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 キラは彼女の手を取った。
 冷え切った震えた手は弱弱しく手を握り返し、彼女は振り向いて宇宙服を着た彼を見下ろした。

 背後には漆黒の宇宙よりもなおも暗い、光さえも飲み込んで戻れない重力点。その前にぽつんと浮かぶのは幾分もしないうちに飲み込まれてしまう小さな宇宙船。

 外宇宙探査船。

 重力場に捉えられて逃れられない小さな光。
 キラはSOSを聞きつけて駆けつけた救助船のパイロットだが、ようやく探し出した時はもう手遅れだった。よりによって自分の姉と探査に出ている時にと、全開で駆けつけたのに、重力場から離脱するために必要なエネルギーを差し引けば、救助船で生成できるのは僅か2名分の酸素のみ。

 探査船の乗組員は二人だった。



「彼女を頼む」
「絶対向かえに来るから!」
「二人とも泣くなよ。君達には待っている人がいる。必要としている人が大勢いるじゃないか。キラもカガリも、死ぬなよ」

 探査船に残る彼は小さい頃の親友だった。
 いわゆる幼馴染で、最後には分かってくれる心強い味方。押しに弱い彼は、無理を言って危険な探査船に同乗しようとした姉のカガリに、最後は折れた。

『ラクスを守れよ、キラ』

 キラにとって大切な女性は、彼にとってもまた大切な友人だった。
 通信で聞こえる彼の声。

『泣くなよ。迎えに来てくれるんだろ。また逢えるさ』




 だが、キラが再び探査船が信号を立った宇宙域にたどり着くまでに2年掛かった。帰還した地球からとんぼ返りで戻ろうとしたのに、それは不可能だったのだ。

 身体の一部にぽっかりと開いた穴のせいで、彼は意識は常にどこかに流れていってしまっていた。何をやっても集中できず、畢竟、最上級のスキルと精神力を必要とする宇宙船の操縦などできるはずがなかった。

 ラクスに付き添われてなんとか、回復した時、広い宇宙の何処を探しても、探査船はいなかったのだ。




「キラ。アスランのことを思い出しているのですか?」
「ラクス・・・そうかな。そうかも知れない」

 突然の訪問客にキラとラクスはリビングへと移動する。何でも、彼の遺品の整理をしていたら、古い写真がいくつか出てきたのだという。まだ二人が少年の頃の、同じ学校で勉強をしていた日常を切り取ったもの。

 それを届けに彼の後輩が、今日やってくる。

 思い出さないわけがない。
 一人でそれと対面する勇気が出なくて、心配したラクスが付き添っているくらいなのだ。

「アスランが自分で決めたことですわ。カガリさんを助け、自分が探査船に残ることは」

 部屋の中で待っているのは、彼とは又、別の意味で印象的な瞳の青年だった。彼の碧の瞳とは正反対の真っ赤な瞳がキラとラクスを捉えた。

「どちらかを選ばなければならなかったのです。お二人のうちの一人を。カガリさんはオーブと言う国にとってかけがえのない方ですわ」
「でも・・・アスランを待っている人達だって、沢山いたと思うんだ。アスランは誰にでも優しくて面倒見がよくって、僕なんかよりずっと・・・」

 目の前の彼の後輩はいつの間にか立ち上がっていた。
 キラは彼と目が合って、その視線が睨みつけているようで眉をひそめる。当然だろう。彼にしてみれば、先輩を見殺しにしたも同然なのだ。

 責められるのは覚悟していたから、目の前の青年が口を開くのを待った。




「じゃあ、どうしてアンタが探査船に残らなかったんですか?」





 ちょいと、唐突に思い浮かんだので書き留めてみただけです。


カテゴリ: [ネタの種] - &trackback- 2006年04月06日 20:52:30

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