Mystery Circle 作品置き場内検索 / 「MC vol.3/九龍」で検索した結果

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  • AMC vol.2
    ...le Vol.2(SMC vol.1) ◎「ここにいろよ」 空蝉八尋 ◎「今まではそうする理由もなかったからね」 ヨーノ ◎にわかに自信がぐらつき、なぜか罪悪感を覚えた。 松永 夏馬 ◎「男だからな。あからさまな誘惑には弱いんだろう」 おりえ ◎「なぜ、僕がキスしたか聞きたくないのか?」 Clown ◎これほど官能をくすぐられ、欲望をそそられる男性には会ったことがない。 なずな ◎「聖女でいるのに飽きることはないのか?」 真紅 ◎ひやかしまじりのひそひそ声が耳に入ってくる。 フトン ◎「僕が君への欲望に身を焦がしていたことに、気づかなかったんだね?」 朔 ◎静かな満足感がわいてきた。 kazumi ◎「あなたは涙なんか流さないんでしょうね」 これゆき ◎恐らく、致命的な結果を招くことになるとは思ってもみなかったに違...
  • AMC vol.3/朔
    Last update 2008年03月16日 紫  著者:櫻朔夜  英夫は、雨の降る夜道を傘もささずに歩いていた。  そこそこに勤めた会社も、もうすぐ定年の60歳。一見、どうしようもなく優柔不断で気弱そうな英夫だったが、妻の綾子と二人三脚、郊外ではあったがオレンジ色の電車が走る地にマイホームを持つこともできた。一人娘だって、立派に育て上げた。その娘のゆかりも、今や都心に居を構える大手企業の企画マンだ。  今日も一度は、片道1時間近くかけて愛着あるマイホームへと帰ったはずだった。  普段の今頃なら、仕事の疲れをささやかながらに癒してくれる食卓へとつき、ビールの1杯でもやっているところだ。  それなのに。  その娘がやらかしてくれた。  ----------------------------------------------...
  • MC vol.3/七穂
    Last update 2007年10月07日 タイトルなし 著者:七穂 なんと言っても、変身ヒーローだ 「ああ・・・そうだったな・・・」ぼんやりそんな考えが頭をよぎったとき、 「行って来ま~す!」とやけに弾んだ声が玄関から聞こえた。 子供をダシに、今流行りのイケメンに会いに行く妻。 今日も息子とヒーローショーにお出かけだ。 ヒーローに憧れたのはいつの頃からだろう。 ヒーローは男の憧れ。 絶対的な正義 そして勝利。  そして友情と恋・・。 それが変身ヒーローだ。 普通の人間がヒーローに変身する。 そのための儀式が変身のポーズなのだ。 夜中にホラー映画観ながら、一人、変身のポーズの練習もした。 「なにそれ?」ってあきれてたアイツに、 「女には男のロマンは解らねぇよ!」なんて言った...
  • MC vol.3/松永 夏馬
    Last update 2007年10月07日 タイトルなし 著者:松永 夏馬 現実はいつだって味気ない。  いつからこうなっちまったんだろうね。  ガキの頃はそれでも良かった。オヤジはクソなわりに金持ってたからな、周りにいるアホな庶民とは違う、選ばれた人間なんだと思ったねオレは。学校行くにも毎日ベンツで送り迎えだぜ? 同級生どもの羨望の眼差しが心地よかった。あの頃は最高だった。  現実はいつだって味気ない。  世の中金がすべて。金がありゃなんだって出来たね、違うか? 金の無い馬鹿な人間は「金で買えないものがある」とか言いながらも金に踊らされているんだ。まったくもってくだらねぇ。  オレは都会に出てからもクソオヤジに金を送らせた。そのへんの馬鹿な大学生よりもよっぽどいい暮らししてたさ。金がありゃなんだって出きるんだ。女だって尻尾振...
  • AMC vol.3/時雨
    Last update 2008年03月16日 鴉の欠片  著者:時雨  扉を開けたら赤かった。  琥珀色の液体も、撫で付けられた黒髪も、立ち並ぶボトルも、全てが狂気の色を纏ってちろちろと揺らめく様子に、暫し愕然として見惚れた。  この赤から逃げてきた、のに。  煙たいような空気の先で、マスターが目を細くして笑う。 「いらっしゃいませ。」  >>>>>>>>>  崩壊の始まりは実に唐突で自然でその上不自然だった。  最初は市場だった。  行った先で赤い色を見つけた。5、6メートル先の女連れ。赤い髪に赤い目に、整った顔の同居人。 「…克明」  反射的に追い掛けかけてやめる。今声をかけたってどうするわけでもないわけで。  昼の強い日差しを反射する鮮やかな赤は、数秒後には人混みに消えた。  家を出た時は確...
  • AMC vol.3/真紅
    Last update 2008年03月16日 カラン、カラン。  著者:真紅 満月の夜が訪れている街で。 自分の心臓の鼓動だけが、僕の脳を揺らしていた。 今日は暑かったせいかYシャツは汗で汚れ、髪は朝に付けたワックスのせいでゴワゴワだ。 足はもう、引き摺るしか無いかのようである。 繁華街の眩しいばかりの明かりや、賑やかな声達も最早鬱陶しいばかり。 僕は、それ等から逃げるように静かな方へ、静かな方へと歩く。 そうして歩き疲れたその時、僕はその店を偶然見つけた。 その裏通りの、横道の、奥に眠るようにあった店。 目の前の階段を少し降りたドアの向こうから、聞こえて来る。 しかし、耳に聞こえているのではない。 僕の心に伝わってくるのだ。 グラスの中で、酒に侵され、溶けつつも鳴らすその音。 カラン。 どこからとも無く聞こえた気がしたその音に、僕の喉が...
