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魔獣~ジャバウォック~ ◆RsQVcxRr96




夜の暗さが支配する道の真ん中で一人の少女――神崎優衣は怯えていた。
優衣が怯えている原因、それは「死」だった。
突然目の前で見せつけられた見知らぬ者の死。
それが優衣の心を酷く苛む。
一瞬前までは威勢よく啖呵を切っていた快活そうな金髪の少女はいとも簡単に殺された。
爆発する首輪、弾ける首、噴き出る血、そして周囲から聞こえてくる無数の悲鳴。
優衣も悲鳴を上げた一人だった。
間近であれほど鮮烈な誰かの死を突きつけられた事などもちろん初めてだ。
例え鏡の中で誰か死んでも彼女が直接見た事など今まで唯の一度としてなかった。
どれもこれも知り合いからの又聞きだ。
その時は純真に死を悼んだ。
だが今はどうだ。

――何もかもが怖い。

周りを取り巻く夜の闇が、風が織り成す木々のざわめきが、見知らぬ場所に一人いる事が、堪らなく恐ろしい。
よく見れば電柱が1本立っていて辺りを薄く照らしていたが、その程度では全く気休めにもならなかった。
ここはあのプレシアに怒りを抱く場面かもしれないが、まず浮かんだのは紛れもない恐怖。
底知れぬ恐怖は優衣の心を容赦なく蝕んでいく。
ひんやりとした首輪の感触がやけに気になる。
こんなもの今すぐにでも外したいが、無理に外そうとすれば爆破されるに違いない。
あの首輪を爆破された少女の姿に自分自身の姿が重なる。

首輪を外そうかと手をかける自分自身が目の前に幻として浮かんでくる。
束縛から抜け出ようとした罰を知らせるのは無機質な電子音。
ピ、ピ、ピ、ピ、と命のカウントダウンが始まる。
その音を耳にすると、余計に躍起になって首輪を外そうとするが所詮は無駄な事だ。
そして審判の時は訪れ、自分の首輪は――

「いやあああぁぁぁあああ!!!」

想像してしまった。
自分が死ぬ瞬間をリアルに想像してしまった。
さっきより余計に周りの事が気にかかり、一層神経を張り巡らせる。
誰かが突然襲いかかってくるような気がしてならない。
優衣の精神は触れれば破裂するシャボン玉のような状態に陥っていた。
そして案の定そんな状態がいつまでも続く訳なく、次第に優衣の精神は摩耗していった。

(……私、どうなるんだろう……苦しい、誰か助けて……
 やっぱり誰かに殺されるの? 殺し合いに乗った人が来たら……対抗できる訳がない……)

優衣の精神は極度の緊張と恐怖でこの短時間に酷くボロボロになっていた。
それゆえに一刻も早くここから逃げ出したいと思った。
しかし逃げる場所などあるはずなかった。
逃げ場がないという事実に気づくと、優衣の身体から力が抜けた。
それに伴って右手に握られていたデイパックは重力に従って地に落ちた。
ドサッという音に優衣は身体をビクッと震わせた。
今の今までデイパックを持っている事にすら気が付いていなかったのだ。
地に落ちたデイパックはその衝撃で中身をいくつか吐きだしていた。

「――ぁ」

そしてその中にあった鈍く光る凶器が優衣の目に留まった。
それは人の手には余るような大型拳銃『対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル』であった。
薄闇の中で電灯の鈍い光に照らされる黒い銃身は蠱惑的な光を振り撒いているかのように見えた。
優衣は熱に浮かされたようにジャッカルを手に取り、何かに憑かれたかのようにまじまじと見つめた。
時間にして数分だろうか。
ジャッカルを観察していた優衣の動きは止まり、次の行動に移っていた。
ゆっくりとジャッカルの銃口が彼女自身の手で彼女自身の眉間へと運ばれていった。
無機質な冷たい銃口と眉間が肉薄した瞬間、彼女の動きは一瞬止まった。
だが覚悟を決めたのか引き金に掛けた指に力を込める――この場所からいなくなるために。

(――ッ!!)

