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Lを継ぐ者/あなたがいるから - (2010/09/05 (日) 19:38:47) のソース
*Lを継ぐ者/あなたがいるから ◆7pf62HiyTE 『ところで――具体的な行動については何も決まっていないとのことですが――』 「いや、一応幾つかは考えているよ――」 今後の行動方針は幾つか浮かんでいる。 まず、当初の予定通り結界を破る手段の模索――前述のプランがほぼ潰れたとはいえ、諦めたわけではない。 まだ見落としている何かがあるかも知れない、それを見つける為にも今後もジュエルシードや夜天の書等ロストロギアを集めていった方が良いだろう―― 次に首輪の解除――元々Lが行う筈だったそれをユーノが行うのだ。 幸か不幸かユーノの手元には首輪が1つある。このまま工場かスカリエッティのアジトに向かい解析を行うのも1つの手だ―― 他に仲間達との合流もある、その為には人が集まっているであろう市街地やホテル・アグスタといった施設に向かう必要があるだろう―― 「だけど、幾つか懸念があるんだ、まずはこれ」 と、後方にある車庫を指す。残り人数が15人以下にならなければ開かない筈の車庫である。 『残り人数は19人――後4人死亡すれば開かれる筈ですね』 「そう、勿論放送を聞かない限り正確な人数は把握出来ない。でも、逆を言えば放送を聞けば人数は把握出来るという事なんだ――」 『恐らく次の放送で4人呼ばれる可能性が高い――つまり』 「次の放送直後、ここに向かう参加者が現れるという事だね 立て札そのものはもう読めない様になっている、だけどその前に誰かが読んでいる可能性は十分にあるよ―― その人物が殺し合いを止めようとしているなら良いんだけど――もしも逆だったら――」 車庫内にある『何か』――それが何かは現状不明ではあるが、15人以下と指定している以上状況を変える物である可能性は高い―― 殺し合いを止めようとする者が手にすれば脱出の切り札もしくは抑止力と成り―― 優勝を目指す者が手にすれば他の参加者を一網打尽に出来るバランスブレイカーに成る―― そして残り人数は19人―― 今現在も参加者が減少している事を踏まえるならばその封印が解かれるまで後僅かであり、既に解かれている可能性もある―― その扉が開かれる瞬間は確実に迫っているのだ―― 「出来れば僕達が手に入れたい所だけど、正確な死者の人数を把握出来ない以上手を出せるのは早くて次の放送後――」 故に、確実に中身を手に入れるならば次の放送の時にもこの場所にいる必要がある―― 6時間で戻って来なければならない以上、この場合は行動範囲が大幅に絞られる事になる―― 「でも――それでなくてもこの12時間は殆ど行動出来ていない――これ以上のんびりしている時間はない――」 『しかし、この中身を殺し合いに乗った者に奪われるのは避けたい所――』 「判断に迷うのが本音だね――だけど、気になるのは他にもあるんだ――」 ここでユーノは今更ながらにチンクの考えていたプランを語る―― ユーノがルーテシアと行動を共にしていた時にチンクと明日香と合流していた際に彼女が行おうとしていたプランだ―― とはいえ、あの時は『脱出の為にレリック、聖王の器を見つけ出す』というあまりにも断片的な事しか語られておらず、 またこの時のユーノはチンク達を別の意味での誤解や、ある意味ではオイシイオモイをしていた為、その事について深く考えてはいなかった―― 故に、この瞬間までその事を語らなかったのだ―― 『レリック、聖王の器――チンクが考えていたのは――』 「そう――さっきJS事件の事を聞いたお陰で僕もチンクが何を狙っていたのかがわかったよ。 彼女はゆりかごを起動して脱出に使うつもりだったんだ―― だけど――そのプランも正直厳しいと思う――」 ユーノがチンクのプランでは無理だと判断した理由―― 1つはレリックと聖王のゆりかごに何かしらの細工が施されている可能性だ――やはり、ジュエルシードと同様、殺し合いに使いやすく、脱出には使用出来ない様に細工されていると考えて良い。 