  • MC vol.3/カラス
    Last update 2007年10月07日 タイトルなし 著者:カラス 「生命みじかし、恋せよ乙女……」  麗子は暗闇に溶け入るような声でそっと呟き、精気の無い顔で椅子に項垂れた。 「そうだ。君は確かにそう占ったんだ」  崇は消え去る声を救うように両手を差し伸べた。  その二人を数人の人影が取り囲んでいるが、彼らは異様なその光景を黙って見ているだけだ。 「続きはこうだったかな──  行く人あらば去る人あらんや。交差の波は押し寄せて、綱の渡り手青白く、苦悶の表情そこに満ちたり。  そして君はその後こう続けた」  崇は黙ったまま俯いた彼女に一瞥すると柔らかな口調で続けた。 「今日の午後八時ごろ。何か不吉なことが起こるでしょう、と」  そこで一旦言葉を切り、隣にいた平次の方を向いた。崇が目で合図を送ると彼は左手の袖をまくり、ごつい...
  • AMC vol.3/松永 夏馬
    Last update 2011年12月03日 あの夏の花火の夜に  著者:松永夏馬  いくらかふらつく足取りでドアを押し開けると、薄暗い照明と静かに流れるジャズが松永を包みこんだ。  出張で来た馴染みのない街。仕事の延長でしかない面白味がまったく感じられない飲み会を早々に切り上げた彼は、1人落ち着いて飲もうとこの店へと迷い込んだ。ああいう騒がしい飲み会は好きではない。酒は嫌いではないものの、注いで注がれての飲み方は自分のペースを狂わされて気持ちよくないのだ。今も現にビールばかり飲まされて胃の中が気持ち悪い。少しぼんやりとした思考回路のまま「いらっしゃいませ」と静かに迎え入れてくれたマスターに手を上げて応えた。 「夜になっても暑いですね」 「ええ、まったく。……お客様は初めてでいらっしゃいますね?」  マスターは口を開いたというよりも、口ひげが上下した...
  • MC vol.3/GURA
    Last update 2007年10月07日 タイトルなし 著者:GURA ──どどん、という鈍い音が校庭の方から聞こえてきた 「始まった」 立ち上がる黒煙のいくつかを見届け、あらゆるものの残骸が消え去るようにと祈っ た。 天使たちの創造物が、何もかもを消し去ってくれるだろう。 そう、なにもかも。 喉の奥に、詰まったままの思いも。 胸の隙間に、絡みついた記憶も。 頭の隅に、焦げ付いて離れない気持ちも。 なにもかも。 激しい音と視界を奪う煙が、背後に残したものを全て拭い去ってくれるはずだ。 この体を終わりを報せる音を遠くにいつまでも聞きながら、いつの間にか、少年は自 宅の前まで辿り着いていた。 「残すはあとひとつ」 手に握られた鍵が、太陽の反射で、少年に覚悟の有無を語りかけて...
  • MC vol.3
    Last update 2007年10月07日 Mystery circle vol.3 ◎障子を開けて、薄暗い茶室の畳の上に少年は一歩目を踏み出した kazumi ◎なんと言っても、変身ヒーローだ 七穂 ◎現実はいつだって味気ない 松永 夏馬 ◎「アレはオレじゃなかった」 ろくでなしブルース ◎それは端から見れば、平和な罪のない若い恋人同士にしか見えない Clown ◎「そうとも。なにが失敗なものか。君こそが新しい世界の王だ」 九龍 ◎「”生命みじかし、恋せよ乙女”……」 カラス ◎──どどん、という鈍い音が校庭の方から聞こえてきた GURA ◎障子を開けて、薄暗い茶室の畳の上に少年は一歩目を踏み出した 出題者:Clown 作品名:「ブギーポップは笑わない」 著:上遠野浩平 正解者:知 コメント ...
  • AMC vol.3/なずな
    Last update 2008年03月16日 待ち合わせは あのバーで  著者:なずな 「すみません・・えっと・・カクテル、一番綺麗な色の・・」 若い女の子はおずおずと周りを見回し、カウンター席にぎこちない動作で腰掛け緊張ぎみの声で言う。 こういう所はいかにも不慣れな様子。 「少女」と言っても差し支えなさそうな、その化粧気のない顔を見つめ、マスターは少しだけ首を傾けた。 「大丈夫、未成年じゃありません」 その娘は姿勢を正し、ぎこちなさは残るものの、可愛らしい笑顔を見せるとそう言った。 長いまつげが影を落とした生真面目そうな横顔は 何かを一生懸命考えているようだった。 出されたカクテルを眺めたまま、手もつけていない。 ふと見上げる。視線が合う。 「どなたかと待ち合わせですか?」 「いえ・・」 少し困ったように微笑んで、彼女は目線を...
  • AMC vol.3/国見弥一
    Last update 2008年03月16日 ハーフロック  著者:国見弥一  あった。あの店だ。  オレは浩美に教えてもらった店をようやく見つけた。  やっぱり、あの店だったんだ。  小さなネオンの看板があることはあるが、灯りが弱々しい。人がやっと擦れ違えるほどの通りをしばし歩かないと見つけられない店。夜半にはまだ時間があるけど、閉店間際に入るのは嫌だった。だから、早めに辿り着けてラッキーだった。  場所からして、誰が見ても常連しか相手にしてないような店のように思えるだろう。  浩美がつい先日の夜に寄ったという小さなジャズ・バーだ。  別にジャズの生演奏が聴けるわけではない。店が女性好みの洒落た作りってわけでもない。男が一人旅の町でふらっと入りたくなるような雰囲気。せいぜい、そんなところか。  オレは、実は、マスターに会い...
