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Last update 2007年11月23日

記憶のカケラ  著者:フトン


理由も無く来るはずがない。
扉の前に立っている憐を見ながら私はそう思った。
だいたいこいつが何の用事も無くわざわざ私の家にまで来るなんてありえないことで・・・(そのくらいだったら自分の家に呼びつけているはず!!何せ悪魔だから・・)
現に満面の笑みを浮かべて玄関先に立っている姿は、私に嫌な予感を掻き立てるのに十分な要因がある。
「何のよう?」
あえてぶっきらぼうに答える私に、これでもかってくらいの微笑を浮かべて、憐が私の肩を叩いた。
「俺様が、わざわざお前の家まで来てやったくらいだから、大事にもてなせよ!!」
憐はそう言うと、まるで自分の家のように中に入っていった。
偶然にも台所から出てきた母親が、憐を見て、嬉しそうに声を上げる。
「憐君。いらっしゃい。」
「こんにち。相変わらずお若いですねW」
いかにもお世辞な言葉を並べる憐に、母はとろけそうな顔で『嫌だWW』といい、私は吐きそうになる。
そんな私に気付いているのかいないのか、存在自体無視なのか憐は、母に誘われるままリビングへと入っていった。リビングのドアが閉まる前に顔だけ出し、私に・・・
「出かけるから、用意して来い!!」
とだけ言い残して・・・(偉そうだよね・・・きれそうだよ・・・)
私の反論が出る前に、ドアはしっかり音をたてて締まっていった。
私は、項垂れたままに二階の自分の部屋へと向かった。
                 ☆☆☆☆☆☆☆
憐の後ろを3歩下がって私に気にする事も無くどんどん歩いていく憐にイライラしてしまう。
こいつの後ろを歩くのは、何故か習慣になっていた。
何時もクラスの女の子達に囲まれている憐!その周りの女の子達になるべく睨まれない様に憐と並ばないように歩く事で、少しでも軽減させようとしているうちに付いた癖だろう。
まあ、結果として何も効果をしめさなっかたのだけど・・・
そんな私の苦労さえも憐にとっては、極上の暇つぶしなわけで・・・・
何だか自分の間を歩く、憐を殴り倒したい気分になってくる。
そんな私を察したのか、突然憐が口を開いた。
「これから楽しい事がまっているんだから、もっと楽しそうにしろよ。」
 ・・・・・・・・・・・・
一瞬にして嫌な予感が頭の中を駆け巡った。
憐の楽しい事といって、いい事があったためしがない!!
それでも、断る事の出来ない自分に腹立たしい気持ちになりながら、私は仕方なく憐の後を付いていった。
付いて歩いていくと良くある小さい公園にたどり着いた。
私も小さい頃この公園で遊んだ記憶がある。
家の近所という事もあって、本当に良く遊んだ。あの事があるまで・・・・・・・
私は何だか小さくなったブランコや滑り台を見渡した。
憐がそんな様子を無視して、砂場の方へと歩いていく。
私は慌てて、その後を追った。
「ここでさ、小さな女の子が毎日夜になると遊んでるんだって。なあ、面白い話だろ?」
私は何故か驚くことも無く、その言葉を受け入れた。
その様子に不満げな憐が私の顔を覗き込んだ。
「お前、知ってたのか?」
その言葉に軽く頷き、砂場に足を入れる。
「知ってるよ。ずっと前から・・・」
憐が不思議そうに私を見た。
「じゃ!何でこんな面白そうなこと、黙ってたんだ?」
私は軽くスナを蹴り上げると、憐の方へ向き直る。
「面白いことじゃないから・・」
何時もと違う私の反応に、何かしら異変を感じたのか憐が押し黙った。
「今日はもう帰ろう・・」
私がそう言うと、憐が珍しく素直に私の言葉に従い、くるりと踵を返し歩き出した。
私はその後ろを静かに着いていった。
あの日、私の身に起きた不可思議な出来事を、何年かぶりに思い出しながら・・・
                  ☆☆☆☆☆☆☆  
梅雨も上がって青空が広がりだしたこの時期に、私の心は空とは正反対に重く暗かった。
「乃亜!!お前聞いてるのか?」
突然私の右耳に痛みが走り、激痛に顔をゆがめる。
「痛いってば!!憐!!」
憐の手を引き剥がそうと必死な私に、クラス中の女の子の視線が突き刺さる・・・・・
(こんないじめにあってるのに・・・かわいそうな私・・)
クラスの女の子達からすれば、憐に付きまとっているように見えるらしい・・・
声を大にしていいたい
『私は無実だwwww!』
と・・・
まあ、無理な話だけど・・
「で、何の話?」
「やっぱり聞いてなかったのか?この間の公園の話だよ!!」
「あ・・」
憐の言葉に私はまた口を閉ざした。
あの公園のことはまだ話したくは無かった。なぜって、私にとってあの公園で起きた出来事は一生消える事の出来ない傷なのだから・・・
「お前、何隠してるんだ?」
憐の言葉に俯き、何時もの突っ込みも無い私に、憐は私の手を掴み教室を飛び出した。
私は、驚いたまま引きずられるように憐に付いていった。
                       ☆☆☆☆☆☆☆
引きずられるままたどり着いたのは、一軒の大きな家だった。
綺麗に飾られた花々が優しく風に揺れていた。
「憐?」
訝しげに顔を歪める私の手を話そうともせずに、憐がその家のインターホンを押した。
「すみません。この間、連絡した加住です。」
『あ・・はい。どうぞ、中にお入りください。』
優しいでも儚げな声の主に、誘われるまま憐は私の腕を引っ張ったまま中に入っていった。
中に入ると、暖かな香りと優しそうな女の人が出迎えてくれた。
でも、私は凍りついた・・・・
(彼女だ!!)