もう1つはゆりかごで結界を破る程の出力を引き出せるという確証が無いという事だ―― 「とはいえ、話を聞いた所レリックにしてもゆりかごにしても放ってはおけないね――」 『ゆりかごに向かうという選択も視野に入れるという事ですね――レリックの方は――』 「確かあの時は病院に反応があったらしいけど、流石にもう持ち出されている可能性が高いから――何処にあるかは正直わからないよ――」 『この地に幾つあるかはわかりませんが放置は出来ませんね――』 「それに、明日香の持っていた夜天の書とジュエルシードも――」 前述の通り、現状ジュエルシードと夜天の書では脱出は不可能と判断している。 だが、仮に制限されていてもその力が驚異的である事に全く変わりはない。 決して放置して良い代物ではないのだ。 『Ms.明日香は死亡したという話ですが――』 「裏を返せば、明日香を殺した人物が今ジュエルシードと夜天の書を持っているという事だよ――同時にその実力はあの状態の明日香以上――」 『更にジュエルシードと夜天の書が加わるならば――厄介な事になります――』 「出来れば、なのはかはやてが手に入れてくれれば良いけど――」 『その場合、Ms.なのはかMs.はやてがMs.明日香を殺したという事になるのですが――』 「いや、そういう意味じゃないから。だけど――実の所、それについて気になる事があるんだよね――」 『まだ何か――』 「明日香はあの時、何を願ったのか――僕達を皆殺しにする事が目的ならばその為に必要なのは――」 『力――』 「うん――きっと明日香は力を求めたと思う――それで―― 決して触れては成らない領域に手を出したのかも知れない―― バルディッシュ――あの時の明日香の姿覚えているよね――」 『ええ、忘れやしません。あの姿は色こそ違うものの騎士甲冑自体はリインフォースのものと殆ど同じ――声も何処か似ていました――』 「声に関しては只の偶然だと思うけど――そもそもバリアジャケットは使用者のイメージによるものになる筈―― 例えば僕がレイジングハートを使ったからといって僕がなのはのジャケットを身につける筈はないし、 ブレンヒルトのジャケットもフェイトのものにはならなかったよね――」 『Ms.ブレンヒルトがマスターのバリアジャケット身に着けたら自分は彼女に蹴り壊されていましたよ――特にソニックフォームの状態のものは――』 「だから――明日香が夜天の書を使ったからといってリインフォースの騎士甲冑を身に着けるなんてまず起こらない筈なんだ――」 『ジュエルシードの力によるものでしょうか――』 「じゃあ、ジュエルシードは何処からリインフォースの騎士甲冑を持ち出しているの?」 『夜天の書――いえ、幾らリインフォースの力を受け継いだとはいえ、あれ自体は管制人格や人工知能を有していない筈――』 「そう、普通に考えるなら明日香のイメージが優先されるべきなんだ。多分、白い色が彼女のイメージだよ――どうして白なのかはわからないけど――」 『まさか――』 「そう――ジュエルシードが明日香に力を与える為に夜天の書を闇の書の頃に戻して――いや、改変した可能性があるんだ――」 『言葉を返すようですが、ジュエルシード1個分の魔力分でなおかつ制限のある状況だから対処は可能だと口にしたのはMr.ユーノですよ? 大体、細工を施されていると先程話したばかりではないですか――』 「うん――正直な所、これは考えられる最悪の仮説で僕自身それが起こる可能性は非常に低いとは思っている―― 妄想と言っても良い―― でもね―― 仮に、明日香の願いに答えてジュエルシードがその力の全てを使って夜天の書を改変したとしたら―― 改変された夜天の書がジュエルシードに施された細工や制限を全て解いたとしたら―― そしてそれらから解放されたジュエルシードが更なる力を夜天の書に与えたら――」 『可能性が低いとはいえ0ではないのが恐ろしいですね――』 「それだけじゃない、明日香は力を求めていた―― もし、改変された夜天の書が明日香の願いに答えて周囲にある力を全て蒐集したとしたら――」 『かつての闇の書以上の脅威となりますが――本気でそれが起こると思っているのですか?』 「言ったはずだよ、妄想といっても良いって――」 『しかしMs.明日香は既に死亡しています――』 「だけど、その瞬間まではずっと明日香は持っていた。 