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Last update 2008年03月16日

崖の手前  著者:Monica



「さて、次はあなたです」
次々と届く同級生や幼馴染の結婚式への招待状には
そんな暗黙のメッセージが込められてる気がする。

29歳、崖っぷち。
いったい誰が30歳を崖だなんて決めたんだろう。
男に対して使われないその台詞は
どこかで「女の幸せは結婚だ」なんていう
暗黙の押し付けが込められていて、
あたしをますます結婚から遠ざけてる気がする。

結婚したいと思わないわけじゃない。
でも、したくないとも思う。

やっと色々な事が自由になってきたのに
今更結婚に縛られて、この自由を失うなんてごめんだ。

付き合って2年になる恋人のサトシも、もう33歳になる。
実家の両親は死ぬ前に孫の顔が見たいだなんて
縁起でもない脅しをかける。
サトシだって、プレッシャーは感じてるようだ。
ただし、わたしからのプレッシャーじゃない。
男に結婚のプレッシャーを与えるなんてわたしの趣味じゃない。

男に責任を取ってもらわなきゃならないような小娘でもないし
自分の責任で生きてるんだから、好き勝手にやりたい。
どんなに愛し合っている恋人の為でも
男の人生の付属品になるような結婚はごめんだ。

結婚のメリットより、デメリットの方が
今のわたしには大きく感じる。
ただ、それだけの理由で結婚していない。

なのに、付きまとう憐れみは、不本意ながらも時にあたしの胃をしめつける。

幼馴染の結婚式ではブーケを手渡しされてしまった。
彼女の友人の中で、独身はもう私だけになってしまったのだそう。
田舎はみんな結婚が早いからねぇなんて慰めてくれてたけど
実際あたしの周りは結婚してる方がいまどき珍しい。
もっとも、そういう人種はそういう人種で集まるものなのかもしれない。
だって、あたしに姑の相談も子育ての相談も無縁すぎる。

「良かったわね、あたしが結婚を迫るようなタイプの女じゃなくって」なんてサトシに言うのは、
間違ってもプロポーズなんてしてくれるなよという予防線。
結婚なんて考えたくないっていうアピールだ。
サトシにはプレッシャーに負けて結婚なんて考えてほしくない。
本当に、心からあたしとの結婚を望んでくれた時には考えたい。
きっと結婚に進めない女は、みんなどこかの部分で夢見てるんだと思う。
年齢や周りのプレッシャーや常識で結婚なんてしたくない。
本当に心から結婚したいと思う時まで待っていたいのだ。
一生を添い遂げる本当の相手を見つけあぐねて今に至るのがきっと本音なんだと思う。

本当はすごく純粋な生き物なんだから、負け犬なんて言われたくないなぁと思う。

常識に縛られたルールや束縛。
そんなもので気持ちを薄めたくなんかない。
あたしは今だって十分サトシの事を大事に思ってるし、ずっと一緒にいたいって思ってる。
でも、いつかきっとそんな気持ちが消えてしまう気がして怖い。
この年になれば、何度かそういう想いをしてきてる。
サトシの前に3年付き合って結婚を考えた彼だっていた。
一緒に暮らしたら、だんだんと日常的な雑用はあたしの役割になり男と女というよりも家族のような関係に嫌気がさして結局ダメになってしまった。

男と女であり続けたいと願うのは、きっとあたしの中の乙女心だ。
少年の心を持ち続ける事は何も男の特権じゃない。
今の時代は少女の心を持ち続けてる女だって存在する。

でも、本当はどこかで気付いてる。
結婚したくないというアピールは、結婚したいと思ってもらえないみじめな自分を守るプロテクター。
本当は向き合う事が怖いのだ。
「あたしが結婚したくないの」という盾に隠れ、傷つきやすいあたしの中の少女の心を守ってる。

そして今夜も電話が鳴る。
母からだ。
「結婚なら、まだまだしないわ。」
そう言いながら、不意に涙が頬を伝った。
母に矛盾したこの想いがバレないように
精一杯の虚勢を張る。

そんなあたしの事を田舎の親戚たちは
彼女は精神異常なのか?神経症なのか?とうわさするという。

違うとも、そうだともこの涙が答えさせてはくれない。
答えになんてならないけど、
「お母さん、あたしは、ただ、幸せになりたいだけよ。」




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