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魔法少女リリカルなのはBR Stage02 心の力を極めし者 ◆19OIuwPQTE




   /04「オーバードライブ・ブラスター」



迫り来る一撃を寸でのところで回避し、即座にゼロ距離から砲撃を撃ちこむ。
ダメージの確認をする間もなく即座に離脱する。
直後、先ほどまでいた空間を剣が切り裂く。
そこに再び砲撃を撃ちこむが、今度は盾に防がれてしまう。

「しつこいなあ、さっさと死んでよ」
「ッ――――!」

土煙の中から振るわれた一撃を上体を逸らして躱し、
そこに撃ちこんだ砲撃の慣性で距離を取る。

息が上がる。
背中は冷や汗でぐっしょりだ。
体力よりも精神の消耗が激しい。
レイジングハートを持つ力が覚束なくなる。
対するキングは、まだ疲れた様子も見せていなかった。

間違いなくダメージはある。
だが、それ以上に相手の回復力が高いのだ。

「レイジングハート、まだ行ける?」
『もちろんです。ですが切りがありません』
「そうだね。生物である以上、頭か心臓を潰せば倒せるはずだけど。
 相手もそれは理解しているからね。そこだけは絶対に守ってる」

状況は非常に厳しい。
何度か直撃させた砲撃は、確かにキングにダメージを与えている。
だがそれ以上にキングの再生が速い。
再生にもいつか限界が来るはずだが、このままではこちらの限界が先に来る。

「どうにかして盾を破壊するしか、無いかな」
『ですが、それは容易ではありません。
 あの盾の破壊には、おそらくスターライトブレイカー級の威力が必要でしょ
う。ですが』
「そんな余裕。簡単には与えてくれないよね」

先ほどの交戦でもそうだった。
あの盾は複数同時に出現する事も可能らしく、シューターによる同時攻撃も防
がれていた。
それではブラスターユニットによる支援は期待できない。

さらにどれ程強固にバインドを掛けても、キングはそれをすぐに破ってしまう。
制限から解放されたカテゴリーキングが相手では、せいぜい数秒程度の拘束し
か出来ない。
通常のバスターでもぎりぎりなのだ。
その程度の時間では、キングを相手にスターライトブレイカーを使う暇はない。

「けど、このままじゃどうしようも―――」
「考え事は終わった?」
「――ッ! しまった!!」

突如飛来したエネルギー弾を回避する。
少し考えに没頭しすぎた。
そしてその隙は致命的だった。

こちらの行動を先読みしたのだろう。
回避した先にキングが現れる。

(回避……だめ! 間に合わな―――!!)
「バイバイ、最強の魔導師さん」

振り下ろされた剣が地面を砕き、その衝撃で土煙が舞う。
この一撃には、どんな相手だって耐えられないだろう。
ましてやなのはは防御すら出来なかったのだ。
生きている筈がない。
だというのに。

「………………。
 つまんないなあ、また邪魔が入ったよ」

土煙が晴れる。
そこには、ある筈の高町なのはの死体は無かった。

「なのはは僕が守る。絶対に死なせない!」
「ユーノくん?」

声のした方向を向けば、そこに高町なのははいた。
ユーノ・スクライアに抱かれるような形で。

「ユーノさん……なのはママ、苦しい」
「あ、ごめんねヴィヴィオ」
「ごめんヴィヴィオ。もう少しだけ我慢して」

間にヴィヴィオを挟んでいたが。

「邪魔しないでくれるかなあ」
「そんな訳にはいかないよ。
 なのはは絶対に殺させない」

そんなことはお構いなしに、キングは苛立ちを見せ始める。
対するユーノも、堂々とキングに言い返す。

「もうウザいんだってば!」

その事に更なる苛立ちを募らせたキングが、ユーノに向かってエネルギー弾を
放つ。
だが、それがユーノに届くころには、ユーノ達は姿を消していた。

「ああもう! イライラする!!」

その事に切れたキングは、なのは達を探すついでに周囲に当たり散らし始めた。





そこから僅かに離れた位置で、ユーノはなのは達を下ろすと座り込んだ。

「大丈夫? ユーノ君」
「少し、無茶をし過ぎたかな」
『ご苦労様です』

その手にはバルディッシュが握られ、ヴィヴィオが見つけた足にはマッハキャ
リバーが装備されていた。
あの一瞬ユーノは、マッハキャリバーによる加速と、バルディッシュのソニッ
クムーブを併用する事によって、辛うじてなのはを助ける事に成功したのだ。
だが、元より戦闘向きでないユーノが人二人を抱えて行うには、大きな負担と
なったのだ。