既に修復不能なまでに改変された可能性はあるし、ジュエルシードの力が今現在も改変し続けている可能性も否定出来ない―― それに、もし次の持ち主がその力を不用意に使えば――」 『しかし、流石に最悪の事態となる前にプレシアが対処すると推測出来ますが――』 「うん、多分その事態に関しては想定済みだと思うし、仮に起こったとしても対処の用意はあると思う。 さっきも言ったけど、ジュエルシードと夜天の書を同時に使わせる事は視野に入れていただろうからね――」 『――しかし、こうやって話してみるとこちらが何を考えても 『プレシアは全てお見通しです、対策済みです、無駄です』 という結論に陥ってしまうのですが。先程から全てこの結論に帰結していますよ』 「うん、正直な所、どんな異常事態が起こっても 『プレシアならば対処出来ます』 というオチになってしまうんだよね――」 『ですが――何にせよ夜天の書とジュエルシードも放置できませんね――』 「出来れば今誰が持っているのかだけでもわかれば良いけど――」 と言いながらユーノは地図と名簿を眺める。次の行動を思案しているのは見て取れる。 だが――バルディッシュにしてみればそれが明らかに奇妙であった―― そして―― 『Mr.ユーノ――貴方は何を考えているのですか――?』 遂に、バルディッシュはユーノに彼の真意を問いかけたのだ―― 「何って、これからどうするかについてだけ――」 『そういう意味ではありません、貴方が真剣に今後を考えているのは理解出来ます――しかし―― 何時もの貴方らしくありません――』 その問いに対し、 「何時もの僕らしくない――それはどういう意味――?」 『先程の放送で、貴方が行動を共にしていたMs.ルーテシア、Ms.明日香、Ms.チンクの名前が呼ばれました―― マスターやMs.シャマルの名前も―― そして――貴方が信頼しているMr.Lの名前も―― 大切な仲間の名前が数多く呼ばれました―― 只のデバイスでしかない私でもマスターの死にショックが無いと言えば嘘になります―― ですが貴方は――それに対しあまりにも淡々としています―― 先程の放送ではMs.ブレンヒルト達の死に対し悲しみを見せていたのに対し―― 今回はその様な様子が殆ど見られません―― 何時もの貴方からは考えられないという事ですよ――』 「バルディッシュ――君こそ妙に饒舌だね――何時もの君からは考えられないよ――」 『自分でもそう思います――もしかしたら、Ms.ブレンヒルトの影響かも知れません――』 「ブレンヒルトのお陰か――確かにそうかもね――」 『それで――貴方の方はどうなのですか――』 何時ものバルディッシュならば気付いても指摘しなかっただろう。 前述の通りインテリジェントデバイスはストレージデバイスと違い人工知能を有している。 人工知能を有しているからこそ、インテリジェントデバイスは学習し――成長すると言っても良い。 もしかすると――ブレンヒルトと行動した事によりバルディッシュは成長したのかもしれない。 その成長がユーノの異変を指摘させたのだろう―― 「――悲しいに決まっているよ―― 悲しくないわけなんて無いじゃないか――」 その声は酷く震えていた―― 「今すぐにでも大声を挙げて泣きたいよ――」 その表情は今にも泣き出しそうであった―― 「だけど――僕には足を止める事も、逃げる事も許されない―― こうしている間にも誰かが殺されているかもしれないんだ――」 『それは理解出来ます――ですが――』 ユーノの言葉は一見正しい―― 泣いている暇があるなら出来る事をやるのは当然の事だ―― だが――何かがおかしい―― ユーノの言葉はまるで―― 『別にMr.ユーノがそこまで気負う事では無いのではないでしょうか? Ms.なのはやMs.はやてもこのデスゲームを止めようとしている筈です。 もう少し彼女達を頼っても――』 「違うんだ――違うんだよバルディッシュ―― 僕は気付いたんだ――いや、最初から気付かなきゃいけなかった事なんだ―― 僕が原因なんだ―― 僕が――全ての原因だったんだ――」 このデスゲームを行っている人物はプレシア・テスタロッサである。 勿論、現時点で彼女が本物かどうかは不明であるし、彼女が黒幕とは言い切れない。 だが――表に出ているのは確かに彼女だ。 つまり、真贋はともかくとして彼女の存在が大きなウェイトを占めている事に変わりはない。 