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S少年の事件簿/殺人犯、八神はやて ◆7pf62HiyTE




Claymore



 唐突だがここで読者諸兄にクレイモア地雷について簡単に説明しよう。

 地雷という名前から地面に埋められた踏めば爆発する爆弾というものだとイメージする者も多いだろう。
 しかし、クレイモア地雷は他の地雷とは少々趣が異なる。
 M18クレイモアの場合、中身は直径1.2mmの鉄球が約700個入っており爆発させたい方向にのみ鉄球が散弾されるというものだ。散弾銃の爆弾版と解釈してもこの際大きな問題はないだろう。
 その性格上、地中に埋めるのではなく、地雷に付いている4本の足を地面に突き刺す事で仕掛けるものだ。地雷という名前ではあるが地面に埋められないのがある意味では滑稽ではある。
 重要なのはその威力だ。殺傷範囲は扇状に約60度、距離にして50m以内であればほぼ確実に殺傷でき、100m以内ならばダメージを与える事が出来、鉄球の最大射程は250mだ。
 つまり――至近距離で不意に炸裂された場合常人であればまず死亡するという事だ。





 そのクレイモア地雷がある参加者の手によりE-7駅にある車庫の扉の内側に2つ仕掛けられた。扉を開ければ地雷が爆発する様にセットした上でだ。
 扉を開けたらどうなるか? そんな事、これまでの説明を踏まえれば容易に想像が付くだろう。
 超至近距離からの無数の鉄球が不意に飛んでくるのだ。対人兵器に類されるに相応しく、直撃を受ければ絶命する事はほぼ確実だろう。

 勿論、結界を展開出来れば防げるだろうが、完全な不意打ちに対処する事は不可能だ。完全自動で発生する防御能力があるならば話は別だが――





 少々脱線するが、手に持って扱う銃器と違い、仕掛けた後は別段気にする必要のない地雷というものは兵器としては悪質なものだ。ある種無情なる兵器と言っても良いだろう。
 紛争地域での地雷撤去が話題になるのはある意味そういう背景もあると言える。







 そして――その無情なる悪魔が牙を――クレイモア地雷が爆発する瞬間が訪れた――









Guided



 悪逆な漆黒の魔王により拘束された白き竜――
 天の道を往き総てを司る太陽の戦士によって解き放たれ――
 仲間達の待つ所へその翼を広げ向かって――



 いや、向かえなかった――



 太陽の戦士が示した方向は確かに仲間達のいる方向だ。
 しかし同時にその仲間同士で激しい戦いが繰り広げられている場所でもある。
 生命の危機に及ぶ場所に不用意に近付く生物などまずいない。
 下手にのこのこ近付いていけば戦いに巻き込まれ死ぬだけだ。
 いや、それだけならばまだ良い、最悪の事態は自身の存在が仲間達の足を引っ張る状態に陥る事だ。
 そもそも、自身が漆黒の魔王に拘束されたお陰で仲間達は彼の者への攻撃を躊躇せざるを得なくなった。
 彼の者の増長を許したのは自身が原因、それを踏まえるならば二度と同じ失敗を犯すわけにはいかない。
 出会えずに死に別れた主人や仲間達の為にも激闘が繰り広げられている場所には向かえない――



 故に、白き竜は向かえなかった。そんな中――



『キュルゥゥゥ……!?』



 懐かしき匂いを感じた。ああ、その匂いは自身が一番理解している。



 我が主人■■■・■・■■■の匂いだ――



 だが、本当にそんな匂いを感じる事が出来るのか?
 都合良く主人の匂いを感じるなんて話があるのか?
 それ以前に既に死亡している筈の主人の匂いを何故今というタイミングで感じるのだ?



 もしかするとこの匂いは白き竜が願った都合の良い幻想なのかも知れない。道を見失った自分が存在し得ない主人を求め生み出した――



 だが、今はそれでも良かった――それが幻想であれ現実であれ、感じた事は事実なのだから――



 故に白き竜は舞う――起こりえない主人との再会を信じて――








Explosion



 車庫の扉は完膚無きまでに破壊された。クレイモア地雷2個分の威力――対人兵器とはいえ、至近距離ならば扉程度簡単に破壊出来る。
 そして、その真正面に誰かがいたならばその者はほぼ確実に物言わぬ骸となっているだろう――















