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Zに繋がる物語/白銀の堕天使 ◆7pf62HiyTE




【2】 Powerless





 轟音が響き渡ると共に、スバルは意識を取り戻した。



「ん……んっ……」



 彼女のいる場所はC-9にあるジェイル・スカリエッティのアジト、その内部にある戦闘機人の修復を行う事の出来る生体ポッドの中だ。
 少し前、こなたの仇討ちをする為はやてを殺そうと仮面ライダーデルタに変身した柊かがみを止める為交戦したものの惨敗した。
 だが彼女の凶行を止める為、そしてなのは達と共にこのデスゲームから脱出する為、戦闘機人であるスバルはここの施設を使い自身の身体の治療……いや、修理を行っていた。
 ポッドに入った彼女はこれまでのダメージも大きかったせいかすぐに意識を手放した。そして先の轟音と共に意識を取り戻したのだ。
 スバルはすぐさまポッドから出て脱ぎ捨ててあった服に再び袖を通す。
 身体の調子は完全では無いものの戦えるぐらいには回復した。特に左腕の骨折も直ったのが大きい。



「あれからどれぐらい経ったんだろう……」



 だが不安要素も数多い。これだけの治療を行うのにどれだけ時間を費やしたのかがわからないのだ。
 一応、約26時間程前、負傷した戦闘機人がここの施設を使い約1~2時間程度で完全回復した実績がある。とはいえスバルにはそれはわからない話だ。
 何にせよ、これ以上治療に費やしている時間は無いという事だ。



 服を着たスバルはレヴァンティンを起動し自身のバリアジャケットを展開する。これでとりあえずの戦闘準備は完了した。
 だが、戦場から離れていた時間は決して短くはない。果たして戦況はどうなっているのだろうか?

 把握している範囲ではかがみを殺そうとしていたはやてに対しなのはが対峙していた。
 2者の戦いがどうなっていたかについては自身の戦いに集中していた為把握していない。
 しかし自分達の戦いに影響が及んでいなかった事から考え恐らくなのはははやての矛先が向くのを避ける為戦場を移しながら戦ったのだろう。
 両者の実力は殆ど同等、おまけに10年来の付き合いという事も踏まえ互いの性格や手の内は殆ど把握済だろう。
 故に、両者の戦いがどうなるかは全く不明。なのはがはやてを止めている可能性もあるし、はやてがなのはを倒している可能性もある。
 そして何より共倒れになっている可能性も否定出来ない。
 勿論、散り散りになっていたヴァッシュや天道、危険及び謎の人物であるキング、アンジール・ヒューレー、金居が介入した事で泥沼に陥っている可能性もある。

 だが、如何なる状況であったとしてもはやて達がいる所にかがみが向かっている事は確実だ。
 スバルとしてはかがみにはやてを殺させるつもりもかがみにはやてを殺させるつもりもない。何としてでも最悪の結末を迎える前に止めに向かいたい所だが――





「あれ……?」



 すぐ近くにある物が落ちている事に気が付いた。スバルはそれを手に取り、



「これ、ギン姉のリボルバーナックルだ……」



 それはスバルの姉ギンガ・ナカジマのリボルバーナックルであった。スバルの持つ右手用と違い彼女のは左手用だ。
 というより元々リボルバーナックル自体が彼女達の母親クイント・ナカジマの遺品であり、右手用をスバルが、左手用をギンガが使っているわけだが。



「ポットに入る時には無かったと思うんだけど……」



 スバルが考えたのは、アジトに元々置かれていた。もしくは放置されていた可能性だ。
 だがよくよく考えてみれば、既に何人もの出入りがある筈なのにずっと放置されていたのは奇妙な話だ。
 それ以前に幾ら治療優先とはいえ、リボルバーナックルの存在を見落とすなど注意力散漫にも程があろう。
 何にせよ、これである程度本来の戦い方は可能。幸い骨折の治療は済んでいる為使用にも支障はない。これで何とか戦える筈だ。





