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「がんばれ! ウルトラマンメビウス」(2010/02/26 (金) 04:03:07) の最新版変更点
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*がんばれ! ウルトラマンメビウス◆7pf62HiyTE
首輪から放送が鳴り響く。
プレシア・テスタロッサにより新たな禁止エリア、新たな死者、その他様々な情報が伝えられる。
彼女自身も語っていたがその情報が語られるのは1度だけ、聞き逃した所でもう1度話してくれるなんていう都合の良い話など無い。
そう、ここで禁止エリアを聞き逃したとしても彼女から教えて貰うなんて事は絶対に無く、
死んだ人の名前を聞き逃したとしても彼女がもう1度教えてくれるなんて親切な話など無い。
だが、ここにそれを聞き逃す不幸な青年がいた。彼の名はヒビノ・ミライ、ガジェット・ドローンの爆発の衝撃により気を失っていたのである。
いや、その理由は正確では無いか。彼の正体はウルトラマンメビウス、それに変身していた彼ならばその衝撃だけで気を失うのは考えにくい。
そもそも彼はその直前、1人の銀髪の男によって胸を斬られていた。それによるダメージは決して軽くはなく、暫くの休息が必要であった。
しかし彼はその銀髪の男が八神はやてという少女の命を狙っていると考え、彼女を守る為にメビウスに変身して彼を追ったのだ。その途中で不幸にもガジェットと遭遇したのである。
つまり、ガジェットによるダメージだけではなく先程の銀髪の男によって受けたダメージも気絶の要因となっているのである。
不幸な事にそのタイミングは放送直前、そこで気絶をすれば放送を聞き逃すのは明白、今後大きな支障となるのは誰の目から見てもわかることだろう。
更に言えば、放送では彼の仲間を含めた9人の名前が呼ばれた。その中には前述の『八神はやて』の名前もあった。その事を彼が知らないと言うのも不幸と言えるだろう。もっとも知った所で幸運とは言えないが……
ガジェットと戦わなければ良かったのでは? いや、結果的な話だがそうとは言い切れない。
ガジェットは生体反応に突撃を仕掛けて自爆する仕掛けが為されていた。故に、これを放置すれば他の参加者の命を脅かすのは明白、これを破壊したという判断は決して間違ってはいない。
また、少々残酷な話だが真面目な話手負いのメビウスで銀髪の男に勝てる可能性は非情に低く、それ以前に銀髪の男に追いついた段階で既に変身が解けている可能性がある。
つまり、客観的に言えばこのまま銀髪の男に向かっていっても犬死で終わる可能性が高かったという事だ。
故に、この行動による結果はベストとは言えないもののワーストとも言えないものだった。
しかし、この状況が悪い事に変わりはない。放送を聞き逃した事も大きいし、何より先程の爆発で他の参加者がやって来る可能性がある。
この状況で殺し合いに乗った参加者が現れれば―――結果など語る必要も無いだろう。
だが、ミライのダメージと疲労は大きい、このまま『何も無ければ』気を失ったままでいるだろう。そう、『何も無ければ』―――
唐突だが、とあるフロントアタッカーはとある祝福の風を見付けた時こう思ったそうだ、
『何でこんな人までここにいるの。見せしめ含めて61人じゃなかったの。』
確かにこの殺し合いの参加者は60人、見せしめを含めれば61人だ。その認識は間違っていない。
だが、現実には意志のある支給品が幾つか存在している。先程の祝福の風もそうだし、前述の銀髪の男にはとある烈火の剣精が支給されていた。また、とある竜召喚士の竜も支給品として支給されている。
当然の事だが、彼等にも首輪等何かしらの行動の制限が為されている。参加者と同一のものかは不明ではあるが、厄介な事に変わりはない。
ところで、この場ではデュエルモンスターズと呼ばれるカードゲームのカードが何枚か支給されている。
ある世界では実際にそのカードのモンスターや魔法が現実のものとなっていたが、それはこの場でも例外ではなく、やはり制限はあるものの実際に発動する事が出来る。
さて、そのカードの中には『精霊』と呼ばれる特殊なモンスターが幾つか存在している。
元々の世界ではカードが実体化し干渉を仕掛ける事など殆ど無いが、『精霊』は実際に現れ、限られた者だけではあるが視認し意思を通わせる事が出来る。
そして、そのある世界においては限られた者以外の誰でも姿を見る事が出来声も聞く事が出来た。
この場に置いてもその『精霊』と呼ばれるカードが幾つか支給されている。とある少年の相棒ともいえる『精霊』はつい先程とある湖の騎士の傍で姿を現し、何故か悲しみの泣き声を発していた。そして―――
その『精霊』―――『彼』は気が付いたら暗いデイパックの中にいた。
しかし、不幸にもデイパックの持ち主は『彼』とその兄達の存在に気付く事は無かった。
『彼』は『精霊』とはいえあまりにも無力―――故に只周囲の音や声を聞く事しか出来なかった。
声や音しか聞けなかったが、少なくともこの場が過酷な殺し合いの場だという事だけは理解した。
幸い近くに兄達がいた事はわかっていたが、暗く狭いデイパックの中ではどうする事も出来なかった。
ただ、『兄貴』やその仲間の無事と再会を願う事しか出来ないでいた。
だが、度重なる激しい振動により閉ざされたデイパックは少しずつ開いてしまい―――
先程の強い衝撃により一気に開き幾つかの中身が飛び出すと同時に―――『彼』のカードも外へと飛び出したのである。
「ううっ……酷い目にあったわぁ……」
カードから出てきた『彼』は全身が黄色く、パンツ1枚だけを穿いたモンスターである。その外見は誰が見ても弱々しく、ある意味では気色悪く、好き好んで使う奴など少ないであろう。
外見はアレでも……と考える者もいるだろうが、このモンスターの能力は非情に低く最低レベルと言っても良い。そういう面から見ても好き好んで使う奴など少ないであろう。
『彼』とその兄弟の持ち主もこう語っていた。
『確かにこいつらの攻撃力は0、見てくれも性格も間違いなく最悪』
……何故持ち主が『彼等』を使っているか疑問に思う方もいるだろうが、ここでは重要ではない為話を進めさせて貰う。
『彼』の名はおジャマイエロー、兄達であるおジャマブラック、おジャマグリーンと共にデュエルモンスターズの精霊である。