 だが――














 車庫のすぐ前に骸は無かった――何故なら――















「予想が当たったよ――出来れば当たって欲しくなかったけどね」















 車庫のすぐ前に人などいなかったのだから――















 車庫より10数メートル離れた地点にヴィヴィオを背負ったユーノ・スクライアがいた。その手にはフェイトの相棒ともいうべきバルディッシュが握られている――







Truth



 高町なのは達と別れたユーノはヴィヴィオを背負ったまま駅へと向かっていた。そこですべき事は『ヴィヴィオの治療』、『首輪の解除』、『車庫の中身の確保』だ。
 だが、現状では首輪の解除に関してはリスクが大きい。気になる所が無いではないが断定出来ないため優先順位は低い。
 となると残りはヴィヴィオの治療と車庫の中身の確保という事になる。
「バルディッシュ、ヴィヴィオの容態はどう?」
『先程までの治療のお陰で生命の危機だけは回避できました。ですが、それとは別に大きな問題が――』
 それは、ヴィヴィオの体内のリンカーコアが消失しているという問題だ。
『恐らく先の戦いでリンカーコアが失われる程の現象が起こったということでしょう』
「つまりもうヴィヴィオは魔法が使えないって事か……複雑だなぁ……」
 魔法が使えなければ戦う事が無くなるためある意味では危険に巻き込まないで済ませられる。しかし、魔法が二度と使えないという事が大きなハンディになる事に変わりはない。
「とりあえず、リンカーコアについてはこのデスゲームが終わってから考えるしかないね。それよりも――」

 前方に駅が見える。ユーノはすぐさま近くの車庫へと向かった。

「先に車庫の中身を確認してからで良いね」
『そうですね、治療を行うとしても建物の中の方が都合が良いですしね』
「よし……」


 と、車庫の扉に手を掛けようとしたが――その直前で手が止まる。


『Mr.ユーノ?』
「……バルディッシュ、周辺と車庫の中をサーチするよ」
『え?』
「いいから」
 そして、サーチを行ったが周囲に自分達以外の存在は察知出来ない。

『異常は何もありません……Mr.ユーノ……?』

 が、バルディッシュの言葉にも構わず、ユーノは車庫の扉から少し距離を取る。

「バルディッシュ……フォトンランサー」
『何を言っているんですか?』
「ランサーで無くても良いから、あの扉をこの距離から撃ち破れるならね」
『Yes...Photon Bullet』





 一筋の魔力弾が扉へと飛んでいき直撃――同時にその瞬間、扉の内側にある何かが炸裂し――





 扉は破壊され無数の鉄球と扉の破片がユーノ達目掛けて飛んできた――だが、





 ユーノが発動した結界魔法――それらによって飛んできた鉄球と破片は全て防がれユーノ達に直撃する事は無かった――





「予想が当たったよ――出来れば当たって欲しくなかったけどね」





Reason



 車庫の中を調べた所、扉の近くに2つ分の爆弾の残骸が遺されていた。
「どうやら扉を開けたら爆発する仕掛になっていた様だね。もし不用意に開けていたら……」
『中には殆ど何も残っていません』
「デイパックだけが残っていた所を見ると既に誰かが手に入れた事になるね」
 ちなみに残されていたデイパックの中身は基本的な支給品しか無かった。



「ま、予想していなかったわけじゃないから。それよりヴィヴィオの治療を再開しないと」
 そう言いながらユーノはヴィヴィオに治療魔法をかけていく。そんな中、





『Mr.ユーノ、治療しながらで良いので聞いて良いでしょうか? どうして車庫に攻撃を――いえ、何故車庫に爆弾が仕掛けられていた事がわかったのですか?』
「どういう事?」
『Mr.ユーノの先程の行動が不可解でした。しかし、今にして思えば貴方は手を掛ける直前にその事に気付いたのは確実。だからこそ、直撃を回避する為に遠距離から扉を破ったのでしょう。
 ですが、根本的な理由が不明瞭です。外から見る限り変わった様子は無かった。故に、誰かが入ったかどうかすら分からないはず。
 では、何故――』

「多分、僕以外の人間だったら恐らく気付かなかったと思うよ」
『と言いますと?』
「バルディッシュ、本当に変わった所は無かった? 僕とバルディッシュだけは気付ける筈だよ」
『Mr.ユーノと自分だけ……まさか!』

