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Last update 2007年11月23日

偽者だっていいじゃないか  著者:高木京理


僕たちは裏山の洞窟で遭難してしまった。
それに付け加えて、たった今懐中電灯の電池が切れる。
暗がりではあったが、全員の愕然とした様子が分かった。
懐中電灯を持っていた畑中雄三(自称43歳、無職)が「こういう時こそ、気合だ!」と言った。
雄三はガツンガツンと平手で懐中電灯を叩き始める。
音を立てて、懐中電灯は点灯する。
ユウレイカと僕は叫ぶ。
意味を間違えたみたいだ。
スペルはEUREKAだと分かっていて、ユウレイカと叫ぶには場違いだ。
いや、そもそも叫ぶ必要なんてない、と高志の視線を感じたときにそれに気づいた。

僕の周りには、雄三、僕の母で康子、小学2年生で雄三の息子の高志がいる。
洞窟に行こうと言い出したのは、高志だった。
やんちゃな盛りの高志がそんな事を言い出して、俺もお兄ちゃんぶりを見せようと見栄を張った。無茶するな、そんな心の警戒音を無視させたのは雄三だ。
「そうだ、男なら冒険だ」
冒険の文字が頭に浮かんだ時には、わくわくして調子に乗って洞窟に入った。雄三の言葉を真に受けた僕がバカだったのだ。
本当の家族でもないのにね。

そんなことはどうでも良くて、大切なのは洞窟を抜け出す事だ。
灯りは何とかなった。そのおかげで地図も見つかった。
足元を見ると、キャンプ用のシートを広げいてる母の康子がいる。
「お茶でも、どう?折角、ピクニックに来たのよ。お茶ぐらい飲みましょう」
おっとり気質な世間知らず、頭の中身は年中お花畑なメルヘン母から自分が生まれた事が不思議でしょうがなくなる。
僕は至って現実主義だ。
熱血漢の雄三は
「そうだな、折角だし飲みましょう」
と右手にワンカップ200mlと印字された酒を握っていた。
呑むが違うだろう。飲むが!
とか一人突っ込みをいれつつ、隅っこでチョコンと座っている高志の視線が気になって、僕もキャンプ用のシートに座った。
高志は人見知りが強くて、臆病な子だ。
そろそろ皆が此処に集まった理由に気づいている。
雄三は、あさっての方向を見て叫んだ。
「慎也お前も大人になったら酒を飲むんだぞ」
情けない親父だ。
雄三は言葉を続けた。
「家族ってのは血の繋がりじゃね~んだ。誰もが血が繋がっているとか繋がっていないとか気にしやがるけどな、そんなことはどうでもいいことなんだ。同じ時間を生きれたか生きれなかったか、それだけなんだ。」
僕は、皆と同じ時間を過ごしている。だから偽者かもしれないけど、家族になったんだね。
ずっと長い間待っていた。後悔してしまった。
だから、自分に関わっていたもの全てを憎んでいたんだ。
憎むって事は、生きる事だと思っていた。だから、ずっと続けていこうと思っていた。
むろん、そんなことはどうだってよかった。
僕は家族が手向けに来ている事を知る事が出来たから、成仏出来るみたいだ。僕の名前は、慎也。2年前に皆が迷い込んだ洞窟で死んでしまった人間なのだ。




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