一瞬で訪れるはずの死。
しかしそれはいつまでたっても訪れなかった。
死ぬ気で指先に力を込めていた優衣はようやく誰かに手を握られている事に気付いた。
虚ろな目を上にあげると、確かに誰かが自分の手を掴んで固定しているのが分かった。

「死ぬ気か」

そう声をかけた人は夜でも鮮やかな金髪と吸い込まれそうな綺麗な碧眼を持っていた。
ガシャッというジャッカルが落ちる音がなぜか現実味がなかった。


     ◆     ◆     ◆


病院の一室。
現在そこに私と先程の男性はいる。
名を尋ねたところ「キース・レッド」という答えが返ってきた。
あれからしばらく経つが、未だになぜ彼がわざわざ自分の行動を止めたのか理由がよく分からなかった。
理由を聞いても答えをはぐらかされるばかりだった。
でもこうして時間が経つにつれて、先程の自分が如何に馬鹿だったか理解していく。
恐らく一種のパニック状態だったのか、とにかく少し前までの自分はどうかしていたという結論に落ち着きかけてきた。

「あの、ありがとうございました。えっと、あ、私……」
「気にするな。恐怖は人を狂わせる」

彼の物静かな口調が自分の精神を落ち着かせる。
だいぶ時間が掛かったが、ここに来てようやく周りが見えるようになってきた。
よくよく考えてみれば自ら命を断つなど以ての外だ。
なんの力もない自分だが、それでも死んだらそこで終わりだ。
あの殺された少女は勇敢にもプレシアに立ち向かったではないか。
それに比べて自分はなんて情けないんだろう。
もしあのまま一人だったら確実に自分は自ら命を絶っていたに違いない。
今こうして生きているのは偶然だが傍に誰かがいたからだ。
キースさんには感謝してもしきれない。
ふとここに至ってまだ相手の名前しか聞いていない事に気がついた。

「あの、キースさんは殺し合いに乗っているんですか」

聞いてから後悔した。
自殺を止めてくれて親切にも安全な病院まで連れて来てくれたキースさんが殺し合いに乗っている訳ないではないか。
今の質問を聞いてどんな顔をしているのかと思って顔を向けると、彼は何かを確かめるように手を動かしていた。
この様子だと聞き逃したのかと思ったが、

「殺し合いには乗っていない。ただ探している奴がいる」

きちんと答えを返してくれた。
ふとその探している人がどういう人か尋ねると、キースさんと一緒で金髪碧眼の人という事だった。
命を助けてくれたお礼に恩返しがしたかったが、生憎そのような人に心当たりはなかった。
なによりここに来て初めて会った他人が他ならぬキースさんである。
その旨を伝えると、向こうもあまり期待していなかったのか特に落胆する様子はなかった。

「私には碌なものが支給されなかったんだが、優衣さんには何が支給されたんですか」

私は何か役に立てるのかという一心でデイパックの中身を目の前に広げた。
先程の大型拳銃ジャッカルに、その予備弾30発、そして赤い水晶のような物。
どれか役に立つのかと思ったが、キースさんのお目当ての物はなかったのか興味は薄そうだった。
でも赤い水晶――レリックと言うらしい――には唯一他の2つとは別の目を向けていた。
それでも別段どうでもよさそうな感じではあった。

「なるほど。ではもう少し優衣さんの事……どこから来たのか話してくれますか」
「は、はい。私は――」

キースさんが私の話を聞いてくれている。
つまりはキースさんにとって私の話が役に立つという事ではないだろうか。
私は役に立ちたい一心で自分が知っている事を全て話した。
それをキースさんは時折質問を交えながら聞いてくれた。
全てを話し終えた時、私は一つ何かをやり遂げた感じだった。

「ほう、優衣さんにも兄がいるんですか」
「はい。今は間違った方向に進んでいますけど、でもきっと元の優しいお兄ちゃんに戻ってくれるって信じています」
「そうか。大変だな」
「あの、キースさんの兄弟ってどんな方なんですか。探している方なんですよね」

そう聞いた瞬間、キースさんの顔が強張ったような気がしたのは気のせいだろうか。
それからしばらく沈黙の時間となった。
どうやらいけない事を聞いてしまったらしい。

「あ、出しゃばった事を聞いてしまってすいませんでした」
「いや気にしないでくれ。それよりご苦労様、貴重な情報感謝するよ。では――」
「はい、なんですか」

ようやく役に立てた、その気持ちが持てただけで少し楽になった。
なんの力のない自分でもこうしてほんの小さな恩返しが出来て嬉しかった。
なんだか初めの時より晴れやかな気持ちになれた。

「――私のために首輪をください」

キースさんの言葉を理解する間もなく、私は彼にとって最も役に立っていた。
キースさんの手から伸びた刃によって私の首と胴体が別れを告げて首元から血が噴き出る。
それはまるで先程自ら想像した姿に酷似していたようだった。


     ◆     ◆     ◆


彼――キース・レッドはこの状況に感謝していた。
最初に皆が集められて一人の少女が命を落としたホール。
暗がりではっきりとは見えなかったが、キース・レッドはその目で確かに見た。
自身の兄弟――キース・シルバーの姿を。
シルバーと再会したのは数時間前、貨物列車の上だった。
スカリエッティーの要請で動いていたら、突如シルバーはレッドの前に現れた。
なぜシルバーが時空管理局側にいたのかなどレッドにとっては些細な問題だった。
一番重要なのはシルバーと戦う事が出来る、その一点だった。
キース・レッド――両腕にアドバンスドARMS“グリフォン”を宿した「キースシリーズ」の一人。
だがレッドは他のキース達とは違い、欠陥品のレッテルを貼られてしまった。
今は物言わぬ骸と化した少女に向かって先程の質問の答えを返す。

