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「残酷な神々のテーゼ(後編)」(2012/08/23 (木) 10:29:48) の最新版変更点
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*残酷な神々のテーゼ(後編) ◆RsQVcxRr96
キャロは走りながら考え込んでいた。
自分の隣を走っているのは同僚であるスバルの姉、ギンガ・ナカジマ。
一時は機動六課に出向していた事もあり、顔馴染みの存在ではあった。
だからこそ再会した時は本当に安心したし、心の底から嬉しかった。
しかし、そんな安心できる時間はすぐに終わってしまった。
突然の襲撃――そして逃避行。
正直キャロの精神は再び疲弊しかけていた。
それでもここまで必死に折れそうな心を懸命に支えてきている。
道すがらギンガは同行者のインテグラル卿について話をした。
インテグラル卿が死ねば、アーカードという化け物を止める術がなくなる事。
そうなればますます悲惨な状況になる事。
だから何としてもインテグラル卿を救わねばならない事。
ギンガがキャロに話した内容はそのような事だった。
(吸血鬼、アーカード……)
聞けば聞くほど恐ろしい化け物だ。
先程の電撃を放つ男も恐ろしいが、アーカードも同等の強さらしい。
桁違いな化け物が2人、いや実際はもっといるだろう。
そんな中で自分は何ができるのだろうか。
答えが出る訳でもなくキャロは今度の事を考えて、一層悩んでしまう。
「あれは、川!」
ギンガの声を聞いて目を前方へ向けると、確かに川が見えた。
今目指している場所はHELLSING本部。
インテグラルが勝手知ったる場所であり、そこなら治療ができるかもという事で目的地に定めていた。
つまりここで西へ進路を向け、橋を渡る必要がある。
「急がないとインテグラル卿が……行くわよキャロ!」
「え、あ……はい」
キャロは的確な判断を下して道を示してくれるギンガが少し羨ましかった。
それに比べて自分は何ができるのだろうと、知らず知らずのうちに自身を顧みてしまう。
自分がしている事と言えば、インテグラル卿のデイパックを背負ってギンガの後に遅れないように付いて行く事ぐらいだ。
なんだか少し情けないような気もした。
でも今はここが自分の居場所。
だからこそ全力で守りたい。
自分のポジションはフルバック――素早く動いて仲間の支援をするポジション。
全て機動六課で学んできた事だ。
今は十分に力になれなくても、自分にできる限りの事は頑張ろう。
キャロは心の中でそういう風に折り合いをつける事にした。
しかし神は残酷だった。
「――ッ! トライシールド!!」
「プ、プロテクション!!」
「――!!」
突然の襲撃だった。
天より漆黒の鎧を身につけた人物が手持ちの刃を振り落とし舞い降りてきた。
避ける間など無かった。
二人にできた事は咄嗟に防御魔法を展開する事だけだった。
刃と防御魔法が鎬を削り、程なく漆黒の戦士が反動を付けて少し離れた場所に着地した。
幸い今の間で直撃だけは免れたが、ギンガもキャロも今の攻防で相手の実力が並々ならぬ事を実感していた。
このままでは三人とも無事では済まない。
「キャロ、なんとか一瞬でいいからあいつの攻撃に耐えて。その隙をついて私が吹っ飛ばす」
「分かりました。やってみます」
即興で出されたギンガの提案は綱渡りのようなものだった。
だが二人に悩んでいる時間はない。
もう既に相手は攻撃の準備を終えたようだった。
――DRILL――
――TORNADO――
――SPINNIG ATTACK――
「プロテクション!!」
敵の攻撃は先程とは違って回転しながらのキックで、威力も上がっていた。
だがキャロも負けてはいない。
若干の猶予があったため先程とは違ってしっかりと防御魔法を展開する事ができた。
そのおかげでキャロ一人でも奇跡的に一瞬の均衡を生み出す事に成功していた。
(よし、これでギンガさんが敵に一撃を与えれば……)
おそらく敵の注意は自分のみに向いているだろうとキャロは確信していた。
つまり今は攻撃を仕掛けるには絶好の機会だ。
やっとギンガさんの助けになれる、自分の居場所を守る事ができる。
キャロはすぐに来るその瞬間は待ち望んだ。
――しかし……
(な、なんで!?)
時間にしては数秒にもなっていない。
だがギンガが攻撃を仕掛けるには十分な時間のはずだ。
それなのにまだギンガの攻撃はない。
もう防御魔法を維持するのも限界だというのに、何も起こらない。
「キャァ――ッ!!」
程なく防御魔法は破られて、キャロは地面に身体を打ちつけながら二転三転した。
対して漆黒の戦士にほとんどダメージはなく、無慈悲にも手に持った刃をキャロに向けていた。
二人の距離は僅か数歩というものだった。
(ギンガさん……なんで……)
キャロの心を埋め尽くすのはただそれだけ。
あそこでギンガが攻撃を与えていたならば、勝っていたのは自分達のはずだった。
いったい何が起こったのだろう。
心中に浮かぶ疑問に答えを求めて、キャロは傷ついた身体を動かして後ろを向いた。
「え?」
後ろ、つまり川べりには誰もいなかった。
慌てて周囲を見渡しても、ギンガの姿は見つけられなかった。
「うそ……?」
今度は痛む身体を起こして周囲をぐるりと見渡してみる。
やはりどこを見てもギンガの姿はどこにもなかった。
そしてキャロはもう一ついなくなっている人物に気付いた。
「インテグラル卿も……いない?」
ギンガに加えてインテグラルの姿もまたどこにもなかった。
今ここにいるのはキャロと素性の知れない襲撃者だけだった。
それ以外には誰もいない。
(なんで……なんで、ギンガさんとインテグラル卿が――!?)
