「太陽(後編)」(2010/02/02 (火) 09:55:28) の最新版変更点
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*太陽(後編) ◆7pf62HiyTE
ここで万丈目準に関して1つのエピソードを語ろう。
約2年前、彼は度重なる敗北等からデュエルアカデミアを飛び出した事があった。その際に自身のデッキも失ってしまったがその後自らの力でカードを集め姉妹校であるデュエルアカデミアノース校に編入しトップにまで上り詰めた。
そしてその後、デュエルアカデミアとの対抗デュエルでアカデミアの代表と決闘する事になった。
万丈目が相手という事でアカデミア本校の生徒からは楽勝と見られていたが、ノース校の生徒達からは当然の事ながら代表である万丈目に大きな期待をかけられていた。だが、少なくとも万丈目にとってはこの対抗デュエルはそれだけの事では無かった。
実は万丈目には優秀な2人の兄がおり、万丈目は兄達から強大の落ちこぼれだと言われていた。
その兄達がこの対抗デュエルの場にやって来て自分達主催でテレビ中継の用意までしたのだ。その目的は万丈目をプロモートしカードゲーム界のスターにする為だ。
それだけではなく兄達は金にものを言わせたカードの山を用意し万丈目に最強のデッキを作らせようとしたのだ。万丈目グループの顔に泥を塗る様な事をするなと言った上で……。
その決闘の結果自体はこの場話ではさほど重要では無いので割愛するが、この時万丈目は大きなプレッシャーをかけられていたのだ。
とは言え、決闘の場ではそんな事など微塵も感じさせない位何時もの強気な調子であった。だが……決闘前、彼は1人洗面室で……。
『俺は兄弟の落ちこぼれであるはずがない……勝って勝って勝ち続けるんだ……』
『誰も俺の背負っている物の重さなんてわかりゃしない……勝てというだけだ……』
そう、万丈目も内心では苦しんでいたのだ。当然万丈目自身はこんな姿を誰かに見られたくは無かっただろう―――
閑話休題、ゼストが去った後万丈目は家屋にて―――
「ぐっ……はぁ……プレシアめ……」
涙を流していた―――
「許さんぞ……よくも……よくも……」
口にするのはプレシアに対する怒り―――
「この俺にこんなものを支給しやがって……!!」
その手にはスプーン、口元には赤いカレーが付着していた―――
そう、万丈目は自身に支給された3つ目の支給品である激辛のカレーを口にして涙を流していたのだ―――その姿など他の者に見せられるわけが無いだろう。
呆れている方達も多いだろうがここで少し冷静に考えてみて欲しい、万丈目はこの場に来てから既に一度このカレーを試食しておりマトモに食えたものではない事を理解しているはずだ。にも関わらず何故彼は今改めてカレーを食しているのであろうか?
そもそも泣いている理由は本当にカレーを食べたからなのか?
ここで物語は放送の前まで遡る。
これまでの話を読めばわかる通り、万丈目がかがみにカードデッキを押しつけた為かがみが死ぬ事になる可能性は非情に高かった。
仮にかがみが死ななかったとしてもカードデッキの特性とバクラの行動方針を踏まえバクラに襲われた参加者が死ぬ可能性が高い。
つまり直接的ではないにしろ万丈目が誰かを殺したという事になる。
当然の事ではあるが万丈目は誰かを殺したくはなかった。その彼にとって誰かを殺すという事は強い罪悪感を抱かせる結果となった。
いや、真面目な話その対象が殺し合いに乗っている悪人だった、もしくは万丈目本人が直接手を下したのであればまだ良かったかもしれない。
だが万丈目はあくまでも何の罪もない普通の少女に誰かの死を強要するカードデッキを押しつけたのだ。
自分が助かりたいが為に全ての責任を何も知らないかがみに押しつけたのだ。
その行為だけを見るのであればそれは誰が見ても卑下する行為と言えよう。それを自覚しているからこそ万丈目は苦しんでいるのである。
こんな事をした自分を明日香やレイ達アガデミアの連中、そしてなのは達が見ればどう思うだろうか? 軽蔑するに決まっている。そして何より自分自身がそれを嫌悪していたのだ。
だからこそ万丈目は逃げ出した。逃げ場など何処にも無いとしてもだ。
だが逃げても逃げても万丈目の側に『奴』が現れ耳にはその声が響くのだ。ノース校にいた時にも聞こえたアカデミア本校にいるはずの『奴』の……
何故『奴』が現れたのかなどどうだっていい、今の万丈目にしてみれば誰にも会いたく無かったし誰の声も聞きたくなかった。故に万丈目は逃げ続けた……
勿論、プレシアに報復するという方針には変わりは無かったし、仲間達と合流し明日香達を守りたいという意志は消えていない。だが、少なくとも今はその事すら考えられなかった。それ程までに万丈目は強い罪悪感を感じていたのである。
そして『奴』の姿が見えなくなり声も聞こえなくなり立ち止まった時、『奴』とは別の男性……ゼストが話しかけてきたのだ。
ゼストはこの殺し合いに乗っていなかった様だが万丈目にとっては誰でも大差など無かった。
すぐにでも逃げ出したかったが走り続けた事による疲労もあって動けなかったし、何よりゼストはマッハキャリバー(本当はブリッツキャリバーなのだが万丈目はマッハキャリバーだと認識していた)を持っていたのだ、逃げられるわけがない。
そして同時に爆発音が響くと共に商店街の方に赤と白の龍が現れ戦いを始めたのだ。白い方はフリードリヒの様に見えたが恐らく赤い方はバイオグリーザ同様カードデッキのモンスター……
自分と同じ様にカードデッキを支給され、同じタイムリミットに追われた参加者がいたのだ。その事が先程全てをかがみに押しつけた万丈目を押し潰そうとしていた。
すぐにでもこの場から逃げ出したかった。だが今度はゼストが側にいた為それは出来なかった。
ゼストはモンスターの事について詳しく聞きたがっていたし、自分の事を気遣っていた。だが人殺しの自分を気遣うなどかえって自分が惨めだと感じた。自分なんか放っておいてすぐにでも商店街に戻って欲しいとすら思った。
それでもゼストは万丈目から離れようとはしなかった。そうしている内に忌まわしい放送が訪れたのだ。万丈目にとってはある種の宣告とも言える……
放送に関しては恐ろしい程鮮明に耳に入ってくる。最初に禁止エリアが伝えられるが万丈目にとってはそんな事は大した問題じゃない。ほんの数分程度の話であっても何十分もかかっている様な気がした……
そして死亡者の名前がゆっくりと―――少なくとも万丈目はそう感じていたそれが―――読み上げられる―――
ザフィーラ―――
フェイト・T・ハラオウン―――
五十音で読み上げられているのは把握している。故にこの時点で既に明日香とレイの生存は確定。いや、それ以上にかがみの生存すらも確定した事になる。
だが、万丈目の心が晴れる事はない。バクラが付いているのだ、きっとタイムリミットを迎えるまでに他の参加者を見付けてそいつを喰わせたのだろう。それをさせたのは誰だ? 嗚呼、他でもない自分だ。
結局の所、放送を聞いた所で救われるわけがなかったのだ―――それでも放送は続き―――
武蔵坊弁慶―――
八神はやて―――
もうやめてくれ……そう思う万丈目であったが―――
●●●●―――
その名前が読み上げられた瞬間、万丈目の思考が停止する。
(今……何て言った?)