「そう、扉の前にはあるべき筈のものが無かったんだ。だからこそ、僕は違和感を覚えたんだ」





 ここで1つ思い出して欲しい事がある。
 車庫の前には説明が書かれた立て札があったがそれは悪用回避のためスバル・ナカジマによって破壊され消失した。
 だが、ユーノは危険である事まで隠してしまうという問題を回避するため、『危険。触るな』と書かれた紙をセロテープで扉に貼り付けた。
 ちなみに、紙を貼り付けた事に関しては話す余力が無かった等の為、他の参加者には一切話していない。故にこのことはユーノとバルディッシュだげが知り得る話である。

 ところが、今扉を見るとその紙が無くなっていた。つまり、何者かが車庫に辿り着き張り紙を外したという事である。
 同時にその人物が車庫の中身を確保した可能性もあり、最悪の場合は次にやって来た者を抹殺するために罠を仕掛けた可能性もあるだろう。
 勿論、これは推測レベルの話だ。だが、可能性に気付いた以上最悪の事態は避けなければならない。故にユーノは安全の為、前述の行動を取ったのだ。
 勿論、何も仕掛けられていない、もしくは中身まで破壊する可能性もある。だがそれでも構わない、重要なのはヴィヴィオの身を守る事だ。その為ならば選択肢としては間違っていないだろう。




 では、実際の所はどうだったのだろうか?
 実は仕掛けた者は扉から入ったのではなく、ある転移魔法で直接車庫内に入った。そして中身を確保した後クレイモア地雷を仕掛け扉から出た。
 出る時及び仕掛けた拍子に仕掛けた者が気付かぬ所で張り紙が外れた可能性がある。
 もともとセロテープ程度の粘着力程度であったし、貼り付けた直後に放送が始まったが為、確実に貼り付けてあったかを確認し切れていなかった可能性もあり有り得ない話ではない。
 また、仕掛ける際に邪魔になって一端剥がし、もう一度そのまま張った可能性もあるが、粘着力の落ちたが為に風で剥がれた可能性もあるだろう。
 もしくは張り紙があるが故に、避けられては困ると考え敢えて外したという可能性もある。

 結局の所、真相はわからない。だが、先に訪れた者が細工を行った事で結果として張り紙が外れたという事実だけは確かである。





『――なるほど、だからこそ既に中身を確保され逆に罠を仕掛けられた可能性を考えたと』
「僕1人だったら無理に開けても良かったんだけど、ヴィヴィオを守る事を優先するなら……ね」
『しかし一体誰が……』
「『誰が開けたか』というより『誰が中身を持っているか』の方が重要だよ、あんまり意味は変わらないけど」
 今となっては中に何があったのかはわからない。だが、中身を持つ者がいる事は確かだ。
「といっても、その可能性のある人物は3人に絞られるよ」
『金居、キング、アンジールですね』
 放送時点で生き残っている参加者は12人、その内9人がアジトに集結していた。
 だが、車庫の中身についての話題ははやて達からもなのは達からも聞かれなかった。故に、アジトに集結していた9人は除外される。
 故にそれ以外の3人、金居、キング、アンジール・ヒューレーの内の誰かが確保したという事になる。

「スバルが立て札を破壊する前に確認すれば問題なく確保出来るよ。放送から2時間経っていることを踏まえると先行されていても不思議は無いわけだし」
『Mr.ユーノ達の策が無駄に終わりましたね』
「……これは僕の想像なんだけど、もしかしたらプレシアが何か仕掛けた可能性があるよ」
 プレシア・テスタロッサは十中八九自分達の行動を監視している。当然、自分達が車庫の中身を確保するために色々策を巡らせている事も把握されているだろう。
 車庫の中身が殺し合いを望まない者に確保されれば一番困るのはプレシアだ。故にプレシアは車庫の中身を殺し合いを望む者に渡す事を策謀する可能性が高い。
「ルーテシアに参加者の殺害をさせようとした可能性がある事を踏まえれば有り得なくはないよ。それに口を出すといっても、
『良い情報を教えて上げるわ。駅の車庫の中身を確かめてみなさい』
という風に
それだけ伝えれば済む話だよ」
『なるほど……確かにプレシアの性格上行う可能性はありますね』
「とはいえ、これは何の確証もない想像。だからこれ以上考えても仕方がないよ。確実なのは車庫の中身が殺し合いを望む者に渡ったという事実」
『車庫に近付いた者を爆弾で一掃する辺り凶悪なのは確かですね』
「3人の情報が不足しているのが辛いなぁ……」
『しかし最悪な状況ですね』
「そうだね、皆が集まった時点ではこんな事になるとは思わなかったよ」


