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D.C. ~ダ・カーポ~ SURVIVE ◆HlLdWe.oBM




時刻はそろそろ夕日が沈むかという頃。
普通の部屋なら西日が窓から差し込み空に浮かぶ夕焼けを見られるはず。
だが残念ながらこの部屋には窓はなく、従って部屋全体は薄暗い。
僅かに設置された天井の照明と周囲に展開された無数の空間モニターだけがこの部屋に明るさを提供している。
そこそこ広い部屋にも関わらず薄暗いのはこれでは仕方ないと言える。
もっとも仮にこの部屋に窓があったとしても夕日を拝む事ができたのかは甚だ疑問ではある。
なにせこの部屋がある場所は少々特殊だからだ。
総勢60人の参加者による殺し合い――別名『デスゲーム』
その開催を画策した者達が腰を据える、例えるなら『城』だからだ。

「――ッ、使えないわね」

そんな中にある一室でデスゲームの首謀者プレシア・テスタロッサは不満げに愚痴を吐き捨てていた。
その身に纏うのは部屋の雰囲気と同じ闇を暗示する黒の衣装、眉間には苛立ちのためか皺が寄っていた。
そして正面に展開された空間モニターの一つがその顔を仄かに照らす。
だがそれがより一層プレシアの表情に浮かぶ影を濃くしていた。
そこには最強の吸血鬼・アーカードをリニスに率いられた最強の仮面ライダー・オーディンが囲んでいる様子が映し出されていた。
現在その映像も含めてプレシアを囲むモニターの約7割がミラーワールドの様子を逐一映し出していた。
そしてそのいずれにおいても大規模な戦闘が繰り広げられていた。
AMRS同士の死闘、アンデッドの三つ巴、光を支配せし太陽の神と蘇りし聖王、そもそもの元凶と憎悪の仮面ライダーと雷神。
誰も彼も生き残っている参加者の中でも一癖も二癖もある参加者ばかりだ。

「やはり連れ込まれた参加者は全員一筋縄ではいかないようね」

実際にこの状況になってプレシアは改めてミラーワールドの厄介さを実感していた。
実のところプレシアは事前の調査でこの事態が起きる可能性を知っていた。
だが現実問題としてこの状況を作り出せる条件が限られていたために元より軽視していた経緯がある。

その条件とはミラーワールドと仮面ライダーの情報に精通して且つ実際にカードデッキを手に入れる事。

実際問題として全参加者の中で前者の人物に該当するのは浅倉威だけだった。
他に同じ世界から連れてきた八神はやてと神崎優衣はその性格から実行するとは考えられなかった。
しかも今回のような状況はそれこそ仮面ライダーとしてライダーバトルに参加していた者ならではの発想。
だからなおさら無理だと考えていた。
後者に関しても大多数の参加者は強大な力を持つカードデッキを易々と浅倉に渡すはずがなかった。
しかもあの必要最小限しか記載されていない説明書だけで『ミラーワールドに参加者を引きずり込む』という戦法を確立できるとは思えなかった。
実際に頭脳明晰な者は何人かいたが、結局予想通り誰も気づく事はなかった。

当初カードデッキを支給品から外すという案もあったが、殺し合いを促進させる道具として最適だったので結局は採用したのだ。
さらに万が一という事も考えてミラーワールド内には脱出用として大量にタイガのデッキの複製を説明書付きで散りばめておいた。
元々複製のデッキにはミラーワールドを出入りする機能はないが、今回のデスゲームに際して可能にしておいた。
ただしこのデッキはミラーワールド内でしか存在を保てないように調整しておいたので、もしこれで脱出してもさらにデッキを奪い合うという面での殺し合いを加速させる事が期待できた。

「それなのに、それもこれも、浅倉のせいで全てが台無し!!!」

ミラーワールドに関してこのような仕掛けを用意したのはもちろん理由がある。
そう全てはミラーワールドから参加者を早期に脱出させて『とある事実』に気付かせないため。
その危惧も含んでのカードデッキ投入だった。
だが数人程度なら想定はしていたが、今回の浅倉の戦法はさすがに予想外だった。
一気に12人しかも各々目の前の戦闘に掛かりきりになる始末。
これでは複製のデッキを探すどころか、いつ誰が『とある事実』に勘付いてしまうかもしれない。

