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脅剣~キャロ・ル・ルシエ~ ◆9L.gxDzakI




 からから、からから。
 不思議な音が鳴っていた。
 奇妙な音が鳴っていた。
 何か硬いものの擦れる音が、無人の街で鳴り響いていた。
 からからからと鳴る音は、地獄の使者の奏でる音楽。
 漆黒と黄金に彩られた、禍々しき大鎌のもたらす音。
 さながら死神の足音のごとく、キャロの手に握られた憑神鎌(スケィス)が、からからと音を立てていた。
 両手に装着された黒き鋭利な小手のおかげで、その重量は所有者の筋力に合わせて軽減される。
 故に重すぎず、しかし軽すぎもしない、最適なウェイトを保ち、理想的な使い勝手を実現する。
 そのおかげで、身の丈に倍するようなこの巨刃も、決して重くはないのだが、いかんせんキャロが扱うには長すぎた。
 故にいつしか、移動中にはこうやって、引きずるような形になっていたのだ。
 本来の持ち主たるエリオが見たら嘆くだろうが、そこは天然の入った彼女のこと、さほど気にしてはいないらしい。
 幼子が引きずり回すぬいぐるみのように、しかしただの玩具よりは遥かに凶悪な。
 死の恐怖の名を冠する刃鎌を携え、キャロは1人道路を進む。
「あった」
 ほんの微かな喜びと共に、呟いた。
 淡い桃色の髪を持った少女の顔からは、何の感情も読み取ることができない。
 大切な仲間を救うため、愛すべき友を蘇らせるため。
 殺人者たることを受け入れ、殺すべき人間を求めるが故に、押し殺された表情か。
 いつものキャロに比べれば、まるで蝋人形のような冷たい顔つき。
 そして、ガラスのように空虚な瞳は、眼前の施設を捉えていた。
 時空管理局地上本部。
 かつて公開意見陳述会の折、警護任務に就いたこともある、巨大な法の塔の正門。
 雲をも突き破るその圧倒的高さは、さながら肥大化した恐竜のようだ。
 ここならば、人も集まるに違いない。
 少なくとも、誰か1人くらいは見つけられるに違いない。
 その目論見を叶えるため、無言で敷地へと足を踏み入れる。
 1歩、また1歩。
 一言も言葉を発することなく、ただからからと憑神鎌を鳴らせ、ガラス張りの自動ドアへと歩いていく。
(見つけた)
 ほら、やっぱり。
 思わず内心で歓喜の声を上げた。
 透明なガラス扉の向こうに、蠢く人の影がある。
 あれは確か、戦闘機人ナンバーⅣ――クアットロ。
 髪型が微妙に変わり、見たことのない服を身に纏っているが、それでもまだ彼女だと認識できる。
 ナンバーズの12姉妹の中でも、最も危険な存在とされた、残忍かつ狡猾な策略家だ。
 スカリエッティ一味との最終決戦でも、嗜虐的な笑みすら浮かべ、ルーテシアやヴィヴィオを洗脳している。
 優れた頭脳と冷徹さを持ち、幻影を操るクアットロは、決して一筋縄ではいかない相手だろう。
 だが、しかし。
(あの人なら……死んでも仕方ないよね? エリオ君)
 ふ、と。
 微笑みすらも浮かべながら、キャロはこの出会いに歓喜する。
 キングという男もかなりの性悪だったが、彼女も相当な外道だった。
 無駄に優しい人間や、それこそ機動六課の仲間達よりは、よほど遠慮なく殺すことができる。
 あいつは死んでも仕方ない。殺したって罰は当たらない。
 いたいけな少女達を狂わせ、多くの人を苦しめて、それでへらへらと笑うような奴に、今日を生きる資格はない。
 だから、私が殺してあげる。
 この殺戮の道を歩む上での、試金石にはちょうどいい。
 冷たい笑顔を浮かべながら、キャロはまた歩を進めた。