そこでキャロは先程ギンガが言っていた事を思い出した。
曰く、アーカードを止めるためにもインテグラル卿は絶対に守り通さなければならないと。
そして現状キャロは一人取り残されて、ギンガとインテグラルの姿はない。
つまりは――
――ギンガはキャロを囮にしてインテグラルと共に逃げた。
そんな考えがキャロの頭をよぎった。
キャロはその考えをすぐに否定しようとした。
でも、それなら、なぜギンガとインテグラルがいないのか説明できない。
少なくとも数秒前までは確かにいたはずだ。
ではいなくなったのはその直後。
折しもキャロが必死で襲撃者の攻撃を防いでいる時だ――ギンガの提案に従って。
(そんな……そんな……ギンガさんは、ギンガさんは――!!)
もしも何かあったなら念話なり掛け声なりあるはずだ。
それもなくて忽然と姿を消したという事は、やはり――
「――私を囮にして……インテグラル卿を守るために、逃げた?」
確かに目の前の人物は二人掛かりでも勝てるかどうか不安な敵だ。
それなら優先順位を考えて囮で気を引いて、その間に守るべきインテグラ卿と安全な場所まで逃げる。
実に合理的な考えだ。
しかしキャロには信じられなかった。
あのギンガが自分に対してそんな事を相談もせずに行うなど信じられない、いや信じたくなかった。
だからキャロはこの場で唯一答えを返してくれそうな人物へ問いかけた。
「あの、私の後ろにいた二人は?」
問いかけられた漆黒の戦士は黙ったままだった。
表情は隠れていて全く分からない。
一緒にいるだけで不気味な存在だった。
今まで出会った危険な人物とはまた違ったものがあった。
だからこそほんの少し期待したのだが、それは外れだったようだ。
「倒れていた女と、紫髪の女なら――」
「え!?」
どういう風の吹きまわしか不意に答えが返ってきた。
キャロは返ってくる答えを大人しく待ちわびる。
「君と対峙した時に――」
キャロはその答えを待つ。
その答えが自分の望む答えであると信じて、最悪な答えでないと信じて。
「逃げられたよ」
「え?」
『逃げられた』と目の前の敵は言った。
ここで敵が嘘を言う理由はないだろう。
どうせこのままでは自分は殺されてしまうのだろうから。
つまり今言われた事は紛れもなく真実。
それが意味する事は疑いの余地もない真実。
そう言葉の通りの意味だ。
――ギンガ・ナカジマはインテグラル卿を守るためにキャロ・ル・ルシエを囮にして逃げた。
そうただそれだけだ。
つまりギンガにしてみれば、ある程度親交のあった自分よりもここで初めて会ったインテグラル卿の方を優先した。
そうただそれだけのことだ。
合理的に考えれば、これからの事を考えれば、そうなるのだろう。
でも! でも!! でも!!!
言葉にできない激情が胸の奥で暴れ回る。
自分はただ居場所を守りたかっただけだ。
だからこそ必死で頑張ったのに、この仕打ちだ。
相手の言い分も頭では分かる、でも心が受け付けない。
「つまり、私は捨て石……また捨てられたんだ……」
強大な力を持っていたために部族を追放された。
その後も管理局ではその力のせいで厄介者扱いをずっと受けてきた。
でも、それもフェイトに救われて終わったはずだった。
そう、こんな所にさえ連れて来られなかったら、ずっと自分の居場所はあそこだったはずだ。
それなのに、それなのに、それなのに!!!
「ごめん。すぐに楽にするから」
自分に掛けられる声に気付いて顔を上げると、そこには刃を振り翳す敵の姿があった。
あの刃が振り下ろされれば、ここで終わる。
何もかも、全て、嬉しかった事も苦しかった事も悲しかった事も楽しかった事も終わる。
「イヤ」
そんなのは嫌だった。
こんな仕打ちはあまりにも理不尽ではないか。
認めたくなかった、信じたくなかった。
こんな心に虚しさが残ったまま死ぬのは嫌だった。
金髪の青年に殺されかけた時はあっさり生を諦められたのに、今は生を諦める事が出来ない。
「イヤ、こんな所で死にたくない……」
「さようなら」
「――――――――ッ!!!!」
神は残酷だった。
▼ ▼ ▼
「ハァ、ハァ、ハァ」
川沿いに建てられた小屋で一人の青年が疲れた身体を癒していた。
相川始だ。
A-7から南下して始はカリスの姿のまま川まで来ると、川越えのためにドラゴンフライフロートを使用した。
まずは市街地に行く前に目指したのは人が集まりそうな駅だ。
そのために回り道をする気はなくカードの力で飛行能力を得ると、一路駅を目指すはずだった。
そこでカリスは眼下を走る3人組を見つけた。
見たところ走ってきた方角から駅から逃れてきた可能性が高い。
そう判断すると、目標を眼下の3人組に変更した。
見敵必殺。
栗原親子の元へ戻るためには手段は選んでいられなかった。
ドラゴンフライフロートを解除して、重力に従ってカリスアローで斬りかかった。
しかし予想外な事に3人の内2人は不思議な力を使って、カリスの攻撃は防がれてしまった。
何の力もない一般人と思っていたばかりに、カリスは少々焦った。
ならばと、2枚のカードをラウズして『スピニングアタック』で決着をつける事にした。
1回目の攻防からこれで十分だと踏んでの選択だった。
結果は予想外の事もあったが、こちらが勝った。
幼い少女を手に掛ける事に微かな気兼ねがあったが、目的のためには仕方なかった。
そして刃を振り落として自分の手は血に染まるはずだった。
そうなるはずだった。
「いったい、あれは何だったんだ!?」
それはカリスアローを振り落とそうとした時だった。
その瞬間、カリスは言い知れぬ雰囲気を感じていた。
そして本能が叫んだ――不味いと。
バトルファイトを勝ち抜いてきて得た勘が離れろと警告していた。
カリスは本能に従って、止めを刺さずにあの場から離れる事にした。
何が原因かは薄らと分かっていた。
少女の手に中にあった何かが光っていた。
それは怪しげな光だった。
おそらく原因はあれだろう。