いや、言った事もそれが意味している事も理解している。間違いない、『奴』が死んだのだ。自分にとって最も鬱陶しい『奴』が―――
この瞬間だけはかがみに対して抱いていた罪悪感すらも忘却の彼方に消えていた。只、心の奥底からある感情が浮かび上がって―――
(……待て……ちょっと待て! これではまるで……まるで―――
アイツが死んで悲しんでいるみたいではないか!!)
―――それに気付いた瞬間、万丈目は心の中で叫んだ、そして湧き上がる感情は―――
(違う! 悲しんでなどいない! これは怒りだ! いや、アイツが死んで誰が怒るか! ああそうだ、コイツはプレシアに対する怒りだ!! 決してアイツが死んだからじゃない!)
怒り―――それでも別の感情が湧き上がるが万丈目はそれを必死に押さえ込み―――
(そうだアイツが死んで天上院君やレイが悲しむからだ! この万丈目サンダーがアイツが死んだ事で悲しむなどあるわけがない!! むしろ清々するぐらいだ!! プレシア……天上院君達を悲しませた事……絶対に許さん!!)
そう納得させた頃、放送では新たな御褒美の話が出てきていた。それを聞いている時の万丈目は既に放送前の万丈目ではなかった―――
(冗談じゃない! これ以上天上院君やレイを悲しませてたまるか!)
真面目な話、かがみに対する罪悪感を忘れていたのはその一瞬だけで、この時には既にその事は頭の中に戻ってきており今も万丈目を締め付けており正直な所逃げ出したい気持ちだ。
だがプレシアに対する怒りと明日香達を守らなければという想いが強まっているのだ。これ以上塞ぎ込んでいるわけにはいかない。
ならば何をするべきか、決まっている、まずは自分の知る事を全てゼストに話す事だ。真面目な話かがみの事で責められるかも知れない。だが、それ以上に明日香達を守りたいという想いとプレシアに対する怒りが強かったのだ。
「カードデッキ―――」
決意を新たにした万丈目は全てをゼストに語る―――その内心では未だ否定し続けている別の想いを抱え続けて―――
そして、情報交換を済ませゼストが商店街へ向かった後すぐさま万丈目は家屋に入りデイパックからカレーを取り出したのだ。
万丈目は知らないがそのカレーは奇しくもゼストのいた世界のルーテシアがなのはの為に作ったもの―――
その世界のなのははスカリエッティによって身体を弄られ味覚を失っていた。そのなのはの為にルーテシアはカレーに大量のスパイスを使用した―――味覚を失った者でも辛いと感じる様にと―――
故にそのカレーは普通の味覚を持つ者にとってはマトモに喰えたものではない。
そんな事は実際に一度試食している万丈目にだってわかっている。それでも万丈目はそれを食べたのだ、涙を流し続けながら―――何故、泣いてまでカレーを食べているのか―――その心は万丈目にしかわからない―――
だが、少なくともこんな姿など誰にも見られたくはなかった―――
「はぁ……はぁ……はぁ……俺にこんなものを喰わせた事……絶対に許さんぞ……プレシア……」
身体を震わせ涙を流しながらも万丈目はカレーを完食した。正直な所、舌と喉が痛く暫くは声を出すのも辛い状態である。万丈目はデイパックから出した水を口に含み痛みを和らげていく。
「とにかく、昼飯は終わりだ!」
と、万丈目はデイパックからノート等を取り出し、目の前のパソコンとノートに目を向ける。パソコンに関してはカレーを食べて苦しんでいる際に気を紛らわせる為に見ていたものである。
「月村すずかの友人からのメール……と」
パソコンを調べた所、6時半ぐらいにメールが届いていた。完全に信用出来るかはともかくひとまずその文面をノートに書き留めていく。続いてゼストとの情報交換で得た事を記していく。
「バクラに言われて作ったこいつが役に立つとはな……ちっ」
結局の所、万丈目にとって支給品で得たものというのはバクラの助言で作ったこのノートぐらいと言ってもよい。
殺し合いを楽しもうとしていたバクラが殺し合いを打破しようとしている万丈目の役に立ったという皮肉な話であり、万丈目の表情は複雑なものであった。
だが、ノート自体は大いに役に立った。正直な所、自分の持つ情報を口だけで伝えるにはまだ精神的に辛かったし、ゼストの様子を見る限り口だけで説明するのは難しかったからだ。
「まさかなのはがな……」
ゼストが自身の捜し人を説明する際、なのはについては特に復讐の為なら無関係な人間をも殺害する悪鬼だと語っていた。付き合いが短いとはいえ万丈目の知る彼女とはあまりにも違いすぎる為、聞いた当初は信じられなかった。
だが、バクラと話した並行世界の事を思い出した為、それについては容易に理解は出来たし、その可能性がほぼ確実だと判断出来た。そして異常なまでに彼女に対し殺意を抱くゼストに対し上手く説明する為にノートを見せたのである。
ノートを見せた所でゼストが理解してくれるかどうかは正直微妙だったが、情報交換をしていく内にゼストもそれを理解してくれた様だった。
「だが、面倒な事になったな……」
しかし、それは万丈目にとっても大きな問題である。
幸運な事に万丈目を最初に襲った眼帯の少女の名前がゼストの話からチンクという名前だと判明し彼女の仲間としてクアットロとディエチがいる事も確認出来た。何れもスカリエッティという科学者の所にいる連中らしい。
が、どうもゼストによるとスバル、エリオ、キャロもそのスカリエッティ側におり、なのはも彼の所で人造魔導師として身体を弄られ復讐鬼に落ちたという話だ。
ゼストの事情も含め詳しい事は聞けなかったが、要点を纏めるとスバル、エリオ、キャロ、そしてなのはも殺し合いに乗っている危険人物の可能性があるという事だ。