「でも、ありがとうユーノ君。おかげで助かったよ」
「どういたしまして。
 でもそれよりなのは、伝えなきゃならない事がある」

感謝もそこそこに、なのははユーノの真剣な表情に気を引き締める。

「キングと金居が手を組んだ」
「……ッ! ユーノ君たちは大丈夫だったの?」
「なんとかね。でも、おかげで魔法陣の場所がわかった」

なのははその事に、僅かに安堵する。
会場の振動はどんどん強まっている。
この分では、いつ崩壊が始まるか判った物ではない。

「それでなのは。君はこれからどうする。
 敵はキングと金居だけじゃない。まだスカリエッティ達が残っている筈だ。
 それに残り時間も少ない。
 生き残る事を優先するなら、今すぐ魔法陣へ向かった方がいい。
 それだけは言っておくよ」

その言葉に、なのはは少し思案する。
強大な敵。見つかった脱出への糸口。
自分のするべき事。護りたいモノ。
そして。

「ここで……。ここでキング達を倒す」

それがなのはの出した答えだった。

「今ここで脱出しても、キング達は会場の崩落と一緒に死ぬかもしれない。
 けど、もし何らかの形で助かったとしたら、きっとまた同じことを繰り返す。
 そんな事、私は絶対許せないから」
「……わかった。それなら、出来る限り僕もなのはを手伝うよ。
 まず、今わかってるキングの情報を、出来るだけ詳しく教えて」

それを聞いたユーノは頷き、キングの情報を求めた。
それに応じてなのはも、自分が知る限りの情報を伝える。

「ユーノ君、何か思いついた?」
「……二つ、思いついたよ。
 でも、一つはほとんど確証がなくて、もう一つはとても危険な手段だ。
 ハッキリ言って、命にかかわる」

そう言うとユーノはなのはの顔を見つめる。
そしてふうと、諦めたように溜息をついた。

「でも、なのははやるんだろ?」
「さすがユーノ君。私の事、良く知ってるね。」
「そうだね。だからこれだけは言っておくよ。
 やるなら全力全開、手加減なしで。
 そして、絶対に生きて戻ってきて」

その言葉に、なのはは笑顔で頷いて言った。

「当然!」
『まったくです』





その頃キングは八つ当たりにも飽き、そろそろ本格的になのは達を探そうとし
始めていた。
その時だった。
突如として足元に出現した魔法陣から、緑色に光る鎖が無数に出現し、次々と
キングを拘束したのだ。

「鬱陶しいなあ」

だがそんなモノ、彼にはさしたる意味はなく、キングは鎖を次々と引き千切ら
れていく。
だが全ての鎖が千切れる寸前、再び何重にも鎖が絡みついてきた。

「このっ!」

キングは全身に力をいれ、鎖と引き千切っていくが、その度に新たな鎖が絡み
つく。
その鎖はユーノが作りだしたモノだった。
彼はシルバーケープで姿を隠し、物陰からチェーンバインドを行使しているの
だ。

「絶対に、離さない!」

どれだけ引き千切ろうとも出現し、何度も彼を拘束しようとする鎖に、流石の
キングも身動きが取れなかった。

そこにはユーノの決意があった。
決してキングを逃がすまいとする意志が。



そのころ、キングからは百メートル程離れた場所になのははいた。
彼女は現在、レイジングハートとマッハキャリバーの二機を装備している。
更には近くにヴィヴィオが控え、彼女もケリュケイオンを装備している。


ユーノの考えた二つの策。
その内の一つ目は、キングの剣を奪い、それを使って攻撃するという事。
キングの剣による攻撃の時に盾のオートガードがないのは、攻撃の邪魔になる
からか、自分の攻撃によって盾を壊しかねないからではないか、という考えか
らだ。
この策の欠点は三つ。

