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 Level 22



 国王崩御。
 第1107代ウズミ・ナラ・アスハ王の急逝。近々行われるカガリ王女の即位。

 メイリンは王宮に仕える女官の一人で準1級神官だという。姉妹の絆を糧に居所を探り辿ってこの森を探り当てたと言う。ただ、攻撃や防御は苦手だから傷だらけになったのだが。

「そんな大変な時期に、王宮を抜け出してきて大丈夫なのか?」
「色々儀式とかあるのよねえ」
 至極ごもっともなアスランの質問に、ルナマリアがありきたりな反応をした。が、その妹は到底もっともじゃない答えを返す。
「今の王宮は怖い。国王派と執政派で真っ二つで・・・国王が亡くなられたのだって、噂が飛び交ってて・・・」

 執政官が毒殺したのだ、と。

「で、でもどうして、そんなことに」
 シンやルナマリアが知らない王宮に渦巻く陰謀。対立は何が元だったのか。
「殺したいほど憎かったってことか?」
「王が議会に提出した法案が問題だって・・・」

 貴族と平民を同じく扱うべき数々の差別を撤廃する法案が議会に提出されていた。否決されても、国王は何度も提出して決して諦めなかった。そのうち、その決意に打たれて賛同する貴族も出始めた。
 貴族達にはそれをよく思わない者も大勢いて、その最たる人物が王を補佐するはずの執政官。 クライン執政官。
 仮面で顔を覆った物々しい姿の魔導士。

 そいつが、国王を殺した・・・?

「そんなこと、あるのかよ」

 シンには信じられない。
 自分達に都合の悪いことをしようとする王を殺してしまうなんて。そんな奴らがこの国を牛耳っていて、贅沢三昧な生活をしている。しかも、平民を平等に扱おうとしたことが原因とは。もし、それが叶えばどんなにいいだろう。
 誰もが学校に入れるし、出自で門前払いになったりしないに違いない。

 どうしてこの世界は、こんなに悪いほうにばかり転ぶのだろう。

「簒奪する気じゃないかって噂もあるくらい」
「乗っ取りっ!?」
「うん。執政官は君主の杖が欲しいみたいなのよ」

 君主の杖?!
 国王が持っている?
 だが、キラって奴は違う杖を狙っていた。

「俺たちが探している杖は・・・」

 一体、何を叶えてくれると言うのだろう。

 君主の杖は、王国の守護者たるゴールドドラゴンを従える杖。
 太古の昔、悪の象徴を倒したゴールドドラゴン。その戦いでは、一人の女性が知恵と勇気を武器にローフルを勝利に導いたと言う。今も、エターナル王国始まりの歴史として語り継がれている。
 地上の悪がレッドドラゴン共に消えて大地に光が満ちた時、忠誠の証としてゴールドドラゴンから送られた杖。

 いつでも我を呼ぶがいい。
 我らはそなたと共にある。

 君主の杖は絶対を保障してくれる。
 この世にゴールドドラゴンに勝る存在はいないのだ。
 ローフルの頂にして、光と生命の象徴。
 最速の翼を持ち、その瞳は世界の果てまで見通す。
 尽きることのない魔力は、カオティックさえ凌駕する。

 君主の杖に匹敵する杖ならば。
 シンの思考がある一点から離れない。

 もしかしたら―――

「この杖は渡さない」
 手にした地図を握り締める。
 あと少しなのだ、ドラゴンの瞳は手に入れた。
 地図に書かれた場所を特定して、そこで杖を手に入れるだけ。

 ―――ステラを。

 淡い期待を抱くシンに、思いがけず水を差す声がした。

「シン、杖を探すのは止した方がいい」

 明日は雨だから遠足は中止だ。
 そんなのりでアスランが杖を探すのは中止したらどうかと言った。

「は? 何を・・・言ってんです?」

 シンはどの口がそんなことを言ったのかとアスランを見る。ルナマリアとメイリンも併せて3つの視線が彼に突き刺さっている。どんな神妙な顔つきかと思ったが、ただの思いつきではないかと思うほど穏やかに続ける。
「俺は君に杖を探して欲しいと思ったけれど・・・それは、大切な命と引き換えにするものじゃない。宝捜しはここで終わりだ」
「どういう事だよそれ。杖を探すのは別にあんたのためじゃない」

「王国の為に立ち上がった・・・訳じゃないわよね」

 雲行きを見守るルナマリアがシンとアスランを交互に見る。

「俺が、俺の為に手に入れるんだ」
「シン、危険すぎる。それに杖を手にしたものは呪いを受けるという噂だ」
「うわさ? アンタには関係ないだろ」

「あの、どうしてそこまで心配してくれるんですか?」

 おずおずと言った感じで、メイリンが尋ねた。
 一介のアイテム屋が客であるシン達を心配するにしては行き過ぎている気がしないでもないのだ。アスランも一瞬口を噤み、溜め息をついて肩の力を抜いた。

「まあ・・・俺もその杖に全く無関係って訳じゃない」

 衝撃の事実だった。
 シンとルナマリアが目を瞠る。ギルドマスターや親衛隊を引き連れる騎士だって、杖を手に入れるためにドラゴンの瞳や地図を探していたというのに。

「アスランは杖を知っているんですかっ?!」

 こんな所に、杖そのものを知る人物がいた。

「ああ、何度もチャレンジしたよ。だから、シンや君達にあまり無茶なことをして欲しくないんだ。あそこには・・・今も、俺の友人がいる」

 少しだけ、彼の瞳が彼方を見るように視点がさ迷う。
 分かっているのに、彼はもう自分では探さない。

 シンは、視線の先に何があるのか気付いたからそれ以上聞かなかったが、彼女はそうではなかったようだ。ルナマリアが続きを促す。

「その人は?」
「・・・もうずっと長い間、会っていないよ」

 闇の森のダンジョンで朽ちた大勢の人。
 これから行くダンジョンにも多くの人が眠っているのだろう。
 アスランの友人もその中の一人なのかも知れない。

 誰かに手に触れられる為に今も迷宮に守られている、その杖。
 今までにどれだけの人が挑み、帰らぬ人となったのかは知らないが、そう、そんな人生もいいかと思ったのだ。ステラが杖を手に入れる道半ばで倒れたとすれば、自分はその道を最後まで進むべきだろうと。

「やっぱり、俺探します」

 友人の夢を叶える為に、杖を求めるものを援助しているアスラン。
 殺された師匠の遺言を果たす為に、杖を探すルナマリア。

「そうと決まれば準備準備」
「君はまだ、けが人だろう!」

 シンは大怪我をしてようやく起き上がれるようになったばかり。
 思い立ったが吉日とばかりに飛び出していきそうなシンに、待ったをかけるアスラン。紛う事ない事実に、くやしそうに唇を噛み締める。

「それならあたし、回復魔法かけられますよ?」

 メイリンの何気ない一言に、アスランがうなだれ、シンはガッツポーズをした。



続く

うむむ。なかなか進んでくれません。もっと、簡潔に、さくさく進めたいのに~。