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Last update 2007年10月07日

黒髪のDandelion Girl 著者:知


 「おとといは兎をみたわ。昨日は鹿、今日はあなた」

 彼女は僕の「久しぶり」という呼びかけに振り返ると微笑みながら―何かを期待するかのような瞳で僕を見つめながら―そう言った。

 ―なら、僕は彼女の期待に応えよう―

 「しかし、どうして昨日があるんだろう。いつも同じ時間点にくるのなら今日しかないはずなのに」
僕がそう返すと僕達二人は暫く見つめあうとどちらからと言うのではなく笑い出した。

 僕と彼女は20歳以上年が離れているわけもなく、又、彼女の髪はたんぽぽ色でもないし、瞳も青ではない。 寧ろ彼女はどこか市松人形を髣髴(ほうふつ)させる。

 「うん、久しぶりだね。最後に会ってから何年経ったのかな?」
僕の最初の「久しぶり」という呼びかけに対して彼女はどこか踊るような口調でそう応えた。
 「……6年かな?僕が中学に入学する年にこの町を去ったから」
彼女は僕のその言葉を聞くと小さく首を傾げて、微笑みながら
 「……やっぱり、あなたの方が年上だったんだね」
と言った。
 「君はやっぱりお嬢様だったんだね」
僕は彼女の言葉にそう返した。
彼女が着ている制服はお嬢様学校として有名な私立高校の制服だ。

 僕と彼女は昔、よくこの場所で遊んでいた。
きっかけは、偶々僕が迷ってこの場所に来た時に彼女がこの場所にいた、ただそれだけのことだった。
 そして最初に会った日に―初めて彼女と一緒に遊んだ日に―不思議な約束をした。

 『互いに名前や年(学年)を教え合わないようにしよう』

これがその時の約束だ。
そして、僕がこの町を去ることになったとき、又、約束をした。

 『次に会ったときに、名前や年を教え合おう』

 彼女が又、僕に何かを期待するかのような瞳でみつめている。

 ……僕からということだろう……

 「僕の名前は……」
そういい始めたとき急に沢山の鳥が空へ飛び立ち、その羽音で僕は自分が何を言ったか聞こえなかった。
でも、彼女は聞き取れたようだ。聞き返してこようとはしなかった。
だから……
 「君の名前は?」
僕はそう彼女に尋ねた。

 彼女は踊るような口調で、微笑みながら……でもゆっくりと僕を焦らす様に

彼女はしばらく鳥の行方を目で追い、やっと答えた。






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