これ自体は並行世界による際なので今更疑う必要はないし、同時に可能性がある程度の話なのでそれ自体は良い。
問題は連れて来られた並行世界によっては他の参加者までも危険人物の可能性があるという事だ。
「これでは誰がアテになるかわからんぞ」
故にだ、単純になのは達と合流すれば良いかどうかの判断を付けられなくなってしまったのだ。実際に会ってみなければわからないがその相手が殺し合いに乗っていれば全てが終わりだ。
ちなみに、明日香やレイが自分とは異なる並行世界から連れて来られている可能性についてはまだよく考えてはいなかった。
それを考えてしまった時、『奴』が異なる並行世界から来た可能性―――自分の世界の『奴』が生きている可能性を考えてしまう―――だが、『『奴』が生きている事を望んでいる自分』を認めたく無いが為にその事については考えるのをやめていたのだ。
「……いや、むしろそれがわかっただけでも幸運か」
しかし、わかっているならば注意する事が出来る。とりあえず今はゼストの知る危険人物の事を把握しておく。
そして、ここまでの情報がノートに記され纏められていった。
------
自分の知り合い:遊城十代、天上院明日香、早乙女レイ、高町なのは、フェイト・T・ハラオウン
スバル・ナカジマ、ティアナ・ランスター、エリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエ
バクラの知り合い:キャロ・ル・ルシエ、ユーノ・スクライア、フェイト・T・ハラオウン
ゼストの知り合い:高町なのは、ルーテシア・アルピーノ、フェイト・T・ハラオウン、八神はやて、
シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、クロノ・ハラオウン、ユーノ・スクライア
チンク、クアットロ、ディエチ、スバル・ナカジマ、エリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエ
C.C.の知り合い:ルルーシュ・ランペルージ
危険人物:眼帯をした少女→名前を聞いておけば…
→仲間がいる可能性あり→名前はチンク、仲間にクアットロ、ディエチがいる。
ゼストの世界のなのは、スバル、エリオ、キャロ
L
バクラ→千年リングさえ引き離せれば……
禁止エリア:B-1 D-3 H-4→何か基準でもあるのか?
A-4 A-9 E-6
アグモン、ギルモン→どうでもいいが兄弟かなんか?
フェイト・T・ハラオウン、クロノ・ハラオウン→おそらく兄妹かなんかだと思われる。
→やはり兄妹らしい、但しフェイトは元々プレシアの娘らしい。
スバル・ナカジマ、ギンガ・ナカジマ→兄妹、または姉妹だと思われる。この人とも合流したほうが良いかも。
→姉妹なのは間違いないらしい、正直合流したかったがもしかしたら……
柊かがみ、柊つかさ→おそらく兄妹、あるいは姉妹であろう。
→赤の他人らしい
武蔵坊弁慶→昔の人間?あるいは同名異人の可能性あり。
C.C.、L→コードネームかなんか?
キング→王?
なのは、フェイト、八神はやての名前が二つある→誤植?
→違う世界のなのは、フェイト、八神はやての可能性あり
→クローンの可能性もあり
死者蘇生→ありえない。何かトリックがあるのでは?
→違う世界の同じ人物を連れてくれば実行可能
→死者蘇生の技術自体はあるらしいが、放送の場合はそれではないらしい。クローンの可能性もあり。
並行世界、パラレルワールド
→断言できないが可能性あり
→その可能性は高いと考えて良い。場合によっては安全そうな人物が危険人物となっている可能性があり
------
以上の事とメールの文面がノートに記される。正直な所、ゼストから聞いただけの話もあり、万丈目自身も整理仕切れてはいない為もう少し考えてみたい所だがとりあえず今は他にすべきことがある。
それは軍事基地への移動、そして中の調査しての武器の確保だ。それを行う旨についてはゼストとも話し合いをしており彼も了承してくれた。
ゼストの話では市街地は危険らしく、更に商店街では戦いが起こっているという事もあり避けられるならば避けた方が良いという話だ。
とはいえゼストはC.C.との合流の為一旦戻らなければならない。が、武器の確保は必要という事で軍事基地に万丈目が向かうという事である。
本音を言えば万丈目としてはまだ他の人に会いたくはなかった為、人通りの少ないであろう軍事基地への移動はむしろ都合が良かった。
さて、その軍事基地だが地図を見てわかる通りこの舞台の隅にある。端と端がループしている為、隅にある事自体は意味を成さないが、隣接(及びそれに相当する)エリアが海または禁止エリアになる為、実質三方が封鎖される事となる。
この状況を考えるにもしかしたらこの軍事基地には何かあるかもしれない。仮に何もなかったとしても人通りの少なさそうな軍事基地であれば使える武器が手に入る可能性が高い、行ってみる価値はあるだろう。
また、メールを見てから知った事だが施設には何か仕掛けがある可能性がある(勿論地上本部の様に罠の可能性もあるが)、どちらにしても調べてみた方が良いだろう。
勿論、移動の際には禁止エリアについては避ける様に厳重に注意しておくのは言うまでもない。軍事基地を調べた後についてはまだ考えていないがゼストを待つなり他の場所に移動するなりすれば良いだろう。
(……もし禁止エリアに入ってもすぐに首輪が爆発しないならば工場や温泉にも行けるだろうが……危険すぎるか?)