おジャマイエローは周囲を見渡し、先程まで起こっていた戦いの衝撃で飛び出したという事は理解出来―――
「ばんざーい! やっと暗くて狭い所から出られたわぁー!!」
外に出られた事を喜んだ。が、
「って、喜んでいる場合じゃないって!」
周囲を見渡すとガジェットの残骸が未だ黒煙を上げており、更に
「この人怪我しているじゃないの!?」
近くにいる青年が怪我をして倒れていたのだ。
「どうしよう、万丈目の兄貴も心配だし、この人も放っておけないし……」
と、色々考えている間に、
『6時間ぶりね。
みんな、ちゃんと聞いているかしら。』
青年の首から女性の声が響き始めたのである。
「えー!?」
それが何なのかは1度聞いているおジャマイエローも理解している。禁止エリアと死亡者を伝える放送である。これを聞き逃す事が致命的なのはおジャマイエローにだってわかる。
しかし見たところ青年が反応していない為、彼がこれを聞いている様子はない。
「どうするの!? 誰が禁止エリアとか聞くの!? もしかしてオイラ!?」
パニックに陥るおジャマイエローである。最初の放送も一応聞いてはいたが彼の兄貴である万丈目準を含めた彼の仲間達が無事程度の事しか把握出来ていない。真面目な話彼に放送内容を覚えろと言うのは無謀というものだろう。
そうこうしている間に放送は進み、
『13時からA-4
15時からA-9
17時からE-6』
「A-4……A-9……E-6……A-4……A-9……E-6……よし、覚えたわ!」
と、安堵するおジャマイエローであったが何度も復唱している内に死亡者の発表に入っていた。
「あー! どうすんの!? 兄貴の名前が呼ばれていたら……」
既に何人かの名前は聞き逃している。しかし、同じ事をもう一度伝えてくれるわけがない。
「ちょっと待って……確か名前はあいうえお順で呼ばれていたから……兄貴の名前は万丈目だから『ま』……」
が、何とか落ち着きを取り戻し放送に集中する。
『ブレンヒルト・シルト』
「ブ……はひふへほだからまだ前……」
『武蔵坊弁慶』
「む……まみむめ……ということは……」
この時点で万丈目の生存は確定した。
「ばんざーい! 兄貴は無事だわー! やったー!!」
思わず大声を張り上げ喜ぶイエローであった。が、名前の読み上げは進んでおりこの瞬間に呼ばれた名前を聞き逃していた。
そして、次の瞬間、彼の喜びは一転して落胆に変わる。
『遊城十代』
「わーい……え!? ええ!?」
その人物の名はイエローもよく知る人物だ。万丈目の友人(本人は認めていないが)であり、数少ない自分の姿が見え声も聞こえる少年遊城十代だ。
「そんな……十代のダンナが……死んだって……!?」
そのショックは大きく、それ以降の放送の中身など耳に入るわけもなかった。
「嘘でしょ……嘘って言ってくれよ……十代のだんなぁー!!」
イエローは泣き叫んだ。
過去に万丈目が光の結社によって取り込まれた際に、彼のエースカードであるおジャマ達が捨てられた事があった。
その際にイエロー達は十代の協力を得て万丈目を元に戻す事が出来たのである。
そういう経緯もあり、イエロー達にとってみれば十代も万丈目程ではないが大事な存在であった。
その十代の死はイエローに大きなショックを与えた。万丈目が生きている喜びなどとうに消えている。何しろ、次の瞬間には万丈目や自分達が死んでいるかも知れないのだ。喜べるわけがない。
「無事でいてくれよー! 兄貴ー!!」
そして泣き叫んでいる内に、
「うう……なんだ……この声は……」
ずっと気を失っていた青年が目を覚ましたのである。
「ん……?」
「あれ……君は……?」
「……もしかして、オイラの姿が見える?」
ミライとおジャマイエローは互いに自己紹介をした。
ミライにしてみればカードゲームのモンスターが実体化というのは信じがたい話ではあるものの、元々の自分の世界でもマケット怪獣と呼ばれるデータに記録された怪獣を実体化したものがある為、その類のものだとミライは理解する事にした。
「というかオイラ達の存在を忘れるなんて酷いじゃない!」
「ごめん……僕も君達がいたなんて気が付かなかったよ……」
ミライはこれまでカードという形で自分に支給された物があった事に気が付いていなかった。おジャマイエローに言われた事で彼の兄達、そしてそれとは別のカードの存在を知ったのである。
もっとも、残るおジャマ2枚についてはデイパックから飛び出さなかった為、今もデイパックに眠った状態であるが。
「このカードについては知らないの?」
と、ミライは飛び出した中身の1つであるカードをおジャマイエローに見せた。
「オイラは知らないわ……デュエルモンスターズのカードじゃ無いみたいだけど……」
そのカードは『CONFINE VENT』と書かれている。意味を考えるならば『制限』という事だが、
「何かを『制限』する……? あれ、確か……」
ミライは数時間前に遭遇した紫の髪の少女が『~~VENT』と呼ばれる技を使っていたのを思い出した。
「ひょっとしてクロノ君やあの子の持っている箱に関係するものなのかな……?」
とりあえず『CONFINE VENT』というのがそれに関係するものだという事だと納得する事にした。と、
「……今更な話だけど、どうしてあの子は僕を襲ったんだろう……」
今更ながらに少女が自分を襲った理由が気になった。いや、それ自体はあの時彼女を乗っ取った存在によるものだと納得出来ない事もない。
しかし、冷静に考えてみればそれだとするなら不自然な話である。何しろあの時は逆にモンスターが少女を襲い始めたし、モンスターをメビウスが撃破した後、
『こっちも困ってたんだ。このままじゃモンスターに食われちまいそうだったんでなぁ……
その点に関してだけは、感謝してやるよ。』
奴は少女の口からそう語ったのである。更に言えば、少女自身も時間が無いと語っており、ミライの説得など全く聞く様子がなかった。
この言葉から察するに、あの箱のモンスターを扱う為には参加者を餌にしなければならない可能性が高い。それ故に、少女は自分を襲いかかったのだろう。
真面目な話、奴自身も襲われる事は想定外の出来事であったのだろう。
モンスターは撃破した為、これ以上彼女が襲われる心配は無くなった。だが、彼女を操る奴がいる以上、一刻も早く彼女も助けにいかなければならないとミライは考えていた。
と、ここでもう1つある事に気が付いた。何故、クロノ・ハラオウンは拡声器を使って自分達を含めた仲間を呼び寄せようとしたのだろうか?