体の中の何かが警報を鳴らしている・・・でも、ここから逃げ出せない!!
瞬間憐の手が私の手を握り締めた。
目だけで私に伝える・・・
『逃げるな!!』
憐はもう、知っているようだ・・・私に起きたあの事件を・・・
「乃亜さんね?良く来てくれたわ。」
女の人は優しく微笑み、私を家の中へと招き入れた。
                      ☆☆☆☆☆☆☆
女の人は、有木 ののかと名乗った。
ののかさんの入れた、ホットミルクティーが湯気を立てて部屋中に、優しい香りを運んでいた。
私の気持ちとは正反対の、この空間に戸惑いながらも、暖かいミルクティーに口を運ぶ。その優しい香りに心も少し落ち着きを取り戻す。
今は何時もは、あんなに触られるのが嫌な悪魔の手も暖かく感じて・・・繋いだままにしてしまう自分がいた。
「私の娘を知っていますよね?」
ののかさんの突然の質問に戸惑いながら、私は、微かに頷いた。
「あの子は、幸せそうですか?」
その質問に、私はまた、凍りつく。
あの時、私があの子にした仕打ちは・・・・許されるのだろうか・・・
憐の視線が私へと向けられる。
ののかさんは、何かを察したのかその後は何も尋ねなかった。
無言のまま、時だけが過ぎていく・・・
何も話す事も無く、私達は、ののかさんの家を後にした。
帰り際にののかさんが、優しく『また来てね。』と言ったのを私は、直視できずに聞いていた。
                   ☆☆☆☆☆☆☆
夕闇がそこまで迫ってきていた。
憐の顔も、私の顔も紅色に染まっていて、憐の表情が良く見えなかった。
気が付くと私達の足は、あの公園に向かっていた。
あんなに行きたくなかった場所なのに、自然とその方向に歩いていく。
公園の中は、もう誰も居なくとても静かだった。
夕闇にゆれるブランコに、誰も居ない滑り台・・・何もかもが淋しく物静かだった。
私は憐の隣を離れ、砂場へと向かっていく。
置き去りにされた子供用のバケツと、シャベルが物も言わずに転がっている。
それを拾い上げ、握り締める。
「ごめんね。淋しかったよね・・・」
知らずに流れ落ちる涙に・・胸が詰まる。
いつの間にか憐が私の後ろに立っていた。
「何があったのか・・・本当は知っているんでしょ?」
私の問いに憐が頷いた。
「お前が小学生の時に、ここで遊んでいた事はおばさんに聞いたんだ。霊感の強いお前が、あの子の事を知らないはずは無いと思って、ちょっと調べた。」
私は、顔を上げ憐を見つめると、憐の言葉を、続けるように話し始める。
「あの頃、まだ自分の力の事は良くわかっていなくて・・・いつもここで遊んでいた女の子と仲良くなったの・・」
そこまで言って、また涙が溢れてくる。
「女の子は、いつも私に言ってたの・・・ずっと友達よって・・・でも、私は気付いてしまった・・・彼女がこの世のものじゃないって・・」
恐かった・・・自分でも信じられないくらい・・・小さい自分の心が恐くて恐くてはちきれそうだった・・・・
「私は・・・逃げたの。彼女から・・・毎日、この場所を通っても、無視し続けたの。彼女が見ていても・・・彼女が助けてといっていても・・・私は・・・・無視したのよ!!!」
その場に泣き崩れる。
あの女の子が、悪霊と呼ばれる類に成っていくのが分かっていながら・・・私は彼女を・・・見殺しにした!!
伸ばされた手を・・・払いのけてしまった・・・・自分のエゴの為に・・・・
砂を握り締め、叩きつける!!
微かな音をたてて砂埃が上がる・・・
「仕方が無いだろ・・・お前だってまだ小さかったんだ・・」
憐がそう言って、私の肩に手を置いた。
「でも、裏切ったのよ!!あの日、誕生日の日!!あの子は私が来るのを待ってた。自分が少しずつ消えていっているのに・・・わたしに誕生日プレゼントを渡すために・・・ここでずっと待ってた!なのに・・なのに・・・」
私は、そんな彼女までも・・・・無視した!!存在ごと・・・無視した!!