そして――彼女の存在を考えるのならば―― PT事件――プレシア・テスタロッサ事件を無視する事は決して出来ないのはおわかりだろう。 PT事件の概要そのものはプレシアがジュエルシードを違法に使った事による次元災害未遂事件。 その彼女の為にジュエルシードを集めていたフェイト・テスタロッサは重要参考人として罪に問われた。 その罪は幽閉数百年以上の重罪。 実際はリンディ・ハラオウン達の弁護やフェイト自身が管理局の嘱託魔導師となった事で実刑ではなく保護処分になったが―― どちらにしてもそれは決して小さい罪ではない事はおわかりだろう。 だが――そもそもの前提として―― プレシア・テスタロッサがジュエルシードに手を出そうとしなければ――PT事件は起こらなかったのではなかろうか――? 「そう――プレシアがフェイトにジュエルシードを集めさせなければ―― ジュエルシードがなのはの世界に散らばったりしなければ―― いや――僕の一族が――僕がジュエルシードを見つけたりしなければ―― PT事件は起こらなかったんだ!」 そもそもジュエルシードはある遺跡から発掘された物でそれが輸送中の事故でなのは達の世界にばらまかれた。 そして、発掘をしたのはスクライア一族で――現場指揮を執っていたのは当時9歳のユーノだった。 言い換えればこういうことだ―― PT事件の切欠を作ったのはユーノ・スクライアだと―― つまり――このデスゲームの原因はユーノという事である。 少々飛躍しすぎていると思う方もいるだろう。 だが、IFの話に意味が無いとしてもユーノ達がジュエルシードを発掘したのが全ての始まりだという事は確かな話である―― 『しかしスクライア一族はジュエルシードを発掘しただけ――Mr.ユーノには罪は―― それに、Mr.ユーノが発掘しなくても誰かが発掘したでしょうし、プレシアが自力で見つけ出していた可能性も――』 「それだけじゃ無いんだ――気付いているかい―― 参加者の殆どはそれぞれの平行世界のなのは達、もしくは彼女達の仲間や関係者だという事に――」 『確かに参加者の多くはMs.なのはやマスターの仲間達や関係者でしたし、 Ms.ブレンヒルトも彼女の世界のマスター達を知っていました。 確かMr.キース・レッドもMs.ルーテシアを知っていた様ですが――』 「そしてLも僕の世界のはやて達が保護した―― 明日香に関してはわからないけど、彼女もなのは達を知っている可能性は高いと思う――」 『マスター達の関係者が連れてこられているとしてそれがMr.ユーノと何の関係があるのですか?』 「大ありなんだ――その全ての始まりは何処にあるのか―― PT事件――それが全ての始まりだったんだ。 僕が――ジュエルシード集めになのはを巻き込んだりしなければ―― なのはをこの道に引きずり込む事もなかったんだ―― それさえなければ――ブレンヒルトやL――明日香達をこのデスゲームに巻き込む事は無かった筈なんだ! ジュエルシードを早く集めなきゃと焦ってなのは達に助けを求めたりしなきゃ良かったんだ―― 最初から僕1人でやろうとせず管理局に助けを求めれば良かったんだ―― 僕が――僕が―― 僕がみんなを巻き込んだんだ!! 僕がなのはやフェイト、はやて達にブレンヒルトやL、明日香やルーテシアを!! そして僕の知らないなのは達の仲間を!! みんなを殺したんだ!! 僕が――!!」 それに気付いたのは何時だったのだろうか? いや――もしかしたら最初から気付いていたのかも知れない―― ずっとそれについて向き合おうとしていなかっただけなのかも知れない―― 早々にルーテシアと出会ったから彼女を守る事を優先し―― 彼女達と別れた後はずっとブレンヒルトが傍にいた―― 仲間がいたからその事と向き合うのを先送りにしていたのかも知れない―― 向き合う切欠となったのは明日香がジュエルシードを発動し牙を向けた時―― その対策を考える為にユーノはPT事件の事を思い返していた―― そう――その時には全ての切欠が自分という事に薄々気付いていた―― だが――その時のユーノは敢えてそうは考えないことにしていた―― 仮になのは達にそれを言った所で―― 『それはユーノ君のせいじゃないよ』――そう答えるのは容易に想像出来た―― だからこそ、過去を悔やむよりも先の事を考える事にしたのだ―― 