「ひとまずは身体を休めた方がいいかな」
あの場から離れて始が休息に選んだのがこの小屋だ。
今はカリスの姿ではなく、相川始の姿だ。
ずっとカリスに変身したままの方が便利ではあるが、それではAPが尽きてしまう。
一度変身を解けば次の変身まで1時間待たなければいけない事も数時間前に把握した。
つまり後1時間はカリスへは変身できない。
もっともジョーカーへの変身はできるかもしれないが、何か制限があるかもしれない。
文字通り奥の手として滅多な事では使わない方がよさそうだ。
「1時間か」
次に動くまであと1時間。
戦士はしばしの休息に入った。
【1日目 早朝】
【現在地 D-6 川沿いの小屋】
【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、1時間変身不能(カリス)
【装備】ラウズカード(ハートのA~10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、ランダム支給品×1
【思考】
基本:栗原親子の元へ戻るために優勝を目指す。
1.とりあえず変身できるようになるまで休息する。
2.見つけた参加者は全員殺す(アンデットもしくはそれと思しき者は優先的に殺す)
3.川を辿って市街地を目指す。
4.あるのならハートのJ、Q、Kがほしい。
【備考】
※参戦時期はACT.5以前。なのは達の事は名前のみ天音より聞いた事がある(かもしれない)程度です。
※自身にかけられた制限にある程度気づきました。
※首輪を外す事は不可能だと考えています。
※「他のアンデットが封印されると、自分はバトルファイト勝者となるのではないか」という推論を立てました。
※相川始本人の特殊能力により、アンデットが怪人体で戦闘した場合、その位置をおおよそ察知できます。
▼ ▼ ▼
キャロは一人だった。
なぜあの時、死ななかったのか理由は分からない。
でも今は生きている。
それだけで今は十分だった。
これから何をするのか今は考えられない。
ただ心に少し空洞ができた。
そんな事をキャロは考えていた。
キャロは知らない。
自分に支給されたもう一つのものの正体に。
その名は『スケィス』
巫器(アバター)と言われる憑神鎌<死の恐怖>
このスケィスが正にキャロに死が迫った時に起動しかけた。
その時の力にカリスは本能的に回避を選択したのだ。
しかし結局スケィスは機動しなかった。
なぜか。
巫器を起動させるのには所有者が心に何らかの喪失を抱え、それに伴う強靭な意志を発揮しなければならない。
起動には心の虚が必要なのだ。
つまり先の出来事においてキャロには心の虚が足りなかったという事だ。
親しい間柄と言ってもスバルの姉で頼りになる人というのがキャロのギンガに対する大体の印象だ。
直前にバルディッシュの喪失、インテグラルの瀕死があっても、後一歩キャロの心の虚になり得るには足りなかった。
だがもしもそれに足り得る出来事が起こったのならば、その時はおそらく起動するだろう。
その時まで灰色の球体は静かに待つ。
まるで姫を守る騎士のように。
【1日目 早朝】
【現在地 D-7 川の畔】
【キャロ・ル・ルシエ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(大)、魔力消費(中)、脇腹に切り傷・左太腿に貫通傷(応急処置済み)、茫然自失、ギンガへの不審感
【装備】憑神鎌(スケィス)@.hack//Lightning
【道具】支給品一式×2、『かいふく』のマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、葉巻のケース
【思考】
基本:殺し合いを止める。殺し合いに乗っている人がいたら保護する。
1:……何も考えられない。
2:仲間を探し合流する。
[備考]
※別の世界からきている仲間がいる事に気付いていません。
※憑神鎌(スケィス)のプロテクトは外れておらず、待機形態のままです。
【憑神鎌(スケィス)@.hack//Lightning】
巫器(アバター。SSでは呼称未登場)の第一相<死の恐怖>。
ロストロギアによって構成された、エリオの用いる術式不明の大鎌型デバイス。
通常は全プログラムに強固なプロテクトが掛けられており、セットアップも、名前以外のデータを閲覧する事も不可能。
ただし、持ち主が心に何らかの喪失を抱え、それが齎す強靭な意志を発揮した時に初めてその力を起動させる。
以降はプロテクトが解除され、起動もデータ提示も普通に可能となる。
腕には禍々しいラインを持ったガントレットが装着され、それによって憑神鎌の重量は、限りなく持ち主に最適化される。
普通に切り裂くだけでも絶大な威力を発揮するが、その他にも以下のスキルを使用可能。
・ショット……手のひらから魔力弾を発射する。連射可能。
・死ヲ刻ム影……通称データドレイン。魔力結合に干渉・改竄する能力を持った必殺技。
▼ ▼ ▼
「ヤハハハ、さてもうそろそろいいだろう」
半壊状態の駅員詰所に居座るのは、それに似つかわしくない神だった。
エネルは自身のデイパックから時計を取り出して時間を確かめた。
先程宣告した刻限から5分経っていた。
エネルがゲームと称して5分間待つと言ったのは、もちろん文字通りの意味もあるが別の意味もあった。
それは休息だ。
さすがにあれだけ力を使えば多少は疲れる。
それに加減が分からないのも要らぬ疲れを生む原因だった。
つまり少しだけゆっくりと休む時間が欲しかったのだ。
「それにしても……」
ふと眼下の矢車の変わり果てた姿を少し目に入る。矢車の姿は悲惨だった。
胸にはクロスミラージュごと鉄の矛がボロボロの状態で刺さっている。
幾度となく浴びせた電撃で鉄の矛が耐えられなくなった結果だ。
すぐに興味を無くしてエネルは心網で捉えた動きを考えていた。
あの3人は病院がある南に向かうと思っていたが、意に反して北へと向かった。