一つ。
ガードがない理由が前者だった場合、剣では盾を破壊できない可能性がある。

二つ。
たとえ後者が理由だったとしても、キングが剣をいくつでも作り出せるのなら、
なのはは慣れない剣での戦いを強いられてしまう。

三つ。
キングの破壊力が剣ではなく、キング自身の力によるものだった場合、そもそ
もこの策は成立しないという事だ。

これらの不安材料から、なのははもう一つの策を選択した。
即ち、限界まで強化・加速させた、直接攻撃による盾の破壊だ。

なのはの攻撃でキングの盾を破壊できない最大の理由は、砲撃魔法は基本、面
での攻撃であり、威力が拡散しやすい事にある。
故にその逆。力を一点に集束させた、ストライクフレームによる攻撃ならば、
もしかしたら通るのではと考えたのだ。
かつてなのはが、闇の書の意志の障壁を貫いた時の様に。


「みんな、準備はいい?」
『いつでもいけます』
『どうぞご命令を』
「お仕事がんばりまーす」

返ってきた返答にくすりと笑い、すぐに顔を引き締める。
ここから先は決死行。僅かなミスで、即死に繋がる。
だがその顔に、躊躇いはない。

「レイジングハート、マッハキャリバー」
『All right, Strike Flame.』
『Gear Exelion, Drive ignition.』
「ヴィヴィオ、お願い」
「りょーかい!」

カートリッジウィリードし、レイジングハートとマッハキャリバーが、魔力翼
を展開する。
そこにヴィヴィオが、それぞれの手に握られたカートリッジ二つを燃料に、ケ
リュケイオンによるブーストを掛ける。

「我が乞うは、疾風の翼。星光の砲撃主に、駆け抜ける力を」
『Boost Up. Acceleration.』
「猛きその身に、力を与える祈りの光を」
『Boost Up. Strike Power.』

ブーストによって強化され、ストライクフレームがまるで大剣の様な刃になる。
それを確認すると、なのはの瞳は彼方の標的を捉える。

「ウィング、ロード!」
『Wing Road.』

マッハキャリバーで走るのに、もっとも最適な道を作りだす。
これでいつでも引き金を引ける。
撃ち出される弾丸はなのは自身。その威力は想定不能。
なのははそこに、最後の強化を行おうとする。

「…………なのはママ」

その時、後ろから心配そうな声が聞こえた。
振り返れば、ヴィヴィオが心配そうな表情をしている。
なのははそんなヴィヴィオを安心させるように言葉を紡ぐ。

「大丈夫だよ、ヴィヴィオ。ちゃんと帰ってくるから」
「…………うん。
 ママ、行ってらっしゃい」

その一言に、どんなに思いが込められているか。
それは想像に難くない。
だからなのはも、一言だけ返した。

「行ってきます、ヴィヴィオ」

“ただいま”と言うために。
“お帰りなさい”を聞くために。
この道の先にいる敵を、打ち倒す!

「いくよ、レイジングハート、マッハキャリバー。
 ブラスター2、リリース!」
『『A.C.S. Standby!』』

“最後の切り札”の二枚目を切り、更に限界を超えた強化を行う。

マッハキャリバーのホイールが唸りを上げる。
キングはユーノ君が足止めしてくれてる。
彼我の距離は百メートルほど。
阻む物は、何も無い!!

「A.C.S.ドライバー、オーバーブースト! フルドライブ!!」
『『Charge!!』』

瞬間、衝撃をともなって桜色の閃光が解き放たれた。



通る端から崩壊していく翼の道。
二つのA.C.Sによる超加速は、周囲に圧倒的な破壊力をまき散らし、なお加速
していく。
速度は音速にまで達し、ともすれば音の壁を突き破りかねないほど。
その事実は、それだけで高町なのはの肉体に、異常なまでの負担を強いる。

だがそれさえも一瞬。
辛くも間にあったキングの盾が、高町なのはに更なる急制動を強要する。
最大150tもの衝撃にも耐えられるソリッドシールドは、亀裂が入りはしても
容易には砕けず、激突と音速からの急停止による衝撃が大地を粉砕する。
それによりなのはには、常人ならば耐えられぬ程の負荷がかかる。

全身の骨は軋み、内臓は重圧に潰され、毛細血管が破裂する。
レイジングハートを握る手は、今にも指が千切れ飛びそう。
視界は激しく明滅し、まともに前を見る事さえ叶わない。

だがその全てを、高町なのはは歯を噛み砕く程食いしばって耐えきった。
唇からは大量の血が零れ、全身いたる所に裂傷が奔り、その手は真っ赤に染ま
っている。
されどその瞳は、真っ直ぐにキングを捉えていた。