 起こった事をユーノとバルディッシュが把握している範囲で整理してみよう。
 まず、なのはとはやてがかがみを巡って言い争いをしている隙を突いて千年リングに宿るバクラがヴァッシュ・ザ・スタンピードを操り何らかの方法でリインフォースⅡを惨殺。
 次にそれに逆上したはやてが広範囲攻撃を展開し仲間達を散り散りにさせる。
 なお、千年リングはスバルが確保し振動破砕で千年リングを粉砕しバクラもそれにより消失。
 なのは、ユーノ、ヴィヴィオ、スバルは無事に合流出来たがはやてがかがみの目の前でこなたを殺害。
 なおもかがみを殺害しようとするはやてに対しなのはが対峙、
 こなたの仇を討とうとするかがみを止める為スバルが対峙、
 そしてユーノとヴィヴィオは駅へと先行した――
 なお、ヴァッシュ、天道総司、アギトは消息不明だ。


「纏めるとこんな感じだね」
『Mr.ヴァッシュ、Mr.天道、アギトは無事でしょうか?』


 その問いかけに対し――


「天道さんについてはわからないけど……後の2人は……」


 ユーノは重い口を開きそう答えた。それはイコール2人の生存は絶望的だという事を意味している。

『貴方がそう語るという事は断定出来る理由があるという事ですね』
「今のはやてが、大事な家族であるリインを殺した奴を許すと思う?」
『――No.』
「フェイトを殺した事をずっと悔やみ苦しんでいたヴァッシュさんだよ、操られていたとしてもリインを殺してしまった事にショックを受けないわけがない。その隙を突けば簡単に殺せるよ」
 ユーノははやてが広範囲行為を仕掛けた後、すぐさまリインを殺して唖然としているであろうヴァッシュを殺害し仇を討ったと推測した。
 勿論、ユーノ達が知るはやてならばその可能性は低いが、シグナムの仇討ちと称しかがみを殺そうとする今のはやてならばほぼ確実に仇討ちに出るのは明白。
「とはいえ、ヴァッシュさんを殺した件に関しては責めるつもりはないよ。千年リングとバクラを甘く見ていたという意味では僕もスバルもヴァッシュさんも同罪だからね」

 『――に関して『は』』――その言い方に何か別の意味があるのかとバルディッシュは一瞬考えたものの一端それを脇に置き、

『アギトに関しては?』
「1つ確認したいんだけど、アギトはああいう人を惨殺したりする行為を好むかい?」
『いえ、それは無いです。彼女は騎士ゼストを慕っていましたしJS事件でもスカリエッティ一味のやり方に関しては反感を持っていました。その彼女が人殺しを肯定するとは考えられません――が、それが何か関係あるんですか?』
「大ありだよ、ヴァッシュを殺した事に関してはさっきも言った通り当然の結末だと思うしそれに関してはアギト自身も肯定してもおかしくはないよ」
『でしょうね。よく喧嘩していましたがあの2人仲が良かったですし』
「とはいえ、その前に僕達を巻き込んで広範囲行為をしたのは頂けないよ。そんな暴走をアギトが許すと思う?」
『――No, 恐らく彼女はMs.はやてを諫めようとするはずです』
「だけど今のはやてがそんな彼女の言葉を聞くと思う?」
『つまり……Ms.はやてが邪魔なアギトを殺したという事ですか? しかし幾らなんでもそう簡単にアギトを……』





「僕は見たよ――彼女の手に『アレ』があったのをね……それを使えば簡単だよ」
『『アレ』……まさか!?』
「そう、夜天の書……はやてはそれを使ってアギトを蒐集したと思う……」
 あの時、一瞬だがはやての手に夜天の書が握られているのが見えた。恐らくそれを使い邪魔なアギトを蒐集したのだろう。
 あの状況でいきなり蒐集をするとはアギトも考えない。完全な不意打ちならば回避は出来ないだろう。
『何て事を……』
「蒐集さえしてしまえばその力も使える、はやてにしてみれば好都合この上ないよ。勿論、アギトが都合良くはぐれてはやての所に戻らなければそれも無いんだろうけど……」
『すぐ近くにいましたし彼女の性格上、Ms.はやての暴走を止めようと戻る可能性は否定出来ません……ですが、流石に悲観視し過ぎでは? 仮説に仮説を上塗りした極論にも感じますし』
「……自分でも少し思うけど、今のはやてを見ていると有り得ないとは言い切れないんだよね。これが杞憂であれば良いけど……」





