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Last update 2007年10月27日

始まりのラブレター 著者:フトン


電話の着信音で、夢が破れた・・・

何の夢だったのかは、はっきりと覚えていない、ただすっごくいい夢だった気がする。

『加住 憐』

と、表示された携帯電話を見て私はそう確信した。

大抵、いい時にはこいつに邪魔をされる、気の毒な私は、習慣的にそう思うのは当然だと思う・・・

そして恐る恐る、リダイヤルに指を伸ばす・・

最初の一言は決まっている・・

『何で電話に出なかった!!』

「何で電話に出なかった !!」

 ・・・・・・

ほらね・・・

「何でって・・・今何時だと思ってるのよ!!」

目覚まし時計の針は三時を指している。

普通に考えたら電話なんて掛けてこない時間だ。

「オレ様の電話に時間は関係ない!!出るのが当たり前だろ?」

 ・・・こいつに常識なんてなかった・・・

私は小さくため息をついた。

「で、何の用?」

「おお!良く聞いた!!」

電話の向こうの声が、この時間に合わないほどテンション高く響いた。

「また、また事件だぜ!!」

 ・・・・・・・・・

やな予感がする・・・

「今日、このオレ様に、怪文書が届いた!中々面白いから、今からオレの家まで来い!!いいな!!」

それだけ言うと、電話は切れた。

 ・・・・・・・・・・

い!行くもんか!!

絶対行くもんか!!

悪魔の家になんか・・・・

それは虚しい抵抗だった・・・・



★★★★★



息を切らしながら、とてつもなくでかい門を、睨み付けた。

門の奥の家の二階から、あの悪魔は満面の笑顔で私に手を振っている。

結局、1分おきの『まだか?』コールに負けた私は、真っ暗な夜中に自転車を、全力疾走で漕がされ、あの悪魔・・・加住 憐の家まで来る事になった。

静まり返った夜中の道も、こいつの脅迫めいた電話に比べたら、まったく怖いものではなかった。そこらの変態より、こいつの仕返しのほうがよっぽど怖い・・・

私は、重い門を開き、馬鹿でかい家の中へと入っていった。

もう家族は寝てしまったのだろう、何時は必要以上に関わってくるお手伝いさんも、今日は出迎える事も無くすんなりと憐の部屋までくることが出来た。

憐の部屋に入ると、子供のように嬉しそうに真っ赤な文字で書かれた、手紙をヒラヒラと私の前に泳がした。

「暇な奴も居るんだな?こんな手紙をオレの家に投げ込むなんてなぁ・・」

私に言わせれば、こんな事の為に夜中に電話してくるこいつの方がよっぽど暇人に思えるよ・・・

手紙を私に手渡すと、一人で寝るのにそんなに広い必要があるのかって程のベットに憐は飛び込んだ。

私はそんな憐を横目で睨みながら、手紙を読みやすいように手に持った。

手紙には、おぞましい程真っ赤な文字で走り書きのような文字が、綴られていた。

『私の大切な貴方へ。

私のいる場所が貴方に分かりますように・・

貴方が私に気付きますように・・・』

そう書かれた手紙は、何か背筋に冷たいものを感じさせた。

脅迫状と言うよりは、ラブレターに近い文面なのに真っ赤な血の様な文字色が、その文面を不気味なものへと変えていた。

「あんたの熱狂的なファンからじゃないの?」

私は、手紙を付き返す。

信じたくないけど、この悪魔はとにかくモテる。ストーカー並のファンが居てもおかしくない!!

(私は、何があってもこいつのファンにはなりたくないけど!!絶対!!)

「オレ様のファンにそんな事をする子がいるわけが無い!!」

言い切ったこいつに私は心の中でアッカンベーをする。

「お前がこの手紙の差出人を探せよ!いいな!!」

そう、はっきり言い切ると私にもう一度手紙を渡して・・・

用は済んだ帰れと、扉を指差した・・・

(絶対絶対!!いつか仕返ししてやる!!!)

