに
押しつけるわけにはいかない。

当時の読者から、グリム童話集が残酷過ぎるという批判は
こなかったし、民衆の間に伝承されていた物語にも残酷描写が
散見され、例えば『赤ずきん』の原型となった民間伝承でも、
狼は殺されたお婆さんの肉を喰らい、血をすする。



参考文献:
、鈴木晶、講談社現代新書、1991年。
「グリム童話」 野村滋、ちくま学芸文庫、1993年。



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