『やはりあのままMs.かがみをMs.はやてに殺させるべきだったでしょうか――そうすれば溝が出来るとはいえ今回の様な最悪の事態は避けられたのでは――』
 あまりにも最悪な事態にバルディッシュ自身はIFの可能性を考える。覆水盆に返らずとはいえ、別の可能性があったのではと考えずにはいられない。勿論、こんな事をユーノが肯定する筈など――
「――そうだね、かがみがシグナムを殺した以上、はやてが彼女を殺す事に関しては認めざるを得ないよ。こなた達には悪いけど彼女は殺し合いに乗っていたみたいだし危険因子を排除するならばそれもまた仕方がないと僕も少しは思っていたよ」
 意外にもユーノはバルディッシュの言葉を肯て――





「でもそれは間違いだよ。はやてにかがみを断罪する資格なんてない――


 今の彼女は機動六課の部隊長でも八神家の主でもない――


 只の愚かな殺人鬼だよ――」





『――どういう意味です?』
「はやてはプレシアを打ち破るために、仲間達を集めて障害を排除しようとしている――それが外見上の彼女の行動方針なのは見てわかるよね」
『その通りですね。だからこそ不穏因子であるMs.かがみを排除しようと……』
「でも、そんなことフェイトやなのはが認めると思う? なのはについては見ての通りだけど――」
『マスターも恐らくMs.なのはと同じ事をしていたでしょうね』
「そう、はやての行動方針は成立しえないんだ。絶対になのは達と対立を起こす筈、
 少し考えればはやてだってそれに気付く筈なんだ。だからこそ最大限の譲歩としてあの場ではかがみの厳重拘束が最善だった。それならなのはも良い顔はしないとはいえ了承してくれた筈だ

 つまり――はやては自分の行動を正当化し、自身の意に添わない人物を排除している只の駄々っ子でしかないって事、自分の欲望を満たしたいだけの只の子供だよ――」

『お言葉ですが、リインの仇討ちとしてMr.ヴァッシュを、シグナムの仇討ちとしてMs.かがみを殺す事に関して彼女が根本的に間違っているとは思えませんが?
 マスターも同じ事をしていた可能性は否定出来ませんし――』

「こなたは何故殺されなきゃならなかったの? 彼女がはやての家族を殺したのかい?」
『それは……』
「はやてには悪いけど、こなたを殺した時点でかがみを断罪する資格は失われたよ。それ以上は只気に入らないから殺す程度の我が儘でしかないよ。むしろ、かがみからの断罪を甘んじて受け入れなければならないかも知れないね」

 その声は何時ものユーノからは考えられない位冷たかった――そう、はやての行動にユーノ自身強い怒りを感じていたのだ。

「それに夜天の書を持っていた事から明日香を殺した事もほぼ確実。彼女が殺し合いに乗ったのはある種の暴走でしかない、彼女を殺す必要なんてなかったはずなんだ……」
 ユーノの知る限り、夜天の書はジュエルシードと共にユーノが一時期行動を共にしていた天上院明日香が所持していた。
 その時の彼女はその2つの力に呑まれ参加者を皆殺しにしようとしていた。だが、本来ならば彼女は善良な何の力もない一般人、彼女を殺す必要は皆無だ。
『危険人物だから排じ――』
「そんな事は僕だってわかっているしある意味では仕方なかったのかも知れない。でも、それならそれでちゃんとその罪と向き合わなければいけないよ! 人を殺した事に違いは無いんだから……
 でもはやてはその事を全く話さなかった……
 ヴァッシュさんがフェイトを殺した事に関しては上から目線で諫め、シグナムを殺したかがみに関しては彼女が反省の色を見せたにも拘わらず一切許さず、僕達が言い争いしている場合じゃないと言っても有耶無耶にするのかと聞く意味持たなかった……
 自分の行動は棚に上げて相手の人殺しだけ一方的に非難する……只の子供の駄々でしかないよ……」
 ユーノは激しい感情ではやてを非難する。だが、
『Mr.ユーノ……自分を責めないでください』
 バルディッシュはユーノが明日香の死亡の原因が自分にあると考えている事を察し、ユーノを慰めようとする。
「ごめんバルディッシュ……ちょっと熱くなりすぎたよ……明日香の件に関しては僕にも責任があったからつい……」
『今の姿をMs.ブレンヒルトやMr.Lが見たら何て言うか……』
「本当だよ……」
『ともかく今はヴィヴィオの治療に専念してください』