例えばA-1から西に進み禁止エリアとなっているA-9に移動したとしてもすぐさま北もしくは南にあるI-9、B-9に移動すればそのまま地図の東にあるエリアに移動出来る。
だが、禁止エリアに入りすぐさま首輪が爆発する危険もある為むやみやたらと試すわけにはいかないだろう。やはり、うっかり禁止エリアに入らない様注意をしておくべきだ。
さて、ゼストの話では放送後の御褒美の話からプレシアはこの殺し合いの早期決着を望んでいる可能性があるらしい。カードデッキの事を踏まえてもその可能性は高い為、万丈目もそれについては異論はない。
故に急がなければならない為万丈目は行動を開始する。カレーの入った容器以外をデイパックに入れ家屋を出て、空を見上げる。空には太陽が輝いている。
先程も述べたがかがみに対する罪悪感が消えたわけではない。ゼストが万丈目を責める事は無かったが、それでも万丈目が許されざる罪を犯した事は万丈目自身が解っている。
それでも最早只罪の重さによって俯いているという事はない。必ず全ての元凶であるプレシアに報復をする、その決意を持って万丈目は口を開く。
「プレシア……俺様の声など聞こえているんだろう……だったら良く聞け、俺や天上院君、レイ達をこんな目に遭わせて只で済むと思うな……絶対に貴様に報復してやるぞ……この俺……!!」
それは誰の目にも明らかな宣戦布告、こんな事をするメリットなど何処にも無い事など分かり切っている。それでも言わずにはいられない―――
「一!」
まだ喉が痛くそれ程大きい声は出せない。それでもその声はプレシアに届く様にと―――
「十!」
何処かで悲しんでいるであろう明日香やレイ達に届く様にと―――
「百!」
離れ離れになった自身のエースモンスター達に届く様にと―――
「千!」
そして死んでいった―――
「万丈目!」
「『サンダー!!』」
「……!!」
自分が喋ると同時に何処からか声が聞こえた気がした。それは鬱陶しかったが最早聞く事の叶わないであろう『奴』の声が……
「気のせいだ……そうに決まっている」
だが、気のせいだと判断し万丈目は歩き出す。禁止エリアであるB-2への侵入を避ける為とりあえず北のA-2へと向かっていく―――
「……アイツのカードも探しておいてやるか」
確かハネクリボーとネオスだったか、そう考えながら万丈目は歩く。そんな中、不意に少し昔のある出来事を思い出していた。
それは約2年程前のセブンスターズと戦っていた時、セブンスターズの中にアビドス3世という古代エジプトで無敗を誇った『デュエルの王』と呼ばれた少年がいた。実際の所無敗伝説は家臣達が手を抜いていた為という誤解されたものであったが……。
その亡霊となった彼がセブンスターズとなり現代に蘇ったのは本人によると一度で良いから対戦した『奴』の様な男と楽しい決闘をしたかったからだった。
そして『奴』との決闘に敗れた彼は天国へと戻る事になったがその際に『奴』も誘ったのだ。楽しいデュエルを一度だけで終わらすのは勿体無いと……
『おう、連れてけ連れてけ!』
『コラー!!』
『奴』の返答は100年ぐらい待ってというもので三千年待った彼にしてはあっという間だという事で彼も了承し天国に行ったのだ。
『お前等も一緒に行こうな、あの王様にもっと沢山本気の決闘教えてやろうぜ』
『断る、死んでからも貴様と一緒なんて御免だ』
『いいじゃねえか、友達だろ』
『誰が友達だ! 誰が!!』
『あれ? 万丈目君天国に行けるの?』
『どういう意味だ!!』
「100年って言った癖に……早すぎるだろ……馬鹿が……」
きっと『奴』は死んでからもデュエルをしているのだろう。万丈目はそう考えていた。
「くっ……俺は奴に一度しか勝っていないのに……」
万丈目と『奴』は幾度と無く決闘している。しかし、万丈目が勝ったのは最初の1回だけである―――
―――が、実際はその決闘は中断という形になっていて、あのまま続けば実は『奴』の伏せカードによって万丈目は敗北していたのである。その事実を万丈目は知らないが―――
「待っていろよ……不本意だが俺もそっちに行ってやる……一万年ぐらい先になるだろうがな……」
今の自分が天国に行けるかなどどうだっていい。だが、必ず『奴』の所へ行き、再び決闘すると万丈目は誓う。
しかしそれはあくまでもずっと先の話だ。今は明日香達を守る為に、プレシアへ報復をする為に行動しなければならない。故に今はこれ以上『奴』の事は考えたりはしない―――
空を見上げ今も自分を照らす太陽を見て―――そして呟いた―――
「さらば、十代……」
【1日目 日中】
【現在地 B-2】
【万丈目準@リリカル遊戯王GX】
【状態】疲労(小)、かがみに対する罪悪感(ある程度軽減)、舌と喉がヒリヒリ
【装備】なし
【道具】支給品一式、考察等を書いたノート
【思考】
基本:殺し合いには乗りたくない。仲間達と合流し、プレシアに報復する。
1.禁止エリアに注意しつつ軍事基地へ向かい、武器等を確保する。
2.これまでに得た情報を整理したい。
3.その後、ある程度はゼスト達を待つが、場合によっては禁止エリアに注意しつつ東側の施設(工場や温泉)に向かう。
4.できればもう暫くは他の参加者と会いたくはない。
5.かがみ君……すまない……。
6.余裕があればおジャマ達を探したい。
7.十代……カードぐらいは探してやる。
【備考】
※チンクとその仲間であるクアットロを警戒しています。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※デスベルトが無い事に疑問を感じています。
※パラレルワールドの可能性に気づき、その可能性は高いと考えています。
※柊かがみはLという危険人物から逃げてきたと思っています。
※かがみとつかさは他人だと思っています。
※バクラを警戒しています。
※場合によってはなのは達も危険人物の可能性があると考えています。
※明日香達が並行世界の人物の可能性がある事についてはまだ考えていません(十代生存を望んでいると考えたくないので)。
※市街地が危険だという話をゼストから聞きました。
※ゼストからプレシアが早期決着を望んでいる可能性の話を聞きました。
※ノートにはゼストとの情報交換で得た情報等やこれまでの考察内容(本編参照)とメールの文面が記載されています。
【備考】
ルーテシアのカレー@魔法少女リリカルなのは 闇の王女を完食しました。空の容器とスプーンがB-2の家屋に残っています。
|Back:[[太陽(前編)]]|時系列順で読む|Next:[[いきなりは変われない(前編)]]|
|~|投下順で読む|Next:[[いきなりは変われない(前編)]]|
|~|ゼスト・グランガイツ|Next:[[キングの狂宴/狙われた天道(前編)]]|
|~|万丈目準|Next:[[]]|
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*太陽(後編) ◆7pf62HiyTE
ここで万丈目準に関して1つのエピソードを語ろう。