「遅すぎますわ」
 苛立ちのこもった呟きが、地上本部に響き渡った。
 セーラー服の胸元で、不機嫌そうに腕を組みながら、かつかつかつと片足を鳴らし。
 憮然とした表情のクアットロが、エレベーターの前に1人立っていた。
 下着も身に付けていない生の乳房が、くっきりとした丸みをもって、白い布地を押し上げている。
 彼女がここまで苛立ちを露わにすることは、実は少ない。
 たとえシャマルと遊城十代に、何時間も待ちぼうけを食らおうと、表に出さずぐっと堪えるだろう。
 では何故今、こうも不快感を剥き出しにしているのか。
 ナンバーⅩ・ディエチの欠損に、徒労に終わった地上本部調査――これらが最大の要因だ。
 使える手札が1枚減ったというこの状況で、何の成果も得ることができなかった。
 ナンバーⅤ・チンクからのメッセージも、今は承諾することはできない。
 これまであらゆる状況下でも、自身の思惑を実現してきた策士が、初めて経験する逆境。
 全くもって思い通りに行かぬ現状に、我知らずクアットロは腹を立てていたのだ。
 もっとも、スカートの下の裸の下半身に感じる違和感もまた、その一助となってはいるだろうが。
「このままさっきの神父みたいな強い人に見つかると、色々面倒なのだけど……」
 言いながら、正面自動扉の方へと視線を飛ばす。
 そして、その時。
「……あら?」
 黒いものが見えた。
 誰かが黒い何かを掴み、こちらへ向かって歩み寄ってくる。
 距離が遠いこともあり、まだその何かしか視認できない。どうやら来訪者はかなり小柄なようだ。
 同時に、それほどの距離でも形が見て取れる、黒い物体のスケールを実感する。
 やがてようやく、その持ち主が見えてきた。
 ピンク色の短い髪を、さらさらと微風に揺らすのは――
(竜召喚士のキャロ・ル・ルシエ、か)
 にやり、と。
 クアットロの口元が邪悪に歪む。
 奇しくも、キャロがクアットロを視認した瞬間、彼女もまた、同じ喜色を顔に浮かべ、相手を目撃していたのだ。
 勝てる。
 後方支援型であるが故に、直接戦闘の苦手な自分でも、アイツになら問題なく勝つことができる。
 ライトニング4のコードを持つ彼女は、機動六課の連中の中でも明らかに最弱だ。
 肉体的強度のみならず、精神も見るからに脆弱な小娘。得物は相当ごついようだが、殺し合いなど到底できる性格ではあるまい。
 頼みの綱の召喚術も、こんな場所では使用できるはずもないだろう。
 遠隔召喚による脱出の可能性を考慮すれば、当然だ。召喚対象たるチビ飛竜がいないことも、それを裏付けている。
 このまま適当に脅して怯えさせ、恐怖と苦痛の中で殺してやる。
 力も意志もない者など、いても役に立つことはあるまい。なんなら、せいぜいその武器だけでも利用させてもらおうか。
 かつり、かつりと音を立て、クアットロが入り口へと歩いていく。
 この時の行動もまた、彼女らしからぬ軽率なものだったかもしれない。
 シルバーカーテンも展開せず、無用心に生身を晒しながら、武装した敵へと接近したのだから。
 愛情こそなかったとはいえ、便利な手駒としては認知していたディエチの死。
 これまでに経験したことのない、思い通りに行かぬ探索。
 ようやく現れてくれた、自分の思惑のままに動いてくれそうな存在。
 それらがもたらす焦燥が、クアットロの冷静な頭脳に、致命的な読みの浅さを生じさせていた。
 開く自動扉。
 クアットロとキャロの2人が、ちょうどそこで対面する。
「こんにちはぁ、おちびちゃん♪」
 道化のような、おどけた笑み。
 されど、そこに宿る感情は嗜虐。
「早速で悪いけど、これ、何だか分かるかしらぁ?」
 デイパックから取り出した田中ソードを右手で握り、これ見よがしに刃をちらつかせる。
 先端の人面さえなければ、もっと格好がついたのだが。
 そんな風にすら思っていた。
 対するキャロの反応は、無言。
 もはや悲鳴すらも出ないか。声を出すことすらもできず、がたがたと震えているということか。
(いや……違う?)
 は、と。
 ようやくクアットロが違和感に気付いたのは、この瞬間だった。
 表情がない。
 沈黙するキャロの顔には、恐怖におののく表情が全くない。
 これは一体どういうことだ。まるで自分の剣など、見えていないかのようではないか。
 刹那。