仲間を呼ぶ為―――確かにそれはあるだろうが、下手に呼びかけを行えば殺し合いに乗った危険人物を呼び寄せる事にもなりかねない。
というより、実際に赤いコートの男を呼び寄せてしまい、ミライと行動を共にしていたアグモンは殺され、同時に呼び寄せた張本人であるクロノも殺されてしまった。
つまりだ、拡声器を使うという行為はあまりにもリスクの高い手段であったのだ。ミライ自身もそれは理解していたものの、クロノにあった時には、
『でも流石クロノ君だね、こんな状況で周囲に呼びかけるなんて……普通は出来ないよ!』
クロノの勇敢さを称えてはいた。
だが、よくよく考えてみれば真面目で冷静沈着なクロノがそんな無謀な事をするだろうか? あまりにも不自然すぎる。
しかし、仮に『そうせざるを得ない理由』があったとしたら?
「そうか……クロノ君が僕達を呼んだ本当の理由は……」
クロノもまた例の箱を持っていた。つまり、彼の手元にも参加者を餌にしなければならないモンスターがいたという事だ。
という事は呼び寄せた理由は参加者を集めて―――
餌にする為? クロノがそんな事するわけがない、そんな事するぐらいなら自分自身を餌にするはずだ。
「仲間を集めてモンスターを撃退する為……」
そう考えたミライであった。
さて、そのクロノは例の箱を持っていって赤いコートの男に挑んだが敗れ去った。果たして箱のモンスターはどうなったであろうか?
同時に撃破されたならばまだ良い、だが仮に未だ健在だとするならば? 恐らく、今も参加者を餌にしようとその牙をむける可能性があるだろう。
また、同じ様な箱が2つだけとは限らない。他にも箱が存在する可能性がある。とうぜんその箱のモンスターも参加者を餌にしようとするはずだ。
だとすればどうする? 考えるまでもない、その箱に宿るモンスターを撃破しなければならないだろう。
「わかった、クロノ君……」
死んでいったクロノの為にも箱のモンスターは撃破する、ミライはそう心に決めた。
「だけど今は……」
そして、
「そろそろ行かないと……!」
と、ゆっくりと立ち上がる。
「ちょ、ミライのダンナ、一体どうしたの!?」
「ごめんおジャマイエロー、急がないといけないんだ」
飛び出したデイパックの中身を急いで元に戻すミライであった。ちなみに、おジャマイエローは今の状態だと声は聞こえても物に干渉を行う事は出来ない様であった。
「急ぐって……」
「はやてちゃんを守らないといけないんだ……」
「って、ミライのダンナ怪我してるじゃないの!? そんな状態で……」
「うん、でも大丈夫、さっきのでもう十分休んだから」
確かに幸か不幸か先程気絶した事とおジャマイエローと自己紹介などをした事によりある程度身体を休める事は出来ている。
それでも先程のダメージが回復しきる筈が無いし、今更になって気が付いたがどうもこの場では何時もよりも力が出せないでいる。
いや、それ以前にメビウスに変身していても何時もと大きさが変わらない事も気にはなっている。
また、変身してまだ間もない為、今のところ再変身は不可能だろう。
大男からアグモンを守る為に変身した後で赤いコートの男と遭遇した時には変身出来ず、少女と遭遇した時に変身した後で銀髪の男を追い掛ける際には変身出来た2つの状況を考えるに恐らくは再変身には時間が関係しているとミライは考えた。
赤いコートの男と遭遇したのはアグモンを助けた時から約1時間……そして、先程変身したのは少女と遭遇した時から約2時間……つまり少なくても1時間以上長くても2時間置かなければ再変身は不可能ということだろう。
時間以外にも変身出来なかった要因がもしかしたらあるかもしれないが、どちらにしても今の所変身が出来ない事だけはほぼ間違いない。
真面目な話もう少し正確な制限を把握したいところだが下手に試すわけにもいかない以上、その辺は現状諦めるしかない。
何にせよ現状を考えればおジャマイエローの言う通り無謀でしかない。
だが、それでもミライは行く。ミライは人々を守る戦士なのだから、自分のダメージや状態を言い訳に守る事を止めたりはしない。
「そうだ、そういえばさっき放送あったよね」
「え?」
「聞き逃してしまったから教えてほしいんだ、移動しながらになってしまうけどいいかな?」
「わかったわ。でも、オイラも全部聞きとれたワケじゃないけど……」
「わかっている所だけでもいいから、大事な事なんだ」
そして、おジャマイエローと共にミライは走り出す。あの銀髪の男からはやてを守る為に、参加者を餌にするモンスターを撃破する為に、そして仲間を集めこの殺し合いを打破する為に―――
その最中、ミライはおジャマイエローから禁止エリアの情報を聞いたが、現状では自分達の近くには無い為大きな問題にはならないとミライは判断した。
「後は……誰が呼ばれていたかわかるかい?」
「オイラもあんまり聞き取れなかったけど……」
「覚えている範囲で良いから」
「ブレ何とかという人と……ムサ何とかという人……」
「ちょっと待って……」
ミライは名簿を確認する。ブレンヒルト・シルトと武蔵坊弁慶の事で良いだろう。
「それから……十代のダンナが呼ばれていたわ……万丈目の兄貴の友だ……いや、ライバ……いや、むしろ敵だったかしら……」
「そうか……ところでその万丈目って人は……」
「オイラ達の兄貴で大事な相棒よ、今の所まだ無事みたいだけど……ミライのダンナ、何とか……」
「わかっているよ、きっと君の相棒も探して再会させてみせるから」
万丈目がおジャマイエロー達にとって大事な相棒であり、先程呼ばれたらしい十代が万丈目の大事な友人だとミライは理解した。何にせよ何としてでも万丈目とおジャマイエローを再会させたいとミライは考えていた。
「後はちょっと誰が呼ばれたかは……」
「わかった……みんな無事だと良いけど……」
真面目な話、死者を出してしまった事は悔しく思っている。しかし、今の自分がすべき事は泣く事ではなく、一刻も早く銀髪の男い追いつき彼からはやてを守る事だ。
故に高町なのはやフェイト・T・ハラオウン、そしてヴィータ達の無事を願いながら足を進めていく。
「そういえば、おジャマイエローや万丈目君がいた世界ってどんな世界だった?」
と、ミライはおジャマイエローの世界の事を聞く。
おジャマイエローの話によると万丈目達は突如デュエルモンスターズのカードが実体化する異世界に飛ばされ、そこになのは達時空管理局の人達が助けに来たという話だった。
ちなみにやって来たメンバーの中にはアグモンが話していたキャロ・ル・ルシエやエリオ・モンディアルの名前もあったが、