約2年前、彼は度重なる敗北等からデュエルアカデミアを飛び出した事があった。その際に自身のデッキも失ってしまったがその後自らの力でカードを集め姉妹校であるデュエルアカデミアノース校に編入しトップにまで上り詰めた。
そしてその後、デュエルアカデミアとの対抗デュエルでアカデミアの代表と決闘する事になった。
万丈目が相手という事でアカデミア本校の生徒からは楽勝と見られていたが、ノース校の生徒達からは当然の事ながら代表である万丈目に大きな期待をかけられていた。だが、少なくとも万丈目にとってはこの対抗デュエルはそれだけの事では無かった。
実は万丈目には優秀な2人の兄がおり、万丈目は兄達から強大の落ちこぼれだと言われていた。
その兄達がこの対抗デュエルの場にやって来て自分達主催でテレビ中継の用意までしたのだ。その目的は万丈目をプロモートしカードゲーム界のスターにする為だ。
それだけではなく兄達は金にものを言わせたカードの山を用意し万丈目に最強のデッキを作らせようとしたのだ。万丈目グループの顔に泥を塗る様な事をするなと言った上で……。
その決闘の結果自体はこの場話ではさほど重要では無いので割愛するが、この時万丈目は大きなプレッシャーをかけられていたのだ。
とは言え、決闘の場ではそんな事など微塵も感じさせない位何時もの強気な調子であった。だが……決闘前、彼は1人洗面室で……。
『俺は兄弟の落ちこぼれであるはずがない……勝って勝って勝ち続けるんだ……』
『誰も俺の背負っている物の重さなんてわかりゃしない……勝てというだけだ……』
そう、万丈目も内心では苦しんでいたのだ。当然万丈目自身はこんな姿を誰かに見られたくは無かっただろう―――
閑話休題、ゼストが去った後万丈目は家屋にて―――
「ぐっ……はぁ……プレシアめ……」
涙を流していた―――
「許さんぞ……よくも……よくも……」
口にするのはプレシアに対する怒り―――
「この俺にこんなものを支給しやがって……!!」
その手にはスプーン、口元には赤いカレーが付着していた―――
そう、万丈目は自身に支給された3つ目の支給品である激辛のカレーを口にして涙を流していたのだ―――その姿など他の者に見せられるわけが無いだろう。
呆れている方達も多いだろうがここで少し冷静に考えてみて欲しい、万丈目はこの場に来てから既に一度このカレーを試食しておりマトモに食えたものではない事を理解しているはずだ。にも関わらず何故彼は今改めてカレーを食しているのであろうか?
そもそも泣いている理由は本当にカレーを食べたからなのか?
ここで物語は放送の前まで遡る。
これまでの話を読めばわかる通り、万丈目がかがみにカードデッキを押しつけた為かがみが死ぬ事になる可能性は非情に高かった。
仮にかがみが死ななかったとしてもカードデッキの特性とバクラの行動方針を踏まえバクラに襲われた参加者が死ぬ可能性が高い。
つまり直接的ではないにしろ万丈目が誰かを殺したという事になる。
当然の事ではあるが万丈目は誰かを殺したくはなかった。その彼にとって誰かを殺すという事は強い罪悪感を抱かせる結果となった。
いや、真面目な話その対象が殺し合いに乗っている悪人だった、もしくは万丈目本人が直接手を下したのであればまだ良かったかもしれない。
だが万丈目はあくまでも何の罪もない普通の少女に誰かの死を強要するカードデッキを押しつけたのだ。
自分が助かりたいが為に全ての責任を何も知らないかがみに押しつけたのだ。
その行為だけを見るのであればそれは誰が見ても卑下する行為と言えよう。それを自覚しているからこそ万丈目は苦しんでいるのである。
こんな事をした自分を明日香やレイ達アガデミアの連中、そしてなのは達が見ればどう思うだろうか? 軽蔑するに決まっている。そして何より自分自身がそれを嫌悪していたのだ。
だからこそ万丈目は逃げ出した。逃げ場など何処にも無いとしてもだ。
だが逃げても逃げても万丈目の側に『奴』が現れ耳にはその声が響くのだ。ノース校にいた時にも聞こえたアカデミア本校にいるはずの『奴』の……
何故『奴』が現れたのかなどどうだっていい、今の万丈目にしてみれば誰にも会いたく無かったし誰の声も聞きたくなかった。故に万丈目は逃げ続けた……
勿論、プレシアに報復するという方針には変わりは無かったし、仲間達と合流し明日香達を守りたいという意志は消えていない。だが、少なくとも今はその事すら考えられなかった。それ程までに万丈目は強い罪悪感を感じていたのである。
そして『奴』の姿が見えなくなり声も聞こえなくなり立ち止まった時、『奴』とは別の男性……ゼストが話しかけてきたのだ。
ゼストはこの殺し合いに乗っていなかった様だが万丈目にとっては誰でも大差など無かった。
すぐにでも逃げ出したかったが走り続けた事による疲労もあって動けなかったし、何よりゼストはマッハキャリバー(本当はブリッツキャリバーなのだが万丈目はマッハキャリバーだと認識していた)を持っていたのだ、逃げられるわけがない。
そして同時に爆発音が響くと共に商店街の方に赤と白の龍が現れ戦いを始めたのだ。白い方はフリードリヒの様に見えたが恐らく赤い方はバイオグリーザ同様カードデッキのモンスター……
自分と同じ様にカードデッキを支給され、同じタイムリミットに追われた参加者がいたのだ。その事が先程全てをかがみに押しつけた万丈目を押し潰そうとしていた。
すぐにでもこの場から逃げ出したかった。だが今度はゼストが側にいた為それは出来なかった。
ゼストはモンスターの事について詳しく聞きたがっていたし、自分の事を気遣っていた。だが人殺しの自分を気遣うなどかえって自分が惨めだと感じた。自分なんか放っておいてすぐにでも商店街に戻って欲しいとすら思った。
それでもゼストは万丈目から離れようとはしなかった。そうしている内に忌まわしい放送が訪れたのだ。万丈目にとってはある種の宣告とも言える……
放送に関しては恐ろしい程鮮明に耳に入ってくる。最初に禁止エリアが伝えられるが万丈目にとってはそんな事は大した問題じゃない。ほんの数分程度の話であっても何十分もかかっている様な気がした……
そして死亡者の名前がゆっくりと―――少なくとも万丈目はそう感じていたそれが―――読み上げられる―――
ザフィーラ―――
フェイト・T・ハラオウン―――
五十音で読み上げられているのは把握している。故にこの時点で既に明日香とレイの生存は確定。いや、それ以上にかがみの生存すらも確定した事になる。
だが、万丈目の心が晴れる事はない。バクラが付いているのだ、きっとタイムリミットを迎えるまでに他の参加者を見付けてそいつを喰わせたのだろう。それをさせたのは誰だ? 嗚呼、他でもない自分だ。
結局の所、放送を聞いた所で救われるわけがなかったのだ―――それでも放送は続き―――
武蔵坊弁慶―――
八神はやて―――
もうやめてくれ……そう思う万丈目であったが―――
●●●●―――
その名前が読み上げられた瞬間、万丈目の思考が停止する。
(今……何て言った?)
