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君想フ声 ◆9L.gxDzakI




黒き海面から漂う風が、彼女の鼻を潮の香りでくすぐる。
暗澹とした深夜の空の下に広がるのは、すっかり寝静まった街並みだ。
窓の明かりはない。ネオンの輝きもない。人の気配がまるでない。
けたたましい街はあまり好きな方ではないが、ここまで静かだと逆に不気味さすら覚えてくる。
フェイト・T・ハラオウンの真紅の瞳は、巨大なデパートの屋上から、下界をじっと見下ろしていた。
上質な糸を彷彿とさせる金髪が、潮風に煽られて闇に揺れる。
月明かりのみが頼りの黒天の夜空の下、さながらそれは太陽のごとく眩い存在感を放っていた。
ふと、その美貌に影が差す。
思い出されるのは、あの暗い一室での惨劇の瞬間だ。
守れなかった。目の前で大切な友達が喪われたあの時、自分は何も為すことができなかった。
要するに自分は、アリサ・バニングスを見殺しにしてしまったのだ。それがフェイトの表情を曇らせていた。
「母さん……」
そして、新たに思い出された女性の姿。我知らず、ぽつりと彼女は呟いていた。
あれは紛れもなくプレシア母さんだ。もう10年も前に死んだとばかり思っていた、プレシア・テスタロッサその人だ。
しかし、彼女は生きていた。この空よりもなお暗き、虚数空間の暗渠へと堕ちた時の姿のまま。
自らを産んだ母親は、一体何を望んでいるというのだろう。
亡き娘アリシアへの妄執に囚われた女とはいえ、元来プレシアは聡明な魔導師だったそうだ。
こんな一見無意味にも見える殺し合いを、それこそ本当に考えなしに実行させるとは到底思えない。
であれば、このデスゲームとやらには、それ相応の目的があるはずだ。
そして、彼女の一種狂気すらも孕んだ、強烈な願望の矛先はただひとつ。
「まだ……アリシアを追いかけてるんだね」
アリシア・テスタロッサを、今度こそ完璧な形で蘇生させること。
プレシアの目的といえば、これしか考えるものは存在しなかった。
今まさに繰り広げられようとしている殺戮と、プロジェクトFの完遂にどういった関連性があるというのか。
さすがにまだそこまでは、結論を下すことはできそうにない。
死者を生き返らせるには生者の血が必要――死体が欲しいというのならば、こうしたまどろっこしい手段を取る必要はないだろう。
自分の魔導師ランクは、今や人間の限界一歩手前にまで迫ったS+ランク。
魔力量だけならば、既に母を僅かに凌駕しているであろう自分を、あれほどまでに強固に拘束できるバインドがあるのならば、
そのまま自分達を絞め殺してしまった方が遥かに効率がよかったのだ。しかし、彼女はそれをしなかった。
ただの死体だけでは足りない。肝心なのは、ここで展開される闘争そのものということか。
馬鹿げている。いいや、狂っている。
そして、それが今に始まったことではないということが、フェイトにはたまらなく悲しかった。
「でも、それじゃあ駄目なんだよ、母さん」
微かに首を振りながら、彼女は母の選択を否定する。
10年の間に、自分は色々と成長したと思う。そうであると思いたい。
しかし、プレシアは何も変わってはいなかった。10年前の狂気は、未だに消えることなく残されていた。
そして、それではいけないのだ。その狂気は、選んだ手段は、決して許されるものではなかったのだ。
「自分の勝手な悲しみに、関係のない人まで巻き込んじゃいけないんだ」
今や義理の兄となった、かつての最年少執務官だった少年の言葉を口にする。
遥かな高みから、この箱庭を見下ろしているであろう母に向かって。
たとえその言葉が、風に流され消えてしまうような小さな呟きだったとしても。
それはかつて共に同じ罪を犯した者であるが故の、魂からの悲痛な叫びだった。
「……とりあえず、まずは状況を整理しないと」
しばしそのまま沈黙した後、フェイトは再び口を開く。
そして、足元に置かれたデイパックへと、その細く綺麗な指を触れさせた。
参加者達へと支給された袋の口を開けながら、まずはここに至るまでの経緯を回想する。
思い出される最新の記憶は、どこまでも続く無限の荒野だった。
否、その光景は最新の記憶に限った話ではない。さらに遡っても、何日も、何日も、同じ風景を見続けてきた。
西暦にして1999年。彼女にとってのPT事件や闇の書事件の起こってから3年後にして、彼女にとっての現在から7年前のこと。
遥か宇宙の彼方より飛来した巨大隕石により、第97管理外世界「地球」は死の星となった。
広大な太平洋は一瞬にして涸れ果て、遮断された太陽光は植物を育む力を失った。
今あの星に存在するのは、自分達僅かな人類と、地球全土に広がる大砂漠と、蠢く異形のワームのみ。
人々の生命を脅かす化け物達と戦い続けるうちに、既に7年という時間が経過していた。