  • AMC vol.3/rudo
    Last update 2008年03月16日 末広さんが泣いた日。。  著者:rudo  そこは東京郊外の小さな駅の住宅街のすみっこ。  柿の木の陰に細い階段があって下の方にたよりない灯が見える。  「BAR ? 」  こんな目立たないところにある店は常連のみで知らない客はお断りだったりするかもしれないな・・・・・・と入るのをためらっているとかすかに音楽が聞こえてきた。   ジャズだろうか、タイトルは知らないがどこかで聞いたことのあるメロディだ。  末広さんはその曲に惹かれるようにドアを開けた。  店の中は思いのほか暗くてよく見えない。  目が慣れてくると四方の壁にはレコードジャケットが所狭しと並び今にもなだれかかってきそうだ。 「いらっしゃいませ」  初老の穏やかな顔をしたマスターらしき人が大きな猫をカウンターに下ろしながら声をかけ...
  • MC vol.31
    Last update 2008年06月01日 Mystery Circle vol.31 ◎それぞれの新しい物語を待つ人々のところへと。 コサメ ◎「林の向こうに春があるんだそうです。どういう意味ですか」 rudo ◎物語が進行中である、というこの瞬間が楽しい。 知 ◎闇の中から引きずり出してみたら、色あせてしまうものなのかもしれない 松永 夏馬 ◎全てが白紙である。 AR1 ◎コーヒーテーブルの上には鮮やかなアネモネがちょこんと生けてあった。 空蝉八尋 ◎目を閉じれば、モザイクのようなきらきらした断片が残像のように蘇る話 時雨 ◎鉄格子は錆びてざらざらし、冷たい雨の感触はぞっとしなかった。 night_stalker ◎「――我々の、三月のお茶会へようこそ」 なずな ◎冷たい雨に冬の匂いがしたことを覚えてるわ。 Clown ◎時間を...
  • MC vol.32
    Last update 2008年07月06日 Mystery Circle vol.32 ◎ 魚肉ソーセージの値札なんです。 なずな ◎ 大変申し上げにくいのですが、これは身近な人間の犯行ですね。 朔 ◎ しかしストッキングを被るとなぜこのように、面白い顔になるんでしょうか。 松永 夏馬 ◎ ストッキングを被った強盗が、どうしてこんなものをセッティングしたんでしょう。 AR1 ◎ フルーツパフェはアイスのまわりをフルーツが囲んでおりまして、フルーツクリームパフェはその上にさらに生クリームがかかっております。 知 ◎ 実に気の回る殺人者であった。 コサメ ◎ 非常に礼儀正しい人なんです、この泥棒は。 かしのきタール ◎ 泥棒のくせに何一つ商売道具をもっていなかったんです。 空蝉八尋 ◎ なぜなら老人は首から下がなかったからだ。 真紅 ◎ ドラ...
  • AMC vol.3
    Last update 2008年03月16日 Another Mystery Circle Vol.3(Funny story Mystery Circle) ルールについては↓参照 http //nightstalker.blog17.fc2.com/blog-entry-268.html 松永 夏馬 rudo 真紅 国見弥一 なずな 朔 時雨 篠原まひる コメント 名前 コメント
  • MC vol.30
    Last update 2008年04月12日 Mystery Circle vol.30 ◎瞳の奥に、あんなに赤い血の色が見えるなんて 空蝉八尋 ◎ときどき、冷たくなった手を、あなたの背中に回して温めてもらった。 なずな ◎今年も花の季節がめぐってきますのね。 Glan ◎私に逃げる場所なんて、ない。 松永 夏馬 ◎あなたの狂気の色ですよね。 コサメ ◎このまま、いつまでも、この海を見つづけていたいなあ。 知 ◎回る風車の向こうで、夕焼けがどんどん闇に染まっていく。 時雨 ◎相変わらず、眠ったような鉛色の雪景色が広がっていた。 六 ◎悪魔でも見るような、最悪の目つきだった。 Clown ◎積んでは壊し積んでは壊し、未来永劫、遊び続けるがいい。 朔 ◎子供の頃から何度も、そういう夢を見たことがある。 真紅(2作品) ◎私の頬に、しぜん...
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  • AMC vol.3/篠原まひる
    Last update 2008年03月16日 除夜刻詣  著者:篠原まひる  北風が、直線的な勢いで、街の通りを吹き抜けた。 風の音は、どんなものにも形容し難い寂しさを持って、この人気の無い街角へと鳴り渡った。  年明け早々の繁華街は、人影どころか点在するネオンの数すらも寂しく、そこはまるで一見すれば、無人の街にすら見えた。  だが竹内は、全く迷う事無くその繁華街を早足で通り抜けた。 足はそのまま裏通りへと抜け、そして迷う事なく一本の狭い路地を曲がり、地下へと続く階段を降り始める。  重いドアーを押し開ける。 一歩足を踏み込んだ瞬間から、世界が変貌する。 竹内は、ようやく外の寒さから逃げ出せたと思ったのも束の間。 あれだけいて欲しいと願ったマスターの顔を見て、一つ、重い溜め息を吐く。 「おや、いらっしゃい。 いや、あけましておめでとう・・・ですね」  マ...
  • MC vol.3/kazumi
    Last update 2007年10月07日 タイトルなし 著者:kazumi 障子を開けて、薄暗い茶室の畳の上に少年は一歩目を踏み出した。 古い畳の感触が足の裏に当ったとたん、その足先から、頭の上に向けてすべるよう に、茶室のひんやりした空気が肌を抜けていった。と、その瞬間、少年は、硬直し た。 初夏を思わせる目のくらむような日差しの中をずいぶんと歩いてきた。 こんもりとした雑木林に入ったとき、少年はほっとしていた。 木々の間から落ちてくる日差しは、幾分和らいで、心地いい光となった。 木々を抜ける穏やかな風も、汗ばんだ肌に心地よかった。 奥に行くにつれ、木々は密度が増し、薄暗い様を呈している。 この小さな林は、少年の冒険心をくすぐるのに十分だった。 上を、下をときょろきょろと見回しながら、小道を奥に進んだ。 ...
