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柊つかさは殺し合いの夢を見るか? ◆Qpd0JbP8YI




月は明るく夜を照らしていた。
その蒼い光は人影もなく、照明の一つも点いていない不気味な街に優しく降り注ぎ、
静寂と恐怖の交じり合う暗い世界に明るい色取りを加えていた。
思わず見とれてしまう。
そんなな幻想的な光景だった。
こういった場所にいたら、世界の美しさに目を奪われ、人の死など忘れてしまうかもしれない。
ビルの群れを分かつ大通りは、そんな恩恵に浴していた。

だけど、そんな所とは縁遠い場所に彼女はいた。
通りから外れた薄暗い路地裏にあるゴミ箱の陰。
そんな掃き溜めと称されそうな汚い場所に
柊つかさは身体を丸めるようにして隠れていた。

「お姉ちゃん、こなちゃん、ゆきちゃん……」

不安に怯える中、彼女は必死の思いで大切な人たちの名前を綴り、
目の前に起こった現実によって崩壊しかけた自分の意識を保とうとした。
これは現実じゃないんだよね、夢なんだよね。
確かに目の前で人が殺されたし、自分に人を殺せとも言われた。
だけどそんなことはどう見ても、出来の悪い冗談にしか彼女には思えなかった。
ただ普通に生活していた自分が、どうしてこんなことに巻き込まれるのか。
その疑問に対する明確な答えが、夢以外に見つからなかった。
だから、こんなことは夢でしかないのだ。

思い出すのはいつも学校の風景、友達との会話
学校の教室で繰り広げられる日常。
ただ何となく毎日を過ごす日々は、代わり映えもしない生活だった。
でも平凡ではあったけれど、自分では胸をはって幸せといえる、そんな光景だった。
そしてそれが自分を取り巻く世界であり、自分のいるべき場所なのだ。
間違ってもここでじゃない。

自分の世界に思いを馳せ、あるべき世界に身を委ねる。
そうしていると、不思議と恐怖はなくなり、落ち着いてくる自分がいた。
それに、今、見ているものは夢であり、いずれ醒めることになる。
それなら怖がる必要はどこにもない。
一気に緊張から解放された彼女は、それまでの心労も相まってか眠気を感じた。
夢の中で寝るっていうのも、変だよね。
そんな事を思いながらも、彼女はゆっくりと船を漕ぎ始めた。
このまま寝て、起きれば、またいつもの生活が戻ってくる。
夢の中を歩き回るよりも、彼女にとってはそっちの方が魅力的だった。


*   *



それからどれくらい経った頃だろうか。
ゴミ箱の陰に隠れ、寝息を立てるつかさの顔にランタンの明かりが照らされた。

「おい、起きろ、起きろって。こんな所で寝てちゃ危ないぜ」
「んぅ~」

赤いジャケットを羽織った少年が呼びかける。
だけど、すっかり寝入っている彼女にとって、
それは遠くから聞こえる儚い声でしかない。
彼女はその声を無視し、構わず自分の欲望を優先させた。
幾ら呼びかけても、碌な返事がない。
その様子に痺れを切らした少年は、彼女の肩を揺り動かし、耳元で叫んだ。

「おーきーろー!」

今度は遠くからではなく、間近から届けらる声。
それには別世界にいる彼女の意識も呼び起こされることとなった。

「ふぇ……お姉ちゃん?もう朝~?」

寝ぼけ眼を擦りながら、彼女は暢気に訊ねた。
だけど、目の前に人物が、姉とはかけ離れていて
おまけに周りの風景も自分の部屋とは違っているときている。
それから得られる結論は決まっている。
まだ夢を見ているんだ。

「……おやすみなさい」

彼女はまた瞳を閉じた。

「だから、起きろって!」

埒が明かない判断した少年は彼女の頬を軽くはたきながら、呼びかけた。

「ここで寝たら死ぬぞー!」

盛んに呼びかけられる声の近くでは、流石に彼女も寝られなかった。
ゆっくりと身体を起こし、彼女はけだるそうに目を開けた。

「やっと起きたか。こんな所で寝てちゃ、本当に危ないぜ」
「あの、誰ですか?」

ゆっくりと覚醒していく意識の中でも、
警告を促す人物が自分の知り合いではないことに気がついた。

「俺は遊城十代。君の名前は?」
「はぁ、あの、柊つかさです」
「そっか。つかささんは何でこんな所で寝てたんだ?」
「ん~、何だか急に眠くなってきちゃって……」
「本当に危なっかしいな~。最初に見つけたのが、俺で良かったぜ」
「あの、危ないって何でですか?」
「ひょっとして見ていなかったのか?」

十代はつかさに事のあらましを説明し始めた。
こんな所に一人でいては危険だ。
それを悟らして、もう少し危機感を持って行動を自重してもらいたい。
そこまで考えてかどうかはしらないが、十代は隠し立てせずに教えた。
成るほど、確かに彼の言うことは、彼の心配を肯定するような内容だった。
だけど、彼女にとってそれは全て否定した現実の亡骸だった。