ジャリっと砂を踏む音がして、私は顔を上げた・・瞬間!!目を見張った!!
あの子が・・・立っていた。
悲しそうな顔をして・・・
私は凍りつき、彼女を見続けた・・・・
憐は何が起きたのか理解できないような顔をして、でも、ただ私の行動を見つめていた。静かにただ、黙って・・・
「どうして・・ここに・・・」
私の震える声が空を舞う。
『ノアちゃんを待ってたの・・・』
そう言われ、背筋が凍り付いた・・・・連れて行かれる・・
そう思った私に、女の子は優しく微笑んだ。あの、ののかさんにそっくりな笑顔で・・・
『ノアちゃんにありがとうって、言いたかったの・・』
驚きが全身に走る。
「怒ってないの・・・?」
女の子は確かに頷く。
「だって、私は貴方が消えていくのに・・・悪霊になっていくのに・・見捨てたのよ!!」
女の子は首を振った・・・
『見捨ててなんて無いよ?あの時、泣いてくれたもん。みぃの為に泣いてくれたもん。』
みぃちゃんがニコニコしながらそう言った。
『公園に来てくれたでしょ?あの日ノアちゃんの誕生日の日・・みぃ嬉しかったの・・・だから消えなかったんだよ。のあちゃんのおかげなんだよ?』
少しずつあの日の記憶が甦って来る。
あの日、みぃちゃんを無視した、私の誕生日の日・・・・罪の意識に耐えかねて私は、一度この公園に来た・・・
正確には・・・入り口まで来て引き返したのだけど・・・
何度も何度も誤りながら泣きながら、家まで帰ったあの日・・・・私は、ひどく傷ついていた・・・
『全部見ていたの。ノアちゃんがあたしのために泣いてくれたのも・・・全部だよ・・』
みぃちゃんは全てを見ていた・・・なのに私を許してくれるの?
憐が私の肩に手を置く。
「あの子がいるのか?」
私は、しっかりと頷いた。
憐はそれを聞くと、ゆっくりと後ろへと下がった。そして私が見えるところにあるベンチに座り、黙って様子を見ていた。
何時もの悪魔は何処へやら、今日の憐は天使の様に優しい・・
私はただそばに憐が見ていてくれるだけで、少し落ち着いていった。
『のあちゃん。みぃはもう大丈夫だよ。これ・・・誕生日プレゼント・・』
みぃちゃんの小さな手のひらに握られた物を受け取る。
それを受け取った瞬間、みぃちゃんはゆっくりと消えていった・・・・
まるで風に舞う、花びらのように・・・とても綺麗な光に包まれて・・・・・・
私は、それを静かに見送った・・・・・・・
温かい風が辺りを包み込んでいくこの公園で・・
               ☆☆☆☆☆☆☆
「そっか、そんなことが・・・」
すっかり薄暗くなった公園のベンチで私は、みぃちゃんとの間にあったことを憐に話した。
憐は話が終わるまで、真剣に茶化すことなく、私の言葉を聞き続けた・・・・
「乃亜は、悪くないぞ!お前は、がんばったよ。今日だって逃げなかっただろ?」
私のひとみに涙が溜まる・・・
「私の所為で、みぃちゃんは危険な思いをしたのよ!!なのにあの子は私を許してくれた!!わたしに・・・プレゼントまで・・・」
手のひらに握られた、小さなガラス球・・・・みぃちゃんの心のように綺麗に澄み切っている。
あの日、みぃちゃんが私にくれようとした物は、みぃちゃんの心なのかもしれない・・・・・
涙が溢れて止まらない・・・・ひどく傷つけた幼い心を、私は・・・・・何を返せるのだろう?
 ・・・・・・・!!!!!
不意に、抱きしめられ何が起きたのかと、自分に問いかける・・・
意外と広い憐の胸板に、包まれて驚きと安心が交差する。
「気付いているんだろ?みぃちゃんが何故、今になって現れたのか?だから、もう泣くなよ・・」
憐の心臓の音が、生きている証のようにこだまする。
「乃亜が、これから背負っていく事を、みぃちゃんは知っているんだ。乃亜がこんな力を持っていると知ったあの日・・・みぃちゃんは知ったんだよ・・乃亜のこれからやらなきゃいけないことを・・・だから許した。そのお陰で、みぃちゃんは悪魔にならずにすんだ・・・それは、よっかっただろ?」
私は頷く・・・あの小さな手は・・・少なくとも守られた・・・
憐の腕の中に包まれて・・・・気持ちが落ち着いていく・・・
「これから、どんな事が起きても、そばにいてやるよ。」
憐の一言に、私は素直に頷いた。
きっと、あの日みぃちゃんとの事が無ければ、私は気付かなかったのかもしれない・・・・
私は、憐の腕から逃れると・・
微笑んだ。
自分に言い聞かせるように・・・・こう言った。
「あの誕生日って、きっと、自分と知り合った日なんだろうね。」
みぃちゃんが笑っているような気がした・・・・・・




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