「キャロちゃんやなのはちゃん達が同じ管理局にいたの!?」
アグモンの話ではキャロ達が管理局にいたという話は聞いていない。しかもクロノの口からもキャロの名前は出ていない。正直な所それが気になったのであるがそれ以上に、
「それにリンディ提督やクロノ君はいなかったの? 幾ら何でもそんな子供達だけを送り込む何て……」
まだ幼いなのは達だけを送り込んだ管理局に憤りを感じていた。しかし
「ちょっと……ミライのダンナ……なのはとフェイトは兄貴達よりも年上で大人だったと思うけど……」
「!?」
おジャマイエローの思わぬツッコミが入ったのである。
「……あれ? ……万丈目君って何歳だった?」
「確か17だったと思うけど……それがどうかした?」
「……なのはちゃん達って何歳ぐらいだった?」
「何歳かまではわからないけど……」
おジャマイエローの話ではなのはとフェイトが万丈目よりも年上の大人で、スバル・ナカジマとティアナ・ランスターが万丈目と同じぐらいで、キャロとエリオが万丈目よりも何歳か幼い子供という事だった。
「そういう事か……」
実の所、参加者が異なる時間軸から連れて来られている可能性自体はミライ自身もある程度推測出来ていた。だが、それでも多少状況が変わる程度で極端に変わるとは考えていなかった。
しかしおジャマイエローの話から考えれば10年単位での時間軸の差異が出てくる事になる。10年の差異があるならば外見上にしても精神的な面にしても大きく変化が生じるに決まっている。
「ミライのダンナ、大丈夫?」
「うん、大丈夫」
とはいえ、今のミライにはこれがどれぐらいの影響を及ぼすかはわからない。今はその事も頭に置いて行動するしかないだろう。
とりあえず、おジャマイエローの世界の話は並行世界の事だと結論付ける事にした。
(そうだ……なのはちゃん達がどの世界から来たって関係ない……どの世界のなのはちゃん達でもきっと……それにキャロちゃん達も管理局にいるなら……)
間違いなくこの殺し合いを打破する為に行動する―――ミライはそう信じている。
(だから僕は……僕のやるべき事をやるだけだ……!)
故にミライは止まらない、あの銀髪の男からはやてを守る為に足を進めていた。その一方で、
(兄貴……十代のダンナが死んで……いや、兄貴の事だから泣いてないか……兄貴……どうしているの……オイラ達がいなくて泣いてなんかいないよね……)
おジャマイエローは遠く離れた相棒の身を案じていた。
ところが、ミライもおジャマイエローも気付かないある意味では不幸な事態が2つ起こっていた。
1つはおジャマイエローが放送の一部を聞き逃していた為……はやて、フェイト等の死亡が伝えられた事は知らないという事。
そしてもう1つは、はやての元へ向かったであろう銀髪の男が翠屋のある南へと進む方向を変えたのに対し、ミライ達は方向を変えることなく真っ直ぐ西へ進んでいた事だ。このまま進めば時期にE-1に入ってしまうだろう。
とはいえ、ミライは気絶しており、おジャマイエローも禁止エリアの記憶や万丈目の心配、そして十代の死亡があった為聞き取れなかった事はある意味仕方がない。
また、銀髪の男が既にミライが訪れた翠屋方面に向かう事など予想出来るわけもない為、これまた仕方がない話である。
それでもミライ達は足を止めず、人々を守り殺し合いを打破する為に、離れ離れになった相棒と再会する為に行動するだろう―――故にこの言葉を―――
がんばれ! ウルトラマンメビウス
がんばれ! おジャマイエロー
【1日目 日中】
【現在地 E-2 西部 大通り】
【ヒビノ・ミライ@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは】
【状態】疲労(中)、胸に切り傷(回復中)、30分変身不可(メビウス)
【装備】メビウスブレス@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは
【道具】支給品一式、『コンファインベント』@仮面ライダーリリカル龍騎、
『おジャマイエロー』&『おジャマブラック』&『おジャマグリーン』@リリカル遊戯王GX
【思考】
基本:仲間と力を合わせて殺し合いを止める。
1.銀髪の男(=セフィロス)からはやてを守る。
2.一刻も早く他の参加者と合流して、殺し合いを止める策を考える。
3.助けを求める全ての参加者を助ける。
4.なのは、フェイト、ユーノ、はやて、キャロ、万丈目と合流したい。
5.ヴィータが心配。
6.カードデッキを見付けた場合はそのモンスターを撃破する。
7.変身制限などもう少し正確な制限を把握したい(が、これを優先するつもりはない)。
8.アグモンを襲った大男(弁慶)、赤いコートの男(アーカード)、紫髪の少女(かがみ)を乗っ取った敵(バクラ)やその他の未知の敵たちを警戒。
9.自分の為に他の人間の命を奪う者達に対する怒り。
10.さっき聞こえた鳴き声は一体……
【備考】
※メビウスブレスは没収不可だったので、その分、ランダム支給品から引かれています。
※制限に気が付きました。また再変身可能までの時間については最低1時間以上、長くても約2時間置けば再変身可能という所まで把握しました。
※デジタルワールドについて説明を受けましたが、説明したのがアグモンなので完璧には理解していません。
※おジャマイエローから彼の世界の概要や彼の知り合いについて聞きました。但し、レイと明日香の事を話したかどうかは不明です(2人が参加している事をおジャマイエローが把握していない為)。
※参加者は異なる並行世界及び異なる時間軸から連れて来られた可能性がある事に気付きました。またなのは達が10年後の姿(sts)になっている可能性に気付きました。
※スーパーにかがみが来ていたことに気付きました。
また、少なくとももう1人立ち寄っており、その人間が殺し合いに乗っている可能性は低いと思っています。
※彼が倒れていたE-3大通りの近くに、デュエルディスク@リリカル遊戯王GX、
治療の神 ディアン・ケト(ディスクにセットした状態)@リリカル遊戯王GXが放置されています。
また、ミライはその存在に気付いていません。
※第2回放送を聞き逃しました、おジャマイエローから禁止エリアとブレンヒルト、弁慶、万丈目、十代の生死は聞きましたがそれ以外は把握していません。またおジャマイエローもそれ以上の事は把握していません。
おジャマブラック、おジャマグリーンが放送内容をどれくらい把握しているかは不明です。