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    ...  このWikiではMC参加者は自由に自分の作品を編集する事ができます。  編集するにはユーザー名とパスワードが必要ですのでメールでご連絡ください。  自分の作品以外は絶対に弄らないようにお願いします。トラブルの元です。  活動中止期間を経て、Mystery CircleはMistery Circleとして生まれ変わりました。  URLはhttp //misterycirclenovels.blog.fc2.com/となっております。  よろしくお願いします 各MC回へのリンク  MC vol.1  MC vol.11  MC vol.21  MC vol.31  MC vol.2  MC vol.12  MC vol.22  MC vol.32  MC vol.3  MC vol.13  MC vol.23  MC vol.4  MC vol.1...
  • MC vol.32/知
    Last update 2008年07月06日 とあるオフ会の出来事  著者:知 「フルーツパフェはアイスのまわりをフルーツが囲んでおりまして、フルーツクリームパフェはその上にさらに生クリームがかかっております」 「違いはそれだけなんですか?」 「はい」 「そうなんだ……」  どちらにするか悩むなぁ、そう呟きながら少女がメニューをじっと見つめている。  かれこれ5分ぐらい悩んでいるのではないだろうか。  注文を取りにきたウェイトレスの表情はにこやかではあるが、内心どう思っているかはわからない。 「早く決めてくれよ……」  ついに少女の隣に座っている少年がうんざりした様にそう呟いた。 「よし、決めた。フルーツクリームパフェ、下さい」  少年の呟きが聞こえたかはわからないが、ようやく何を注文するか決めた。 「フルーツクリームパフェ、ですね。注文は以...
  • MC vol.30/知
    Last update 2008年04月12日 影二つ  著者:知 「このまま、いつまでも、この海を見つづけていたいなあ」  どこまでも続く水平線を見て思わずそう呟いた。  太陽が水平線に沈んで行き、様々な色を見せている。  ずっと見ていても飽きがこない。  自然は同じ表情は決して見せない。  だからこそ、その一瞬一瞬を瞳に心に焼き付ける。 「ねぇ、ねぇ、ほら、グリーンフラッシュだよ」  隣に腰掛けている澪(みお)が指差した方を見ると、沈んでいる太陽が緑色に強く瞬いている。  もう、澪と旅を始めて何年経っただろう。  目的はあるけど、目標がない旅。その目的のために色々な町を旅してきた。  その目的のため藁にもすがる思いでどんな些細な情報でも、眉唾ものの噂でも耳にすると実際に確認した。  でも、まだその目的は達成できていない。  目的を達...
  • MC vol.30/朔
    Last update 2008年04月12日 夢を請うヒト  著者:櫻朔夜  真っ白な、ただただどこまでも真っ白な部屋があった。いつから其処に居たのか、皆目検討が付かない。気が付いたら、そこはただの白、だった。どこからが壁で、どこまでが天井なのかも分からない。その白は永遠に続いているようにも見えた。  私は、と考える。  私は誰だったのだろう?  何も覚えていなかった。ここに居るからには、どこかから入ってきたのには違いない。けれどもその入り口と思えるようなものは此処には無い。通常あるべき壁すら無いのだから、扉らしき隙間など、見回したところで確認できるはずもなかった。太陽があるわけでもなし、光源の無い空間ではあったが、強い光に包まれたように、影さえ落ちる隙もない。広がる白い空間以外目に入るものは何も無く、時折どこかから、身体を撫で回すような、生温い...
  • AMC vol.3/篠原まひる02
    Last update 2008年03月16日 除夜刻詣  著者:篠原まひる 「マスターの言う通りだった」 そう言って、煙草の火を揉み消す竹内の手は、微かに震えていた。 「好奇心だけで、見てはいけないものだったんだ。 あれは、人間が関わって良いものではなかったんだ」  竹内は、感情の勢いか、そう言いながら右手でカウンターテーブルを強く叩く。 その拍子に、先程竹内がポケットから取り出した、赤い千代紙に包まれたものがころりと転ぶ。 竹内は突然にその存在を思い出したかのようにしてそれを取り上げ、マスターに向かってそれを振ってみせた。 「ねぇ、マスター。 これが何なのか、あなたなら判る筈でしょう。 あなたはこの存在自体を忘れてしまったからこそ、その後に続くあなた自身の行動を忘れたと言いましたね。 だが今回は、ここにその忘れた筈のものがある。 どうか思い出していただきた...
  • MC vol.31/知
    Last update 2008年06月01日 Quartet―overture―  著者:知  私は最近、物語を書くことにはまっている。  何が楽しいかって、物語が進行中である、というその瞬間が楽しい。  一体どのように物語が進んでいくのか、書いている本人にもわからない。  よく、キャラクターが勝手に歩き出したという表現を耳にしていたけど、たぶん、こういうことなんだろうなって思う。 「アリス、何しているの?」  ノートに何やら書いている私のことが気になったのか、美空(みく)ちゃんが話しかけてきた。  私の名前は有栖川有彩(ありすがわありさ)。  小学校、中学校ではアリスって呼ばれてたんだけど、高校に入ってからアリスって呼んでくれるのは美空ちゃんだけ。  美空ちゃんはちゃん付けで呼ばれるのに慣れていないのか、初めは嫌がっていたんだけど、ずっとそう呼ん...