いや、言った事もそれが意味している事も理解している。間違いない、『奴』が死んだのだ。自分にとって最も鬱陶しい『奴』が―――
この瞬間だけはかがみに対して抱いていた罪悪感すらも忘却の彼方に消えていた。只、心の奥底からある感情が浮かび上がって―――
(……待て……ちょっと待て! これではまるで……まるで―――
アイツが死んで悲しんでいるみたいではないか!!)
―――それに気付いた瞬間、万丈目は心の中で叫んだ、そして湧き上がる感情は―――
(違う! 悲しんでなどいない! これは怒りだ! いや、アイツが死んで誰が怒るか! ああそうだ、コイツはプレシアに対する怒りだ!! 決してアイツが死んだからじゃない!)
怒り―――それでも別の感情が湧き上がるが万丈目はそれを必死に押さえ込み―――
(そうだアイツが死んで天上院君やレイが悲しむからだ! この万丈目サンダーがアイツが死んだ事で悲しむなどあるわけがない!! むしろ清々するぐらいだ!! プレシア……天上院君達を悲しませた事……絶対に許さん!!)
そう納得させた頃、放送では新たな御褒美の話が出てきていた。それを聞いている時の万丈目は既に放送前の万丈目ではなかった―――
(冗談じゃない! これ以上天上院君やレイを悲しませてたまるか!)
真面目な話、かがみに対する罪悪感を忘れていたのはその一瞬だけで、この時には既にその事は頭の中に戻ってきており今も万丈目を締め付けており正直な所逃げ出したい気持ちだ。
だがプレシアに対する怒りと明日香達を守らなければという想いが強まっているのだ。これ以上塞ぎ込んでいるわけにはいかない。
ならば何をするべきか、決まっている、まずは自分の知る事を全てゼストに話す事だ。真面目な話かがみの事で責められるかも知れない。だが、それ以上に明日香達を守りたいという想いとプレシアに対する怒りが強かったのだ。
「カードデッキ―――」
決意を新たにした万丈目は全てをゼストに語る―――その内心では未だ否定し続けている別の想いを抱え続けて―――
そして、情報交換を済ませゼストが商店街へ向かった後すぐさま万丈目は家屋に入りデイパックからカレーを取り出したのだ。
万丈目は知らないがそのカレーは奇しくもゼストのいた世界のルーテシアがなのはの為に作ったもの―――
その世界のなのははスカリエッティによって身体を弄られ味覚を失っていた。そのなのはの為にルーテシアはカレーに大量のスパイスを使用した―――味覚を失った者でも辛いと感じる様にと―――
故にそのカレーは普通の味覚を持つ者にとってはマトモに喰えたものではない。
そんな事は実際に一度試食している万丈目にだってわかっている。それでも万丈目はそれを食べたのだ、涙を流し続けながら―――何故、泣いてまでカレーを食べているのか―――その心は万丈目にしかわからない―――
だが、少なくともこんな姿など誰にも見られたくはなかった―――
「はぁ……はぁ……はぁ……俺にこんなものを喰わせた事……絶対に許さんぞ……プレシア……」
身体を震わせ涙を流しながらも万丈目はカレーを完食した。正直な所、舌と喉が痛く暫くは声を出すのも辛い状態である。万丈目はデイパックから出した水を口に含み痛みを和らげていく。
「とにかく、昼飯は終わりだ!」
と、万丈目はデイパックからノート等を取り出し、目の前のパソコンとノートに目を向ける。パソコンに関してはカレーを食べて苦しんでいる際に気を紛らわせる為に見ていたものである。
「月村すずかの友人からのメール……と」
パソコンを調べた所、6時半ぐらいにメールが届いていた。完全に信用出来るかはともかくひとまずその文面をノートに書き留めていく。続いてゼストとの情報交換で得た事を記していく。
「バクラに言われて作ったこいつが役に立つとはな……ちっ」
結局の所、万丈目にとって支給品で得たものというのはバクラの助言で作ったこのノートぐらいと言ってもよい。
殺し合いを楽しもうとしていたバクラが殺し合いを打破しようとしている万丈目の役に立ったという皮肉な話であり、万丈目の表情は複雑なものであった。
だが、ノート自体は大いに役に立った。正直な所、自分の持つ情報を口だけで伝えるにはまだ精神的に辛かったし、ゼストの様子を見る限り口だけで説明するのは難しかったからだ。
「まさかなのはがな……」
ゼストが自身の捜し人を説明する際、なのはについては特に復讐の為なら無関係な人間をも殺害する悪鬼だと語っていた。付き合いが短いとはいえ万丈目の知る彼女とはあまりにも違いすぎる為、聞いた当初は信じられなかった。
だが、バクラと話した並行世界の事を思い出した為、それについては容易に理解は出来たし、その可能性がほぼ確実だと判断出来た。そして異常なまでに彼女に対し殺意を抱くゼストに対し上手く説明する為にノートを見せたのである。
ノートを見せた所でゼストが理解してくれるかどうかは正直微妙だったが、情報交換をしていく内にゼストもそれを理解してくれた様だった。
「だが、面倒な事になったな……」
しかし、それは万丈目にとっても大きな問題である。
幸運な事に万丈目を最初に襲った眼帯の少女の名前がゼストの話からチンクという名前だと判明し彼女の仲間としてクアットロとディエチがいる事も確認出来た。何れもスカリエッティという科学者の所にいる連中らしい。
が、どうもゼストによるとスバル、エリオ、キャロもそのスカリエッティ側におり、なのはも彼の所で人造魔導師として身体を弄られ復讐鬼に落ちたという話だ。
ゼストの事情も含め詳しい事は聞けなかったが、要点を纏めるとスバル、エリオ、キャロ、そしてなのはも殺し合いに乗っている危険人物の可能性があるという事だ。