そして川まで行ったところで新たな者と接触があった。
何があったかは分からないが、その内2人がその場から離脱していった。
少しして残った二人もまた別れた。
如何せん心網の範囲が制限されているせいか、はっきりとは分からなかったので確信は持てない。
だがあの3人が北へ向かったのは確かだ。
そうは言っても北は自分が来た方角だ。
そこへ戻ってもいまいち面白くないような気がする。
(さて、悩むな)
【1日目 早朝】
【現在地 E-7 半壊した駅員詰所】
【エネル@小話メドレー】
【状態】疲労(小)
【装備】ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3
【思考】
基本:主催者も含めて皆殺し、この世界を支配する。
1:どこへ行こうか。(どこへ向かうかは後続の書き手にお任せします)
【備考】
※黎明の終わり際に駅にてエール・トールが放たれました。近くにいたら見えたかもしれません。
▼ ▼ ▼
HELLSINNG本部。
少し前に最凶の吸血鬼が訪れたこの場所に新たな訪問者が現れた。
数は二人。
紫の髪に茶色の制服を着た少女と、全身に火傷を負っている女性。
あの場から忽然と姿を消したはずのギンガとインテグラルであった。
ギンガはインテグラルを背負いながら、あの時の事を思い出していた。
キャロは期待通り敵の攻撃をきちんと防いでくれた。
次は自分の番だと思って走りだそうとしたその時、ある光景を目にしてしまった。
それは川べり付近に倒れていたインテグラが今にも川に落ちそうになる瞬間だった。
インテグラルが一度目の攻防の際に振り払われて、背中からずり落ちて川べりで止まっているのは見た。
あの位置なら落ちないと思っていたが、運悪く落下の衝撃で目を覚ましたようだった。
さらにふらつく身体を無理に動かそうとして、バランスを崩して落ちる間際まで陥っていた。
(危ない!)
そう思った瞬間には身体はインテグラルの方へ走り出していた。
ギンガはインテグラルを引き寄せたらすぐさま戻るつもりだった。
しかし事態は最悪な方向へ転がってしまった。
あろう事か、助けに入った自分もインテグラに引きずられる形でバランスを崩してしまったのだ。
あとは二人とも川に落ちて、今になってやっとこさ岸に上がれたという訳だ。
不幸中の幸いか、目の前に目的地があったのは僥倖だった。
だが、それでもギンガの心は晴れない。
(キャロ……ごめんなさい……)
恐らくキャロは殺されているだろう。
自分の不注意のせいで。
そうだ。
また自分のミスで仲間を危険な目に遭わせてしまった。
そしてこれは最早取り返しのつかない事だ。
神は残酷だ。
この会場の夜は明けた。
だがギンガの中ではまだ夜明けは来ていなかった。
【1日目 早朝】
【現在地 D-5 HELLSING本部前】
【ギンガ・ナカジマ@魔法妖怪リリカル殺生丸】
【状態】顔面に打撲(小)、疲労(大)、キャロへの罪悪感、ずぶ濡れ
【装備】コルト・ガバメント(7/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女
【道具】支給品一式×2、ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、ランダム支給品0~2(確認済)
【思考】
基本:この殺し合いを止め、プレシアを逮捕する。
1:HELLSING本部にてインテグラの治療を行う。
2:インテグラを護衛し、アーカードを捜索する。
3:できる事なら誰も殺したくはない。
4:可能ならば、六課の仲間達(特にスバル)とも合流したい。
【備考】
※なのは(A's)、フェイト(A's)、はやて(A's)、クロノの4人が、過去から来た事、また一部の参加者はパラレルワールドから来た人間である事に気付きました。
※「このバトルロワイアルにおいて有り得ない事は何一つない」という持論を持ちました。
※制限に気がつきました。
※インテグラがいなくなった後のアーカードに恐怖を抱き始めました。
※アーカードを暴走させないためにも何としてもインテグラを守るつもりです。
【インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲート・ヘルシング@NANOSING】
【状態】疲労(中)、全身に軽い火傷、ずぶ濡れ、気絶中
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
基本:この殺し合いを止め、プレシアを叩きのめす。
1:気絶中。
2:地図上のHELLSING本部に向かう。
3:アーカードと合流し、指揮下に置く。
4:できる事なら犠牲は最小限に留めたいが、向かってくる敵は殺す。
【備考】
※同行しているギンガが自分の知るミッドチルダに住む人間ではない事、一部の参加者はパラレルワールドから来た人間である事を把握しました。
※アーカードは参加者に施されているであろう制限の外にあると思っています。
&color(red){【矢車想@仮面ライダーカブト 死亡】}
&color(red){【残り51人】}
※E-7の駅にある駅員詰所は半壊状態になりました。(駅そのものへの被害は軽微)
※矢車の死体は黒焦げで胸に鉄の矛を刺したままE-7の駅(半壊した駅員詰所)に放置されています。
※クロスミラージュ@魔法少女リリカルなのはStrikerS(矢車の胸ポケットの中)は鉄の矛に貫かれて破壊されました。
|Back:[[残酷な神々のテーゼ(前編)]]|時系列順で読む|Next:[[光が紡ぐ物語]]|
|~|投下順で読む|Next:[[遠い声、遠い出会い]]|
|~|相川始|Next:[[タイムラグは30分(前編)]]|
|~|エネル|Next:[[タイムラグは30分(前編)]]|