「放送の時間も近いのね……ったく、こんな状態で放送なんてできるわけないわ」

ふと時刻を確認すると、もうそろそろ放送の時間に近づいている事に気が付いた。
リニスが手間取っている以上、あまり悠長な事も言っていられない。
早期にこの浅倉による祭りを終わらせなければデスゲームの存続が危ういのは明白だ。

「……背に腹は代えられないわね」

そしてデスゲームの主催者は静かに決断を下した。


     ▼     ▼     ▼


「喉が……渇く、血が……」

吸血鬼の眷族と化したLの口から洩れる言葉はおよそいつもの彼とは思えないものだった。
今のLには最早聡明だった頃の面影はほとんどない。
もうすでに喉の渇きを自覚してからどれほどの時間が経ったのか定かではない。
外では夕日がそろそろ沈みかけて会場を赤に染め始める時間だというのにLは身体の奥から湧き上がるある衝動に苛まれていた。
それは異形の怪物である吸血鬼となった代償、すなわち吸血衝動。
だが天才的な頭脳を持つ探偵でも正しい吸血衝動への対処法に心当たりがあるはずもなかった。
一つ分かっている事はこのまま外に出て人に会えばもう自分を抑える事は出来ないという事だけ。
だからLは必死に自分を抑えて地上本部内に身を留めているのだ。
あるいは怪我による出血多量でなければこの事態を回避できたのだろうが、そんな事を考えても詮無き事だ。
さすがにこの状態はL一人でどうにかできるものではない。

「……どんな天才でも一人では、世界を変えられません……ですか」

それは確か『救うべき人のそばにいられるように』と願って名付けた少年に言った言葉だ。
そして確かあの時はこう続けたはずだ。

――しかしそれこそ素晴らしいところなんですね。


     ▼     ▼     ▼


「このっ! なんでっ! 当たらっ! ないのよっ!」
「はぁ……イライラさせんなよ……」

つかさの死の元凶である王蛇である浅倉の呆れ具合はひどく癇に障るものだった。
だが妹の仇を前にしてキックホッパーに変身した姉の柊かがみの攻撃は全く掠る気配すらなかった。
怒りや憎しみは往々として冷静な判断力を削ぎ、元々のかがみのスペックと相まって攻撃は単調でしかなかった。
しかも蹴りが主体であるはずのキックホッパーでパンチを主体で戦っているのだからなおさらだ。
第一に冷静さを失ったかがみは自身が先程のパンチホッパーとは別の形態であるキックホッパーに変身している事に気付いていない。
これに関してはホッパーの特性を理解していない今のかがみにしてみれば仕方のない事だが。
それゆえに身体へのダメージが同じレベルでも戦いの趨勢は歴然なのだ。

「お膳立てしてやって結局その程度かよ」
「ふ、ふざけないでよ! 見せてあげるわ!」

不遜な言動による明らかな挑発。
だが今のかがみは当然のように乗ってしまった。
そして一気に勝負を付けようと意気込んでクロックアップを発動させようとしたが――。

――Clock up――
――CONFINE VENT――

――無効化の効果を持つ浅倉のカードがそれを阻んだ。
実のところ浅倉はかがみが何をするのかはっきりとは知らない。
だが事前にクロックアップでエネルを吹き飛ばす場面を見た事、挑発に乗って勝負を付けようと意気込む様子。
その二つの要素から何かしてくると予想したので先手を打ってコンファインベントを使ったまでの事だ。
恐るべきは浅倉に宿る戦闘の勘か。

「え、な、なんでよ!?」

だが当然ながらかがみがその事実を知る事はなく、ただ狼狽える事しかできなかった。
命を賭けて戦うはずの仮面ライダーが訳も分からずに取り乱す様。
それは浅倉に失望を抱かせるには十分すぎる反応だった。