これ自体は並行世界による際なので今更疑う必要はないし、同時に可能性がある程度の話なのでそれ自体は良い。
問題は連れて来られた並行世界によっては他の参加者までも危険人物の可能性があるという事だ。
「これでは誰がアテになるかわからんぞ」
故にだ、単純になのは達と合流すれば良いかどうかの判断を付けられなくなってしまったのだ。実際に会ってみなければわからないがその相手が殺し合いに乗っていれば全てが終わりだ。
ちなみに、明日香やレイが自分とは異なる並行世界から連れて来られている可能性についてはまだよく考えてはいなかった。
それを考えてしまった時、『奴』が異なる並行世界から来た可能性―――自分の世界の『奴』が生きている可能性を考えてしまう―――だが、『『奴』が生きている事を望んでいる自分』を認めたく無いが為にその事については考えるのをやめていたのだ。
「……いや、むしろそれがわかっただけでも幸運か」
しかし、わかっているならば注意する事が出来る。とりあえず今はゼストの知る危険人物の事を把握しておく。
そして、ここまでの情報がノートに記され纏められていった。
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自分の知り合い:遊城十代、天上院明日香、早乙女レイ、高町なのは、フェイト・T・ハラオウン
スバル・ナカジマ、ティアナ・ランスター、エリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエ
バクラの知り合い:キャロ・ル・ルシエ、ユーノ・スクライア、フェイト・T・ハラオウン
ゼストの知り合い:高町なのは、ルーテシア・アルピーノ、フェイト・T・ハラオウン、八神はやて、
シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、クロノ・ハラオウン、ユーノ・スクライア
チンク、クアットロ、ディエチ、スバル・ナカジマ、エリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエ
C.C.の知り合い:ルルーシュ・ランペルージ
危険人物:眼帯をした少女→名前を聞いておけば…
→仲間がいる可能性あり→名前はチンク、仲間にクアットロ、ディエチがいる。
ゼストの世界のなのは、スバル、エリオ、キャロ
L
バクラ→千年リングさえ引き離せれば……
禁止エリア:B-1 D-3 H-4→何か基準でもあるのか?
A-4 A-9 E-6
アグモン、ギルモン→どうでもいいが兄弟かなんか?
フェイト・T・ハラオウン、クロノ・ハラオウン→おそらく兄妹かなんかだと思われる。
→やはり兄妹らしい、但しフェイトは元々プレシアの娘らしい。
スバル・ナカジマ、ギンガ・ナカジマ→兄妹、または姉妹だと思われる。この人とも合流したほうが良いかも。
→姉妹なのは間違いないらしい、正直合流したかったがもしかしたら……
柊かがみ、柊つかさ→おそらく兄妹、あるいは姉妹であろう。
→赤の他人らしい
武蔵坊弁慶→昔の人間?あるいは同名異人の可能性あり。
C.C.、L→コードネームかなんか?
キング→王?
なのは、フェイト、八神はやての名前が二つある→誤植?
→違う世界のなのは、フェイト、八神はやての可能性あり
→クローンの可能性もあり
死者蘇生→ありえない。何かトリックがあるのでは?
→違う世界の同じ人物を連れてくれば実行可能
→死者蘇生の技術自体はあるらしいが、放送の場合はそれではないらしい。クローンの可能性もあり。
並行世界、パラレルワールド
→断言できないが可能性あり
→その可能性は高いと考えて良い。場合によっては安全そうな人物が危険人物となっている可能性があり
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以上の事とメールの文面がノートに記される。正直な所、ゼストから聞いただけの話もあり、万丈目自身も整理仕切れてはいない為もう少し考えてみたい所だがとりあえず今は他にすべきことがある。
それは軍事基地への移動、そして中の調査しての武器の確保だ。それを行う旨についてはゼストとも話し合いをしており彼も了承してくれた。
ゼストの話では市街地は危険らしく、更に商店街では戦いが起こっているという事もあり避けられるならば避けた方が良いという話だ。
とはいえゼストはC.C.との合流の為一旦戻らなければならない。が、武器の確保は必要という事で軍事基地に万丈目が向かうという事である。
本音を言えば万丈目としてはまだ他の人に会いたくはなかった為、人通りの少ないであろう軍事基地への移動はむしろ都合が良かった。
さて、その軍事基地だが地図を見てわかる通りこの舞台の隅にある。端と端がループしている為、隅にある事自体は意味を成さないが、隣接(及びそれに相当する)エリアが海または禁止エリアになる為、実質三方が封鎖される事となる。
この状況を考えるにもしかしたらこの軍事基地には何かあるかもしれない。仮に何もなかったとしても人通りの少なさそうな軍事基地であれば使える武器が手に入る可能性が高い、行ってみる価値はあるだろう。
また、メールを見てから知った事だが施設には何か仕掛けがある可能性がある(勿論地上本部の様に罠の可能性もあるが)、どちらにしても調べてみた方が良いだろう。
勿論、移動の際には禁止エリアについては避ける様に厳重に注意しておくのは言うまでもない。軍事基地を調べた後についてはまだ考えていないがゼストを待つなり他の場所に移動するなりすれば良いだろう。
(……もし禁止エリアに入ってもすぐに首輪が爆発しないならば工場や温泉にも行けるだろうが……危険すぎるか?)
