Last update 2007年11月23日
空気代 著者:亜季
「空気もそのうち、有料になるぞ。」
ナオキは、ネクタイを緩めながらナミに言う。
「はいはい。」
「聞いてないだろ。」
「聞いてるって。」
「聞いてないだろ。」
「聞いてるって。」
カーテン越しに三日月が光るこの部屋で、
ナミは髪をときながら、風呂上りの手入れに必死だった。
ナミは髪をときながら、風呂上りの手入れに必死だった。
「じゃあ、俺の言ったこと、復唱してみろ。」
「食うにもそのうち、いるようになるぞ。」
「食うにもそのうち、いるようになるぞ。」
・・・ナミがまた、とてつもない聞き間違いをした。
「・・・そんなこと言ってねぇって。って何がいるんだよ?」
「え?親からの仕送り。貯金が底につきそうなんでしょ?」
「え?親からの仕送り。貯金が底につきそうなんでしょ?」
キョトンとした目で俺を見るナミ。
俺のがキョトンとしたいほうだ。
俺のがキョトンとしたいほうだ。
「こうなったら、『親からの援助は受けない!』なんて意地はってられないもんね。」
確かに俺の貯金は底につきかけていて、
危うく、ナミの収入にお世話になりかけた。
危うく、ナミの収入にお世話になりかけた。
でも、もう、仕事もせずに、家でゴロゴロしてた
昨日までの俺じゃない。
同棲中のナミにだって、これでやっと楽にしてやれる。
昨日までの俺じゃない。
同棲中のナミにだって、これでやっと楽にしてやれる。
「で、結局なんて言ったの?」
「『空気もそのうち、有料になるぞ。』」
「ぷっ。何それ?」
「『空気もそのうち、有料になるぞ。』」
「ぷっ。何それ?」
ナミが可笑しそうに笑う。
この笑顔のために、俺は頑張ったんだ。
この笑顔のために、俺は頑張ったんだ。
「空気が有料になったら、うち、生けていけないね。」
「大丈夫だよ。払えるから。」
「えー?就職決まってから、そのセリフ言ってよね。寝るよ。」
「え!待って!これ見て!」
「大丈夫だよ。払えるから。」
「えー?就職決まってから、そのセリフ言ってよね。寝るよ。」
「え!待って!これ見て!」
俺はボロボロに擦り切れたカバンから
紙切れを1枚取り出し、ナミに見せた。
紙切れを1枚取り出し、ナミに見せた。
が、電気は消された後だった。
「おーい、見てくれよ。これこれー!」
この暗さではどうせ何も見えそうにも無いが。