「ただ、どちらにしてもはやてを許す事は出来ないよ。彼女が人殺しをした事を意に介さない事は事実だからね。
 今の彼女は強い力を持って正義という言葉で自分を正当化している只の殺人鬼、彼女は絶対に止めるよ」





 さながらそれは死神のノートを手にし新世界の神となろうとした『ヤガミ』に挑んだ最高の探偵の姿に似ていた――















『――と言った所で、Mr.ユーノの力ではMs.はやてを止める事など不可能だと思いますがね』

「図星だけど言われると傷付くなぁ。まぁ、実際不可能に近いけどね……正直なのはでも難しいと思うよ」
 夜天の書とジュエルシード、それに強力な小刀型デバイスを持つはやての力は参加者中でも最強クラス。幾ら本来のデバイスであるレイジングハートが戻ったとはいえなのはでも厳しいのが実情だ。
 また、なのはが不利な要素が他にも存在する。
 忘れがちだがはやてはこなた(場合によってはヴァッシュも)を殺した事でボーナスを確保している。一方のなのはは先の広範囲攻撃等で消耗が激しい。
 故に、そもそもの戦力差が付いているという事だ。
 また、それぞれの心構えも問題点だ。なのはは恐らくどのような状態になってもはやてを殺す事はしないだろう。だが一方のはやては邪魔となるならば殺人も厭わない事は確実。
 つまり、はやては生きている限り他の参加者を殺す事でボーナスを得て幾らでも戦えるという事だ。そういう面でもなのはが不利である事がよくわかるだろう。





『最悪――Mr.ユーノとヴィヴィオ以外は誰も生き残れないかもしれませんね』
 自分達以外の8人中、なのはははやてと対峙、スバルはかがみと対峙、天道は行方不明、そして残り3人の参加者は敵の可能性がある。
 断定こそ出来ないししたくはないが自分達以外の仲間は全滅という可能性も否定出来ない。


「うん……それでも彼女、ヴィヴィオは何としてでも助けるよ。その為ならば僕は――」







Alive



 それは果ての見えない悪夢だった――






「うっ……うっ……」





 ヴィヴィオは1人耳を塞ぎ蹲っていた。助けを求めようとも助ける者は誰も現れず、現れた者は皆ヴィヴィオを拒絶した――





 ――どうしてこんな事になってしまったのか?





 それはヴィヴィオ自身が一番理解している。なのはママやフェイトママ達の願いや想いを踏みにじり裏切り他の人達を皆殺しにしようとしたからだ。
 そんな事誰も求めないのはわかりきった事なのに――





 身体の痛みは何時しか消えていた――だが、染みこんだ血肉の匂いは決して消えない――ヴィヴィオが咎人である事に何ら代わりは無いのだ――





「もうやだよぉ……」





 口から零れる嘆き――それでも頭の中には延々と声が響き続ける――





「どうしてスバルを殺そうとしたの……」
「お前がなのはやスバルを裏切ったんだ!!」
「えriおくnを……かeせ……」
「少し……頭冷やそうか……」
「お前なんか……嫌いだ……!」
「イライラするぜ……」





「やめてよぉ……」





 聞きたくない罵声は止まらない――何時しかヴィヴィオの心は壊れそうになっていた――





 いっそ死ねば楽になれる――こんな悪い子がここにいるなんて許されない――





 そう考えヴィヴィオは顔を上げ瞳を閉じて舌を噛み切ろうと――






「待つですよー!」





 次の瞬間、自分の額を誰かが叩いていた。





「あれ……リイ……ン?」
 自分の目の前にリインフォースⅡが浮いていた。しかしヴィヴィオは、
「ああああぁぁぁ……いやだよぉ……」
 リインにまで蔑まされると思い脅えきっていた。自分は自ら死ぬ事すら許されないのかと――