例えばA-1から西に進み禁止エリアとなっているA-9に移動したとしてもすぐさま北もしくは南にあるI-9、B-9に移動すればそのまま地図の東にあるエリアに移動出来る。
だが、禁止エリアに入りすぐさま首輪が爆発する危険もある為むやみやたらと試すわけにはいかないだろう。やはり、うっかり禁止エリアに入らない様注意をしておくべきだ。
さて、ゼストの話では放送後の御褒美の話からプレシアはこの殺し合いの早期決着を望んでいる可能性があるらしい。カードデッキの事を踏まえてもその可能性は高い為、万丈目もそれについては異論はない。
故に急がなければならない為万丈目は行動を開始する。カレーの入った容器以外をデイパックに入れ家屋を出て、空を見上げる。空には太陽が輝いている。
先程も述べたがかがみに対する罪悪感が消えたわけではない。ゼストが万丈目を責める事は無かったが、それでも万丈目が許されざる罪を犯した事は万丈目自身が解っている。
それでも最早只罪の重さによって俯いているという事はない。必ず全ての元凶であるプレシアに報復をする、その決意を持って万丈目は口を開く。
「プレシア……俺様の声など聞こえているんだろう……だったら良く聞け、俺や天上院君、レイ達をこんな目に遭わせて只で済むと思うな……絶対に貴様に報復してやるぞ……この俺……!!」
それは誰の目にも明らかな宣戦布告、こんな事をするメリットなど何処にも無い事など分かり切っている。それでも言わずにはいられない―――
「一!」
まだ喉が痛くそれ程大きい声は出せない。それでもその声はプレシアに届く様にと―――
「十!」
何処かで悲しんでいるであろう明日香やレイ達に届く様にと―――
「百!」
離れ離れになった自身のエースモンスター達に届く様にと―――
「千!」
そして死んでいった―――
「万丈目!」
「『サンダー!!』」
「……!!」
自分が喋ると同時に何処からか声が聞こえた気がした。それは鬱陶しかったが最早聞く事の叶わないであろう『奴』の声が……
「気のせいだ……そうに決まっている」
だが、気のせいだと判断し万丈目は歩き出す。禁止エリアであるB-2への侵入を避ける為とりあえず北のA-2へと向かっていく―――
「……アイツのカードも探しておいてやるか」
確かハネクリボーとネオスだったか、そう考えながら万丈目は歩く。そんな中、不意に少し昔のある出来事を思い出していた。
それは約2年程前のセブンスターズと戦っていた時、セブンスターズの中にアビドス3世という古代エジプトで無敗を誇った『デュエルの王』と呼ばれた少年がいた。実際の所無敗伝説は家臣達が手を抜いていた為という誤解されたものであったが……。
その亡霊となった彼がセブンスターズとなり現代に蘇ったのは本人によると一度で良いから対戦した『奴』の様な男と楽しい決闘をしたかったからだった。
そして『奴』との決闘に敗れた彼は天国へと戻る事になったがその際に『奴』も誘ったのだ。楽しいデュエルを一度だけで終わらすのは勿体無いと……
『おう、連れてけ連れてけ!』
『コラー!!』
『奴』の返答は100年ぐらい待ってというもので三千年待った彼にしてはあっという間だという事で彼も了承し天国に行ったのだ。
『お前等も一緒に行こうな、あの王様にもっと沢山本気の決闘教えてやろうぜ』
『断る、死んでからも貴様と一緒なんて御免だ』
『いいじゃねえか、友達だろ』
『誰が友達だ! 誰が!!』
『あれ? 万丈目君天国に行けるの?』
『どういう意味だ!!』
「100年って言った癖に……早すぎるだろ……馬鹿が……」
きっと『奴』は死んでからもデュエルをしているのだろう。万丈目はそう考えていた。
「くっ……俺は奴に一度しか勝っていないのに……」
万丈目と『奴』は幾度と無く決闘している。しかし、万丈目が勝ったのは最初の1回だけである―――
―――が、実際はその決闘は中断という形になっていて、あのまま続けば実は『奴』の伏せカードによって万丈目は敗北していたのである。その事実を万丈目は知らないが―――
「待っていろよ……不本意だが俺もそっちに行ってやる……一万年ぐらい先になるだろうがな……」
今の自分が天国に行けるかなどどうだっていい。だが、必ず『奴』の所へ行き、再び決闘すると万丈目は誓う。
しかしそれはあくまでもずっと先の話だ。今は明日香達を守る為に、プレシアへ報復をする為に行動しなければならない。故に今はこれ以上『奴』の事は考えたりはしない―――
空を見上げ今も自分を照らす太陽を見て―――そして呟いた―――
「さらば、十代……」
【1日目 日中】
【現在地 B-2】
【万丈目準@リリカル遊戯王GX】
【状態】疲労(小)、かがみに対する罪悪感(ある程度軽減)、舌と喉がヒリヒリ
【装備】なし
【道具】支給品一式、考察等を書いたノート
【思考】
基本:殺し合いには乗りたくない。仲間達と合流し、プレシアに報復する。
1.禁止エリアに注意しつつ軍事基地へ向かい、武器等を確保する。
2.これまでに得た情報を整理したい。
3.その後、ある程度はゼスト達を待つが、場合によっては禁止エリアに注意しつつ東側の施設(工場や温泉)に向かう。
4.できればもう暫くは他の参加者と会いたくはない。
5.かがみ君……すまない……。
6.余裕があればおジャマ達を探したい。
7.十代……カードぐらいは探してやる。
【備考】
※チンクとその仲間であるクアットロを警戒しています。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※デスベルトが無い事に疑問を感じています。
※パラレルワールドの可能性に気づき、その可能性は高いと考えています。
※柊かがみはLという危険人物から逃げてきたと思っています。
※かがみとつかさは他人だと思っています。
※バクラを警戒しています。
※場合によってはなのは達も危険人物の可能性があると考えています。
※明日香達が並行世界の人物の可能性がある事についてはまだ考えていません(十代生存を望んでいると考えたくないので)。
※市街地が危険だという話をゼストから聞きました。
※ゼストからプレシアが早期決着を望んでいる可能性の話を聞きました。
※ノートにはゼストとの情報交換で得た情報等やこれまでの考察内容(本編参照)とメールの文面が記載されています。
【備考】
ルーテシアのカレー@魔法少女リリカルなのは 闇の王女を完食しました。空の容器とスプーンがB-2の家屋に残っています。
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