「まさかここまでやるとはね。
 僕の盾に亀裂が入るなんて、そうそうある事じゃないよ。
 もしかしてさっきまでの鬱陶しい鎖は、この為の足止めかい?」

流石のキングにも、声に余裕がない。
しかしその複眼に、自らの勝利に対する確信は残ったままだ。
されど、なのはの瞳にもまだ、勝利への決意が宿っていた。

「けどここまでだよ。
 君の攻撃は、絶対に通らない!」
「通す!!
 レイジングハートが! マッハキャリバーが!
 みんなが私に力をくれてる! 命と心を賭けて、答えてくれてる!
 あなたみたいな人を、絶対に倒すんだって!!」

両者の力は拮抗し、お互いに譲り合う事を良しとしない。
なのはのレイジングハートにも、キングの盾と同様亀裂が入っている。
それは即ち、レイジングハートが砕けた時点でなのはの敗北を意味する。

されど、ここでそれを案じて躊躇うのならば、そもそもこんな作戦は行わない。
故に――――

「ブラスター3!!!」
「なっ! まだ先があるって言うのか!」

“最後の切り札”の最後の一枚を切る。
跳ね上がる魔力出力。次々とロードされるカートリッジ。
ソリッドシールド、レイジングハートの双方に、さらなる亀裂が奔る。
それに構う事なく、限界以上に魔力を流し込む。

「嘘だ。 こんな事、認めない!
最強は、この僕なんだ―――ッッッ!」
「ブチ抜けええぇぇぇッッッッ!!!!!!!!」

砕け散る最強の盾。
桜色の穂先は、違う事なくキングの胸元へと吸い込まれ、その心臓を貫いた。



視界が白く染まっていく。
全身から力が抜け、穏やかな感覚に包まれていく。

どうしてかな。
帰る場所があるのに。
まだやるべき事があるのに。
どうしようもなく、眠い――――――



   /05「覚悟の証明」



その光景を、ユーノ・スクライアは確かに見た。

辺り一面を照らす桜色の光。大地さえ打ち砕く神速の衝撃。
死をも恐れぬ限界を超えた一撃を以って、高町なのははキングを倒したのだ。

だが――――その代償は計り知れない。

確かにこの策を提案したのはユーノ自身だ。
しかし、この決戦は想像の範疇を遥かに超えていた。

なのはが通った道は深く抉られている。
キングと激突した場所は深く陥没し、まるでクレーターの様。
そこから何十メートルか離れた場所になのははいた。

「なのは!」
「なのはママ!」

駆けつけたヴィヴィオと共に、倒れ伏すなのはに駆け寄る。
なのはの状態は、一目見て判るほど凄惨だ。
全身傷のない所など無く。出血のせいか、顔色も酷く悪い。
更に両手は真っ赤に染まり、レイジングハートの柄も、その大半が血に濡れて
いる。
五体満足でいること自体が奇跡のようだった。

「なのは! 起きて、なのは!!」
「なのはママ! 目を覚まして、なのはママ!!」

二人の声に反応してか、なのはは小さくせき込み、薄く眼を開けた。
そして二人の顔を見つめると、小さく微笑みを浮かべた。

「ただいま、ヴィヴィオ」
「お帰りなさい、なのはママ!」

なのはとヴィヴィオは、お互いを抱きしめ合う。
こうして二人の親子は、小さな約束を果たしたのだった。


「でもよく無事だったね」
「レイジングハートとマッハキャリバーが、護ってくれたんだ」

それはキングの盾を砕き、その身体を貫いた直後の事だった。
レイジングハートとマッハキャリバーはA.C.Sを停止させ、
同時にプロテクションを張ったのだ。
その二重の障壁により、なのはは慣性による瓦礫への激突と、それによる致命
傷を免れたのだ。


「何はともあれ、本当に良かった」

大きく息を吐き、胸を撫で下ろす。
その時ふと視界の隅に影が映り込む。
直後、背筋に激しい悪寒が奔った。
即座にバルディッシュを背後へと振り上げる。

響く金属音。
背後からの襲撃者が持っていた、赤いレイピアが弾き飛ばされる。
そして襲撃者――アンデッドへと変身した金居は、悔しそうに舌打ちをした。

「やはりヘルターとスケルターを使うべきだったか」
「…………ッ! 何もこのタイミングで……、いや、このタイミングだから
か!」

金居が襲撃してきたタイミングの悪さを嘆こうとして、
それが意図的なものであると悟った。
金居はいつの間にか自分たちの近くへと接近していたのだ。
元より、あれだけ派手な戦闘をしていて、気付かない方がおかしい。
今まで襲撃しなかったのは、確実に自分達を殺せるタイミングを待っていたの
だろう。