「ヴィヴィオ、いつまでこんな所にいるつもり?」





 と、後ろから声が聞こえてきた。振り向くと





「……こなた……お姉さん?」





 こなたが変わらぬ表情で立っていた。



「全く……なのはちゃん達を裏切って皆殺しにしようとしていた事はリイン達だってよーく知ってますよ!」
 リインは怒った様な表情でそう口にする。
「う……」
「で、スバル達も殺そうとしたんだよね?」
 何時もの表情でこなたはそう口にする。

「はっきりと言うですよ。ヴィヴィオのした事は決して許されないですよ! みんなの想いを踏みにじったわけですからね」
 そんな事は今更言われなくてもわかっている。もうやめて欲しいと思っている。
「それでもう死ぬしかないと思ったの?」
 そう問われてヴィヴィオは頷く。
「……それじゃあ、ヴィヴィオを助けようとした人達の努力は何だったんですか?」
「え……?」
 こんな自分を助けたいと思う人がいる? 信じがたい話にヴィヴィオは耳を疑った。
「忘れたのかな? スバルはヴィヴィオをどうしようとしていた?」

 ヴィヴィオはあの時の戦いを思い出す。確かスバルは自分を妨害――いや止めようとして体内に埋め込まれた何かを破壊しようとしていた。
 今にして思えば殺し合いに乗っていた自分を止めようとしていたのは十分に理解出来る。

「ここで死んじゃったらそれこそスバル達に対する裏切りだよ」

 そうだ、ここで死んでしまえば今まで自分を助けてくれた人達の想いや願いを裏切る事になる。だが――



「でも……」

 今更、皆を殺そうとした自分が許されるとは思えない。また拒絶されると思うとどうにも踏み切れない。そんなヴィヴィオに対し――

「そんな事……やってみなきゃわからないよ――だって、まだヴィヴィオは生きているんだよ。
 きっとこの先ヴィヴィオは辛い事を沢山経験するんだと思う――だけど、楽しい事にだって出会える筈だよ、友達を作ったりしてさ――
 死んだらそんな事も出来なくなるよ――そんなの誰も望まないよ――」

 勿論、ヴィヴィオの先には罵倒等の困難が待っている可能性が高い。だが、同時に更にその先には幸せな暮らしが待っている可能性もある。
 なのは達がヴィヴィオを助けようとしたのはヴィヴィオを幸せにするためでは無かったのだろうか?

「いいの……?」
「当たり前ですよ、ほら聞こえて来ないですか?」





『それでも彼女、ヴィヴィオは何としてでも助けるよ。その為ならば僕は――』





 何処からか自分を助けたいと願う少年の声が聞こえてきた。



「ユーノ……?」
「早く戻ったらどうです? きっとヴィヴィオが目を覚ますのを待っているですよ」
「……うん」
 また拒絶されるのではという不安がある。それでも自分を助けたいと願う人がいるのならば――その願いに応えたいとヴィヴィオは思った。





 そして、いつしか自分の身体が浮き上がっていくのを感じる――終焉の時が来たのだと――
「リイン……? こなたお姉さん……?」
 だが、2人は浮上するヴィヴィオを只見送るだけだ。

「言った筈だよ、辛い事も楽しい事も経験出来るのは生きている人だけだって――」

 ああ、そうか。そうだった――2人とももう――
「ううっ……」
 ヴィヴィオの目から涙がこぼれ落ちる。




「さよなら……」





 その最中少し離れた所にルルーシュ・ランペルージとフェイト・T・ハラオウンの姿が見えた。声こそは聞こえなかったがその口の動きから何を言おうとしているのかは理解出来た。





『なのはを』
『スバルを』
『『頼んだよ(ぞ)』』





 そして、最後にヴィヴィオのぬいぐるみを持った浅倉威が一瞬だけヴィヴィオの方を見た。言葉にはしていなかったが何を言いたいのかをヴィヴィオは理解した――





『イライラさせるなよ――』





「みんな……」





 そして、ヴィヴィオの記憶はここで途切れた――




























































「行っちゃったか……」
「行っちゃったですね……」
「ヴィヴィオ、大丈夫かなぁ……」
「心配なのはわかるですけど、リイン達に出来る事なんて何も無いですよ」
「そうだね……」
「本当にごめんなさいです。はやてちゃんのせいで……」
「あーいいよ、最後に■■■んを助ける事が一応出来たから満足か……な……」





「こなた……?」





「ごめん……やっぱりこんなんじゃ満足出来ないや……」





 少女の瞳には涙が溢れていた――

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