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Last update 2008年03月15日

オペラ座の腐れ  著者:タイラヨオ


自分の肉体を切り裂く魔物のような欲望と闘っていた。何て気持ちが良いんだろう。
ただこうして隣を歩いているだけの事にすら、大そう体力を消耗しているような気がする。
会話なぞしようものなら、手なんかが触れようものなら、脈略の無い着地点に電光石火で直行する腐った想像により、私はつい無口になってしまう。
機嫌でも悪いのかと尋ねられたって、真意を告げられようはずも無く。

独りで迎える夜、私は自由に魔物と遊ぶ。
身体の中から出してやるんだ。目を閉じて毛布を抱くように横たわり、暗闇に描き繰り広げるドラマに自ら出演する。交わす台詞は毎晩微妙に違うんだ。
気に入らなければシーンを変えてやり直し。魔物の機嫌次第ではそれはそれは劇的に甘美な名場が面登場し、触れる事も無く事の後のような疲労感すら携える。
呼吸は乱れ、すっかり果てる。心から愛しているんだと思う。

告げてしまえば良いと人は言うだろう。
何も手が届かない相手とは限らない。こう見えてもモテない方ではない。
もしかしたら向こうも自分に気があるかも知れない。
でも今は是が気に入っているんだ。こんなに欲しいと思っているものに、手を伸ばし得てしまうのは勿体無い。もっとずっと、魔物と遊んでいたい。

魔物は自分、自分は魔物。飼っているとも飼われているとも知らぬ感情を大切に持ち歩きそっと撫でる。この世に実在しない世界が此処に在る。
確かに毎日生き色彩を帯びている。物理的な実証は必要ないほどに輝いて幾度と無く幸せを供給してくれる世界。手放すにはまりにも惜しい。

私の中で日々何が繰り返されているのか、知る者は居ない。
変化も未来も目的も無い毎日を引き摺っているように見えても可笑しくない。
不思議そうにこちらを覗くその顔に、おおよそ予想の付く不穏な色を見たならば、一言だけ言ってやればそれでいい。魔物に言っているのかも知れないにせよ、言葉はひとつ。

「ここにいろよ」




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