|~|インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング|Next:[[誇りの剣]]|
|~|ギンガ・ナカジマ|Next:[[誇りの剣]]|
|~|キャロ・ル・ルシエ|Next:[[勇気のアイテム(前編)]]|
|~|&color(red){矢車想}|&color(red){GAME OVER}|
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*残酷な神々のテーゼ(後編) ◆RsQVcxRr96
キャロは走りながら考え込んでいた。
自分の隣を走っているのは同僚であるスバルの姉、ギンガ・ナカジマ。
一時は機動六課に出向していた事もあり、顔馴染みの存在ではあった。
だからこそ再会した時は本当に安心したし、心の底から嬉しかった。
しかし、そんな安心できる時間はすぐに終わってしまった。
突然の襲撃――そして逃避行。
正直キャロの精神は再び疲弊しかけていた。
それでもここまで必死に折れそうな心を懸命に支えてきている。
道すがらギンガは同行者のインテグラル卿について話をした。
インテグラル卿が死ねば、アーカードという化け物を止める術がなくなる事。
そうなればますます悲惨な状況になる事。
だから何としてもインテグラル卿を救わねばならない事。
ギンガがキャロに話した内容はそのような事だった。
(吸血鬼、アーカード……)
聞けば聞くほど恐ろしい化け物だ。
先程の電撃を放つ男も恐ろしいが、アーカードも同等の強さらしい。
桁違いな化け物が2人、いや実際はもっといるだろう。
そんな中で自分は何ができるのだろうか。
答えが出る訳でもなくキャロは今度の事を考えて、一層悩んでしまう。
「あれは、川!」
ギンガの声を聞いて目を前方へ向けると、確かに川が見えた。
今目指している場所はHELLSING本部。
インテグラルが勝手知ったる場所であり、そこなら治療ができるかもという事で目的地に定めていた。
つまりここで西へ進路を向け、橋を渡る必要がある。
「急がないとインテグラル卿が……行くわよキャロ!」
「え、あ……はい」
キャロは的確な判断を下して道を示してくれるギンガが少し羨ましかった。
それに比べて自分は何ができるのだろうと、知らず知らずのうちに自身を顧みてしまう。
自分がしている事と言えば、インテグラル卿のデイパックを背負ってギンガの後に遅れないように付いて行く事ぐらいだ。
なんだか少し情けないような気もした。
でも今はここが自分の居場所。
だからこそ全力で守りたい。
自分のポジションはフルバック――素早く動いて仲間の支援をするポジション。
全て機動六課で学んできた事だ。
今は十分に力になれなくても、自分にできる限りの事は頑張ろう。
キャロは心の中でそういう風に折り合いをつける事にした。
しかし神は残酷だった。
「――ッ! トライシールド!!」
「プ、プロテクション!!」
「――!!」
突然の襲撃だった。
天より漆黒の鎧を身につけた人物が手持ちの刃を振り落とし舞い降りてきた。
避ける間など無かった。
二人にできた事は咄嗟に防御魔法を展開する事だけだった。
刃と防御魔法が鎬を削り、程なく漆黒の戦士が反動を付けて少し離れた場所に着地した。
幸い今の間で直撃だけは免れたが、ギンガもキャロも今の攻防で相手の実力が並々ならぬ事を実感していた。
このままでは三人とも無事では済まない。
「キャロ、なんとか一瞬でいいからあいつの攻撃に耐えて。その隙をついて私が吹っ飛ばす」
「分かりました。やってみます」
即興で出されたギンガの提案は綱渡りのようなものだった。
だが二人に悩んでいる時間はない。
もう既に相手は攻撃の準備を終えたようだった。
――DRILL――
――TORNADO――
――SPINNIG ATTACK――
「プロテクション!!」
敵の攻撃は先程とは違って回転しながらのキックで、威力も上がっていた。
だがキャロも負けてはいない。
若干の猶予があったため先程とは違ってしっかりと防御魔法を展開する事ができた。
そのおかげでキャロ一人でも奇跡的に一瞬の均衡を生み出す事に成功していた。
(よし、これでギンガさんが敵に一撃を与えれば……)
おそらく敵の注意は自分のみに向いているだろうとキャロは確信していた。
つまり今は攻撃を仕掛けるには絶好の機会だ。
やっとギンガさんの助けになれる、自分の居場所を守る事ができる。
キャロはすぐに来るその瞬間は待ち望んだ。
――しかし……
(な、なんで!?)
時間にしては数秒にもなっていない。
だがギンガが攻撃を仕掛けるには十分な時間のはずだ。
それなのにまだギンガの攻撃はない。
もう防御魔法を維持するのも限界だというのに、何も起こらない。
「キャァ――ッ!!」
程なく防御魔法は破られて、キャロは地面に身体を打ちつけながら二転三転した。
対して漆黒の戦士にほとんどダメージはなく、無慈悲にも手に持った刃をキャロに向けていた。
二人の距離は僅か数歩というものだった。
(ギンガさん……なんで……)
キャロの心を埋め尽くすのはただそれだけ。
あそこでギンガが攻撃を与えていたならば、勝っていたのは自分達のはずだった。
いったい何が起こったのだろう。
心中に浮かぶ疑問に答えを求めて、キャロは傷ついた身体を動かして後ろを向いた。
「え?」
後ろ、つまり川べりには誰もいなかった。
慌てて周囲を見渡しても、ギンガの姿は見つけられなかった。
「うそ……?」
今度は痛む身体を起こして周囲をぐるりと見渡してみる。
やはりどこを見てもギンガの姿はどこにもなかった。
そしてキャロはもう一ついなくなっている人物に気付いた。
「インテグラル卿も……いない?」
ギンガに加えてインテグラルの姿もまたどこにもなかった。
今ここにいるのはキャロと素性の知れない襲撃者だけだった。
それ以外には誰もいない。
(なんで……なんで、ギンガさんとインテグラル卿が――!?)