何よりも優先すべきはルーテシアと明日香の説得―― それを考えるべきだと自分に言い聞かせ続けたのだろう―― しかし――先の放送であまりにも多くの人が死んだ事が伝えられた―― ルーテシアや明日香、フェイトやシャマルにL―― 彼女達の死がユーノに重くのしかかる―― 全ての切欠が自分にあると気付いた以上―― その重圧は――15歳の少年には重過ぎたのだ―― 何よりも重いのは――誰もユーノを罪に問えない事だ―― ユーノがした事は結局の所、ジュエルシードを見つけた事とジュエルシードを集める為になのはに助けを求めた事―― それはなのは以外の誰であっても『ユーノのせいではない』と答えるだろう―― では――決して問われる事の無い罪を犯した者は―― 一体、誰が裁き――赦すのだろうか――? 何時しかユーノの目には涙が溢れ――その声には強い感情が込められていた―― 「だから僕に止まる事は許されない―― 死んでいった皆の為にも――いや、このデスゲームに巻き込んでしまった全ての人の為にも―― 僕は――絶対にプレシアを止めなければならないんだ―― それは全ての切欠になった僕がやらなければならない事なんだ――」 そういう事だったのだ。 ブレンヒルト達の死を気にしていないわけでも悲しんでいないわけでもなかった。 むしろその逆――ユーノは彼女達の死に強いショックを受けていた。 そして、その元凶が自分にあると気付いているからこそ―― 何としてでもプレシアを止める為に淡々と前に進もうとしたのか―― 深い悲しみを心の奥底に抑え込んだ上で―― 『ユーノが悪いわけではない』、『ユーノ1人の行動で全ての人間の運命が決まるなどおこがましいにも程がある』等という慰めが出来ないわけではない―― しかし、それでは意味はない――ユーノの行動が全ての切欠というのは確かな事実なのだから―― 故に――ユーノがジュエルシードを見つけなければPT事件は起こらず、 なのは達も魔法と関わることなく彼女達がこの殺し合いに巻き込まれ死ぬ事も無かったというのは正しい―― だが――バルディッシュはそれを全て認めるわけにはいかない―― 『Mr.ユーノ――貴方は大事な事を忘れていますよ――』 「――何を?」 『確かに貴方がジュエルシードを発掘しなければPT事件も起こらず、Ms.なのはも魔法と関わる事は無かったでしょう。 きっとMs.ブレンヒルト達も殺し合いに巻き込まれる事は無かったでしょう――』 「そうだよ――」 『ですが――それがあったからこそマスターとMs.なのはは出会えた―― そして、マスターとMs.なのはは友達になれたのですよ――』 「それは――」 『それだけではありません――闇の書事件―― あの場にいた仲間が1人でも欠けていればMs.なのは達の街は滅び去り―― 闇の書は再び転生を繰り返し悲劇を繰り返していたかもしれません―― つまり――Ms.なのはがいなければそうなっていたという事―― そして――Ms.なのは達がその後管理局に入ったからこそ救えた多くの人々がいます―― それは全て――貴方とMs.なのはの出会いが始まりでは無いのですか?』 「バルディッシュ――」 『同時に――それぞれの平行世界でもその出会いがあったからこそブレンヒルト達がマスター達と出会えた―― Mr.ユーノ――貴方は彼女達の出会いまでも否定するというのですか―― 少なくても――Ms.ブレンヒルト達はマスター達と出会えた事を否定したりはしないでしょう―― 確かに――貴方の行動が多くの人々を死なせる結果を引き起こしたかも知れません―― ですが――貴方の行動のお陰で多くの人々を出会わせそして救った結果もある事を忘れてはいけません――』 ユーノの行動の全てが悪い方向に働いたわけではない―― もし、なのはが魔法と関わる事がなければフェイトと出会う事も無く、フェイトはプレシアの人形として使い捨てられていただろう―― なのは達がいなければ闇の書はなのは達の世界を滅ぼし再び転生を繰り返す、封印出来たとしてもはやて達を救う事は出来なかっただろう―― そして彼女達がいなければ彼女達によって救われる多くの命が失われていた――JS事件の結末も最悪の結果を迎えていたかも知れない―― 