 ――ばりん、と。

「!?」
 鳴り響いたのは悲鳴ではなく、音。
 キャロの顔に感情は宿らず、反対にクアットロの表情が、驚愕の一色に染め上げられた。
 さながらガラスの割れる音。
 砕かれたのはガラスではない。
 いとも容易く、頑強な鋼の田中ソードが、一撃のもとに叩き壊されたのだ。
 クアットロの誤算は2つ。
 1つ、キャロはその手の巨大な武器を、使いこなせないと踏んだこと。
 そしてもう1つは――キャロが殺し合いに乗るはずがないと、決めつけてかかってしまったこと。
「っ!」
 第二撃が来た。
 びゅん、と縦一文字に振るわれた漆黒が、クアットロの身体へと襲いかかる。
 反射的に後方へ飛びすさり、回避。
 しかし、そのリーチは半端なものではない。
 小柄な少女の身長の、二倍はあろうかという大業物は、その程度ではかわしきれない。
 身を掠める。セーラー服に触れる。白い布地が両断される。
 衣服の左胸部分が切り裂かれ、外気に晒された豊かな乳房が、ぷるんと大きく躍動した。
 無論、そんなことを気に留めている場合ではない。
「驚いた……まさか、貴方が人殺しの外道に堕ちるだなんてねぇ」
 精一杯の強がりの笑顔。しかし、頬を伝うのは一筋の冷や汗。
 よもやこの矮小な餓鬼が、自分に牙を剥いてくるとは。
 武器は既に破壊されている。あの禍々しき暗黒の大鎌によって。
「何と言われても構いません。私は、エリオ君を取り戻せたら、それでいいですから」
 踏み込んでくる。
 更なる一撃が来る。
 猛然と迫り来る死神の刃。
 ――斬。
 円形を描くように、横薙ぎに一閃。
 子供のそれとは思えぬ豪快な斬撃が、クアットロの喉笛目掛け、次から次へと襲いかかってくる。
 周知の通り、彼女ら戦闘機人の身体能力は、人間のそれに比べて遥かに高い。
 加えて、キャロに接近戦の経験はない。いかに強力な武器を持とうと、上手く扱う術を知らない。
 故に、大鎌の――憑神鎌の破壊力に任せた、大味で単調な攻撃は、戦闘機人の身のこなしをもってすれば、回避も容易いはずだった。
 あの黄金に輝くコーカサスオオカブトの魔人が、まんまと彼女から逃げおおせたように。
 だが、しかし。
(接近戦なんて……こっちだって苦手なのよっ!)
 同じく後方支援型のクアットロもまた、近距離から迫る攻撃へ対処するノウハウが、全くと言っていいほどなかったのだ。
 強靭な肉体を持ちながら、しかしその能力を活かしきれず、苦悶の顔色が濃くなっていく。
 当たることはない。しかし、その全てがギリギリ紙一重の回避。
 まずい。
 このままではやられてしまう。
 好機と捉えたキャロの来訪は、一転ピンチへとすりかわった。
 シャマルと十代は当てにできない。これまで全く来る気配のなかった連中が、そう都合よく戻ってくるはずがない。
 つまりクアットロは武器もなしに、この敵にたった1人で挑まなければならないのだ。
「ふ……ふーんっ。あのチビ騎士くんを助ける? そういえば、あの子も死んだんですってねぇ?」
 攻撃を必死で回避しながら、言葉を紡いでいく。
 こちらのコンディションが最悪だ。まともに戦って勝てる相手じゃない。
 であれば、己の得意とする話術を用いて、この餓鬼を上手いこと丸め込む。
 平時なら全くもって役立たずなキャロだったが、今は強力な武器と殺意がある。
 戦うことができるなら、手駒として使うこともできるだろう。そのための説得だ。
「でもっ……どうせこっち側に堕ちたんだったら、悪者同士、ここは協力しませんこと?
 クアットロのアタマは、きっと役に立つと思うけどぉ?」
「――興味ありません」
 びゅん、と。
 返事は鼻先を掠めた風切り音。
「どうせいつかは殺すんですから、貴方もここで殺します」
 淡々と響き渡る声。
 ち、と舌打ちする。
 こいつは馬鹿だ。決して頭のよくない馬鹿。
 自分の策略が味方につけば、より効率よく他者を殺せるというのに、それを全く理解できていない。
 自分1人で何でもできる。己が身1つで誰だって倒せる。そうやって思い上がっている。
 そう――馬鹿な敵を説得することはできない。
 どんな条件を突きつけても、その利点が分からないのだから。
 説得は不可能。どうせ奴は、自分を殺すこと以外眼中にない。
 であれば、最後に取るべき手段は1つ――逃走。
「IS発動、シルバーカーテン」
 消失。
 魔法の言葉が響くと共に、一瞬にしてかき消える。
 創造主の作り出したインヒューレント・スキル。魔導師の奇跡に対抗しうる科学の力。
 幻術機能の行使により、クアットロの身体は、瞬時に不可視のものとなった。
 突如姿を消した敵に、キャロの攻め手が一瞬止まる。
 これで逃げ切れたも同然。このまま地上本部を脱出する。
 シャマル達には悪いが、このまま生け贄になってもらおう。自分を散々待たせた報いにもなる。
 何はともあれ命が大事。そのまま自動ドアをくぐり抜け、この場を離脱しようとした瞬間、

