メリーの居る生活 三日目
眩しい…、朝か…。
…今日は休みだし…もう少し寝てよう…ZZZZZzzz…。
…ZZZZzzzz…。
「隆一、起きてよ」
…誰だ…誰でもいいや…。
「はぁ…、お腹空いたわ…。」
その日の隆一は、連日の睡眠不足から久々に開放され、夢の世界で羽根を広げていた。
「んー…」
一方メリーは、朝食を作る人間がまだ起床せず、起こそうと悪戦苦闘を強いられている。
「何で私が起こさなきゃならないのよ…、声かけても起きないなら…」
メリーはカマを取りだし、その刃を隆一の頬に着けた。
「5秒の有余を与えるわ。それまでに起きなければ…どうなっても知らなくてよ?」
「1…2…3…」
「…………うぅ…」
「あら?案外あっさりと起きたわね?」
「…寝覚め最悪…」
「おはよう。私に起こしてもらっただけ、ありがたく思いなさい」
「おはょ…なんで朝から死の宣告を、目覚まし替わりにしなきゃならんのだ…」
「早く着替えてリビングに来なさい。そして朝食を作るのよ」
メリーはそう言うとさっさと1階に下りて行ってしまった。
「へいへい…ふぁ~」
「2度寝したら殺す」
…1階から釘を刺された。
「…ち」
今日はメリーさんが来てから初めての休日。
(と言っても、来たのは一昨日だが)
昨夜、休日の過ごし方を考えている内に、寝てしまったようだ。
とりあえず、昼まで寝ようと思ったが…10時か。
まぁ、良しとするか。
そういえばさっきのメリー、いつもと調子違ったかな…。
「お腹空いたわ」とか「起きてよ」とか言ってた気がする…。
…夢うつつ?
そんな事を考えながら1階に下り、キッチンに立つ。
「何食う?」
「何でもいいわ…とにかく早くして。お腹空いたのよ」
「んじゃ、とりあえず、すぐ出来る物作るよ」
「頼んだわよ…」
「はい、トースト+スクランブルエッグ出来あがり」
「ありがと…」
「あ、賞味期限ギリギリのハムもあったな、ついでに片付けちまおう」
「………」
「ん?先食ってていいぞ?」
「食事はそろって食べる物よ」
「分かった、さっさと作り上げる」
二人の食卓には、スクランブルエッグとトースト、ハムの「とろけるチーズ」和えが置かれた。
「いただきます」
「いただきます」
「このスクランブルエッグ辛過ぎ…」
「どれ?……スマン。塩入れすぎだ…」
「バターが無いわよ?」
「ほんとだ、取ってくる」
冷蔵庫にバターを取りに行く途中、カレンダーが目に入った。
今日の日付に赤い丸が付いている。
………忘れていた。
どうしよう…。
とりあえずバターを持って戻る。
「はいよ、バター」
「ありがと」
「このハム美味しいわ」
「僕の自信作なんだ。ハムをカリッと焼き上げてジューシーに、そして中の「とろけたチーズ」が濃厚な甘味を出す」
適当な事を言ってみる。
「トーストに乗せてもいいわね」
…流された。
「あぁ、結構いけるよ」
「牛乳は無いの?」
「あるけど…コーヒーじゃダメか?」
「苦いから嫌いだわ」
「へいへい…」
少し遅めの朝食は、会話が弾んだ。
「さて…」
洗い物を終えた僕は、テーブルについて、
「困った事になった」
朝のニュースを見ていたメリーさんに言った。
「どうしたの?」
「今日、おじいちゃんとおばあちゃんが温泉旅行から帰ってくる…」
「…それがどうかしたの?」
「メリーさんは僕の了承だけで、住んでるよね?」
勝手に住んでるの方が正しい
「そうね」
「でも、おじいちゃんとおばあちゃんは…」
「………」
「解った?」
「…どうするのよ。私追い出される?」
「最悪、補導だな…」
「……………」
「多分、三時には帰るとか言ってた気がする…」
メリーは完全に沈黙してしまった。
どうやら彼女は彼女なりに考えているらしい。
僕も考えているが、どれも長持ちするとは思えない考えだけだった。
「…最近は物騒で困るな」
「!?」
「うおっ!?」
テレビの前のソファーには俊二が座っていた。
…テレビのニュースは「パンダが生まれた」との内容だったが。
「お前、どこから湧いて出た?」
「玄関の鍵が開いていたのでな、そこから入ってきた」
「最近の委員会は、不法侵入まで許されるのか…」
「いや、これは俺の個人的趣味だ」
もっとタチ悪い。
「一度警察の世話になって来い」
「俺は陸軍でも引っさげて来なきゃ、止められないぜ」
軽い毒舌vs軽口が始まったが、メリーが止めるように一言。
「…あなたは何の用で来たの?」
俊二が向き直る。
「いやぁ、二人が困ってたみたいだから、この天才が知恵を貸そうと思ってね」
「何か良い考えでもあるのか?」
「ふ…。俺の頭脳が冴え渡っているぜ」
「…さては、お前寝ぼけてるだろ」
本当に寝ぼけてたら救えないが、こいつの場合はありうる。
「失礼な」
