「これは・・・ウロボロス環ですっ!」
「機関、出力低下。マハの干渉を受けています!」
スクリーン上に映し出される赤い色彩のリングが縦に横に回転しながら球を形作る。
「カラーパラーン、赤!」
一説には星の誕生にも等しいと言われる竜の誕生を目撃しているのかもしれない。赤は絶えて久しいレッドドラゴンであり、全宇宙で最も強大で凶悪の知性体。星都にわずかに残る竜人達に目の前の現象を確認しようにも、あらゆる波がウロボロス環に吸収されて通信は届かないだろう。しかし、真ドラゴンのの誕生ならばこの宙域の生命体は全て耐えるだろう。言い伝えどおりならば、あらゆる命を糧にして竜は目覚めの咆哮をあげる。
「難民救助は・・・」
「まだ継続中ですが、中心部に取り残された第11小隊が」
「本艦は持ち場を維持、いつでも飛べるようにしておけ。持って何分だ?」
「7分45秒であります」
機関長から連絡が届く。しかし、赤い球体の膨張はとまらない。ついさっきまで大規模な会戦が行われていた宙域を突如襲った災厄に敵軍も友軍も浮き足立っていた。