|Back:[[想いだけでも/力だけでも]]|時系列順で読む|Next:[[MISSING KING]]|
|Back:[[想いだけでも/力だけでも]]|投下順で読む|Next:[[MISSING KING]]|
|Back:[[Alive a life~ゲームは止まらない]]|ヒビノ・ミライ|Next:[[]]|
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*がんばれ! ウルトラマンメビウス◆7pf62HiyTE
首輪から放送が鳴り響く。
プレシア・テスタロッサにより新たな禁止エリア、新たな死者、その他様々な情報が伝えられる。
彼女自身も語っていたがその情報が語られるのは1度だけ、聞き逃した所でもう1度話してくれるなんていう都合の良い話など無い。
そう、ここで禁止エリアを聞き逃したとしても彼女から教えて貰うなんて事は絶対に無く、
死んだ人の名前を聞き逃したとしても彼女がもう1度教えてくれるなんて親切な話など無い。
だが、ここにそれを聞き逃す不幸な青年がいた。彼の名はヒビノ・ミライ、ガジェット・ドローンの爆発の衝撃により気を失っていたのである。
いや、その理由は正確では無いか。彼の正体はウルトラマンメビウス、それに変身していた彼ならばその衝撃だけで気を失うのは考えにくい。
そもそも彼はその直前、1人の銀髪の男によって胸を斬られていた。それによるダメージは決して軽くはなく、暫くの休息が必要であった。
しかし彼はその銀髪の男が八神はやてという少女の命を狙っていると考え、彼女を守る為にメビウスに変身して彼を追ったのだ。その途中で不幸にもガジェットと遭遇したのである。
つまり、ガジェットによるダメージだけではなく先程の銀髪の男によって受けたダメージも気絶の要因となっているのである。
不幸な事にそのタイミングは放送直前、そこで気絶をすれば放送を聞き逃すのは明白、今後大きな支障となるのは誰の目から見てもわかることだろう。
更に言えば、放送では彼の仲間を含めた9人の名前が呼ばれた。その中には前述の『八神はやて』の名前もあった。その事を彼が知らないと言うのも不幸と言えるだろう。もっとも知った所で幸運とは言えないが……
ガジェットと戦わなければ良かったのでは? いや、結果的な話だがそうとは言い切れない。
ガジェットは生体反応に突撃を仕掛けて自爆する仕掛けが為されていた。故に、これを放置すれば他の参加者の命を脅かすのは明白、これを破壊したという判断は決して間違ってはいない。
また、少々残酷な話だが真面目な話手負いのメビウスで銀髪の男に勝てる可能性は非情に低く、それ以前に銀髪の男に追いついた段階で既に変身が解けている可能性がある。
つまり、客観的に言えばこのまま銀髪の男に向かっていっても犬死で終わる可能性が高かったという事だ。
故に、この行動による結果はベストとは言えないもののワーストとも言えないものだった。
しかし、この状況が悪い事に変わりはない。放送を聞き逃した事も大きいし、何より先程の爆発で他の参加者がやって来る可能性がある。
この状況で殺し合いに乗った参加者が現れれば―――結果など語る必要も無いだろう。
だが、ミライのダメージと疲労は大きい、このまま『何も無ければ』気を失ったままでいるだろう。そう、『何も無ければ』―――
唐突だが、とあるフロントアタッカーはとある祝福の風を見付けた時こう思ったそうだ、
『何でこんな人までここにいるの。見せしめ含めて61人じゃなかったの。』
確かにこの殺し合いの参加者は60人、見せしめを含めれば61人だ。その認識は間違っていない。
だが、現実には意志のある支給品が幾つか存在している。先程の祝福の風もそうだし、前述の銀髪の男にはとある烈火の剣精が支給されていた。また、とある竜召喚士の竜も支給品として支給されている。
当然の事だが、彼等にも首輪等何かしらの行動の制限が為されている。参加者と同一のものかは不明ではあるが、厄介な事に変わりはない。
ところで、この場ではデュエルモンスターズと呼ばれるカードゲームのカードが何枚か支給されている。
ある世界では実際にそのカードのモンスターや魔法が現実のものとなっていたが、それはこの場でも例外ではなく、やはり制限はあるものの実際に発動する事が出来る。
さて、そのカードの中には『精霊』と呼ばれる特殊なモンスターが幾つか存在している。
元々の世界ではカードが実体化し干渉を仕掛ける事など殆ど無いが、『精霊』は実際に現れ、限られた者だけではあるが視認し意思を通わせる事が出来る。
そして、そのある世界においては限られた者以外の誰でも姿を見る事が出来声も聞く事が出来た。
この場に置いてもその『精霊』と呼ばれるカードが幾つか支給されている。とある少年の相棒ともいえる『精霊』はつい先程とある湖の騎士の傍で姿を現し、何故か悲しみの泣き声を発していた。そして―――
その『精霊』―――『彼』は気が付いたら暗いデイパックの中にいた。
しかし、不幸にもデイパックの持ち主は『彼』とその兄達の存在に気付く事は無かった。
『彼』は『精霊』とはいえあまりにも無力―――故に只周囲の音や声を聞く事しか出来なかった。
声や音しか聞けなかったが、少なくともこの場が過酷な殺し合いの場だという事だけは理解した。
幸い近くに兄達がいた事はわかっていたが、暗く狭いデイパックの中ではどうする事も出来なかった。
ただ、『兄貴』やその仲間の無事と再会を願う事しか出来ないでいた。
だが、度重なる激しい振動により閉ざされたデイパックは少しずつ開いてしまい―――
先程の強い衝撃により一気に開き幾つかの中身が飛び出すと同時に―――『彼』のカードも外へと飛び出したのである。
「ううっ……酷い目にあったわぁ……」
カードから出てきた『彼』は全身が黄色く、パンツ1枚だけを穿いたモンスターである。その外見は誰が見ても弱々しく、ある意味では気色悪く、好き好んで使う奴など少ないであろう。
外見はアレでも……と考える者もいるだろうが、このモンスターの能力は非情に低く最低レベルと言っても良い。そういう面から見ても好き好んで使う奴など少ないであろう。
『彼』とその兄弟の持ち主もこう語っていた。
『確かにこいつらの攻撃力は0、見てくれも性格も間違いなく最悪』
……何故持ち主が『彼等』を使っているか疑問に思う方もいるだろうが、ここでは重要ではない為話を進めさせて貰う。
『彼』の名はおジャマイエロー、兄達であるおジャマブラック、おジャマグリーンと共にデュエルモンスターズの精霊である。