私は心に誓うと、言われるまま家に帰った。

悪魔への悪口を心の中で何度も繰り返しながら・・・

★★★★★



次の日、学校中を隈なく捜し歩いても中々、差出人は見付からなかった。それどころか、謎は深まっていた。

憐が言う様に(認めたくないが・・)憐のファンは団結力があり、憐に個人で何かする事はルール違反らしく、誰一人として首を縦には振らなかった。

手紙にはヒントらしいことは何一つ無く、ただ、文字が昨日より滲んでいるように見えるだけだった。

お昼休みに報告も兼ねて憐の教室に尋ねていった。

いつもなら必要以上に私の教室に来ては、クラスの女子を私の敵にするべく、私をからかい捲くっているのに、今日に限っては一度も顔を出す事も無かった。

そんな事で、私の足はすっごく重いまま憐のクラスに向かっていた。

(行きたくないよ~・・)

正直憐のクラスの女子には、おもいっきし敵視されていた。

憐が私のことが好きで、毎日のように私のクラスに通っていると、完璧に誤解されていた。(そんな恐ろしい事があってたまるか!!)

仕方なくクラスの扉をノックすると・・・

訝しげに顔をゆがめた女の子が、私に方へ近付いてきた。

「何ですか?」

間違いなく敵対心むき出しの彼女に、私はなるべく丁寧に憐を呼んでくれるように頼んだ。

すると瞳に怒りを滲ませながら彼女はこう言った。

「憐なら今日はお休みしてるわよ!!憐に気に入られてるからって、こんなとこまで来ないでよね!!」

言い終わると、もの凄い剣幕で扉を閉められた。

 ・・・・・・・・

(一体私が何をしたと言うのよ!!毎日悪魔にいたぶられ、その上この仕打ち・・・可愛そう過ぎるでしょ・・・私って・・・)

そんな私の心なんて全く知る由も無い女子達の私に対するこれ見よがしな中傷が耳に入ってくる。

これも全部あの!悪魔の所為だ!!

私はその場で地団太を踏んだ。そして踵を返すと自分の教室へと戻っていった。

ふと、憎悪に満ちた視線を感じて辺りを見渡す。

休み時間の穏やかなひと時ににつかわないその視線の主は何処にも見当たらなかった。

只、背筋が寒くなるほど強い視線は確実に私を貫いていた。

私の中の何かが危険を感じ取ったのはいうまでも無い。

私は足早にその場から離れた。

でも、視線は途切れることなく私を見続けているようだった。何かが私に起こる予感がした。



★★★★★



放課後早々に帰り支度をして私は憐の家へと向かった。

嫌な予感が、あの視線を感じてからずっと続いていた。

いつもの人間ではない者の視線。

確かにあれは私を見ていた。

とにかく早く憐の家へ行かなきゃ・・・

憐の家に着くと、いつもとまったく違う淀んだ空気がそこを包み込んでいた。

インターフォンを鳴らしても誰も出てくる気配が無かった。

こんな事は初めてのことだった。

胸騒ぎが私を駆り立てた。

いくら悪魔のような奴でも、自分以外の者に仕返しされても嬉しくない。

やるならやっぱり自分の力で・・・(そんな事イッテル場合じゃないけど・・・)

門を開き、玄関を力いっぱい開け、憐の部屋まで駆け上る。

憐の部屋の扉をノックした時だった・・・!!

もの凄い突風が私の体を押し返した。

不安が現実のものになった。

私は、必死でドアノブに掴まると、全身の力を込めて扉を開けた。

空けた瞬間、一気に力が抜けた。

幸せそうに鼻歌混じりでベットの上で漫画を読んでる憐が目に入ったからだ。

こいつは本当に・・・・何なんだ!!

怒りに震える私に不思議そうに憐が振り返る。

「何やってんだ?人の家に勝手に入り込んで?」

憐が立ち上がり私に近付こうとした瞬間何かが、私と憐の間を通り抜けた。

私は立ち竦み言葉を失った。

憐は気付く様子もなく真っ直ぐ私に近付いてくる。

私は叫んだ!