  • MC vol.31/朔
    Last update 2008年06月01日 FIRST STORY  著者:櫻朔夜 『いつかきっと。』  そう言って夢見がちな瞳を明後日の方向へやったまま、微笑を湛えていたあの面差が懐かしくも遠い。  私は内ポケットをゴソゴソと引っ掻き、使い古したパスケースを取り出した。二つ折りのそれを開くと、右に定期券。左に妻と子供のスナップ写真。いつもと同じ、いつもの定位置。  暫く写真を眺めたあと、私はその裏側へと指を突っ込む。ザラ…と、指先に感じる傷んだ紙の感触。私はそれを丁寧に引き抜いた。落ち込んだ時、挫折した時、いつもそうしているように。  彼女はいつだってエキセントリックな発言で、周囲の顰蹙を買っていた。やれ宇宙人に会っただの、やれ幽霊が出ただの。海辺の小さな港町で、それはあまりに稀有な存在でありながら、異端でもあった。彼女が口を開こうとすれ...
  • MC vol.3/ろくでなしブルース
    Last update 2007年10月07日 タイトルなし 著者:ろくでなしブルース 「アレはオレじゃなかった」俺はそう言った。 これは見苦しい言い訳ではない。 本当にあれは俺じゃなかった。 俺は短い兵役を終えて帰ってきた。 俺は罪の無い人達を殺して帰ってきた。 空気を汚す悪い奴を世界平和の名の下に殺しに入ってきた。 彼らはただパンが欲しかっただけだった。 しかし彼らはパンを正しく焼く事ができなかった。 俺らのようにただパンが欲しかっただけ。 その結果そのススが世界に降り注ぎ、世界は汚れてしまった。 だから俺らは武器を取って彼らを殺した。 建物は壊さず、空気は汚れない。 痛みはなく苦痛は無い、泥や血で汚れた手足は綺麗な土に帰っていくそんな兵器を、 流線型の綺麗な飛行機で落とした。 彼らの上に綺麗な光が降り...
  • MC vol.31/真紅
    Last update 2008年06月01日 Rebirth  著者:真紅 「何読んでるのかしら」 彼女は、不思議そうに後ろから覗き込んでくる。 昨日から読み始めていて、授業が終わってから読んでいた本から顔を上げる。 「ちょっとした小説さ」と返す俺に、彼女は「へぇ」とだけ返す。 ジャンルとしては、ミステリー小説なのだけど彼女にそんな事言える訳が無い。 「ちょっと貸して」 俺は慌てて「あっ」と声を出すが、もう遅い。 彼女の手は早く、あっという間に俺の手から本を抜き取った。 そしておもむろに、パラパラとページを捲っていく。 読んでいる・・・というより、眺めているといった方が近いだろうか。 だとしても、彼女の瞳は確実に一文一文をなぞっている。 しばらくすると、彼女は「ふーん」と溜め息のような声を出した。 そしてパタン、と本を...
  • MC vol.30/真紅
    Last update 2008年04月12日 闇夜物語    ~The Last night episode 1~  著者:真紅 子供の頃から何度も、そういう夢を見たことがある。 太陽がとても明るく世界を照らし、人々の溢れんばかりの笑顔が見える。 その中で私はゆっくりと跪いて、僅かな変化の兆しを見せる自分の身体をそっと撫でゆく。 私が指で撫でた所が、優しい風に吹かれる度に徐々に砂山の如く崩れていく。 子供達は、私のその姿が見えていないのか無邪気に辺りを駆け回る。 大人達も、それを見て手を叩いて笑ったり、語り掛けるように微笑む。 不思議と、この人達全てを護ってあげたいと思える。 私の両の目はもう色を失ってしまったのか、全てが白黒の映像になる。 その風景に、空っぽになったはずの私もどこか満たされていくのを感じた。 痛くは無い。...
  • MC vol.32/松永 夏馬
    Last update 2008年07月06日 不一致 is  著者:松永夏馬 「しかしストッキングを被ると何故このように面白い顔になるんでしょうか」  暗闇の中、スポットライトに照らされた黒いスーツの男が、あなたに向けてくぐもった声でそう言った。仕立ての良さそうな黒いスーツをスラリと着こなした男は、こともあろうにストッキングを被っているのだ。顔はひしゃげて原型を留めず、当然声も篭って聞き取りづらい。 「大抵の場合この……」  と言いかけて、思い出したかのように男はストッキングを引っ張って外そうとするが、これがなかなか外れない。潰れた顔が上に引っ張られる。 「くッ……」  外れない。 「よッ……」  外れない。 「えー……」  ストッキングを被ったままの黒ずくめの男は肩をすくめると、あなたに向かって顔を曲げた。どうやら笑顔を作ったらしい...
  • MC vol.31/松永 夏馬
    Last update 2008年06月01日 深き蒼色の海を  著者:松永夏馬 『不完全犯罪』 著者:蒼  闇の中から引きずり出してみたら、色あせてしまうものなのかもしれない。雨宮一子はそう感じていた。心の奥底に潜むそれに光を当て、言葉に表そうとしても無駄なのだ。自分でさえも上手く説明できないものはどう言い繕おうとも表現しきれるものではない。引きずり出したところで自分にとってもはや別物となるのだ。  だからこそ動機については言及するつもりもない。愛憎の果てであろうと、仇討ちであろうと、欲深い金品の奪い合いであろうと、いっそのこと狂人による通り魔的犯行であろうと、結局のところ結果に変わりは無いのだから。  一子は深く考えないことにした。考えなければならない問題はこれから。全て計画どおりになどいくわけがないとわかっているから、あらかじめ立て...