おジャマイエローは周囲を見渡し、先程まで起こっていた戦いの衝撃で飛び出したという事は理解出来―――
「ばんざーい! やっと暗くて狭い所から出られたわぁー!!」
外に出られた事を喜んだ。が、
「って、喜んでいる場合じゃないって!」
周囲を見渡すとガジェットの残骸が未だ黒煙を上げており、更に
「この人怪我しているじゃないの!?」
近くにいる青年が怪我をして倒れていたのだ。
「どうしよう、万丈目の兄貴も心配だし、この人も放っておけないし……」
と、色々考えている間に、
『6時間ぶりね。
みんな、ちゃんと聞いているかしら。』
青年の首から女性の声が響き始めたのである。
「えー!?」
それが何なのかは1度聞いているおジャマイエローも理解している。禁止エリアと死亡者を伝える放送である。これを聞き逃す事が致命的なのはおジャマイエローにだってわかる。
しかし見たところ青年が反応していない為、彼がこれを聞いている様子はない。
「どうするの!? 誰が禁止エリアとか聞くの!? もしかしてオイラ!?」
パニックに陥るおジャマイエローである。最初の放送も一応聞いてはいたが彼の兄貴である万丈目準を含めた彼の仲間達が無事程度の事しか把握出来ていない。真面目な話彼に放送内容を覚えろと言うのは無謀というものだろう。
そうこうしている間に放送は進み、
『13時からA-4
15時からA-9
17時からE-6』
「A-4……A-9……E-6……A-4……A-9……E-6……よし、覚えたわ!」
と、安堵するおジャマイエローであったが何度も復唱している内に死亡者の発表に入っていた。
「あー! どうすんの!? 兄貴の名前が呼ばれていたら……」
既に何人かの名前は聞き逃している。しかし、同じ事をもう一度伝えてくれるわけがない。
「ちょっと待って……確か名前はあいうえお順で呼ばれていたから……兄貴の名前は万丈目だから『ま』……」
が、何とか落ち着きを取り戻し放送に集中する。
『ブレンヒルト・シルト』
「ブ……はひふへほだからまだ前……」
『武蔵坊弁慶』
「む……まみむめ……ということは……」
この時点で万丈目の生存は確定した。
「ばんざーい! 兄貴は無事だわー! やったー!!」
思わず大声を張り上げ喜ぶイエローであった。が、名前の読み上げは進んでおりこの瞬間に呼ばれた名前を聞き逃していた。
そして、次の瞬間、彼の喜びは一転して落胆に変わる。
『遊城十代』
「わーい……え!? ええ!?」
その人物の名はイエローもよく知る人物だ。万丈目の友人(本人は認めていないが)であり、数少ない自分の姿が見え声も聞こえる少年遊城十代だ。
「そんな……十代のダンナが……死んだって……!?」
そのショックは大きく、それ以降の放送の中身など耳に入るわけもなかった。
「嘘でしょ……嘘って言ってくれよ……十代のだんなぁー!!」
イエローは泣き叫んだ。
過去に万丈目が光の結社によって取り込まれた際に、彼のエースカードであるおジャマ達が捨てられた事があった。
その際にイエロー達は十代の協力を得て万丈目を元に戻す事が出来たのである。
そういう経緯もあり、イエロー達にとってみれば十代も万丈目程ではないが大事な存在であった。
その十代の死はイエローに大きなショックを与えた。万丈目が生きている喜びなどとうに消えている。何しろ、次の瞬間には万丈目や自分達が死んでいるかも知れないのだ。喜べるわけがない。
「無事でいてくれよー! 兄貴ー!!」
そして泣き叫んでいる内に、
「うう……なんだ……この声は……」
ずっと気を失っていた青年が目を覚ましたのである。
「ん……?」
「あれ……君は……?」
「……もしかして、オイラの姿が見える?」
ミライとおジャマイエローは互いに自己紹介をした。
ミライにしてみればカードゲームのモンスターが実体化というのは信じがたい話ではあるものの、元々の自分の世界でもマケット怪獣と呼ばれるデータに記録された怪獣を実体化したものがある為、その類のものだとミライは理解する事にした。
「というかオイラ達の存在を忘れるなんて酷いじゃない!」
「ごめん……僕も君達がいたなんて気が付かなかったよ……」
ミライはこれまでカードという形で自分に支給された物があった事に気が付いていなかった。おジャマイエローに言われた事で彼の兄達、そしてそれとは別のカードの存在を知ったのである。
もっとも、残るおジャマ2枚についてはデイパックから飛び出さなかった為、今もデイパックに眠った状態であるが。
「このカードについては知らないの?」
と、ミライは飛び出した中身の1つであるカードをおジャマイエローに見せた。
「オイラは知らないわ……デュエルモンスターズのカードじゃ無いみたいだけど……」
そのカードは『CONFINE VENT』と書かれている。意味を考えるならば『制限』という事だが、
「何かを『制限』する……? あれ、確か……」
ミライは数時間前に遭遇した紫の髪の少女が『~~VENT』と呼ばれる技を使っていたのを思い出した。
「ひょっとしてクロノ君やあの子の持っている箱に関係するものなのかな……?」
とりあえず『CONFINE VENT』というのがそれに関係するものだという事だと納得する事にした。と、
「……今更な話だけど、どうしてあの子は僕を襲ったんだろう……」
今更ながらに少女が自分を襲った理由が気になった。いや、それ自体はあの時彼女を乗っ取った存在によるものだと納得出来ない事もない。
しかし、冷静に考えてみればそれだとするなら不自然な話である。何しろあの時は逆にモンスターが少女を襲い始めたし、モンスターをメビウスが撃破した後、
『こっちも困ってたんだ。このままじゃモンスターに食われちまいそうだったんでなぁ……
その点に関してだけは、感謝してやるよ。』
奴は少女の口からそう語ったのである。更に言えば、少女自身も時間が無いと語っており、ミライの説得など全く聞く様子がなかった。
この言葉から察するに、あの箱のモンスターを扱う為には参加者を餌にしなければならない可能性が高い。それ故に、少女は自分を襲いかかったのだろう。
真面目な話、奴自身も襲われる事は想定外の出来事であったのだろう。
モンスターは撃破した為、これ以上彼女が襲われる心配は無くなった。だが、彼女を操る奴がいる以上、一刻も早く彼女も助けにいかなければならないとミライは考えていた。
と、ここでもう1つある事に気が付いた。何故、クロノ・ハラオウンは拡声器を使って自分達を含めた仲間を呼び寄せようとしたのだろうか?