「――っ」

 一閃。
 ひらり、と。
 不可視のセーラー服の断片が、剣風に煽られ虚空に舞う。
 当てられた。
 少なくとも、掠められた。
 我知らず、解除される幻惑のカーテン。
 じわり。
 脇腹へと沸き上がる微かな痛み。表皮が切り裂かれたのが分かる。
 “姿を消していたのに”、当てられた。
 効かないのか。
 こいつには、己が幻術すらも通用しないのか――!

「見つけました」

 光なき瞳で、殺戮者が笑う。

「……うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァ―――――ッ!!!」

 絶叫した。
 シルバーカーテンを再度発動。
 みっともなく大声を上げ、一目散に逃げ出した。
 ちっぽけなプライドは粉々に砕け散る。
 殺される。
 このままでは間違いなく殺される。
 この殺し合いで最初に味わった、死の恐怖が蘇る。
 自分は狩る側の人間ではなく、狩られる側の人間だった。
 嫌だ。死にたくない。
 恐怖がその色を増していく。
 ばりん、ばりん、がしゃん。背後で絶え間なく続く破壊の音。
 恥も外聞もかなぐり捨て、皮肉にもキャロに上げさせるべき悲鳴と共に。
 ほとんど泣き出しそうな形相で、クアットロは逃走した。