「まだまだ俺を楽しませてくれる奴はいるんだ。貴様の相手は終わりだ」

そして浅倉はデッキから1枚のカードを取り出しベノバイザーに装填して。

――STRANGE VENT――

別の姿を変えたカードを一度取り出して再び装填する。
それは先程かがみが行おうとしていた行動。

――ACCELE VENT――

超加速のカード。
当然未だに混乱しているかがみにまともな対応ができるはずもなかった。
辛うじて反射的に拾ったデイパックを盾にする事を実行できただけ。

「グハ――ッ!!」

だがそれはほとんど意味を為さなかった。
あっさりと切り裂かれて舞い散る残骸は盾には程遠かった。
王蛇の超加速で繰り出されるベノサーベルの斬撃の威力は計り知れない。
デイパックを間に挟んでも尚衰えない一撃はヒヒイロノカネの装甲に一筋の大きな傷痕を刻んだ。
さらにその勢いに耐えきれずに背後のビルへと吹き飛ばされてしまった。
そして自分の呻き声とビルの壁が崩れる音を聞きながら背後のビルに背中から激突したところでようやく止まった。
かがみは激突の衝撃でふらつく頭を支えながらキックホッパーの変身が強制解除される様を恨めしげに見つめるしかなかった。

「――ッ……ガァ……あ、あいつだけは……」

だが既にかがみの身体は先程の斬撃で限界に近かった。
いくら仮面ライダーに変身したからといって中身は普通の女子高校生。
しかも浅倉に負わされた傷は元々一般人のかがみにとっては無視できるようなものではない。
だがそんな事は関係ない。
つかさを残酷に殺した浅倉を殺すまで止まる気は全くなかった。
今のかがみは戦いを楽しむ浅倉と同様に半ば精神が肉体を凌駕している状態と言える。

「そうよ、私には、もう――え、これって……」

絶対的な力の差の前にかがみはさらなる絶望に堕ちそうになっていた。
だが妹の復讐のために傷ついた身体に鞭打って立ち上がろうと床に手を付けた時、それを見つけた。
誰かが放置したデイパックの中から零れ出たそれは不思議な色の液体が入った瓶だった。


     ▼     ▼     ▼


「どうした、貴様らの実力はその程度なのか?」

キングは今しがた吹き飛ばした同じくアンデッドであるギラファアンデッドの行方を見守っていた。
彼方に聳えるビルにまた一つ穴が空いてしまった。
もうこれでいくつに壁を壊しただろうか。
そんな疑問を当然抱くはずもなくゼロを演じるキングは相変わらず悦に入っていた。
何も分からないままに手探り状態で実力を発揮できないギラファとジョーカー。
それを体よくあしらう自身に大いに満足していた。

本来ならキング一人でギラファとジョーカーの二人を相手にするのはさすがに難しいものがある。
だがそれはお互いに万全の状態である事が前提だ。
人は未知のものに怯えると云うが、それは万物に多少なりとも通じるものがある。
相手の正体が分からなければどういう対処が適切か判断できず、結果それは迷いとして行動を鈍らせる。
金居ことギラファアンデッドはまさにその状態だ。
そのギラファも何かに気付いたのか、今では大きなダメージは受けないように立ち回っていた。

それに対してジョーカーはゼロを演じるキングがアンデッドであるとジョーカーの勘で悟っている。
だがここでもキングは巧妙だった。
ジョーカーは元々アンデッドを殺す存在であり、当然ギラファアンデッドも例外ではない。
それを利用してキングは戦っている最中にギラファとジョーカーが争う形に誘導して共倒れに仕向けていた。
その策は見事に嵌り実際にギラファとジョーカーのダメージの大半はお互い斬り合って負ったものになっている。

(それにしても調子が良いね、今なら何でもできそうな気がするよ! ヤベッ、これ楽しすぎるって!!)