そこでキャロは先程ギンガが言っていた事を思い出した。
曰く、アーカードを止めるためにもインテグラル卿は絶対に守り通さなければならないと。
そして現状キャロは一人取り残されて、ギンガとインテグラルの姿はない。
つまりは――
――ギンガはキャロを囮にしてインテグラルと共に逃げた。
そんな考えがキャロの頭をよぎった。
キャロはその考えをすぐに否定しようとした。
でも、それなら、なぜギンガとインテグラルがいないのか説明できない。
少なくとも数秒前までは確かにいたはずだ。
ではいなくなったのはその直後。
折しもキャロが必死で襲撃者の攻撃を防いでいる時だ――ギンガの提案に従って。
(そんな……そんな……ギンガさんは、ギンガさんは――!!)
もしも何かあったなら念話なり掛け声なりあるはずだ。
それもなくて忽然と姿を消したという事は、やはり――
「――私を囮にして……インテグラル卿を守るために、逃げた?」
確かに目の前の人物は二人掛かりでも勝てるかどうか不安な敵だ。
それなら優先順位を考えて囮で気を引いて、その間に守るべきインテグラ卿と安全な場所まで逃げる。
実に合理的な考えだ。
しかしキャロには信じられなかった。
あのギンガが自分に対してそんな事を相談もせずに行うなど信じられない、いや信じたくなかった。
だからキャロはこの場で唯一答えを返してくれそうな人物へ問いかけた。
「あの、私の後ろにいた二人は?」
問いかけられた漆黒の戦士は黙ったままだった。
表情は隠れていて全く分からない。
一緒にいるだけで不気味な存在だった。
今まで出会った危険な人物とはまた違ったものがあった。
だからこそほんの少し期待したのだが、それは外れだったようだ。
「倒れていた女と、紫髪の女なら――」
「え!?」
どういう風の吹きまわしか不意に答えが返ってきた。
キャロは返ってくる答えを大人しく待ちわびる。
「君と対峙した時に――」
キャロはその答えを待つ。
その答えが自分の望む答えであると信じて、最悪な答えでないと信じて。
「逃げられたよ」
「え?」
『逃げられた』と目の前の敵は言った。
ここで敵が嘘を言う理由はないだろう。
どうせこのままでは自分は殺されてしまうのだろうから。
つまり今言われた事は紛れもなく真実。
それが意味する事は疑いの余地もない真実。
そう言葉の通りの意味だ。
――ギンガ・ナカジマはインテグラル卿を守るためにキャロ・ル・ルシエを囮にして逃げた。
そうただそれだけだ。
つまりギンガにしてみれば、ある程度親交のあった自分よりもここで初めて会ったインテグラル卿の方を優先した。
そうただそれだけのことだ。
合理的に考えれば、これからの事を考えれば、そうなるのだろう。
でも! でも!! でも!!!
言葉にできない激情が胸の奥で暴れ回る。
自分はただ居場所を守りたかっただけだ。
だからこそ必死で頑張ったのに、この仕打ちだ。
相手の言い分も頭では分かる、でも心が受け付けない。
「つまり、私は捨て石……また捨てられたんだ……」
強大な力を持っていたために部族を追放された。
その後も管理局ではその力のせいで厄介者扱いをずっと受けてきた。
でも、それもフェイトに救われて終わったはずだった。
そう、こんな所にさえ連れて来られなかったら、ずっと自分の居場所はあそこだったはずだ。
それなのに、それなのに、それなのに!!!
「ごめん。すぐに楽にするから」
自分に掛けられる声に気付いて顔を上げると、そこには刃を振り翳す敵の姿があった。
あの刃が振り下ろされれば、ここで終わる。
何もかも、全て、嬉しかった事も苦しかった事も悲しかった事も楽しかった事も終わる。
「イヤ」
そんなのは嫌だった。
こんな仕打ちはあまりにも理不尽ではないか。
認めたくなかった、信じたくなかった。
こんな心に虚しさが残ったまま死ぬのは嫌だった。
金髪の青年に殺されかけた時はあっさり生を諦められたのに、今は生を諦める事が出来ない。
「イヤ、こんな所で死にたくない……」
「さようなら」
「――――――――ッ!!!!」
神は残酷だった。
▼ ▼ ▼
「ハァ、ハァ、ハァ」
川沿いに建てられた小屋で一人の青年が疲れた身体を癒していた。
相川始だ。
A-7から南下して始はカリスの姿のまま川まで来ると、川越えのためにドラゴンフライフロートを使用した。
まずは市街地に行く前に目指したのは人が集まりそうな駅だ。
そのために回り道をする気はなくカードの力で飛行能力を得ると、一路駅を目指すはずだった。
そこでカリスは眼下を走る3人組を見つけた。
見たところ走ってきた方角から駅から逃れてきた可能性が高い。
そう判断すると、目標を眼下の3人組に変更した。
見敵必殺。
栗原親子の元へ戻るためには手段は選んでいられなかった。
ドラゴンフライフロートを解除して、重力に従ってカリスアローで斬りかかった。
しかし予想外な事に3人の内2人は不思議な力を使って、カリスの攻撃は防がれてしまった。
何の力もない一般人と思っていたばかりに、カリスは少々焦った。
ならばと、2枚のカードをラウズして『スピニングアタック』で決着をつける事にした。
1回目の攻防からこれで十分だと踏んでの選択だった。
結果は予想外の事もあったが、こちらが勝った。
幼い少女を手に掛ける事に微かな気兼ねがあったが、目的のためには仕方なかった。
そして刃を振り落として自分の手は血に染まるはずだった。
そうなるはずだった。
「いったい、あれは何だったんだ!?」
それはカリスアローを振り落とそうとした時だった。
その瞬間、カリスは言い知れぬ雰囲気を感じていた。
そして本能が叫んだ――不味いと。
バトルファイトを勝ち抜いてきて得た勘が離れろと警告していた。
カリスは本能に従って、止めを刺さずにあの場から離れる事にした。
何が原因かは薄らと分かっていた。
少女の手に中にあった何かが光っていた。
それは怪しげな光だった。
おそらく原因はあれだろう。