 それからどれほど経っただろうか。
「……やっぱり慣れてないことをすると、最初は上手くいかないな」
 キャロがため息と共に漏らした時には、周囲に深々と破壊の傷痕が刻み込まれていた。
 壁を抉り、床を切り裂き、自動ドアを粉砕した惨状。
 実を言うとキャロには、幻術を行使したクアットロの姿など、まるで見えてはいなかった。
 いくら何でも、それほどに便利なレーダーは憑神鎌には搭載されていない。
 ただ単に、そのでたらめな射程で振り回した刃が、偶然彼女の脇腹を掠めただけのこと。
 それをクアットロは見破られたと誤解し、ああも無様に逃げ出したのだ。
 さて、どうする。このまま追いかけるか。
「少し、休もうかな」
 やめておこう。
 今は疲労の色が濃い。このまま追いかけたとしても、そこから先が続かない。
 疲れた身体を休めるべく、キャロは奥へと歩いていった。
 きっと彼女の性格からして、しばらくすればここへ戻ってくるだろう。
 自分を確実に殺すために、仲間達を引き連れて、再び襲ってくるだろう。
 そうだ。殺すのならその時でいい。
 だから今はここで待とう。その間に作戦を考えよう。
 身体強化で速く走れるようにしようか。それとも一撃を重くしようか。
 なに、ゆっくり考えればいい。
 時間の余裕はまだまだある。


【1日目 午前】
【現在地 E-5 地上本部1階】

【キャロ・ル・ルシエ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(大)、魔力消費(小)、脇腹に切り傷・左太腿に貫通傷(応急処置済み)、歪んだ決意
【装備】憑神鎌(スケィス)@.hack//Lightning
【道具】支給品一式×2、『かいふく』のマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、葉巻のケース
【思考】
 基本:エリオを蘇らせるため、この殺し合いに優勝する。
 1.クアットロが戻ってくるのを待ちながら、身体を休める
 2.相手が機動六課の仲間であろうとも容赦はしない(ただし、フェイトが相手の場合は微妙なところ)
 3.次にキング、クアットロと会った時は、絶対に逃がさない。
【備考】
 ※別の世界からきている仲間がいる事に気付いていません。
 ※憑神鎌(スケィス)のプロテクトは外れました。
 ※自分の決断が正しいと信じて疑っていません。

【支給品情報】
 ※地上本部入り口付近に、破壊された田中ソード@ナナナーナ・ナーノハが放置されています


「こっちです、はやてちゃん」
 特定遺失物管理部機動六課課長・八神はやては、1人の女性と共に街を歩いていた。
 先導するのは湖の騎士。かつて彼女を守護していた、ヴォルケンリッターの参謀シャマル。
 かつて、というのはすなわち、今は存在しているはずがないということだ。
 大怪獣ゴジラを封印するため、彼女の騎士達は全て、その身をプログラムに組み込んでいる。
 つまり、ここにいるシャマルは、自分の世界のシャマルではない。パラレルワールドから来たもう1人のシャマル。
 もっとも彼女自身もまた、その可能性に気付いていたのには、少々驚いた。
 そしてそのシャマルは今、仲間が待つという地上本部へと、はやてを道案内している。
(それにしても……クアットロ、か)
 どうしてもそこが引っ掛かる。
 地上本部で待つ仲間とは、また別の世界からやって来たクアットロだと言うのだ。
 シャマルが言うには、別世界の彼女は改心し、更生プログラムを受講しているのだという。
 はやて自身は、このまましばらく図書館を調べていたかったが、そこそこの危険人物である彼女の名前を出されては無視もできない。
 そこでクアットロと合流するために、情報交換もそこそこに、一旦地上本部へ向かうことにしたのである。
(せやけど、どこまで信用できるか……)
 だがはやてには、あの策士がそう易々と、管理局に下るとは思えなかった。
 奴の思考も機会さえあれば、自分と同じように、並行世界の概念に至るだろう。
 であればそれを利用し、ありもしないバックボーンを装って、お人好しのシャマルを利用している可能性もある。
 否、むしろそちらの方が濃厚だ。
 奴は善人のふりをして、彼女らを利用しようとしているに違いない。
(私には通用せぇへんけどな)
 だが、自分はそんな彼女を信じ込むような間抜けじゃない。
 並行世界の可能性なら、こちらだって気付いているのだ。
 条件は対等。不意を突かれて丸め込まれることは絶対にない。
 最大限の警戒を払い、逆に奴を利用してやる。
 クアットロの性格からして、彼女は表向きには主催に抗い、殺し合いを止めようとする“ふり”をするはずだ。
 そこに付け入る隙がある。
 奴はある程度は知恵が働く。薬にはならないが、上手く使えば毒にもならずに済む。
 その演技(ロール)をとことん利用し、不穏な動きを抑え込み、自分達に都合のよい考察だけをさせてやる。
(六課課長とナンバーズの参謀、その読み合い騙し合いや……お前のような餓鬼が、すんなり勝てる思たら大間違いやで)
 伊達に世界の未来を背負った、オペレーションFINAL WARSの総大将をやってはいない。
 高々稼働10年前後の餓鬼に、おいそれと負けてたまるものか。
 シャマルに決して気付かれないよう、内心でにやりとほくそ笑んだ。
 と、そこへ。
「――シャマル先生っ!」
 前方から響く声がした。