同時に――ユーノとなのはの出会いが無ければそれぞれの世界でなのは達がブレンヒルト達と出会う事も無かっただろう―― 『貴方が――いるからですよ――貴方がいるから全てが始まった――』 「そうだね――ありがとうバルディッシュ――僕が間違っていたよ――」 そこには――ほんの少し笑みを浮かべる若き司書長がいた―― 『と、実際の所状況は何も変わっていませんが――』 「とりあえず、僕を除いた18人の内で誰が味方かを整理しないと――」 その内、相川始、アーカード、アレックス、アンジール・ヒューレー、泉こなた、ヴァッシュ・ザ・スタンピード、エネル、 金居、キング、天道総司、柊かがみ、ヒビノ・ミライの計12人とは出会っていない為、敵か味方かすら不明瞭。 残り6人の内、なのは、はやて、ヴィータはユーノも知る信頼出来る人物だ。 ヴィータ辺りは片方のはやてを生き返らせる為殺し合いに乗る可能性は0では無いものの、魔法に関する分野でこの3人は信頼に値すると言って良いだろう。 「特にはやてだったら万が一夜天の書に異変が起こっても対処出来る可能性が高いし、3人の中で一番ジュエルシードに対する対処も出来ると思う」 次にスバル・ナカジマ―― 「確か、空港火災でなのはが助けた子だよね」 『ええ――あの立て札を破壊したのは彼女の可能性が高いでしょう――』 車庫前にあった立て札は原型を留めない程粉々に砕かれていた。 殺し合いに乗った参加者が読む事を避ける為に行ったのは明白ではあるが、普通に考えて原型を留めない程粉々にするのは手間が掛かる。 「だけど彼女の能力を使えば――それは容易だと――」 しかし、スバルには振動破砕という対人対物に対し驚異的な力を発揮するISがある。直接触れなくても相当な威力を発揮するそれならばここまでの破壊は可能ということだ。 『それとは別にしても、JS事件後から連れて来られているならばMs.なのはやMs.はやてに負けるとも劣らない実力を持っています――』 「問題はギンガ達が死んだ事で殺し合いに乗る可能性が0じゃないという事だね――」 『Exactly――彼女は強いからその可能性は低いとは思いますが――』 味方ならば頼もしい――が、敵に回って欲しくないのが彼女であった―― そしてクアットロ―― 「彼女の事は確かチンクも話していたよ――確か彼女の姉だったね――」 『その通りです――が、彼女は一番の危険人物です』 JS事件において、スカリエッティの戦闘機人の半数以上は更正プログラムを受け管理局に協力する選択を選んでいる。 だが、ウーノ、トーレ、クアットロ、セッテの4名はその選択を選ばず収監されている。 とはいえ、ウーノの場合はスカリエッティに従う以外の生きる理由を持たないものだったし、 トーレとセッテは共に敗者としての矜持によるものであった―― が、クアットロはそもそも人間達に譲歩するという発想が無いという事によるものだった。 同時に、JS事件においてもスカリエッティ達が次々捕まった状況でも冷徹にその場から撤退するという行動を取った。 つまり――彼女の性格上、他者を助ける為に戦うという事がまず有り得ないのだ。 仮にチンクやディエチが死んでも彼女にとっては手駒を失った程度の事でしか無いだろう。 「ということは、当然なのは達は彼女に対して警戒しているって事だよね」 『ええ、JS事件を知っている者ならば皆――』 「そして、彼女は頭が切れる反面、直接的な戦闘力はそれ程高くない」 『能力さえわかっているならばMr.ユーノでも対処は可能です』 「だったら彼女と接触してみる価値はあるね」 『Ms.チンクの事が気に掛かるなら止めておくべきです、彼女の死に気を止める様な人物では――』 「だからだよ、彼女が此方に協力してくれる可能性は――高いよ」 客観的に考えればクアットロは誰もが警戒すべき人物である。 だが、参加者に管理局の人間が数多いならば彼等を通じてクアットロに対する警戒を強める者は多くなる。 クアットロを保護しようとする者は彼女と同じ側にいるチンクやディエチ、そしてルーテシアぐらいのものだろう。 つまり、最初からクアットロには敵が多いという状況ということだ。 更に彼女自身の戦闘能力はさほど高くはない――ISのシルバーカーテンにより翻弄される可能性は高いが、身体能力は普通の人間より強い程度―― 能力にさえ気を付ければ対処は十分可能だ。