「でも、これって夢なんですよね?」

まるでそれが真実であるかのように純粋に疑問に持ち、訊ねた。
何の屈託もない瞳が十代に向けられる。
それにはほんの少しだけ十代も呆気にとられた。

「いや、つかささん。否定したくなる気持ちは何となく分かるけれど、これは現実だと思うぜ」

人の死、首輪、殺す、殺される。
くどくどと説明を加える十代を彼女は見据えていた。
彼の言っていることは嘘に違いない。
それが彼女の見解だった。
だってもし彼の言っていることが本当だとしたら、
自分は誰かを殺さなければならないだろうし、
また自分は誰かに殺されることになってしまう。
そんなことはどっちも嫌だった。
だから、彼は嘘を言っていているに違いないのだ。
少女は自分の世界を守るべく頑なに少年の言っていることを否定した。

「ああ、そうそう、つかささん。つかささんのバッグだろう、これ?
向こうの通りに落ちていたよ。隠れるんだったら、自分の持ち物を
ちゃんと持っていかなきゃ」

そう言って手渡される荷物は確かな質量を持って、彼女の手にのっかった。
そこにほんの少しの疑問が生じる。
夢の中ってこんなリアルだったっけ、と。
それでも今までの非現実的なものを肯定する気にはなれなかった。
それに大体こんな可愛げのないバッグを買った覚えなど彼女にはなかった。
自分のではない。
やはり彼は嘘を言っているのだろう。
その事に確信を深めつつ、手渡されたバッグを返そうとしたら
それを遮るように十代は話しかけてきた。

「つかささん。つかささんの知り合いは、この中にいたか?」
「知り合い?」
「ああ、名簿が中に入っているだろう?見てみなよ」
「え、あ、うん。でも、このバッグ、私のじゃないよ」
「そうなの?じゃ、つかささんは、何を支給されていた?」
「……支給?」
「バッグを渡されていただろう?」

つかさは黙って首を振る。

「じゃあ、やっぱりこのバッグはつかささんのだよ。ほら!」

押し付けられるバッグを、されるがままに彼女は受け取った。
そして彼に名簿を確認するように促される。
何となくそれを見てしまうと悪いことが起きるような気が彼女にはした。
でも、同時にそれを見なければいけないという気も彼女の中にあった。
二つの相反する気持ちの中、やがて彼女は名簿を見ることにした。
だってこれは夢なのだから。
それが自分を動かした理由だった。
例え悪いことが起きたとしても、それは全て夢であり、本当のことではない。
それなら、どんなことが起きても大丈夫だろう。
彼女はその手をバッグの中にいれて、名簿を取り出した。

十代が持つランタンの明かりを頼りに彼女は目を通す。
柊かがみ、泉こなた、それに加えて転校生で、
自分の新たな友達となってくれた高町なのはとフェイトの名前があった。
自分の大切な人たちがここにいる。
その事実に突き当たると、彼女の内奥は衝撃に震えた。
そしてそれは自分の出したこの状況に対する結論を揺り動かした。
目に見えて動揺する彼女の目に、ふと十代の足元でランタンの光を受けて不気味に輝く剣が映った。
その視線に気がついた十代は、それを辿りバヨネットを手にした。

「ああ、これ?一応、なんつーか、自衛の為に。
勿論、俺は人を殺したりなんかはしないし、こんなゲームになんかは乗っていないぜ」

彼女は彼の言うことなど全く聞いていなかった。
ただ無骨な剣の厳かな主張に気おされていた。
これは現実だという無常な剣の声に。
だけど、彼女はすぐにそれを否定した。
これは夢だよ、夢。だって夢じゃなかったら……。

その仮定を考え、大切な彼女たちの死をイメージしてしまった。
途端に悲しみが痛いほどに胸を刺す。言いようのない辛さだった。
夢でも嫌だよ。
掛け替えのない人たちの死は、それが想像の中の出来事でも
現実のような重さをもって、彼女の瞳から涙を押し出した。
そして対する十代は彼女のいきなりの涙に戸惑い、訳も分からず罪悪感を覚え始めた。

「え!?その、何で?……いや、ごめん」

女の子が涙を流す。
余り遭遇したことのない場面であるだけに、その対応の仕方が彼には分からなかった。
それでも何かをしないよりはマシかなと思い、取り合えず謝ることにした。
だけど、そんなことで全てが解決できるはずもない。
十代はあわてふためきながらも、この状況を何とかすべく
彼女を慰めるなり、励ますなりしてやろうと彼女に近寄ろうとしたが
それは彼女は震える小さな手が前に突き出されたことによって中断された。