  • MC vol.30/松永 夏馬
    Last update 2008年04月12日 おもしろい噺  著者:松永夏馬  追い詰められて八方塞り、私に逃げる場所なんてない、なんてぇのは捕り物劇じゃよく見られるもんなんですが、まぁ普通に生きててそうそうそんな事態にゃなりません。なるとしたら相当運が悪いか、もしくはそう思い込んでるだけってハナシですな。  下町の長屋、まぁ大概長屋といや下町なんですが、そこに浮世絵師の男が住んでおりまして。今で言う芸名もしくはペンネーム、その名を南瓜之介(みなみ・うりのすけ)。ちょいとばかり頭の鉢が大きいのもありまして、長屋連中からはカボチャのセンセイなどと呼ばれております。  で、このカボチャのセンセイ。そこそこ絵は売れるものの、貧乏長屋からなかなか抜け出せない。  原因はというと、生粋の動物好きが災いしてか、そこいらへんの犬やら猫やらを拾っては帰る拾っては帰る。...
  • MC vol.30/なずな
    Last update 2008年04月12日 巡花~幾度もの春を数え  著者:なずな 「ときどき、冷たくなった手を、あなたの背中に回して温めてもらったわね」 春めいた陽射しに自分の手をかざし、しげしげと見つめていたセツは、ハジメに向かって頬を赤らめて微笑んだ。 ハジメも今ではもう慣れて、ただ「うむ」と言って頷いて見せる。少しだけ祖父の元市に似せて。 セツは縁側の座椅子にちんまりと座り、幸せそうに茶を啜っていたかと思うと、いつの間にかこっくりこっくりと眠っている。 涼子が気が付いて、ひざ掛けを持って近寄ると、セツはゆっくりと頭を起こした。 「行ってらっしゃい。あなた、お弁当は持ちましたか」 元市が丹精込めて作った庭。沈丁花の香りに誘われて庭に出たハジメの背中に、セツが声を掛けた。 大学とバイトの合間に病院に行って、そんな話を祖父の元市に伝える。そ...
  • MC vol.32/なずな
    Last update 2008年07月06日 笑うソーセージ  著者:なずな 「魚肉ソーセージの値札じゃない、これ」 拭いてもすっきり曇りの取れない陳列棚の隅に、小さなシールが貼り付いていた。 最近付いたものだろうか、すっと簡単に剥がれたシールを顔の高さまで持ち上げて、しげしげと見ながら理子は呟いた。 「何だって?」 レジ台で新聞を広げていたハルさんが ずらした老眼鏡越しに見る。 「値札シール。ばあちゃん こんな所に付いてるよ」 「ああ そんな所に付いてたか。一枚足りないと思ったんだよね、個数分だけシール作ったのにさ。」 コンコンと背中を孫の手で叩きながら、ハルさんはそう言うと、もっと大事な事を忘れてたという顔をして振り返り、店の隅にある小型TVのスイッチを付けた。 聞きなれた推理ドラマのシリーズのオープニング曲が流れる。再放送だけど、ハルさんはいつ...
  • MC vol.32/コサメ
    Last update 2008年07月06日 悪人正機  著者:コサメ  実に気の回る殺人者であった。  彼は私のために椅子をすすめ、さらには紅茶とクッキーを出してきた。私は彼の言うがままに椅子にすわり、クッキーをかじって紅茶を飲んだ。しかし私は素直にゆったりと紅茶やクッキーの味をあじわうことができないでいる。すぐそこで、血まみれになって倒れている女がいやでも視界に入ってくるからだ。 「その紅茶は私のお気に入りなんです。おいしいでしょう?」 「はぁ……まぁ……」  彼は茶葉を買った店のことだとか、他にも様々な茶葉があってとてもおいしいんだとか、そういったことをにこやかに話し始めた。私は適当に相槌をうちながら、どうやって逃げ出そうかということをぐるぐる考えていた。しかしなかなか思考がうまく働かないでいる。そうしていつしか私はこの場の打開策を考えるのはやめて、今...
  • MC vol.30/コサメ
    Last update 2008年04月12日 アイランゲージ  著者:コサメ 『智恵子抄』という詩集に収録されている『レモン哀歌』を、ユキは声を出して読んでいる。それも一度や二度ではなく、何度も何度も繰り返しだ。なので智恵子さんは何度もレモンを“がりりと”噛んで、何度も“トパアズいろの香気”を立てた。 「あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑う……」  その一行を読むと、ユキはふと口をつぐんだ。そして「青……青い瞳……」とぶつぶつ呟いた。 「きっとこの青は、この人の狂気の色だよね」  僕に言っているのか、それともただの独り言なのか、僕が何も返さないでいると彼女はふと視線を上げてこちらを見た。 「でも学校ではそういうふうに教えないんでしょ?」 「まぁ、そうだね」 「どう解釈するのが“正解”なの?」 「べつに正解なんてないよ。人の数だけ答えがあるんだし」 ...
  • MC vol.31/コサメ
    Last update 2008年06月01日 臨床司書士  著者:コサメ  それぞれの新しい物語を待つ人々のところへ、と彼は言った。  彼とは汽車の中で出会った。私の隣の席に座ったのだ。ご一緒してもよろしいですかと言う彼の物腰は柔らかで、紳士だということがすぐにわかった。 「お仕事ですか」  私が問うと紳士はにこりと感じのいい笑みを浮かべた。 「ええ。それぞれの新しい物語を待つ人々のところへ向かう途中です」  それを聞いて私は彼が臨床司書士だということがすぐにわかった。病に伏す人々のために物語を提供してまわる職業だ。活版所で這いつくばって脱字ばかりを集めている私にくらべたら、はるかに立派で、素晴らしい仕事だ。 「あなたは?」 「故郷に帰るところです。母が病に倒れまして、そのお見舞いに」 「それはそれは……」  すると彼は何かを思案するように瞳を動...