     ▼     ▼     ▼


(……奇妙だな)

アレックスは何発目かのブリューナクの槍を放ちながら考えていた。
荷電粒子の光に貫かれたビルが倒壊しているが、その影から見知った人影が飛び出してくるのが見えた。
どうやら肝心のキース・レッドには避けられたらしい。
やはり何度も目にしているせいか徐々に避けるタイミングが巧妙になっている気がする。
だが今のアレックスの関心事は別の所にあった。

(そうだ、俺はもう何度もARMSを使用しているのに――)

一瞬の交錯の中で偶然にも目が合った。
それだけで分かった。
おそらくキース・レッドも同じ事を考えているのだろう、と。

(――以前よりも疲れない。それに気のせいか身体が軽い)

きっかけはふとした疑問だった。
お互いこれが最期とばかりにARMSを駆使して戦っている。
だが今回ばかりは何かが違った。
デスゲーム開始から感じていた身体の鈍さや疲れが軽くなっている気がする。
これまでアレックスは自身の不調はプレシアによる制限だと考えていた。
そしてその元凶は自身を戒める首輪だと。

だがこれではまるで――。

(――もしや、力の制限の元凶は首輪ではないのか!?)

自分と同じように探りを多分に交えた失敗作を横目にアレックスは思案を巡らせていた。


     ▼     ▼     ▼


「なのはママを返せ! 返せ! 返せ! 返せ! 返せ! 返せ! 返せ! 返せ! 返せ! 返せぇぇえええ!!!」
「くっ……!!」

天道とヴィヴィオの死闘もまた熾烈を極めていた。
かたや天の道を往き総てを司る仮面ライダー。
かたや古代ベルカ時代に最強と謳われた聖王。
その戦闘が穏便であるはずがない。
だがその戦闘はヴィヴィオが猛攻を仕掛け、カブトが防ぐという一方的なものだった。
聖王の力に目覚めたヴィヴィオが繰り出す魔力を帯びた打撃のラッシュは一発一発の威力は相当なものだ。
だがそれをカブトはただ避けて、時にはクロックアップで距離を空けて、極力ヴィヴィオに攻撃を加えないように対応していた。

(金髪にオッドアイ、そして高町なのはを『ママ』と呼ぶ少女。やはりこいつは……)

カブトに変身した天道にはその人物に一人心当たりがあった。
ヴィヴィオ。
高町なのはが保護したいと言っていた女の子だが、なのはの話によればヴィヴィオは幼い子供のはず。
どう見ても年齢が合わない。

「貴様ぁぁぁ、なのはママを……返せぇぇぇ……」
「俺の名前は貴様ではない。天の道を往き総てを司る男、天道総司。お前の名前は?」
「……ヴィヴィオ」

戦闘の最中にできた空隙。
お互い距離を置いて次のステップに進むためのチャージの時。
そこで聞いた答えは半ば天道の予想したものだった。

「やはりそうか、いいかよく聞け。高町なのはは――」
「うるさぁぁぁあああぃぃぃぃぃいいいいい!!!!!」
「……駄々っ子め」

だが悠長に説得もしていられない。
一番厄介なのは時折展開される虹色のオーラ。
牽制のつもりで投擲したスティンガーがあっさり破壊されたところからかなり高エネルギーの代物である事が分かる。
しかも浅倉に投げ飛ばされた時に負った傷がここにきてじわじわと天道の体力を奪っている。
今こうしている間も特に頭部に負った傷からの流血で視界が霞んでくる。
時間が経てばますます不利になる。
ヴィヴィオと話を付けた後には事前に抜いておいた『SEAL―封印―』と『CONTRACT―契約―』で王蛇のミラーモンスターに対処しなければいけないというのに。

「これでぇぇぇえええええ!!!!!」

王蛇の方に気を取られた一瞬の隙。
その好機を聖王として覚醒したヴィヴィオは見逃さなかった。
セイクリッドクラスター。
それは一つの塊にして撃ち出した魔力弾を対象付近で爆散、ショットガンの如く小型弾殻をばらまいて範囲攻撃を行う圧縮魔力弾。
聖王の証である虹色の魔力を帯びた4つの魔力弾がカブトの周囲で爆散して、放出された弾殻が縦横無尽に襲いかかってくる。
防御か回避か。
カブトが選んだのは――。

「チッ、プットオン!」
――Put On――

――防御、つまりライダーフォームからマスクドフォームへと戻るプットオンだった。
大抵の攻撃を避けるだけならクロックアップで十分だ。
だが今回のような範囲攻撃の場合、クロックアップしても避ける事は出来ずにむしろ自ら突っ込んでダメージを深めてしまう。
だからプットオンでマスクドアーマーを再構築して防御力を上げて凌ごうという考えだ。