故に彼女単独で勝ち残るのは非常に厳しいという事になる。 同時に――頭の回る彼女であれば早々にその事実に気が付くはずだ。 ならば彼女はどう動くだろうか、集団に入り込もうとする筈だろう。 かといって人知れず他者を殺したり集団を瓦解させたりはまずしない、 そういう事が出来るのは他者に知られないという前提が必要だからだ。 他者から警戒されている状況でそれを行えば真っ先に疑わせすぐさま窮地に陥ってしまう、 その事が理解出来ない彼女ではない、孤立する危険性のある愚行を考え無しにするのはまず有り得ない。 そして残り人数は19人、ここまで状況が熾烈ならば彼女自身是が非でも自身の味方――手駒を確保しようと躍起になるだろう。 故に――彼女自身不本意ながらも、管理局に協力する事も辞さない可能性は高いという事だ。 『成る程――しかし、先の放送で主催者側にスカリエッティがいる事はほぼ確実。彼等が彼女に参加者を殺す役割を与えているという可能性はあるのでは?』 バルディッシュの仮説はクアットロが主催者側の人物という事だ。 ユーノの見立てではチンクは主催者側にスカリエッティがいる事を知らなかったが、クアットロまでそうである保証はない。 主催者側にいるスカリエッティ達がクアットロに参加者を殺す役割を与えた可能性はある―― 「0では無いけど――その可能性は低いよ」 しかし、ユーノはそれを否定する。 その理由は至極単純、クアットロにその役割を与える旨みが殆ど無いからだ。 彼女にその役割を与えようが与えまいが、周囲の警戒が強い事に変わりがない。 状況的には圧倒的に不利なのだ――せいぜい支給品を若干優遇させる程度の事しか出来ないだろう。 また、それ以前に彼女は性格的にも能力的にも最前線での戦いには全く向いていない。 彼女は命が懸かった状況ならば逃走を選択するはず―― 故に彼女にその役割を与える事が不自然なのだ。 それならば最初からクアットロを参加させずトーレかセッテを参加させてその役割を与えれば良いし、 もしくはチンクかディエチにその役割を与えれば良かっただろう。 故に――クアットロが主催者側の人間という可能性は低いという事だ。 「勿論、警戒すべき人物なのは否定しないよ――でも、それは他の皆にも同じ事が言えるよね」 『Yes――』 「むしろ――僕としては、彼女の知恵を借りれるならば借りたいと思うんだ。 さっきも言ったけど恐らく生半可な作戦はほぼ確実にプレシアに読まれている―― 首輪の解除にしても単純にそれを行えるかは正直微妙――」 『その通りですね――その為に危険人物である彼女の力も借りたいと?』 「多分――L自身も首輪解除の為に戦っていた―― でも――そのLもプレシアの前には為す術無く散っていった―― Lは本当に優秀だよ――この地にいる誰よりも優秀な探偵だ―― 残念だけど――僕ではLを越える事は決して出来ない―― いや――きっとそれは他の誰にも無理な事だと思う―― でも――一人では越える事が出来なくても―― 二人なら――Lに並べる、二人なら――Lを越せる 僕はそう思っているよ――だから、仲間達の力を集める事が出来れば――」 『Mr.Lが敗れたプレシアに――勝つ事が出来るというわけですね』 「その通り――だからまずは仲間達と何とかして合流しないとならないんだ。なのはやはやて達とね――」 その瞳には明らかな強い決意が込められていた―― 同時に――先程までに見られた追いつめられている様子は既に無い―― 「――ただ、何処に向かうかはまだ決まってないんだよね――どうしたら良いだろう?」 『禁止エリアを踏まえるならば、市街地方面から此方に向かう参加者が現れる可能性は高いでしょうが――』 今回禁止エリアに指定された1つの場所が地上本部のあるE-5、既に隣接するE-6も禁止エリアになっており市街地から離れる参加者は出てくるだろう。 「この配置だと、ゆりかごに意識を向けさせようという感じもあるね」 さらにH-6とI-7が指定された――既にH-4が禁止エリアとなり西側が海に囲まれている事を踏まえ、ループを使わない限り移動ルートは大幅に絞られる。 つまり、そこからゆりかごを意識させる狙いも十分にあるという事だ。 