「冥土の土産に教えてやる。
 私にも兄弟はいる、しかし彼らは私の事を“欠陥品”や“初期不良品”だと決めつけた。
 どこが違う! 同じ遺伝子プールから生まれたのに何故だ!
 だから私にとって兄弟とは憎むべき対象、超えるべき存在だ!」

それからレッドは上を目指すようになった。
もっと高く、もっと強く、強者の高みへと昇り詰める。
力が欲しかった。
今の自分よりも強い力が、他の誰よりも強い力が欲しかった。
それはスカリエッティとの邂逅である程度達成された。
あとは手に入れた力がどこまで通用するか証明するだけ。
その相手としてキース・シルバーが現れた事は僥倖だった。
死力を尽くした戦いは終始互角の様相を見せた。
結局決着は付かないまま帰還する事にはなったが。

「私はシルバーを超える事を証明せねばならぬのだ! 邪魔するなら容赦なく殲滅するのみ!」

先程神崎優衣の自殺を止めたのは現状把握のために情報を聞き出そうとしたからだ。
元は軍人の身だ、状況把握の大切さは知っている。
ここで初めて会った参加者、加えて自殺志願者。
情報を聞き出した後に何をしようが気にする必要が無い事は楽だった。
見たところ一般人の彼女から聞き出せる情報は現状把握のための参考程度ぐらいだと思っていた。
しかし彼女の話は思った以上に興味をそそられた。
鏡の世界で行われる13人の「仮面ライダー」と呼ばれる戦士によるバトルロワイアル。
趣旨は違えど今のこの状態と類似点はいくつか見出せる。
しかもプレシアはその戦いに自ら参加していたと言う。
つまりその戦いからヒントを得てこのようなデスゲームを開いたのだろうか。

「まあ私にとってはどうでもいい事だ。むしろ問題は奪われた武器」

キース・レッドにとって目下の問題は奪われた武器『ベガルタ』と『ガ・ボウ』である。
没収されているところを見ると、プレシアの言う通り誰かに支給されている可能性が高い。
シルバーと再会するまでに何とか取り戻しておきたい。

「あとはこの忌々しい首輪。それになんとなくARMSのナノマシンの調子が落ちているようだな。
 腕の変化は普通に行えたが、本気で戦う時は注意が必要そうだな」

自分達の命を握っている首輪。
ARMSである自分が首を吹き飛ばされたところでコアさえ無事なら問題ないのだが、それでは不公平というものだろう。
身体の調子から見ても何かしらの制限を受けている可能性が高い。
忌々しい事だが、これでは戦いの際に不覚を取る事もあるだろう。
首輪と制限に何か関係性があるのかは分からないが、即急に外したいところだ。

方針は決まった、後は実行に移すだけだ。
キース・レッドは誰もいないロビーで一人新たな誓いを宣言する。

「オレはもっと高みへ……奴らの待っている高みまで行かねばならないのだ。
 そのために立ち塞がる者は誰であろうと、高みへ昇るための礎にしてくれる!!」

遥かな高みを目指す魔獣キース・レッド。
彼の腕が掴むものは……神の未来か、悪魔の過去か、それとも――


【神崎優衣@仮面ライダーリリカル龍騎  死亡】
※病院のロビーに首が切断された神崎優衣の死体が放置されています。


【1日目 深夜】
【現在地 H-6 病院(ロビー)】
【キース・レッド@ARMSクロス『シルバー』】
【状態】健康
【装備】対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(6/6)@NANOSING
【道具】支給品一式×2、対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカルの予備弾(30発)@NANOSING、レリック(刻印ナンバーⅦ)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(神崎優衣)、ランダム支給品1~3
【思考】
 基本:キース・シルバー(アレックス)と戦い、自分の方が高みにある事を証明する。
 1.シルバー(アレックス)及び『ベガルタ』『ガ・ボウ』の捜索。
 2.1を邪魔するものは容赦なく殲滅する。
 3.できるだけ早く首輪を外したい。
【備考】
 ※第六話Aパート終了後からの参戦です。
 ※キース・シルバーとは「アレックス@ARMSクロス『シルバー』」の事ですが、シルバーがアレックスという名前だとは知りません。
 ※神崎優衣の出身世界(仮面ライダーリリカル龍騎)について大まかな説明を聞きました。
 ※自身に掛けられた制限について多少把握しました。



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GAME START キース・レッド Next:ちぎれたEndless Chain
GAME START 神崎優衣 GAME OVER






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