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Last update 2008年03月16日

死神  著者:知



「そう……それがあなたの『死』なんだね」

 何処からか声が聞こえてきて目が覚めた。
 幻聴にしては声がはっきり聞こえてきたし、夢にしては声に現実味があった。しかし……

『寝る前にちゃんと戸締りの確認はしたはずだ』

 そう思いながら体を起こそうとするが

『くっ……金縛りか?』

 体が全く動かなかった。それに声も出せない。

「まだ君の脳は起きていても、体は起きていないから動くことはできないよ」

 又、声が聞こえてきた。どうやら、幻聴でも夢でもない事は確実のようだ。

『誰だ?』
「私に名前はないよ……でも、皆は私のことを『死神』って呼ぶね……女の子なのに『死神』なんて名前で呼ばないで欲しいなぁ……」

 ……『死神』……根も葉もない噂だと思っていたのだが……

『なら、『ヴァルキリア』なんてどうだ?』
「……それってあまり変わらない気がするけど?」
『じゃあ、『フレイヤ』はどうだ?』
「……それも……微妙だね……って、わざとそんな名前ばっかり言ってない?」

 ……勿論、その通りだ。

『……『死神』よりはましだと思うが……』
「……君って面白いね。私がどういう存在なのかわかっているのにそんな事が言えるなんて」

 この世界では、人にとって『死』は身近な物でない。だから『死』に対する恐怖が強い。しかし

『命あるものは必ず死ぬ』
「うん、そうだね。でも、それを受け入れられるかは別。特にこの世界の人は……ね」

 この世界の人は死ぬ原因が定義されている。そして、その『死』でないと死ぬ事がない。
 例え心臓を刺されてもその事がその人に定義されている『死』でないと死なない。いや、死ねないのだ。逆に定義されている『死』ならどんな些細な事でも死んでしまうが。
 そして、その定義されている『死』はある年齢になるとわかることになる。誰に教わるわけでもなく自然に。
 定義されている『死』がわかると人はそれに近づかないような行動を取るようになる。死にたいと思う人は少ないはずだから当然といえば当然の話。

 『死』が身近な物でなくなり、それ故に、『死』を恐れる。いや、『死』を異常に恐れる。
 死神の噂もそんな異常な恐怖心から生まれた物だと思っていた。
 定義されている『死』に因らなくても殺す事ができる存在がいる。この世界においてそんな事は戯言にしか聞こえない。でも、それは真実だったようだ。
 ……火のないところには煙は立たない……そんな諺もあったな。

「……本当に、面白いね」
「心外だ」

 何時の間にか声が出せるようになっていた。体も……動くようになっている。
 さて、俺に『死』を与えるのはどんな人なのか。
 声のした方を見ると声の主は『死神』という言葉が似合わないような人懐っこい笑顔を浮かべながら窓辺に立っていた。




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