(全くもう、一体何なのよっ!?)
 街道を駆けるクアットロの表情には、平時の余裕など微塵も残されていない。
 顔には汗が滲み出し、毛髪がそこにへばりつき、狼狽そのものといった表情をしていた。
 一体ぜんたいどうなっているのだ。
 最初に会った人間には、問答無用で襲われた。
 身内は合流する前に、勝手にどこかで死んでしまった。
 ようやく見つけた便利な駒も、どこかへ消えたっきり戻ってこない。
 明らかな格下を相手に、こうしてみっともない逃避行を演じる羽目になる。
 どうなっている。
 何故こうも自分に都合の悪いことばかり起こる。何故自分の思い通りにいかない。
 理不尽な現実への焦りや憤りの中、クアットロはひたすらに走り続けた。
 あの存在から逃げるために。
 対抗する手段を探すために。
 そして、角を曲がったその瞬間。
 見知った人影が、そこにはあった。
「シャマル先生っ!」
 反射的に、視界に飛び込んできた者の名を呼ぶ。
「クアットロ!? どうしてこんな所に……」
 それはこっちの台詞だ。
 地上本部にいたはずのお前が、どうしてこんな所でふらふらしているのだ。内心で悪態をつく。
 だがその背後に立つ人影を認めると、思考は急速に冷静さを取り戻していった。
(八神はやて部隊長……歩くロストロギア、か)
 しめた、と思った。
 こいつはキャロと違って利用できる。
 自分から見たらまだまだだが、その地位に就けるだけの理性はある。問答無用で敵対する、なんてことはないはずだ。
 あとはその良心につけ込み、その絶大な魔力を利用し、キャロを撃退させてしまえばいい。
 そうと分かれば、まずは仕込みからだ。
 残虐な殺人鬼に襲われた、可哀想な少女を演出。嘘の涙を流して駆け寄る。
 何てことのない嘘泣きのはずが、いつもよりも早く涙が出たのは気のせいだろうか。
「シャマル先生、シャマル先生ぇっ!」
「きゃっ! とと……」
 そのまま全速力で飛び付き、押し倒すようにしがみつく。
 シャマルの胸に自分の顔をうずめると、そのままわんわんと泣いたふり。
 少々パフォーマンスが過ぎたかもしれないが、事情を知らぬはやてを騙すためにも、これくらいはやっておいた方がいいだろう。
 今の自分は反逆者の策士ではない。殺意に当てられ逃げ惑う、1人のか弱い女の子なのだ、と。
「クアットロ……」
 そうだ、それでいい。
 戸惑いながらも、その涙に浮かぶ恐怖を感じ取り、そっと頭を撫でる感触。
 シャマルは実に期待通りの反応をしてくれる。今にも笑い出したい心地だった。
「あー……その……」
 と、そこへ、訛りの入った声が割って入った。
 頭上から響くはやての、何故か気まずそうな声。
 何かまずいことでもあっただろうか。きょとんとした顔で上体を持ち上げ、彼女の方を向く。
「とりあえず、色々あったんやろうけど……まず、隠そうや。そことかこことかあそことか」
 そこでようやく気付いた。今の自分の容姿に。
 左胸部分を切り裂かれたセーラー服から、覗く豊満な肌色が1つ。
 張りもあり、柔らかさもあり、瑞々しささえも思わせる、見事なサイズの果実の片割れ。
 続いて下半身。飛び付いた時の衝撃で、赤いスカートがめくれ上がっている。
 惜しげもなく披露されるのは、これまた程よい肉付きのヒップ。
 そして視線を前方へと向ければ、グラマラスな肢体とはアンバランスな幼さを残した、
 肌色一色の穢れない、乙女の聖域とでも言うべき――
「………」
 ――ともかく、色々と丸出しだった。