そんなある日にシグナムと共に戦地に赴き、対ワーム用に人類が開発した切り札「マスクドライダーシステム」の戦士と合流。
軍用ワゴンに乗って帰路へと着き、今や懐かしき海鳴の位置を示した看板を見つけて――
――どうやら、それが元の場所での最後の記憶のようだ。
気付けばあの場所へと閉じ込められ、こうして今ここで、久しく嗅ぐことのなかった海の香りを体感している。
「加賀美とははぐれちゃったか」
最初にデイパックから取り出した名簿を見て、少々残念そうな呟きを漏らす。
参加者達の名前の一覧表には、戦友シグナムの名前はあれど、
あの青き戦神・仮面ライダーガタックの適格者の名前はどこにもなかった。
自分達高位魔導師と互角――それも対ワーム戦においては、自分達以上の戦果すら発揮する心強い味方。
この場にいてくれれば、状況の打開のためのよき力になってくれただろう。
しかし、一方でこの事実にほっと胸を撫で下ろしている自分がいるのも確かだ。
少なくとも彼は、この戦いに巻き込まれることはなかった。いくら荒廃した地球といえど、ここよりはまだ安全な方だろう。
大切な仲間が危険から免れることができたことに対し、フェイトは安堵する。
そして再びデイパックを漁り、今度は武器を探し始めた。
殺し合いに乗るつもりなど毛頭ないが、仮に他の参加者が襲ってきた場合を考えれば、身を守る手段は必要不可欠だろう。
やがて、右手が何やら棒のようなものに触れる。
そのまま引き抜こうとする。重い。片手で取り出すには少々面倒だ。
左の手のひらもそこに添え、ぐっと力を入れて引きずり出す。
「……うわ」
外気にさらされた得物は、身の丈すらも凌駕するほどの、凄まじいサイズの大剣だった。
幅広い刀身に、紫や黒を基調としたカラーリング。表面に並ぶのは、さながらノコギリのごとき細かな刃だ。
柄に用意されたスイッチのようなものを押し込んだ瞬間、強烈な振動と共に剣が咆哮する。
ぎゅぃぃぃぃん、と。あたかもチェーンソーのように、表面の刃が猛スピードで回転していた。
大きさ自体は、バルディッシュのザンバーフォームと同程度。
しかし、醸し出される凶暴さと、質量を持った刀身であるが故の重量は、雷の愛剣とは一線を画していた。
どうやらこれでもストレージデバイスであるらしいことに気付き、モードを非殺傷設定へと切り替える。
なかなか重い武器だったが、このくらいなら、まだそのうち慣れるレベルだろう。
巨大な剣を自身の横へと置くと、再びデイパックの中へと手を突っ込む。
見つけられたのは、地図、食料、時計、ランタン、筆記用具、コンパスの基本支給品セット。
そして最後に手にしたのは、透明感を持った真紅の小さな球体だった。
ランタンへと火を灯し、コンパスを駆使して、地図上での現在位置を特定する。
そこに表記されていたことで気付いた地上本部の存在を確認し、大体の地図上距離を感覚で把握。
遠くに見えた法の塔を見るあたり、やはりというか当然というか、フィールド自体はそれなりに広いもののようだ。
(機動六課……管理局の新しい実働部隊?)
そして、現在地から西に位置する建物の名前を確認する。
あの地球からやって来たフェイト・T・ハラオウンにとっては、機動六課は未知の存在だ。
かつての隕石衝突さえなければ、今頃にははやてが発足していたであろう新設部隊。
歴戦の戦友達と、期待の新人達。そして愛する子供達に囲まれた、穏やかな場所。
しかし、今ここにいるフェイトはそれを知らない。
無限に広がる宇宙の中では、砂粒以下の大きさでしかない隕石1つのおかげで、彼女の世界はあまりにも残酷に変化してしまった。
(ここなら、この首輪を分析して外すこともできるかもしれない)
首筋にあるひんやりとした感触をなぞる。
アリサの爆死の瞬間を見る限り、この爆弾の破壊力は相当なものだ。
これがある限り、自分はプレシアに命を握られているということになる。いかなる抵抗も、この必殺の兵器の前では無意味となるだろう。
さらに、禁止エリアへの立ち入りによる強制爆破もある。自由にこの会場を動き回るには邪魔なものだ。
まずはこれを外すことが急務だ。そうしなければ、選べる選択肢は大幅に狭められる。
幸いにも、この施設は現在地のデパートからはそれほど離れているわけではなかった。
これならば、到達するまでに時間はさほどかからないだろう。
そうすれば、そこから先は自由となる。なのは、はやて、シグナム――大切な仲間達を助けに行ける。
(それから、あとはこれ)
ひとまず地図から視線を逸らすと、フェイトは最後に見つけた赤い宝珠を手に取った。
よく似ている。形状といい色といい、首から提げるネックレスであることといい、あのなのはのレイジングハートと瓜二つだ。
しかし、どうやらデバイスではないらしい。単純にバリアジャケットのみが内蔵された端末。
これがあの杖であったらどれだけ心強かっただろうか、と嘆きつつも、彼女は赤い瞳で赤い球体を見据えた。
