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Last update 2007年10月27日

非生産的な僕ら 著者:おりえ


「ふん。じゃあ何かよ。おまえはまともだって言うのかよ。不純異性交遊してるくせに」  「人聞きの悪いこと言うんじゃねーよ。大体異性交遊に純粋も不純もあるのか? 男と女がやることやってるだけだろうが。何故に俺が非難されねばならんのだ」
「普段あんなにロリコンに対して死滅しろとか竿をちょん切れとかわめているおまえの口から出た言葉とは思えんな。なんだ? 自分はよくて他人はだめなのか? どんな我侭大王だ? あ?」
「俺までロリコンのレッテル貼ろうとしてんじゃねーよ。人が聞いたら誤解すんだろ。人間の思いってななぁ、結局最後は肉欲にたどり着く運命なんだよ。だって子孫残すために俺らムダに生きてるんだから。だから純粋不純は意味ないの。関係ないの。そこに愛があればいいの!」
「うーわー愛。アイですってよそこの奥さん!」
「誰もいない空間に向かって話しかけんな。気味悪いだろ! とにかく俺はまともな恋愛を楽しんでるの! 口出しすんじゃねーよ。万年フラレ野郎が」
「いいんだよ。俺には恋人がざっと50人はいる。リアルなんかどうでもよくなったさ」
「やだねー、二次元にしか愛を見出せない、非生産的な生き方! あーやだやだ。近寄るな。話しかけるな。目を合わせようとするな!」
「何言っちゃってんの? 俺は誰にも迷惑かけてないし、二次元の何が悪いのか!  俺の脳内妄想バカにすんなよテメー。その内子供連れてくっからな!」
「見えない赤ん坊あやして楽しいのか? おまえは。何で俺が泣きたくならなきゃならないんだ」
「まあ実際問題、リアルで異性とまともに交遊できない人間は、ゲームでその欲求を満たしている傾向にはあるな。二次元はプレイヤーを傷つけないってのがあるからさ。大体俺は思うね。おかしいよおめーら。何で好き好んで相手の好みに合わせて自分を変えたり、相手に好かれるために自分を殺して生きてんだ? 虚しくね? 生きることの意味をふと考えちゃわね?」
「それはおまえが言われるべき言葉だろ。現実で立派に傷ついて成長していってる俺らに説教すんな。ひきこもり寸前野郎」
「おまえよりはマシだと思いたい。ああ俺は思いたいね!」
「だからさっきっからなんなんだよおめーは? まずは自分の生活を改善することから始めろよ。やってらんねーよ、もう」

 僕の友人はそう吐き捨てると、恋人が来たといって駆け出していきました。
 ああ、神様。
 二次元の美少女ゲームのキャラに本気で恋をし、抱き枕を抱えて街を徘徊する男は世の中に実際いいます。真面目に話しかけちゃってる人も知ってます。部屋に入れば見渡す限りの美少女キャラのポスター、座布団、テレビやパソコンには顔のパーツはほぼ一緒なのに髪型だけが違うだけというキャラがにこにこ笑ってます。とても親には見せられない部屋ですが、彼らはそこに幸せを見出しているのです。
 人の幸せはその人だけのもの。ええ、僕もそう思っていますよ。早く家に帰って、愛しのランたんに洋服を買ってあげなくてはと思っています。ゲームの中の僕はお金持ちですから。
 こんな生き方ができるようになった世の中を憎むべきでしょうか。それとも喜ぶべきでしょうか?
 そんなことはどうでもよいのです。僕にはランたんがいればそれで、ええ、もう何も望みません。とはいっても、他にも沢山愛すべき二次元キャラは僕の心を捉えて放しませんけれども。
 けれど僕のたったひとりの友人の幸せについて、僕は考えざるを得ないのです。

「今日もいい天気だねぇ」
「ああ、そうだね」
「お友達はいいのかい?」
「ああ、いいんだ。あいつ、家に帰ってゲームやるしかできねーんだから」
「わたしも今度、そのげぇむをやってみようかねえ。楽しいんだろ?」
「いいんだよ。目が悪くなっちまう」
「何言ってるんだい。わたしゃ」

 神様、僕と彼、あなたはどちらを哀れんでくださいますか?

「もう90のおばあちゃんだよ。眼鏡がないと、なぁんにも、見えやしないんだ」
「だろ? これ以上悪くなったら、俺の顔までわからなくなる。それだけはごめんだぜ」
「おまえさんは優しいねえ」
「そりゃそうさ。愛しているもの」
「嬉しいねえ。死ぬ前におまえさんみたいな人と出会えて、わたしは幸せものだ」

 目をキラキラさせて「うんうん」と呟く僕の友人の「彼女」のしわしわの顔を愛しそうに覗きこむ彼の顔は間違いなく「幸福」で。

「…さ、ランたんに会いに帰らなくちゃ…」

 隣には誰もいない。これからもいることはない。けれど頭の中で僕は沢山の美少女キャラに囲まれている。永遠に老いることのない彼女たちに囲まれて。

 人の幸せはその人だけのもの。そんなのはとっくにわかっている。
 それでも僕は、どんな人であれ隣に確かにいてくれる「彼女」がいる彼と、決してぬくもりを感じることはないけれど、ずっと僕を裏切らないでいてくれる「彼女」たちがいる僕と、果たして人はどちらをうらやむのだろうかと、たまにそんなことを、考えてしまうのです。




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