  • MC vol.30/AR1
    Last update 2008年04月12日 踊れないリズムはいらない  著者:AR1  私の頬に、自然に笑みが浮かんできた。様々な色が混ざり合った照明を反射する虹色のミラーボールが宙に浮いているのを見て、または『レッツ・グルーブ』の機械的に加工(エフェクト)のされたヴォーカルが聴こえると、もしくは重低音の衝撃腹部から頭頂部へ突き抜けるたび、私の中にはリズムが躍動した。それは外から揺さぶられているのではなく、記憶が揺り起こす衝動だった。  たまたまディスコに誘うことが出来た友人が言う。「よくそんなに踊れるわねぇ」  私は揺れる身体を止めずに、我ながら器用に思いつつ答えた。「こんなことが出来るのは若いうちだけよ」  そうやって何時間を腰をくねらせる儀式に狂っていたのだろう。自己の熱と周囲の熱気に当てられ過ぎたのか、私は倦怠感を催してしまった。うっすらとかいた汗...
  • MC vol.31/AR1
    Last update 2008年06月01日 パズル  著者:AR1  全てが白紙である。なぜならば、午前と午後の境目である正午にまさに今、達したからだった。午前であることがリセットされ、新たな時間軸へと移行する。  それと同時に、私の人差し指が天井の方に向けて垂直に伸びた時、腹の中からご機嫌な様子で小鳥が飛び出し、陽気な歌声を披露する。もっとも、小鳥が今まで不機嫌そうに鳴いたことなど一度としてない。  寒気の中に徐々に温もりが射し込みつつある四月の陽気。窓を容赦なくノックして来訪を告げた春の嵐はどこへやら、黒い雲の断片すら見当たらない。レース・カーテンを飛び越えてきた木漏れ日のような陽光が、白の壁紙に吸い込まれる。  液晶画面の中では、かしこまった表情の天気予報士が今日一杯の空模様の安寧を約束し、背景ではカメラが渋谷の交差点の混雑振りを実況で監視してい...
  • MC vol.31/なずな
    Last update 2008年06月01日 ミステリーサークルへようこそ  著者:なずな 「我々の、お茶会へようこそ」メンバーは一斉にそう言った。 1.居場所  学園は 小高い丘一帯、広大な敷地を有し、丘の頂上に旧校舎が、中腹に新校舎がある。 煉瓦造りの古めかしい旧校舎の建物は今ではほとんど使われておらず、物好きな同好会の部室や、風変わりな教師の研究室などいくつかが使用されている以外は ほどんど人気もない。 長い廊下の突き当たり、丸い塔に当たる部分の最上階、細いらせん階段を上ると、突き当りには小ぶりのドアのついた部屋があった。  鍵を開け、中に入る。うっすらと埃の被った窓枠に手を掛けそこから眺めると、外に広がる丘全体が見渡せた。 妖精でも潜んでいそうな小さな森や、落ちたら絶対に浮かんでこないと言われる沼、老職員が怪しい魔法植物を育ててい...
  • MC vol.30/空蝉八尋
    Last update 2008年04月12日 奏世記  著者:空蝉八尋  瞳の奥に、あんなに赤い血の色が見えるなんて。  目玉を半分に切って、順番に角膜、虹彩、水晶体、毛細体。  私の胸の奥は熱くなった。何だか正体のわからないものに焼かれ、焦げて燃え尽きていくように熱くなった。  また逆に、刃を握った手の平が冷たくなっていく。閉じた口から言葉は零れず、冷静とはまた別の視線を投げかけていた。  こんなもので、出来ていたのだと。  バラしてしまえばなんの意味もなさない、転がるただの部品を見て、私は酷く消沈したのだ。  もっと、何かがあるのかもしれない。  しかしそれはいくら月日が経とうとも、触れることも、目にできることすらなかった。  行き場を無くした冷えた手は、自力で握りしめるしか術がない、そんな言い訳が何度もよぎっていく。  創り出したい。と強く...
  • MC vol.31/空蝉八尋
    Last update 2008年06月01日 アネモネの咲く頃に  著者:空蝉八尋  コーヒーテーブルの上には、鮮やかなアネモネがちょこんと生けてありました。  その何気ない風景、しかも居心地のすこぶる悪い空間に限ってこんなベストタイミング。 『それでは、この花が咲く季節にしましょうか。チヤ子ちゃん』  ああ。  脳裏で駆け巡る記憶、残像、掠れた音声。  これが、これがまさしくフラッシュバックというものなのですね。  人生、まったく何が起こるか分からないものねと実感している暇もなく。  わたくしはピアノの鍵盤を叩き割る勢いで腕を振り下ろし、不協和音と共に叫んだのです。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」  喉を突き破るかの絶叫。クラゲに刺されたような指先の痺れ。 「なっ!?」  わたくしの奏でる優美で優雅な旋律に、一丁前ながら、さ...
  • MC vol.31/rudo
    Last update 2008年06月01日 あなたのとなりの物語  著者:rudo 「林の向こうに春があるっていうんです。  どういう意味なんでしょうか・・  意味なんてないんでしょうか・・」 「モルヒネのせいで  幻覚でも見てるんでしょうかねぇ」 病院の屋上で疲れきって 黒ずんでしなびた女が言う。 この黒ずんでしなびた女の夫は すい臓がんの末期で 明日死んでもおかしくないと言われながら もう二ヶ月も生きているらしい。 最初は泣いていたこの女も 看病に疲れたんだろう いまや・・「早く死んでくれ・・もう死んでくれ・・」 全身で叫んでいるのが見える。 最近は少し動いても痛がって 気がつくと鼻から口から血が出てるんです。 本当にいくらでも出てくるんです。 ふいても ふいても・・ タオルなん...