「ひとまずは身体を休めた方がいいかな」
あの場から離れて始が休息に選んだのがこの小屋だ。
今はカリスの姿ではなく、相川始の姿だ。
ずっとカリスに変身したままの方が便利ではあるが、それではAPが尽きてしまう。
一度変身を解けば次の変身まで1時間待たなければいけない事も数時間前に把握した。
つまり後1時間はカリスへは変身できない。
もっともジョーカーへの変身はできるかもしれないが、何か制限があるかもしれない。
文字通り奥の手として滅多な事では使わない方がよさそうだ。
「1時間か」
次に動くまであと1時間。
戦士はしばしの休息に入った。
【1日目 早朝】
【現在地 D-6 川沿いの小屋】
【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、1時間変身不能(カリス)
【装備】ラウズカード(ハートのA~10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、ランダム支給品×1
【思考】
基本:栗原親子の元へ戻るために優勝を目指す。
1.とりあえず変身できるようになるまで休息する。
2.見つけた参加者は全員殺す(アンデットもしくはそれと思しき者は優先的に殺す)
3.川を辿って市街地を目指す。
4.あるのならハートのJ、Q、Kがほしい。
【備考】
※参戦時期はACT.5以前。なのは達の事は名前のみ天音より聞いた事がある(かもしれない)程度です。
※自身にかけられた制限にある程度気づきました。
※首輪を外す事は不可能だと考えています。
※「他のアンデットが封印されると、自分はバトルファイト勝者となるのではないか」という推論を立てました。
※相川始本人の特殊能力により、アンデットが怪人体で戦闘した場合、その位置をおおよそ察知できます。
▼ ▼ ▼
キャロは一人だった。
なぜあの時、死ななかったのか理由は分からない。
でも今は生きている。
それだけで今は十分だった。
これから何をするのか今は考えられない。
ただ心に少し空洞ができた。
そんな事をキャロは考えていた。
キャロは知らない。
自分に支給されたもう一つのものの正体に。
その名は『スケィス』
巫器(アバター)と言われる憑神鎌<死の恐怖>
このスケィスが正にキャロに死が迫った時に起動しかけた。
その時の力にカリスは本能的に回避を選択したのだ。
しかし結局スケィスは機動しなかった。
なぜか。
巫器を起動させるのには所有者が心に何らかの喪失を抱え、それに伴う強靭な意志を発揮しなければならない。
起動には心の虚が必要なのだ。
つまり先の出来事においてキャロには心の虚が足りなかったという事だ。
親しい間柄と言ってもスバルの姉で頼りになる人というのがキャロのギンガに対する大体の印象だ。
直前にバルディッシュの喪失、インテグラルの瀕死があっても、後一歩キャロの心の虚になり得るには足りなかった。
だがもしもそれに足り得る出来事が起こったのならば、その時はおそらく起動するだろう。
その時まで灰色の球体は静かに待つ。
まるで姫を守る騎士のように。
【1日目 早朝】
【現在地 D-7 川の畔】
【キャロ・ル・ルシエ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(大)、魔力消費(中)、脇腹に切り傷・左太腿に貫通傷(応急処置済み)、茫然自失、ギンガへの不審感
【装備】憑神鎌(スケィス)@.hack//Lightning
【道具】支給品一式×2、『かいふく』のマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、葉巻のケース
【思考】
基本:殺し合いを止める。殺し合いに乗っている人がいたら保護する。
1:……何も考えられない。
2:仲間を探し合流する。
[備考]
※別の世界からきている仲間がいる事に気付いていません。
※憑神鎌(スケィス)のプロテクトは外れておらず、待機形態のままです。
【憑神鎌(スケィス)@.hack//Lightning】
巫器(アバター。SSでは呼称未登場)の第一相<死の恐怖>。
ロストロギアによって構成された、エリオの用いる術式不明の大鎌型デバイス。
通常は全プログラムに強固なプロテクトが掛けられており、セットアップも、名前以外のデータを閲覧する事も不可能。
ただし、持ち主が心に何らかの喪失を抱え、それが齎す強靭な意志を発揮した時に初めてその力を起動させる。
以降はプロテクトが解除され、起動もデータ提示も普通に可能となる。
腕には禍々しいラインを持ったガントレットが装着され、それによって憑神鎌の重量は、限りなく持ち主に最適化される。
普通に切り裂くだけでも絶大な威力を発揮するが、その他にも以下のスキルを使用可能。
・ショット……手のひらから魔力弾を発射する。連射可能。
・死ヲ刻ム影……通称データドレイン。魔力結合に干渉・改竄する能力を持った必殺技。
▼ ▼ ▼
「ヤハハハ、さてもうそろそろいいだろう」
半壊状態の駅員詰所に居座るのは、それに似つかわしくない神だった。
エネルは自身のデイパックから時計を取り出して時間を確かめた。
先程宣告した刻限から5分経っていた。
エネルがゲームと称して5分間待つと言ったのは、もちろん文字通りの意味もあるが別の意味もあった。
それは休息だ。
さすがにあれだけ力を使えば多少は疲れる。
それに加減が分からないのも要らぬ疲れを生む原因だった。
つまり少しだけゆっくりと休む時間が欲しかったのだ。
「それにしても……」
ふと眼下の矢車の変わり果てた姿を少し目に入る。矢車の姿は悲惨だった。
胸にはクロスミラージュごと鉄の矛がボロボロの状態で刺さっている。
幾度となく浴びせた電撃で鉄の矛が耐えられなくなった結果だ。
すぐに興味を無くしてエネルは心網で捉えた動きを考えていた。