「…本当に大丈夫なのか?」
「任せておけ。A定食3日分で手を打とうか?」
「…S定食だな」
「ふ…、珍しい事もある物だ、お前から報酬を上げるとは…」
「今回ばかりはリスクが高い、無論お前にもトバッチリが来るやもしれん」
「なるほど、正当な報酬と言う事か。おもしろい」
「交渉成立だ。完璧な仕事を頼む」
「手を抜けるほど、器用じゃないんでね…」
「…ハァ…本当に大丈夫なの?」
ハードボイルド(?)な雰囲気で交渉していた僕達に、メリーはツッコミを入れた。
「あぁ、こいつが報酬の話を持ち込んだら、やる気があるって事さ」
「S定食の為に死力を尽くすぜ」
「待てコラ」
それから僕とメリーは、俊二の作戦を聞いた。
作戦自体はかなり安直な物だったが、メリーにとっては相当キツそうな内容だ。
午後3時を回った。
「そろそろ帰ってくるな…」
「数時間だが、リハーサルも重ねた。あとは、なるようになる」
「…ねぇ…本当にやらなきゃダメ?」
「追い出されたくなければ我慢しよう…。僕は僕で、何言われるか…ハァ…」
「…うぅ…」
「む?」
委員長が何かを感じ取った。
「どうした、俊二?」
「どうやら、帰ってきたようだ…」
…ピンポーン
「何故わかる」
「これくらい当然」
「まぁいい…、はーい!!どちら様ぁー?」
「開けておくれぇ…荷物が重くてかなわん…」
…ビンゴか。
「わかったー、今開けるー」
ガチャ
「おかえりー…って、うわ、何その荷物!?」
「よっこいしょっと。ふぅ、ただいま。…いやぁ、お土産みてたら…なぁ?」
「ただいま、隆一。えぇ、特産品は魅力的ですものねぇ」
僕のおじいちゃんは、元大手工場の係長で、今は定年退職し、余生を満喫している。
人柄が良く、近所の交流が物凄い。
町内で何かイベントがあると、必ず招待されるほどだ。
おばあちゃんは、【井戸端会議の女王】と呼ばれる町内の情報屋だ。
町内の住民のありとあらゆる情報を持っている。
その情報は使い方によっては危険だが、そんな事はしない。
陰口も言わない、真っ当な人間だからだ。
女王と称されるのは、そのせいかもしれない。
「えーと…、おじいちゃんおばあちゃん。帰ってきていきなりで悪いんだけど、話があるんだ。いいかな?」
このままだと、土産話の流れに入るので、こっちから話を切り出す。俊二のアドバイスだ。
「本当にいきなりじゃのぅ…。わかった荷物を置いたら聞こう」
「さ、隆一も手伝って」
「あ、うん」
あきらかに出発の時より数倍ある荷物を持って、リビングに向かう。
リビングのソファーには、俊二とメリーが座っていた。
「あぁ、御無沙汰しております、元気そうでなによりで!!」
メリーに注目が行く前に、俊二が挨拶をする。
「おぉ、俊ちゃんじゃないか、たくましくなったのぉ」
「やだなぁ、おじいさん、先週あったばかりですよ」
「おやまぁ、俊ちゃん、お母さんは元気にしとるかぇ?」
「えぇ、おかげさまで」
僕の幼馴染なので、もちろん二人は知っている。
「…………」
だが、メリーのことは知る由もない。
「おや、このお嬢さんは、どなたかな?」
来た…。
リハーサル通りに対応できるか…。
「め…メリーです。はじめまして」
「めりー?はて、聞かぬ名じゃのぉ」
「ままま、まずは座ってお話しましょう」
俊二に促され、二人は椅子に腰掛ける。
ここから僕は一切口を出さない。
俊二に全てを任せる事になっている。
「君は…メリーと言ったね。どこから来たんだい?」
「えっと…その…」
「彼女は海外からの留学生なんですよ」
俊二が説明する。
もちろん嘘八百だ。
「おぉ!!留学生とは。日本の文化に触れるのは良い経験ですぞ」
「彼女は俺達と同じクラスになるはずだったのですが、何やら不都合があったらしいんです」
「まぁ、どんな事が?」
「えぇ、俺独自の調査で調べたんですが、うちの学校への編入、寮への登録全てが、抹消されているらしいんですよ」
「おやおや、お気の毒に…」
「学ぶべき所も住む所も無く、さらには帰る家には家族が、煙のように消えてしまったようで…」
「まぁ!!」
「どうやら夜逃げらしいのですが、行方が一切わからない状況なんですよ」
…こいつは、脳内にどんな夢物語を描いているのだろうか。
「一昨日、下校する際校門で出会って、今保護しているんですよ」
「そうなの…。大変なんですね…メリーさん」
…ここまでは完璧…あとはメリーが切り抜けれるか…。
「えぇ、国際電話ですと、何度もかけれるものでもありませんから、親戚筋にも連絡できませんし…」
国際電話って、そんなに高くないだろ…。
「日本には、どれくらいいられるんだい?」
「しばらくは大丈夫です。滞在許可証もありますし、学校関係者からの伝で更新手続きもできます」
…更新できる物なのか…?