【1日目 午前】
【現在地 D-5 橋付近(東側)】

【クアットロ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】左腕負傷(簡単な処置済み)、脇腹に裂傷(掠り傷程度)、眼鏡無し、髪を下ろしている、下着無し、キャロへの恐怖と屈辱
【装備】高良みゆきの制服(左胸が裂けている)@なの☆すた、ウォルターの手袋@NANOSING
【道具】支給品一式、ナンバーズスーツ(クアットロ)、クアットロの眼鏡
【思考】
 基本:この場から脱出する
 1.……またすっごい格好になってますわね、私……
 2.仕方がないのでナンバーズスーツに着替える
 3.はやて達に事情を話し、キャロを殺しに行く
 4.その後は北方向で大人しくするか、南方の施設や病院に向かうか
 5.十代、シャマル、はやての信頼を固めて、とことん利用し尽くす
 6.聖王の器の確保
 7.チンクともコンタクトをとりたいが……
 8.首輪の回収
 9.フェイト(StS)との接触は避ける
 10.カードとデュエルディスクはとりあえず保留
【備考】
 ※地上本局襲撃以前からの参戦です
 ※参加者は別々の世界・時間から連れて来られている可能性に至りました
 ※アンジールからアンジール及び彼が知り得る全ての情報を入手しました(ただし役に立ちそうもない情報は気に留めてません)
 ※アンジールの前では『アンジールの世界のクアットロ』のように振る舞う(本質的に変わりなし)
 ※改心した振りをする(だが時と場合によれば本性で対応する気です)
 ※デュエルゾンビの話は信じていますが、可能性の1つ程度にしか考えていません
 ※この殺し合いがデス・デュエルと似たものではないかと考えています
 ※殺し合いの中で起こる戦いを通じ、首輪を介して何かを蒐集していると考えています
 ※デュエルモンスターズのカードとデュエルディスクがあればモンスターが召喚出来ると考えています
 ※地上本部地下にあるパソコンに気づいていません
 ※制限を大体把握しました、制限を発生させている装置は首輪か舞台内の何処かにあると考えています。
 ※主催者の中にスカリエッティがいると考えています。
  また主催者の中に邪悪な精霊(=ユベル)もいると考えており、他にも誰かいる可能性があると考えています
 ※優勝者への御褒美についての話は嘘、もしくは可能性は非常に低いと考えています。
 ※キャロは味方に引き込めないと思っています。