  • MC vol.32/rudo
    Last update 2008年07月06日 おばあちゃんのこと  著者:rudo 「ドラマじゃないんだからっ   そんな都合よく時計が止まるわけないでしょっ」 玄関の鍵を開けるとすぐ 大きな時計がある。 どうしてだか止まっていた。 それを見た弟が   「この2時40分にばあちゃんに何かが起きたんだな」  ・・と言ったからだ。 「いやっ この時計はばあちゃんが大事にしてた。  だから ばあちゃんに何かあったことを知らせてるんだっ」 時計は壁にかけてあって大きな振り子がついている。 すこし斜めになっているのまっすぐに戻すと 振り子はまた左右に揺れてコチコチと動き出した。 「ただ 曲がってただけだよ」 「おおっ 何かあったから曲がったんだなっ」 おばあちゃんは私たちの母親の母親だけど 二人はものすごく仲が悪...
  • MC vol.30/rudo
    Last update 2008年04月12日 想い・・遥か  著者:rudo 赤色灯の赤 下半身の赤 青ざめていく菜織 「子どもさんはなんとか・・  母体は・・ 出血が急で・・ 残念ですが・・ 」 それきりだった。 うそだっ うそだっ うそだうそだっ 嘘だっ 菜織っ 菜織・・おいていくな・・・  ----------------------------------------------------- 大切なものをなくした悲しみで手一杯なのに 僕に泣いている暇はなかった。 菜織が命とひきかえに残していった僕たちの子どもは 「先天性白皮症」という疾患を抱えていた。 髪も肌も目もなにもかもが白い あるいは透明の。 色素を持たない アルビノというのだそうだ。 これは疾患なんだろうか? ...
  • MC vol.6
    Last update 2007年10月07日 Mystery circle vol.6 ◎「何だよ、その、ビタミン剤と間違えて下剤を呑んでしまったことに唐突に気付いたかのような、よじれきった顔は」 幸坂かゆり ◎「先にイッちゃった者勝ち、とゆーことで」 ホクト ◎「もろ、ステーキを見る目」 kazumi ◎「その泥棒というのはね、ビール専門の泥棒なんですね、これが」 ろくでなしブルース ◎「英語的発音をすれば、トローマね」 李 九龍 ◎「この建物が本来的にラヴホテルではなくても、誰かがそういう目的で勝手に使用している、というのはあり得ることじゃないかと思って」 癒月ハルナ ◎「さっき、そこで見つけたんだけど、トイレットペーパーで……」 亜季 ◎「えらく遠大な計画だな、おい」 おりえ ◎「じゃあ、しりとりでもする?」 シーメル ...
  • MC vol.8
    Last update 2007年10月08日 Mystery circle vol.8 ☆あの人を…抱きしめてあげて下さい…あの人にはそれが必要なんです。 黒沢柚月 ◎「朝、声をかけてみたら返事がなくって、お布団の中で眠ってるうちに、だったみたい」 七夜実 ◎私はびしょびしょのコンクリートに投げ出された、とてつもなく大きな魚の死骸だった。 亜季 ◎それが私にも伝染していたのだ。 塵子 ◎布団に横になって目を閉じると、マンホールの蓋がぱくぱくと動いて、暗い穴が口をききはじめる。 晴 ◎雨なんかもう降ってないのに、傘をさしてゆっくりと歩いてくる人がいる。 癒月ハルナ ◎「死んだことないくせに」 絵空ひろ ◎それは目を開けてからもしばらくの間、宙を漂いながら私にまとわりついた。 Nomad ◎「どうして裸なの?」 暇子 ◎私はあ...
  • MC vol.4
    Last update 2007年10月07日 Mystery circle vol.4 ◎そのとおりだと僕も思った。 ろくでなしブルース ◎『ねえ、もう会えないの?』と彼女は淋しそう言った。 七穂 ◎何もかもかもがぐっすり眠り込んでしまったみたいに静かな午後だった。 kazumi ◎『そうですね』と僕は言った。 GURA ◎初秋の太陽が頬の上にまつ毛の影を落とし、それが細かく震えているのが見えた。 九龍 ◎『ここを出ることができたら一緒に暮らさないか?』と僕は言った。 Clown ◎夏の名残の光が煙を余計にぼんやりと曇らせた。 松永 夏馬 ◎そのとおりだと僕も思った。 出題者:ろくでなしブルース 作品名:「ノルウェイの森」 著:村上春樹 正解者:無し コメント ...
  • MC vol.7
    Last update 2007年10月08日 Mystery circle vol.7 ☆あの青い空の波の音が聞こえるあたりに、何かとんでもない落とし物を、僕はしてきてしまったらしい。 晴 ◎冬眠しそこなった熊のように不機嫌そうにウロウロしていた。 亜季 ◎かじりかけのピザトーストが皿の上ではねる。 暇子 ◎改札をかけ抜け、三段とばしで階段を転がり降りる。 ろくでなしブルース ◎のどにささった小骨みたいに、僕の頭の中に引っかかって離れなかった。 ホクト ◎あとは五つの年の差のみ。 Nomad ◎懐中電灯なんかつける余裕もなかった。 松永 夏馬 ◎あのときの僕とそっくりだった。 癒月ハルナ ◎サンタクロースにでも貸してやれるほどのビッグサイズだったのだ、 塵子 ◎置いてあった彼女のピーコートとカバンを脇にかかえた。 一茶 ...
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