「それでも、寂しかろう?」
「多少は寂しいです…。でも、隆一君と俊二君が優しくしてくれてるので、大丈夫です」
…嘘に迷いが無い。
本心…じゃないよな。
「どうします?おじいさん…」
「ふーむ…」
悩んでる。
…押しが甘かったか。
「あ…あの…」
「ん?なんじゃね?」
「御迷惑でしたら、すぐに出て行きます…。ごめんなさい…」
あれ?リハーサルにそんなセリフは無かったはずだ…。
「…ねぇ、おじいさん。家に置いてあげませんか?」
「当たり前じゃ。ここから追い出すような人でなしでは無いわい」
「…本当ですか!!ありがとうございます!!」
「ありがとう!!おじいちゃんおばあちゃん!!」
「あぁ、ありがとうございます。よかったな、メリー」
「ふむ、家族が増えるのは、老いぼれにとって、一番幸せなことじゃ」
「えぇ、家が賑やかなのは、素敵な事ですからねぇ」
こうして、正式にメリーは家に住みつく事になった。
おじいちゃんとおばあちゃんの前では喜んでいたメリー。
だが、僕の部屋に戻った途端。【いつものメリー】になった。
バタン(←部屋のドアを閉めた音
「はぁ…しんどかった…」
「あ~…ヒヤヒヤしたぜ、まったく」
「流石の俺も…今回はヤバかったな…」
全員が部屋でへたり込む。
「なんでだよ…思いっきり快勝じゃねぇか…」
「…お前のおばあさんは何者だか解っているのか?」
「…あぁ、なるほどね。…まぁ、大丈夫だろ」
「だといいのだがな…」
「まぁ、ともかく。メリーさん、お疲れー」
メリーに声をかけたのだが、耳に届いてないようだ
「あ~、私のプライドが~…」
「あう~恥ずかしい~…」
「何が隆一と俊二が優しくよ~…」
かなり重傷だ。
そっとしておいてやるか。
「…で、お前はお前で、何でここに居るんだ?」
「いやぁ、さっきおばあさんに食事に誘ってもらってね」
「お前は『遠慮』という言葉を知らんのか?」
「『甘える』という言葉なら知っている」
「それは覚えるな」
俊二と話していると、どこからともなく音が聞こえてきた。
シュッシュ…シュッシュ…
音の発生地を見てみると。
「…えーと何やってるんすか?」
「それは…カマなのか…?」
メリーがカマを取りだし、その刃を研いでいた。
「見ればわかるでしょ?研いでいるのよ」
「何で?」
「日常の手入れか?」
「半分当たり。刃を研いでいると気が安らぐのよ…」
「危ない趣味だな…」
「うむ、要注意だ…」
「うるさいわね。せっかく人がリラックスしてるのに…。斬られたい?」
二人で『滅相も無い』と首を振る。
そのあとメリーは2時間ほど刃を研ぎつづけた。
そして僕は、俊二が大量に持ってきたマンガ雑誌を読でいた。
俊二は…まだいた。2時間も座禅を組んでいる。
2時間の間、ほとんど会話は無かった。
カマを研ぐ音、僕がページをめくる音。
それだけだった。
だが、沈黙はメリーの一言で破られた。
「ねぇ、あんた達」
「ん?」
「む?」
ちょうど座禅が終わったのか、僕が話しかけても反応しなかった俊二が生き返った。
…もしや、嫌味か?