彼女は混乱していた。
自分が体験していることがよく分からなくなっていた。
これが夢なのか現実なのかというのは分からない。
大切な人たちの死は、夢であってほしいと思いながらも
現実だったら、取り返しのつかないことになってしまうという不安もあった。
だけど、自分がそれを心配して行動するというのは
この夢を現実として捉えることになってしまう。
そうなったら、きっと夢は現実になってしまう。
訳の分からない考えは、否定できない重みをもって彼女にのしかかった。

彼が来なければ、夢を夢と思えていた。
そしてきっと夢は夢で済んだはず。
それなのに彼が来て、それを壊してしまった。
ままならない状況での彼女の苛立ちは、怒りとなって十代に向けられた。
理不尽な怒りではあったけれど、彼女にとってそれは正当なもののように思えた。
だけど、非力な彼女にその怒りを体現させる手段などなかったし、
人を傷つけたことのない彼女にそれをする心構えもなかった。
だから、彼女は突きつけられる事実を手で阻み、逃げることにした。
そして彼女は突如として振り返り、走り出した。

突然のことに呆気に取られる十代を後にして走る彼女だったが、すぐにその幕は下ろされることになった。
運動を得意としていない彼女あることに加えて、心身が乱れた状態でのランニングだ。
自然と足取りは覚束なくなってしまう。
彼女はその勢いのまま、受け身を取る暇もなく、顔を地面にぶつけながら盛大にこけた。

勝手に走り出し、勝手にこけて、勝手に怪我をする。
馬鹿としか言いようがない。
一笑に付してやりたいものだ。
だけど、涙をとめどなく流し、鼻血を垂らす少女は、滑稽というより哀れな姿だった。
そんな姿を見て、さすがの十代も同情を禁じ得なかった。

「えーと、その、大丈夫か?」

何だか気まずさを感じながらも、声をかけた。
何故だか分からないが、女の子が泣いていて、怯えていて、怪我をしている。
男以前に人として、放っておけはしないだろう。
だけど、それも拒絶の意を示された。

「いや!来ないで!」

切実な響きを持つ声が叫びとなって彼女の口から出た。
その迫力に思わず十代の足も止まってしまう。
何でこんなことになっているのか。
十代は頭を掻きながら、自分の行動を思い返した。
だけど、彼女をこんな様子になるまでに追い込んだような覚えはなかった。
とはいえ、自分が来るまでは暢気に寝ていたのだから、やはり彼女の変化の原因は自分にあるのだろう。

「えーと、なんつーか、その、ごめん」

何が悪いかも分からないが、取りえず自分が悪いのだろうと思い、彼は再び謝ることにした。
余り真摯な態度とは言えないし、それでは本当の意味で謝罪の意は相手に伝わらないだろう。
だけど、そんな懸念は今回は必要なかった。
何故なら、彼女の耳には彼の声など届いていなかったのだから。
彼女の頭にはあったのは、彼が突きつける事実から逃げることだけ。
彼が立ち止まったのを契機に、彼女は精一杯の勇気を振り絞って立ち上がり
鼻から出る血の痛みを我慢して、また逃げ出した。

その様子を黙って見つめる十代。
恐らく初めて接するタイプの女の子であり、意志の疎通が上手くいかない人。
そんな人とのやり取りに幾らかの面倒さを感じ、咄嗟に彼女を追いかけるのをやめた。
でも、こんな所で放っておけないよなぁ。
理性が良心となって呼びかける。
今の状況における危険性を一応理解していただけに、その言葉には説得力があった。
十代は軽く嘆息すると、急いでバヨネットを手に持ち、追いかけた。

「おい、つかささん、待てよー!」



【1日目 深夜】
【現在地 H-5】
【遊城 十代@リリカル遊戯王GX】
【状態】健康
【装備】ランタン、バヨネット@NANOSING
【道具】支給品一式、ランダム支給品0~2個
【思考】
 基本  殺し合いには乗らない
 1.つかさを追いかける
【備考】
 ※つかさの対応に苦慮してます




武器をに手に持って追いかけてくる人がいる。
その異様な出来事にさっきまでのやり取りなどは、つかさの頭の中から吹き飛ばされた。
きっと自分は殺されてしまうのだ。
心の奥底から泉のように湧き出る恐怖心は
絶え間なく続く状況の不可思議さによって混乱していたつかさの意識の中で
確かな存在感を放ち、その考えに正当性を与えようとしていた。
彼は自分を殺す。
それは確信に近い形となって徐々に彼女を蝕んでいった。

《お姉ちゃん、みんな、助けて……!》

つかさは涙と鼻血を振りまきながら、必死になって逃げた。




【1日目 深夜】
【現在地 H-5】
【柊つかさ@なの☆すた】
【状態】混乱、鼻血出血
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3個
【思考】
 基本 日常に帰りたい
 1.十代から逃げる
 2.家族や友達に会いたい

【備考】
 ※夢か現実かはまだ区別がついていません
 ※十代が自分を殺すと思っています



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