仲間を呼ぶ為―――確かにそれはあるだろうが、下手に呼びかけを行えば殺し合いに乗った危険人物を呼び寄せる事にもなりかねない。
というより、実際に赤いコートの男を呼び寄せてしまい、ミライと行動を共にしていたアグモンは殺され、同時に呼び寄せた張本人であるクロノも殺されてしまった。
つまりだ、拡声器を使うという行為はあまりにもリスクの高い手段であったのだ。ミライ自身もそれは理解していたものの、クロノにあった時には、
『でも流石クロノ君だね、こんな状況で周囲に呼びかけるなんて……普通は出来ないよ!』
クロノの勇敢さを称えてはいた。
だが、よくよく考えてみれば真面目で冷静沈着なクロノがそんな無謀な事をするだろうか? あまりにも不自然すぎる。
しかし、仮に『そうせざるを得ない理由』があったとしたら?
「そうか……クロノ君が僕達を呼んだ本当の理由は……」
クロノもまた例の箱を持っていた。つまり、彼の手元にも参加者を餌にしなければならないモンスターがいたという事だ。
という事は呼び寄せた理由は参加者を集めて―――
餌にする為? クロノがそんな事するわけがない、そんな事するぐらいなら自分自身を餌にするはずだ。
「仲間を集めてモンスターを撃退する為……」
そう考えたミライであった。
さて、そのクロノは例の箱を持っていって赤いコートの男に挑んだが敗れ去った。果たして箱のモンスターはどうなったであろうか?
同時に撃破されたならばまだ良い、だが仮に未だ健在だとするならば? 恐らく、今も参加者を餌にしようとその牙をむける可能性があるだろう。
また、同じ様な箱が2つだけとは限らない。他にも箱が存在する可能性がある。とうぜんその箱のモンスターも参加者を餌にしようとするはずだ。
だとすればどうする? 考えるまでもない、その箱に宿るモンスターを撃破しなければならないだろう。
「わかった、クロノ君……」
死んでいったクロノの為にも箱のモンスターは撃破する、ミライはそう心に決めた。
「だけど今は……」
そして、
「そろそろ行かないと……!」
と、ゆっくりと立ち上がる。
「ちょ、ミライのダンナ、一体どうしたの!?」
「ごめんおジャマイエロー、急がないといけないんだ」
飛び出したデイパックの中身を急いで元に戻すミライであった。ちなみに、おジャマイエローは今の状態だと声は聞こえても物に干渉を行う事は出来ない様であった。
「急ぐって……」
「はやてちゃんを守らないといけないんだ……」
「って、ミライのダンナ怪我してるじゃないの!? そんな状態で……」
「うん、でも大丈夫、さっきのでもう十分休んだから」
確かに幸か不幸か先程気絶した事とおジャマイエローと自己紹介などをした事によりある程度身体を休める事は出来ている。
それでも先程のダメージが回復しきる筈が無いし、今更になって気が付いたがどうもこの場では何時もよりも力が出せないでいる。
いや、それ以前にメビウスに変身していても何時もと大きさが変わらない事も気にはなっている。
また、変身してまだ間もない為、今のところ再変身は不可能だろう。
大男からアグモンを守る為に変身した後で赤いコートの男と遭遇した時には変身出来ず、少女と遭遇した時に変身した後で銀髪の男を追い掛ける際には変身出来た2つの状況を考えるに恐らくは再変身には時間が関係しているとミライは考えた。
赤いコートの男と遭遇したのはアグモンを助けた時から約1時間……そして、先程変身したのは少女と遭遇した時から約2時間……つまり少なくても1時間以上長くても2時間置かなければ再変身は不可能ということだろう。
時間以外にも変身出来なかった要因がもしかしたらあるかもしれないが、どちらにしても今の所変身が出来ない事だけはほぼ間違いない。
真面目な話もう少し正確な制限を把握したいところだが下手に試すわけにもいかない以上、その辺は現状諦めるしかない。
何にせよ現状を考えればおジャマイエローの言う通り無謀でしかない。
だが、それでもミライは行く。ミライは人々を守る戦士なのだから、自分のダメージや状態を言い訳に守る事を止めたりはしない。
「そうだ、そういえばさっき放送あったよね」
「え?」
「聞き逃してしまったから教えてほしいんだ、移動しながらになってしまうけどいいかな?」
「わかったわ。でも、オイラも全部聞きとれたワケじゃないけど……」
「わかっている所だけでもいいから、大事な事なんだ」
そして、おジャマイエローと共にミライは走り出す。あの銀髪の男からはやてを守る為に、参加者を餌にするモンスターを撃破する為に、そして仲間を集めこの殺し合いを打破する為に―――
その最中、ミライはおジャマイエローから禁止エリアの情報を聞いたが、現状では自分達の近くには無い為大きな問題にはならないとミライは判断した。
「後は……誰が呼ばれていたかわかるかい?」
「オイラもあんまり聞き取れなかったけど……」
「覚えている範囲で良いから」
「ブレ何とかという人と……ムサ何とかという人……」
「ちょっと待って……」
ミライは名簿を確認する。ブレンヒルト・シルトと武蔵坊弁慶の事で良いだろう。
「それから……十代のダンナが呼ばれていたわ……万丈目の兄貴の友だ……いや、ライバ……いや、むしろ敵だったかしら……」
「そうか……ところでその万丈目って人は……」
「オイラ達の兄貴で大事な相棒よ、今の所まだ無事みたいだけど……ミライのダンナ、何とか……」
「わかっているよ、きっと君の相棒も探して再会させてみせるから」
万丈目がおジャマイエロー達にとって大事な相棒であり、先程呼ばれたらしい十代が万丈目の大事な友人だとミライは理解した。何にせよ何としてでも万丈目とおジャマイエローを再会させたいとミライは考えていた。
「後はちょっと誰が呼ばれたかは……」
「わかった……みんな無事だと良いけど……」
真面目な話、死者を出してしまった事は悔しく思っている。しかし、今の自分がすべき事は泣く事ではなく、一刻も早く銀髪の男い追いつき彼からはやてを守る事だ。
故に高町なのはやフェイト・T・ハラオウン、そしてヴィータ達の無事を願いながら足を進めていく。
「そういえば、おジャマイエローや万丈目君がいた世界ってどんな世界だった?」
と、ミライはおジャマイエローの世界の事を聞く。
おジャマイエローの話によると万丈目達は突如デュエルモンスターズのカードが実体化する異世界に飛ばされ、そこになのは達時空管理局の人達が助けに来たという話だった。
ちなみにやって来たメンバーの中にはアグモンが話していたキャロ・ル・ルシエやエリオ・モンディアルの名前もあったが、
「キャロちゃんやなのはちゃん達が同じ管理局にいたの!?」