「カマ以外に良い武器は無い?」
「…なんだそりゃ?」
「そのカマの方が、強力だと思うが?」
そういうと、メリーは首を振り、
「違うわ、カマだと『うっかり』殺しちゃいそうだから、死なない程度な武器が欲しいの」
「…それじゃあ、カマを振り回さないでくれ」
「それは、隆一を心配しての配慮だな?」
「う…」
…図星のようだ。
「とにかく、良い武器を探しなさい!!じゃないとカマのままでいるわよ?」
「へいへい…」
「となると、殺傷性が低い物か…」
メリーに命じられ、僕と俊二はメリーの新しい武器を探す事になった。
「どう?良いもの集まった?」
「とりあえず持ってきた」
「殺傷性が低くなると、どうも限られるからな…」
傘…雑誌…おたま…ハエ叩き…布団叩き…ハンガー…辞書…輪ゴム…長ネギ?…便所スリッパ…ブーツ…ロケット花火…
次々と出される半殺人兵器。
「ハエ叩きとロケット花火は勘弁…」
ハエ叩きって…ハエ以下か…。
「まぁ、これくらい集まればいいだろ」
「そうね…」
「本当にこれで殴られるのか…」
想像して、ため息をつく…
「殴られるだけじゃなくてよ?」
「…え?うおおぉあ!!」
飛んできた辞書を紙一重で避けた
「あぶ…危ねぇ…」
「これで身のこなしを鍛えれるわね」
「当たったらどうするんだよ!!」
「打たれ強さを鍛える訓練」
「…さいですか」
当たり所によっちゃ、死ぬぞこれ…。
「隆一ー。下りてらっしゃーい」
1階からおばあちゃんの呼び声が聞こえた。
「あ、そろそろ飯かな?」
「…ふむ、時間的にそうだろうな」
「隆一のおばあさまの料理の腕前…楽しみね」
「僕が保証する。ばあちゃんの料理は天下一品さ。な?俊二…って居ねぇし」
「おーい、早く来いよー」
…1階から奴の声がした。
僕とメリーが1階に下りると、廊下に俊二がいた。
「お前は『遠慮』という言葉を学習したほうがいいな…。入ろうぜ」
「まぁ、待て餓えた愚民よ」
リビングに入ろうとした僕を俊二が止めた。
「どうした?早く入ろうぜ?」
「今日は、おばあさんが腕を振るったそうだぞ」
「ほぅ、それは楽しみ…って何で?」
「お前の後ろにいる、…今日の主役のためさ」
メリーが主役?
…あぁ、おばあちゃんならやりかねないな。
「…私?」
本人は解っていない。
「さ、扉を開けるんだ」
俊二が促す。
「え…えぇ」
メリーが恐る恐る扉を開ける。
ガチャ…
メリーは言葉を失った。
リビングには【新しい家族、メリーの歓迎会】と銘打たれた、たれまくが飾ってあった。
テーブルに、怪物級の大きさのケーキ。平凡ではあるが、ご馳走も並べられている。
そして、それらに負けないほど老夫婦の温かい笑顔があった。
後ろには、これまた温かい笑顔の同居人。
その隣りに澄まして笑う、不法侵入者。
何故人間は、こんな事をするんだろう。
理解できない。
今まで葬ってきた人間は、少なくともこんな温かい笑顔の持ち主はいなかった。
本当に理解できない。
何故今自分が泣きそうなのかも…。
僕は悟っていた。
メリーは、招かれざる殺戮者。
憑かれた人間は、自分を殺そうとする彼女に抵抗をする。
そして、彼女は『それ』を始末する。
メリーはいつも一人だったのだろう。
誰にも認められず。
歓迎されずに。
今メリーは、初めて出来た家族から、初めて温かい歓迎を受けている。
「こ…これは?」
僕の方を向いて、メリーがやっとの思いで口を開く。
「見ての通り。キミの歓迎会だよ」
「歓…迎会?」
「そ、キミは家族になったんだ、歓迎会ぐらいは当たり前だよ」
「家族…?」
「うん、家族。おじいちゃんとおばあちゃんが認めてくれたって事」
「あぁ――あ、ありがとうっ…スッ…ヒック…」
また泣いてるし…。
「さぁ、乾杯と行こうかの」
「はぃ」
「………はい!!」
「隆一、お前が音頭を取るんだ」
「よっし。新しい家族、メリーさんに!!」
『かんぱーい!!』
チン チン チン チン(グラスがぶつかってる音です
そして、歓迎会なるパーティーが始まった。
「いやぁ、いつもながら料理が上手でいらっしゃる」
「当たり前だって。っていうか、お前食い過ぎ」
「まぁまぁ、まだ沢山作ってあるから」
「今日は、ばあさん気合入ってたからのぉ」
「あ…この唐揚げおいしいです…!!」
「あら、嬉しいわぁ♪」
「まだ、ケーキがあるからなぁ…ペース考えないと、大変だぞ…」
「私甘い物好きだから、任せなさい」
「え…あ、あぁ、任せるわ。丸ごと一個」
…メリー、ちょっと雰囲気変わったか?