【シャマル@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状況】健康、困惑
【装備】血塗れの包丁@L change the world after story
【道具】支給品一式、白衣(若干血で汚れてる)、ガ・ボウ@ARMSクロス『シルバー』
【思考】
 基本:はやてを含めた、全ての仲間を守り抜く
 1.あー……えっと……
 2.クアットロがまともな格好に着替えたら、何があったのか事情を聞く
 2.はやて(A's)と合流したなら全力で守り抜く
 3.できれば機動六課の仲間達とも合流したい
 4.十代のことが心配。
【備考】
 ※クアットロが別世界から連れて来られた事を知りました
 ※参加者は別々の世界・時間から連れて来られている可能性に至りました
 ※この場にいる2人のなのは、フェイト、はやての片方が19歳(StS)の彼女達でもう片方は9歳(A's)の彼女達だと思っており、
  はやて(A's)は歩けないものだと思っています
 ※クアットロを信用するようになりました(若干の不安は消えています)
 ※デュエルゾンビについては可能性がある程度にしか考えていませんが、
  一応エリオと万丈目がデュエルゾンビになっている可能性はあるとは思っています
 ※この殺し合いがデス・デュエルと似たものではないかと考えています
 ※殺し合いの中で起こる戦いを通じ、首輪を介して何かを蒐集していると考えています
 ※はやてと簡単な情報交換を行いました

【八神はやて(sts)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】
【状態】健康、呆れ
【装備】ツインブレイズ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×2、ランダム支給品1~3個(武器では無い) 、
    主要施設電話番号&アドレスメモ@オリジナル、医務室で手に入れた薬品(消毒薬、鎮痛剤、解熱剤、包帯等)
【思考】
 基本 プレシアの持っている技術を手に入れる
 1.……はぁ……
 2.クアットロがまともな格好に着替えたら、何があったのか事情を聞く
 3.戻って図書館を調べるか、電話をかけるか
 4.ある程度時間が経ったらメールの返信を確かめる
 5.もう1人の「八神はやて」を探し、その後他の守護騎士を戦力に加える
 6.クアットロを利用する。おかしな行動は絶対にさせない
 7.キングの危険性を他の参加者に伝え彼を排除する。もし自分が再会したならば確実に殺す
 8.首輪を解除出来る人を探す
 9.プレシア達に対抗する戦力の確保
 10.以上の道のりを邪魔する存在の排除
 【備考】
 ※参戦時期は第一話でなのは、フェイトと口喧嘩した後です
 ※名簿を確認しました
 ※プレシアの持つ技術が時間と平行世界に干渉できるものだという考えに行き着きました
 ※ヴィータ達守護騎士に優しくするのは自分の本当の家族に対する裏切りだと思っています
 ※キングに対する認識を改めました。プレシアから殺し合いを促進させる役割を与えられていると考えています。
  同時に携帯にも何かあると思っています
 ※ヴィータと戦う事になったのはキングが原因だと断定しました。その事を許すつもりはありません
 ※転移装置を、参加者を分散させる為の罠だと勘違いしています
 ※自分の知り合いの殆どは違う世界から呼び出されていると考えています
 ※放送でのアリサ復活は嘘だと判断しました。現状蘇生させる力はないと考えています
 ※プレシアの目的はアリシア復活で、その為には普通の死ではなく殺し合いによる死が必要だと考えています。
 ※プレシアには他にも協力者がいると考えています。具体的には並行世界を含めて闇の書事件やJS事件関係者がいると考えています
 ※施設には何かしらの仕掛けが施されている可能性があると考えています。
 ※キングのデイパックの中身を全て自分のデイパックに移しました。キングのデイパックも折り畳んで自分のデイパックに入れています
 ※図書館のメールアドレスを把握しました
 ※シャマルと簡単な情報交換を行いました。
  クアットロはどの世界から来ているにせよ、善人のふりをしてシャマルを騙していると思っています。

Back:クアットロデラックス! 時系列順で読む Next:渇いた叫び(前編)
Back:クアットロデラックス! 投下順で読む Next:Reconquista(前編)
Back:クアットロデラックス! クアットロ Next:未知あるいは既知との遭遇
Back:サイカイ シャマル Next:未知あるいは既知との遭遇
Back:サイカイ 八神はやて(StS) Next:未知あるいは既知との遭遇
Back:クアットロデラックス! キャロ・ル・ルシエ Next:今は小さく頼りないこの手も






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