アグモンの話ではキャロ達が管理局にいたという話は聞いていない。しかもクロノの口からもキャロの名前は出ていない。正直な所それが気になったのであるがそれ以上に、
「それにリンディ提督やクロノ君はいなかったの? 幾ら何でもそんな子供達だけを送り込む何て……」
まだ幼いなのは達だけを送り込んだ管理局に憤りを感じていた。しかし
「ちょっと……ミライのダンナ……なのはとフェイトは兄貴達よりも年上で大人だったと思うけど……」
「!?」
おジャマイエローの思わぬツッコミが入ったのである。
「……あれ? ……万丈目君って何歳だった?」
「確か17だったと思うけど……それがどうかした?」
「……なのはちゃん達って何歳ぐらいだった?」
「何歳かまではわからないけど……」
おジャマイエローの話ではなのはとフェイトが万丈目よりも年上の大人で、スバル・ナカジマとティアナ・ランスターが万丈目と同じぐらいで、キャロとエリオが万丈目よりも何歳か幼い子供という事だった。
「そういう事か……」
実の所、参加者が異なる時間軸から連れて来られている可能性自体はミライ自身もある程度推測出来ていた。だが、それでも多少状況が変わる程度で極端に変わるとは考えていなかった。
しかしおジャマイエローの話から考えれば10年単位での時間軸の差異が出てくる事になる。10年の差異があるならば外見上にしても精神的な面にしても大きく変化が生じるに決まっている。
「ミライのダンナ、大丈夫?」
「うん、大丈夫」
とはいえ、今のミライにはこれがどれぐらいの影響を及ぼすかはわからない。今はその事も頭に置いて行動するしかないだろう。
とりあえず、おジャマイエローの世界の話は並行世界の事だと結論付ける事にした。
(そうだ……なのはちゃん達がどの世界から来たって関係ない……どの世界のなのはちゃん達でもきっと……それにキャロちゃん達も管理局にいるなら……)
間違いなくこの殺し合いを打破する為に行動する―――ミライはそう信じている。
(だから僕は……僕のやるべき事をやるだけだ……!)
故にミライは止まらない、あの銀髪の男からはやてを守る為に足を進めていた。その一方で、
(兄貴……十代のダンナが死んで……いや、兄貴の事だから泣いてないか……兄貴……どうしているの……オイラ達がいなくて泣いてなんかいないよね……)
おジャマイエローは遠く離れた相棒の身を案じていた。
ところが、ミライもおジャマイエローも気付かないある意味では不幸な事態が2つ起こっていた。
1つはおジャマイエローが放送の一部を聞き逃していた為……はやて、フェイト等の死亡が伝えられた事は知らないという事。
そしてもう1つは、はやての元へ向かったであろう銀髪の男が翠屋のある南へと進む方向を変えたのに対し、ミライ達は方向を変えることなく真っ直ぐ西へ進んでいた事だ。このまま進めば時期にE-1に入ってしまうだろう。
とはいえ、ミライは気絶しており、おジャマイエローも禁止エリアの記憶や万丈目の心配、そして十代の死亡があった為聞き取れなかった事はある意味仕方がない。
また、銀髪の男が既にミライが訪れた翠屋方面に向かう事など予想出来るわけもない為、これまた仕方がない話である。
それでもミライ達は足を止めず、人々を守り殺し合いを打破する為に、離れ離れになった相棒と再会する為に行動するだろう―――故にこの言葉を―――
がんばれ! ウルトラマンメビウス
がんばれ! おジャマイエロー
【1日目 日中】
【現在地 E-2 西部 大通り】
【ヒビノ・ミライ@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは】
【状態】疲労(中)、胸に切り傷(回復中)、30分変身不可(メビウス)
【装備】メビウスブレス@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは
【道具】支給品一式、『コンファインベント』@仮面ライダーリリカル龍騎、
『おジャマイエロー』&『おジャマブラック』&『おジャマグリーン』@リリカル遊戯王GX
【思考】
基本:仲間と力を合わせて殺し合いを止める。
1.銀髪の男(=セフィロス)からはやてを守る。
2.一刻も早く他の参加者と合流して、殺し合いを止める策を考える。
3.助けを求める全ての参加者を助ける。
4.なのは、フェイト、ユーノ、はやて、キャロ、万丈目と合流したい。
5.ヴィータが心配。
6.カードデッキを見付けた場合はそのモンスターを撃破する。
7.変身制限などもう少し正確な制限を把握したい(が、これを優先するつもりはない)。
8.アグモンを襲った大男(弁慶)、赤いコートの男(アーカード)、紫髪の少女(かがみ)を乗っ取った敵(バクラ)やその他の未知の敵たちを警戒。
9.自分の為に他の人間の命を奪う者達に対する怒り。
10.さっき聞こえた鳴き声は一体……
【備考】
※メビウスブレスは没収不可だったので、その分、ランダム支給品から引かれています。
※制限に気が付きました。また再変身可能までの時間については最低1時間以上、長くても約2時間置けば再変身可能という所まで把握しました。
※デジタルワールドについて説明を受けましたが、説明したのがアグモンなので完璧には理解していません。
※おジャマイエローから彼の世界の概要や彼の知り合いについて聞きました。但し、レイと明日香の事を話したかどうかは不明です(2人が参加している事をおジャマイエローが把握していない為)。
※参加者は異なる並行世界及び異なる時間軸から連れて来られた可能性がある事に気付きました。またなのは達が10年後の姿(sts)になっている可能性に気付きました。
※スーパーにかがみが来ていたことに気付きました。
また、少なくとももう1人立ち寄っており、その人間が殺し合いに乗っている可能性は低いと思っています。
※彼が倒れていたE-3大通りの近くに、デュエルディスク@リリカル遊戯王GX、
治療の神 ディアン・ケト(ディスクにセットした状態)@リリカル遊戯王GXが放置されています。
また、ミライはその存在に気付いていません。
※第2回放送を聞き逃しました、おジャマイエローから禁止エリアとブレンヒルト、弁慶、万丈目、十代の生死は聞きましたがそれ以外は把握していません。またおジャマイエローもそれ以上の事は把握していません。
おジャマブラック、おジャマグリーンが放送内容をどれくらい把握しているかは不明です。
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