「このフォークで刺されたい?」
「冗談です。勘弁してください」
「いいわ、今気分良いから許してあげる」
「心が寛大でいらっしゃる」
…いつもの通りか。
その後、ケーキに挑んだが、僕達男性陣は途中下車。
おばあちゃんとメリーで2/3を制覇した。
ケーキの甘ったるさが口に残る中、おじいちゃんとおばあちゃんの土産話がスタートした。
旅館の女将さんが良い人だった…。旅先で出会った、老夫婦とも仲良くなれた…。
二人はとても楽しそうに話していた。
土産話が終わると、学校の話を聞かれる。
学校の話は、ほとんど僕と俊二の漫才になってしまう。
担任が実はズラだった。国語の担任がズラだった。理論の担任がズラだった。
ほとんどの男性教師の頭に砂漠化の初期現象がみられた。
購買部が生徒の波で決壊した。
漫才は、夜遅くまで続いた。
メリーはその日、ずっと笑っていた。
どこにいてもおかしくはない、普通の女の子のように。
「疲れた…」
「あ~…私も笑いすぎて、疲れちゃったわ…」
「何で俺漫才してたんだろう…」
「いいんじゃない?楽しかったんだし」
「はぁ、飯食ったらとっとと帰れってんだよ…アイツは」
「でも、俊二が居なかったら盛り上がらなかったわよ?」
「まったく…ふぁ~…眠い…」
「そうね…寝ましょう」
「おぅ…」
「おやす…みッ!!」
ブゥン!!
「ぬおぉぉぉ!?」
紙一重でハンガーを避ける。
「あっぶねぇ…。寝る前にコレはねぇだろ…」
「…ZZZZzzzz…」
「うわぁお、寝逃げっすか」
こいつは…。
警戒しつつ僕も布団に潜りこみ、睡魔にひれ伏すことにした。
…はっきりいって照れくさい。
だが、このまま黙っているのも、納得がいかない。
でも、面と向かって言うのも、恥ずかしい。
だから彼女は、今言う事にした。
布団から起きて、近寄る。
隆一は寝ている。狸寝入りでもなさそうだ。
「…ありがとう隆一」
「あなたのおかげで、私にも家族が出来たわ…」
「『隆一と俊二が優しくしてくれる』か…。本当ね…。恥ずかしがって…バカみたい…」
「家族として、改めてよろしくね。隆一」
「…おやすみ」
彼女は、寝ている隆一の頬に軽く自分の唇を押し当てた。
もし途中で起きられたら、いっそカマで真っ二つにしてやろうとも思ったが、大丈夫そうだ。
礼は言った。明日から、隆一をたっぷりとしごいてやろう。
そんな事を考えながら、少しウキウキした気分で眠りについた。
ジリリリリリリリリリリリリリリ!!
朝の宿敵に敗れ、僕は布団から生まれる。
メリー…寝てるよな、やっぱり。
さっさと仕度して、学校いかなきゃな。
「それじゃ、行ってくるよ。メリーさん」
眠っているメリーさんに挨拶し、僕は部屋を出た。
拍手っぽいもの(感想やら)
- これはかわいいwwwwwwwwwww -- ななし (2007-07-25 02:36:05)
- 漫画的なものつくってみたら? -- ななし (2007-07-29 16:50:13)
- 携帯小説にしたらいいと思うよ -- 名無しさん (2007-10-15 16:33:47)
- 萌え より かわいい が先に来たのは久しぶりかもしれない。 -- talk名 (2008-04-08 22:31:33)
- 漫画にするのはいいかも知れない。 -- 名無しさん (2009-08-04 22:56:09)
- 漫画にしてみては?
-- 名無しさん (2011-05-09 19:10:11)