あの3人は病院がある南に向かうと思っていたが、意に反して北へと向かった。
そして川まで行ったところで新たな者と接触があった。
何があったかは分からないが、その内2人がその場から離脱していった。
少しして残った二人もまた別れた。
如何せん心網の範囲が制限されているせいか、はっきりとは分からなかったので確信は持てない。
だがあの3人が北へ向かったのは確かだ。
そうは言っても北は自分が来た方角だ。
そこへ戻ってもいまいち面白くないような気がする。
(さて、悩むな)
【1日目 早朝】
【現在地 E-7 半壊した駅員詰所】
【エネル@小話メドレー】
【状態】疲労(小)
【装備】ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3
【思考】
基本:主催者も含めて皆殺し、この世界を支配する。
1:どこへ行こうか。(どこへ向かうかは後続の書き手にお任せします)
【備考】
※黎明の終わり際に駅にてエール・トールが放たれました。近くにいたら見えたかもしれません。
▼ ▼ ▼
HELLSINNG本部。
少し前に最凶の吸血鬼が訪れたこの場所に新たな訪問者が現れた。
数は二人。
紫の髪に茶色の制服を着た少女と、全身に火傷を負っている女性。
あの場から忽然と姿を消したはずのギンガとインテグラルであった。
ギンガはインテグラルを背負いながら、あの時の事を思い出していた。
キャロは期待通り敵の攻撃をきちんと防いでくれた。
次は自分の番だと思って走りだそうとしたその時、ある光景を目にしてしまった。
それは川べり付近に倒れていたインテグラが今にも川に落ちそうになる瞬間だった。
インテグラルが一度目の攻防の際に振り払われて、背中からずり落ちて川べりで止まっているのは見た。
あの位置なら落ちないと思っていたが、運悪く落下の衝撃で目を覚ましたようだった。
さらにふらつく身体を無理に動かそうとして、バランスを崩して落ちる間際まで陥っていた。
(危ない!)
そう思った瞬間には身体はインテグラルの方へ走り出していた。
ギンガはインテグラルを引き寄せたらすぐさま戻るつもりだった。
しかし事態は最悪な方向へ転がってしまった。
あろう事か、助けに入った自分もインテグラに引きずられる形でバランスを崩してしまったのだ。
あとは二人とも川に落ちて、今になってやっとこさ岸に上がれたという訳だ。
不幸中の幸いか、目の前に目的地があったのは僥倖だった。
だが、それでもギンガの心は晴れない。
(キャロ……ごめんなさい……)
恐らくキャロは殺されているだろう。
自分の不注意のせいで。
そうだ。
また自分のミスで仲間を危険な目に遭わせてしまった。
そしてこれは最早取り返しのつかない事だ。
神は残酷だ。
この会場の夜は明けた。
だがギンガの中ではまだ夜明けは来ていなかった。
【1日目 早朝】
【現在地 D-5 HELLSING本部前】
【ギンガ・ナカジマ@魔法妖怪リリカル殺生丸】
【状態】顔面に打撲(小)、疲労(大)、キャロへの罪悪感、ずぶ濡れ
【装備】コルト・ガバメント(7/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女
【道具】支給品一式×2、ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、ランダム支給品0~2(確認済)
【思考】
基本:この殺し合いを止め、プレシアを逮捕する。
1:HELLSING本部にてインテグラの治療を行う。
2:インテグラを護衛し、アーカードを捜索する。
3:できる事なら誰も殺したくはない。
4:可能ならば、六課の仲間達(特にスバル)とも合流したい。
【備考】
※なのは(A's)、フェイト(A's)、はやて(A's)、クロノの4人が、過去から来た事、また一部の参加者はパラレルワールドから来た人間である事に気付きました。
※「このバトルロワイアルにおいて有り得ない事は何一つない」という持論を持ちました。
※制限に気がつきました。
※インテグラがいなくなった後のアーカードに恐怖を抱き始めました。
※アーカードを暴走させないためにも何としてもインテグラを守るつもりです。
【インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング@NANOSING】
【状態】疲労(中)、全身に軽い火傷、ずぶ濡れ、気絶中
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
基本:この殺し合いを止め、プレシアを叩きのめす。
1:気絶中。
2:地図上のHELLSING本部に向かう。
3:アーカードと合流し、指揮下に置く。
4:できる事なら犠牲は最小限に留めたいが、向かってくる敵は殺す。
【備考】
※同行しているギンガが自分の知るミッドチルダに住む人間ではない事、一部の参加者はパラレルワールドから来た人間である事を把握しました。
※アーカードは参加者に施されているであろう制限の外にあると思っています。
&color(red){【矢車想@仮面ライダーカブト 死亡】}
&color(red){【残り51人】}
※E-7の駅にある駅員詰所は半壊状態になりました。(駅そのものへの被害は軽微)
※矢車の死体は黒焦げで胸に鉄の矛を刺したままE-7の駅(半壊した駅員詰所)に放置されています。
※クロスミラージュ@魔法少女リリカルなのはStrikerS(矢車の胸ポケットの中)は鉄の矛に貫かれて破壊されました。
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|~|&color(red){矢車想}|&color(red){GAME OVER}|
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