「多分、なのは達もゆりかごの事には気付くはず――そうだゆりかごと言えば――」 それは、先程はどうしても聞けなかった事―― 「バルディッシュ――そのJS事件で僕はなのはの――力になれたかい――?」 『ええ、自分の世界のMr.ユーノは――Ms.なのはやマスター達の力になれましたよ――』 「そうか――」 『詳しい事を話しますか?』 「いや、それだけで十分だよ――」 自分がなのは達の力になれた――それがわかっただけでも少年の心は十分に満たされていた―― 『Mr.ユーノ、確かまだ1人残っていましたね』 「ヴィヴィオ――確かJS事件でなのは達が保護した女の子だったね」 『ええ、聖王の器でもあり、ゆりかごを動かす鍵でした』 「彼女も探さないといけないね」 『お願いします――きっとマスターも『ヴィヴィオを助けてあげて』と願っている筈です』 「フェイトの声が聞こえて来そうだよ――でも、僕彼女の事を全く知らないんだよね」 『確か、声がMr.ユーノと似ています』 「僕は男だよ」 『しかし似ています』 「全然ヒントになっていないよ――」 【1日目 夜】 【現在地 E-7 駅・車庫の前】 【ユーノ・スクライア@L change the world after story】 【状態】全身に擦り傷、腹に刺し傷(ほぼ完治)、決意 【装備】バルディッシュ・アサルト(待機状態/カートリッジ4/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【道具】支給品一式、ガオーブレス(ウィルナイフ無し)@フェレットゾンダー出現!、 双眼鏡@仮面ライダーリリカル龍騎、ブレンヒルトの絵@なのは×終わクロ、浴衣、セロハンテープ、首輪(矢車) 【思考】 基本:なのはの支えになる。ジュエルシードを回収する。フィールドを覆う結界の破壊。プレシアを止める。 1.何処へ向かおうかな? 2.なのは、はやて、ヴィータ、スバル、クアットロ等、共に戦う仲間を集める。 3.ヴィヴィオの保護 4.ジュエルシード、夜天の書、レリックの探索。 5.首輪の解除。 6.ここから脱出したらブレンヒルトの手伝いをする。 【備考】 ※バルディッシュからJS事件の概要及び関係者の事を聞き、それについておおむね把握しました。 ※プレシアの存在に少し疑問を持っています。 ※平行世界について知りました(ただしなのは×終わクロの世界の事はほとんど知りません)。 ※会場のループについて知りました。 ※E-7・駅の車庫前にあった立て札に書かれた内容を把握しました。 ※明日香によって夜天の書が改変されている可能性に気付きました。但し、それによりデスゲームが瓦解する可能性は低いと考えています。 ※このデスゲームに関し以下の仮説を立てました。 ・この会場はプレシア(もしくは黒幕)の魔法によって構築され周囲は強い結界で覆われている。制限やループもこれによるもの。 ・その魔法は大量のジュエルシードと夜天の書、もしくはそれに相当するロストロギアで維持されている。 ・その為、ジュエルシード1,2個程度のエネルギーで結界を破る事は不可能。 ・また、管理局がそれを察知する可能性はあるが、その場所に駆けつけるまで2,3日はかかる。 ・それがこのデスゲームのタイムリミットで会場が維持される時間も約2日(48時間)、それを過ぎれば会場がどうなるかは不明、無事で済む保証は無い。 ・今回失敗に終わっても、プレシア(もしくは黒幕)自身は同じ事を行うだろうが。準備等のリスクが高まる可能性が高い為、今回で成功させる可能性が非常に高い。 ・同時に次行う際、対策はより強固になっている為、プレシア(もしくは黒幕)を止められるのは恐らく今回だけ。 ・主催陣にはスカリエッティ達がいる。但し、参加者のクアットロ達とは別の平行世界の彼等である。 ・プレシアが本物かどうかは不明、但し偽物だとしてもプレシアの存在を利用している事は確か。 ・大抵の手段は対策済み。ジュエルシード、夜天の書、ゆりかご等には細工が施されそのままでは脱出には使えない。 |Back:[[Lを継ぐ者/Sink]]|時系列順で読む|Next:[[Aの残光/強襲ソルジャー]]| |~|投下順で読む|Next:[[Aの残光/強襲ソルジャー]]| |~|ユーノ・スクライア|Next:[[こなたとリインと男の娘]]| ----