「来ないで!!」

叫んだはずの声は空中に空気となって虚しく消えていった。

口だけがパクパクと動くだけで声にならない・・・

「何だよ・どうしたんだ?」

不思議そうに私を見る憐の手がゆっくりと私の肩に触れた。

瞬間物凄い悪寒と強い憎悪が私を包み込んだ。

憐の肩越しから酷く冷たい顔の女の子が私を睨み付けた。

眼だけが私を睨み付け、長い髪がより恐ろしさを生み出していた。

時が止まったように私は肩越しに見える女の子に見入っていた。

憐が私を激しく揺すっている事も何かを話しかけている事も何も分からない・・・ただ、この女の子の視線だけが私を捕らえていた。

不意に女の子の唇が動き出した。

ゆっくりとはっきりと・・・

『この方は私のもの。お前には渡さない。』

唇の動きだけで、言葉の意味が伝わった。

激しい突風が私を包み、息苦しさに座り込む、そんな私を憐が驚いたように見下ろした。

瞬間女の子は、姿を消した・・・

「憐!あんた!とんでもないものを拾ってきたでしょ!!」

私の怒りがまったく理解できない憐は、首を傾げるばかりだった。

このままでは私も憐の巻き添えをくうのは間違いなさそうだ・・・

「あんたトリツカレテルワヨ!しかもとんでもないのに!!」

私の言葉を聞いた憐は物凄く嬉しそうに、にやりと笑った。

こいつに恐れと言うものは無いのだろうか?

(やっぱり人間じゃない!)

私は心底こいつが恐ろしくなった。

「で、どうするの?お払いする?」

私の問いに平然と憐が言い放った。

「誰がそんなもったいない事するか!もう少し楽しんでからな?大体俺にはなんの影響も無いみたいだし。乃亜だけだろ大変なのは?」

(・・・・・いっぺん殺したい!!)

私の心などどうでもいいのか憐はまた楽しそうに鼻歌を歌いだした。

私はあきらめて、憐のだだっ広い部屋に座り込む。

「大変な事になっても知らないよ?」

私がそう言うと憐は、平然と・・・

「ソン時はお前が何とかしろ。」

と言ってのけた・・・・

(うううううう!!取り殺されてしまえ!!!)

ふと、またさっきの気配を感じたが、すぐに消えてしまった。

「手紙の主は、お化けって事か?楽しいな~。」

鼻歌混じりの憐に私は大きなため息を付く。

こいつはほっといてもいい気がした。

こうなったら完全放置だ!!

憐の後ろから覗き込んでいる彼女を、見つめながら私はそう決心した。



★★★★★



夜中に変な夢を見て私は浅い眠りから覚めた。

憐の部屋で霊に会ってから、毎晩のように見るようになった夢は、私を憂鬱にさせた。

私はどこかのお姫様で、憐はその守り人!

二人は恋人なのだけど、恐ろしい戦で離れ離れになる。

そして憐の死・・・・・

目が覚めると必ず泣いていた。

こんな三流映画のような話でも自分に降りかかると、何だか辛かった。

そんなこんなで今日もこんな時間に目が覚めた。

ふと、人の気配を感じ振り返る・・・

私は、背筋が凍りついた・・・

彼女だ・・・・

憐の部屋で見たときとは全く違う・・・

綺麗な着物・・・きちんと結われた髪・・・気品のある態度・・・

夢の中のお姫様・・

『貴方は、あの方より感受性が強いようですね。どうか、助けてください・・・あの方を・・・』

「助けるって・・?私の事を脅したくせに!!」

何だか無性に腹が立って・・・幽霊を睨み付ける。

(かなり罰当たりな気がする・・・。まあ、いっか)

『貴方はもう一人の私・・・あの方を・・・助けて・・』

(話が・・・かみ合ってない・・・)

言うだけ言って、お姫様は、す~と消えていった・・

一体なんだって言うんだろう?

私が、憐を守れなんて・・・?

もう一人の私って?

謎だけが、私の中に膨らんでいった。



★★★★★



次の日、学校に行くと、平然とした様子で憐が何時もの様に私に絡んできた。

それを見て私は腸が煮えくり返る思いを感じて・・

何も言わずに・・・

“バキ!!”

ボディーブローを一発食らわした。

憐が何が起きたのか分からない様子で、地面に蹲る。

「何すんだ!!」

まあ、もっともな意見だ。

「うっさい!!」

そう言うと、私は教室へと歩き出した。

もう彼女の気配は感じなかった。

あの姫様は何が言いたかったのだろう?

一体この能天気やろうに何が起きると言うのだろう・・・

私はこれから起きる人生をも揺るがす事態に気付くはずもなく能天気にまだ、蹲ったままの憐に振り返り、こう訪ねた。

「調子はどう?」

私の言葉に、鉄拳が飛んだのは言うまでも無い。




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