「まあさしたる問題ではないな。
 キングがやられた事は予想外だが、そこの女は瀕死、残る二人も戦力外とな
れば、結末は自ずと見える」
「――――ッ!」

なのはがレイジングハートを支えに立ち上がろうとするが、すぐに膝をついて
しまう。無理だ。そんな状態で戦える訳がない。
ヴィヴィオにしたって、魔力はカートリッジで代用しても、戦闘経験がほとん
どない。金居相手にそれでは無謀でしかない。
つまり、現状戦えるのは僕一人だけという事だ。

だからと言って逃げる事も難しい。
僕一人では金居を相手にしながら、二人を抱えて逃げ切る事は出来ない。
キングの時は不意を突いたから上手くいったのだ。
今の金居には前回のような油断はない。半端な奇襲は、もう通じないだろう。
それでも何もしない訳にはいかない。

金居の両手に黒と金の二色の双剣が現れる。

「さあ、さっさと死ね。
 すぐに後ろの女も後を追わせてやる」
「そんな事は絶対にさせない!!
 バルディッシュ!!」
『Sonic Move.』

バルディッシュの支援とシルバーケープによるステルスで金居の背後に回り
込み、力の限りバルディッシュを振り被り、一撃する。
だが。

「無駄だ」
「なっ!」

その一撃は、あまりにも容易く避けられた。
返す一刀を辛うじてバルディッシュで受ける。
だがその威力に勢いよく飛ばされ、なのは達のところへと転がり落ちる。

「確かに姿が見えず、高速で動く敵は厄介だ。
 だが、所詮は素人。行動は読みやすく、一撃も軽い。
 以前の様に完全な不意を突いたのならともかく、正面から相対している以上、
お前に勝てる要素は皆無だ」

そんな事はとっくに理解している。
だが、それでもなのは達を殺させる訳にはいかない!

「たとえ……たとえどんなに可能性がなくても、そんな事は関係ない。
 どんなに無茶でも。どんなに危険でも。僕たちはみんなで脱出すると誓った。
 だから! お前には負けない! なのは達は、僕が守ってみせる!!」
「そうか。ならば証明して見せろ!!」

金居が双剣を構える。
あちらから攻めないのは余裕の表れか、それとも後の先を狙うタイプだからな
のか。
どちらにせよ、今は助かる。

「妙なる響き、光となれ、癒しの円のその内に、鋼の守りを与えたまえ。
 ラウンドガーダー・エクステンド」

なのはを中心に防御と肉体・魔力の回復を同時に行う結界を形成する。
これで僕が死なない限りは、なのはの治癒が行われる。

「ヴィヴィオ、なのはをお願い。
 僕はあいつを倒す」
「ユ-ノさん」
「行くよ、バルディッシュ」
『Yes, sir.』

金居を正面に見据え、バルディッシュを構える。
あいつを倒す、なんて大それたことを言ったけど、
僕自身に有効な手立てがある訳ではない。
だからと言って、死ぬつもりはない。

僕に出来るのは時間稼ぎくらいだけど、それだけでも状況が好転する事もある。
バルディッシュのサポート。シルバーケープによるステルス。
そして、僕が考えうる限りの機略を以って、金居に決死の一撃を叩きこむ!



   /06「なのはとヴィヴィオ 約束」



そうして、ユーノ・スクライアは無謀な死闘へと挑んでいった。
ステルスによって姿を消したユーノと、それに対応できる金居は、徐々に戦闘
領域を移し、ついには今いる場所からは見えなくなってしまった。


その光景を、私は見ている事しか出来なかった。
ユーノさん達が消えさった方向を、ただ見つめている。
それを見て何を思ったのか、なのはママが問いかけてきた。

「ねえ、ヴィヴィオ。
 悔しい? それとも、怖い?」
「――――――ッ!!」

そしてそれは、私の心を的確に捉えていた。

悔しいという思いも。怖いという感情も。きっと両方正しい。
何が悔しくて、何が怖いのかも、なのはママはきっと気付いてる。

「どうして、分かったの?」
「だって私は、ヴィヴィオのママだから。
 まだほんの少ししか一緒に過ごしてないけど、それでも本当のママになれる
ように努力してきたんだよ」