「終わりだ――ッ!!」

だがヴィヴィオの攻撃はそれで終わりではなかった。
セイクリッドクラスターが降り注ぐ中、ヴィヴィオは追撃を仕掛けてきた。
プラズマアーム。
聖王の魔力を変換して生み出した虹色の電撃を腕に纏わして放つ拳打による一撃。
セイクリッドクラスターの驟雨から身を守っている最中だったカブトに改めて防御を取る猶予はなかった。

「ぐ、ぉ」

刹那の呻き声をその場に残してカブトは近くにビルに叩きこまれていた。
だが辛うじて防御に成功したところでヴィヴィオの力は十分に把握した。
頑強なヒヒイロノカネの装甲しかも蛹を模したマスクドフォームにヒビが走っている事が一撃の重さを物語っていた。
もしもライダーフォームなら防げたかどうか分からない。

「まだま――ガァ――ッ……!?」

だがそれでも傷ついた身体には負担が大きかったらしい。
既に頭部からの出血は致命的なものにまで達しようとしていた。
だがまだ倒れる訳にはいかない。
天道にはまだやるべき事が残っているからだ。
だが現実は非情にも厳しく――。

「く……っ……ぁ……」

――コンディションの差は如何ともしがたくついにカブトはその場に倒れてしまい、変身は解除されてしまった。
なんとか立ち上がろうとした天道だがその強い意思とは裏腹に意識は遠ざかる一方だった。
だがその時伸ばした手の先に何か冷たい感触があるのに気づいた。
それはデイパックから零れ出た中身が半分ほど減った瓶だった。

(なんだ、これは――)

だがそれが何か考える間もなく天道は意識を手放してしまった。


     ▼     ▼     ▼


「さてと、次はあいつだな」

キックホッパーを倒して次なる獲物を求める王蛇の目に映るのはジェノサイダー・アレンジと対峙している鉄犬の主、神エネル。
その戦闘は人間では到底実現できないようなまさに一種の神の戦いの領域のようであった。
鉄犬が動くたびに周囲の地面や建造物はその灼熱と電撃でことごとく塵芥と化している。
一方のジェノサイダー・Aも負けじと龍の首から火炎を、蛇の首から強酸を、それぞれ容赦なく雨のように浴びせかけていた。
まさに地獄絵図。
今からその真っ只中に飛び入ろうとしている王蛇がこの光景を見て戦意を高ぶらせないはずがない。
王蛇――浅倉――は最高にハイな状態だった。

「はぁ、いいぜ! それならこっちも相応の姿でやらせてもらうぜ!!!」

王蛇の手がデッキに伸びて自然と1枚のカードを抜き去る。
そのカードが司る力は『強化』、属性は『烈火』――神崎士郎が特別に作った3種のカードの1つ。
そのカードを手にした瞬間、左手の杖型召喚機・牙召杖ベノバイザーはコブラの顔を模した銃型のベノバイザーツバイへと姿を変えた。

――SURVIVE――

そして新たな召喚機にサバイブのカードを挿入すると、王蛇の身体は炎に包まれて、姿を変えていった。
王蛇の顔はより残虐さを増し、肩は後ろへと大きく張り出し、鋭利な棘を見せつけている。
さらに腹部に現れたベノスネーカーを模した恐ろしげな貌がこれから向かう戦場を睨みつけていた。
全ての変化を終えて王蛇の変貌を確かめる浅倉は満足していた。
なぜこのようなに変貌したかという理由には元より関心はない。
浅倉の関心は唯一つ。
今から参加する怪物同士の戦場。

そこで視線を戻してみれば戦場にも変化があった。
先程までは両者共に五分五分という形で拮抗していた。
だが今はサバイブの影響でさらに禍々しい姿に強化されたジェノサイダーがその破壊的な力で鉄犬を押し始めていた。
ここからでもなぜ双帝が突然進化したのか分からずに焦る鉄犬の主の顔がチラチラと見える。