「セットアップ」
そして、その機能を起動させる。
眩い真紅の閃光と共に、身に着けていた衣服はたちどころに分解された。
むき出しとなった、抜群のスタイルを誇る豊満な肢体。陶器のように滑らかな裸体へと、魔法の鎧が装着される。
薔薇の意匠があしらわれた、白いニーソックスのような布。羽毛のようなファーのついたロングブーツ。
白地に水色の縞模様が刻まれたショーツの上に、赤いプリーツのミニスカートが重なる。
中世風の白い衣服の胸元は、そこだけが鋼鉄のブレストプレートの輝きを発していた。
さらにその上から、赤茶けた上着が被せられる。腰に回した漆黒のベルトには、花のごとき流麗な曲線を描いたサーベルが収まる。
幾何学模様のプリントされた短いマントの首元が、燃える炎のごときリボンによって纏められた。
ちょこんと頭に乗っかったのは、羽飾りのついた真紅のベレー帽。
バリアジャケット、装備完了。ここに至るまでの時間は、まさに一瞬にも等しき僅かなものだ。
改めてフェイトは、自身の身を守る防具の姿を見回した。
全体的に欧州の騎士を彷彿とさせるような、赤を基調としたデザインだ。
髪型がツインテールにならず、ストレートなままであることに僅かな違和感を覚えたが、まぁどうということはないだろう。
腰に差されたサーベルは、やはりデバイスではないらしい。
チェーンソー大剣ほどの重量がなかったのは魅力的だったが、殺傷能力がある以上、軽はずみに使うことは許されなかった。
防御力自体に問題はない。これまで用いてきたもの同様、信用に足る強度を有していた。
だが、実はそれ以外に、ある一点に限って問題が発生していたのだ。
「す……少し、胸がきつい……かな……」
谷間を露出させたブレストプレートに、微妙に苦しげな声と共に触れる。
実はこのバリアジャケット、異世界において、彼女とはまた別の人間が用いていたものなのだが、そのバストサイズは僅か78。
ミッドチルダの女性の平均よりも、遥かに大きなフェイトの胸部を支えるには、あまりにも情けないスペックだ。
素肌のさらされた部分からは、無理に抑え込まれた乳房がはちきれんばかりの様相を呈している。
このまま着続けていては、最悪変形してしまうかもしれない。
しかし、状況が状況だ。多少の息苦しさには目をつぶり、そのまま我慢することにする。
ともあれ、こうして行動の指針は決定し、行動の準備も完了した。
まずは一路西へと向かい、機動六課なる部隊の隊舎の施設を利用して、この首輪を外す。それが何より優先すべき最初の一歩。
ふと、夜空を仰ぎ見た。
満天の星々は、この非常事態とは裏腹に、ひどく穏やかに輝いている。
地上で繰り広げられるであろう激戦など、知ったことではないといった様子で平和を保っている。
「――母さん」
想いを口にした。
この平穏な星空の向こうで、狂気と共にこの宴を見下ろしているであろう、母親へと。
その両手へと禍々しき剣を携え、青白く輝く月へと高々と掲げる。誇り高き騎士が主君へと捧げるように。
凶暴なチェーンソー大剣が、この時ばかりは、さながら聖母の祝福を受けた神剣のごとく輝いていた。
「私は誰も死なせはしない。この殺し合いを止めて、必ずみんなを守ってみせる」
誓いを口にした。
そうでなければ、あの母に飲み込まれてしまいそうだから。
次元犯罪に手を染めて、心を闇に染めてしまったとはいえども、彼女は未だに母親という絶対的な存在だ。
そうして彼女に飲まれた結果が、かつてのPT事件の自分の姿だ。
「そして、私が母さんの所へたどり着いた時には……」
故に、口にする。
自らを奮い立たせるために。
この暗闇の中で確固たる意志と共に、この両脚で力強く大地を踏みしめるために。
決して暗黒へと堕ちることのないよう、想いと誓いを形に変えるために。
「――お話を聞かせて」
今度こそ、母と正面から向き合うために。


【1日目 深夜】

【現在地H-5 デパート屋上】
【フェイト・T・ハラオウン(StS)@仮面ライダーカブト】
【状況】健康
【装備】大剣・大百足@魔法少女リリカルなのはsts//音が聞こえる、シーナのバリアジャケット@SHINING WIND CROSS LYRICAL
【道具】支給品一式
【思考】
 基本: 誰も犠牲者を出すことなく、この殺し合いを止める。その上で、プレシアと対話を行う
 1.機動六課隊舎に向かい、首輪を外す
 2.その後、なのは達と合流する
 3.もう少し扱いやすい武器が欲しい。欲を言うならバルディッシュ・アサルトが欲しい
 4.胸が……
【備考】
 ・なのは達「八神班」が、他の世界から来た人間であることを知りません。
 ・このゲームが、アリシア蘇生のためであると推測しました。
 ・大剣・大百足は、他の形態にはフォームチェンジしません。



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