わかってる。
あの戦いの中でなのはママはそう言った。
だからきっと、私が思う以上に頑張ってるんだ。

「ヴィヴィオは、ヴィヴィオの思った通りにして良いよ。
 失敗したって大丈夫。私達がついてるから。
 言ったよね? 助けるって。いつだって、どんな時だって」

覚えてる。
もう自分の意志では止まれなかった私を、なのはママは傷だらけになりながら
も助けてくれた。

「だから、ちゃんと自分の心を信じてあげて。
 何のためにその力があるのか。
 その手の力で何ができるのか。
 それはきっと、自分の心で決める事だから」
「うん……!」

涙声で頷く。
それはきっとなのはママが通って来た道。
その先で見つけた確かな答えなのだろう。

悔しかったのは、何も出来ない自分。
自分に力がなかったから、大切な人たちが目の前で死んでしまった。

怖かったのは、制御できない自分。
哀しみや憎しみを抑える事ができなくて、力を手に入れても壊す事しか出来な
かった。

けど、今は違う。
私を信じてくれる人がいる。
私を助けてくれる人がいる。
だから、もう大丈夫。


「ありがとう、ママ。
 私はもう大丈夫だよ。
 ちゃんと一人で立てるよ。
 強くなるって、約束したから」

抱えていたデイバックから、赤い宝石を取り出す。
私にとって罪の象徴ともいえる、レリック。

これを受け入れる事は、今までの自分を全部受け入れる事なんだと思う。
きっと、とても辛くて、とても悲しくて、とても怖い。
それでも私は、みんなを守りたい。

「だからなるよ。
 なのはママみたいに強く。フェイトママみたいに優しくなってみせるよ」
「……うん、きっとなれるよ。
 ヴィヴィオがそうなりたいって思って、そうなろうって頑張れば、
 なれないものなんて、きっとないから」

だから大丈夫。
なのはママが、私を信じてくれるから。
私が、誰かを守りたいって願っているから。
―――だからきっと大丈夫。私はもう、自分には負けない。


『――――わたしを、ヴィヴィオの元に』
「マッハキャリバー?」
『わたしはこのデスゲームにおいてヴィヴィオが聖王となった際に、彼女とレ
リック、そして“ゆりかご”とのバイパスとして使用されました。
 その為、わたしはヴィヴィオの個体情報を獲得しています。レリックと融合
する際の助けになれるでしょう』

マッハキャリバーが自分から待機形態へと移行する。
それは私に受け取ってくれ、という意思表示なのだろう。

『お願いします。
 わたしはまだ動けます。まだ戦う事が出来ます。
 わたしはまだ、あなた達の助けになりたいのです』
「……わかった。手伝って、マッハキャリバー」
『ありがとうございます』

なのはママからマッハキャリバーを受け取る。
するとなのはママが、私の手を強く握った。

「今度は私の番だね。
 ヴィヴィオ、行ってらっしゃい」
「――――!」

その言葉に驚き、それ以上にうれしくなる。
握られた手を、強く握り返す。

「うん。行ってきます、なのはママ」

名残惜しげに手を離す。
けど、今は惜しむ暇はない。
ユーノさんが今も戦っている。

マッハキャリバーを片手に、レリックを胸に抱く。
赤い魔力の結晶が体内に溶け込み、体に再び魔力が満ちていく。
それと同時に、私は虹色の光に包まれた。



虹色の光が治まる。
そこには金色の髪をサイトアップに結い纏め、黒と白の騎士甲冑を纏う、17歳
前後の少女――聖王ヴィヴィオの姿があった。

聖王となったヴィヴィオは、僅かに振り向いてなのはを見つめる。
その緑と赤の双眸に宿すのは、かつての様な怒りや憎しみではなく、
母と同じ優しい光。

「本当にもう、大丈夫だね」

小さく頷き、視線を前へと戻す。
約束を胸に、清らかなる戦士はこのデスゲームを終わらせる為の戦いへと赴く。


「頑張ってね、ヴィヴィオ」
『御武運を』

その後ろ姿を見つめ、なのは達はそう言った。
そこには絶対の信頼と、母親特有の優しさがあった。



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キング
金居






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