「はははっ、分からねえなら教えてやろうか!」

――FINAL VENT――

王蛇サバイブがカードをベントインさせると、今まで鉄犬と組み合っていたジェノサイダー・Aは距離を作って主を待った。
その主たる王蛇サバイブは双帝の背を一気に駆け上がり、鉄犬の遥か上に飛び上がり、エネルを見下ろしていた。
次の瞬間、元ドラグレッダーの頭部から火炎が、元ベノスネーカーの頭部から強酸が、それぞれ吐き出された。
王蛇サバイブは急降下しながら、右足に火炎を、左足に強酸を巻き付けてエネルに垂直蹴りを浴びせようとする。
エネルも当然対応しようとした。
四肢のうち両手を黄金犬から離してエール・トールを王蛇サバイブ目がけて放ったのだ。

だがエネルは知らない。
このファイナルベント『ストームスディ』の恐ろしさはこの後に待ち構えている事に。
蹴りを受け止めれば最期、その衝撃で解放された火炎と強酸は大規模な粉砕と灼熱と溶解が合わさった地獄の渦を発生させる。
さらにジェノサイダー・Aの胸部に全てを飲み込むブラックホールが姿を現して、舞い上がった全てを無に帰すのだ。

この技が放たれたら最期、逃れる術などあるはずがない。

(はははっ! やっぱりここは祭りの会場だな!!!)


     ▼     ▼     ▼


「……もう数えるのも億劫だな」

そう呟いたアーカードは何人目かのオーディンを屠っていた。
腹から背に突き抜ける貫手が変身の解けた量産型フェイトに死を与えている。
だが量産型フェイト一人死んだところで他のオーディンに大した変化はない。
なぜならオーディンに変身した時点で量産型フェイトの人格は既にない。
そこにあるのはオーディンのカードデッキに入力された人格を元に動く人形に過ぎない。
主であるプレシア及びリニスの命令を聞く事はあっても、それ以外の出来事に心を動かされる事はない。

「つまらんな」

確かにオーディンは強いが、無敵というわけではない。
実際に他の仮面ライダーに倒された事もある。
その原因が今まさに量産型フェイトがアーカードに殺されている理由である。
すなわちバトル経験の不足。
それがオーディンの唯一にして無二の弱点だ。

(このような“空っぽのブリキの兵隊”で本気で私を止められると考えたのか? 興醒めだ――ん?)

あれだけの大軍を相手にしていて注意が逸れたが、いつのまにかリニスの姿が見当たらない。
だが姿を消して奇襲を仕掛けるなら、それはそれで構わない。
逆に返り討ちにしてやろうという気になる。

だがその直後、オーディン達の動きに変化があった。

――ADVENT――

「ほう……これは……」

――ADVENT――――ADVENT――
――ADVENT――――ADVENT――

「いやはや、なんとも……」

――ADVENT――――ADVENT――――ADVENT――――ADVENT――
――ADVENT――――ADVENT――――ADVENT――――ADVENT――
――ADVENT――――ADVENT――――ADVENT――――ADVENT――
――ADVENT――――ADVENT――――ADVENT――――ADVENT――

「……荘厳な光景だな」

不死鳥ゴルトフェニックス。
生き残っているオーディン全てが呼び出したその群れは神々しいまでに輝いていた。
そして不死鳥を背に合体したオーディンはまさに黄金の天使だった。

『GUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO―――――!!!!!』

そして不死鳥達は己の役目を果たすために飛翔する。


     ▼     ▼     ▼


不死鳥は運ぶ。
ただ命じられるままに。
そこに例外はない。

不思議な薬で回復して仇を求める女子高校生も。

まだまだ楽しみ足りない偽りのゼロも。

不意に訪れた転機に感謝するアンデッドも。

戦意を滾らせ暴走するジョーカーも。

自ら引導を渡すと決めた相手を前にした帽子屋も。

己の尊厳を確立しようとする幻獣を宿す者も。

起死回生の道具を手にしながら気絶した天の道を往き総てを司る男も。

愛する母の行方を問い詰めようとする聖王も。

不服ながらもどこか満足している雷神も。

主催者の元へ辿り着こうと敵を屠り続けた吸血鬼も。

全て不死鳥が運ぶ。
全てはあるべき姿に戻すために。


     ▼     ▼     ▼

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