 準備を済ませたスバルは大急ぎで出口へと向かう。いち早く戦場へと戻る為に――





 そして、出口のすぐ傍に“それ”はあった――





「え……何……これ……?」




 “それ”をもっとも分かり易い言葉で言えばバイク――
 だが、“それ”は並のバイクよりもずっと巨体で、バイクというよりは兵器としか言いようが無かった。
 “それ”の名はジェットスライガー、スマートブレインが自社の作り出した仮面ライダー3体の為に作った超絶バイクである。





 だが、スバルにとってはそんな事などどうでも良い。何故ジェットスライガーがここにあるのかが問題だ。
 そんな中、ジェットスライガーの前に何かの残骸が落ちているのを確認した。





「これって……もしかして……デルタのベルト?」





 そう、それは先程スバルと戦ったかがみを変身させていた仮面ライダーデルタのベルトの残骸である。
 だが、何故残骸だけなのか? 着けている人物は何故いないのか?
 頭の中で疑問が渦巻く中、スバルは今まで何故か視線を向ける事が出来ないでいたジェットスライガーの操縦席に視線を向けた。





 ジェットスライガーの存在感故に気付けなかったのか――
 もしくは、待っている現実が受け入れがたかったが故に視線を背けていたのか――





 スバルは遂に『それ』を確認した。そう、『それ』なのだ――『何者か』ではないのだ――





「か……がみ……さん……」





 操縦席には、背中をもたれたままのかがみが眠る様に座っていた。すぐさまスバルはかがみに駆け寄り抱き抱え呼びかける。





「かがみさん、かがみさん! 目を開けてください!!」





 必至に呼びかけてもかがみは何も応えない。





 それもその筈だ。既に彼女の身体は冷たくなっており、心音も止まっていた――





 そう、柊かがみは既に死んでいたのだ――





「そんな……どういう事……?」





 スバルには何が起こったのか理解出来なかった。



 恐らく、あの後かがみははやての所に向かった筈、それだけは間違いない。
 だが、何故去っていったかがみがわざわざ戻り死んでいたのだろうか?
 そんな中、スバルは操縦席の下に何かが置かれているのを確認した。
 それらから考えある仮説を導き出した。
 かがみははやてを殺す為に出て行った。恐らく、目的を達成するまで戻る事は無いはずだ。
 つまり、かがみははやてを殺害する事に成功し戻ってきたという事だ。操縦席の下に置かれているのははやてを殺す事で手に入れたボーナス支給品というわけだ。

 では、かがみは何故死んでいたのだろうか? はやてと相討ちになったならばここに戻ってくる事など有り得ない。
 ここが戦場になっていたのであれば戦いの音が聞こえていたはずだし、何より近くにはやての遺体が無い為それも無い。

 その最中、かがみの遺体にあるものを見つけた。
 それはかがみの両手首及び両足首、そして腹部から大量の出血があった事だ。
 聞いた話では、これは数時間前にはやてによって傷付けられた傷で、なのはと天道がそれを治療したらしい。

 それを見る内にスバルはかがみ死亡の原因に気が付いたのだ。



「まさか……あの戦いで……」



 そう、自分との戦いにより、傷口が開いて再出血を起こしたという事だ。前述の通り治療はしたが、完全回復には至っていなかったという事だ。
 その傷が開いた事で出血し、失血した事でかがみは死に至ったという事だ。つまり――


「あたしが……あたしがかがみさんを……殺したんだ……」



 決定的な証拠はもう1つある。それが先程のリボルバーナックルだ。それはかがみを結果的に殺した事でスバルの元に転送されたというわけだ。



 スバルは受けたショックは計り知れない。当然の事だ、助けるつもりだった人物を結果として殺してしまったわけなのだから――
 だが、あの時はかがみを倒すつもりでいかなければ止められなかった故、全力で戦うしかなかった。もっとも全力で戦っても止められなかったわけだが――
 勿論、状況的に考えてある意味では仕方のない話ではある。だが、その事実からスバルは俯き動けないでいた。



 助けたい意志を持っても、結局の所誰も助けられなかったのだから――



 勿論、ここだけではない。そもそもその前段階で致命的なミスを犯していたのだ。
 もし、ホテルにいた段階で千年リングを粉砕していればリインが死ぬ事も無かった筈なのだ。
 あの場でリインを死なせなければはやてが広域攻撃を放ち仲間を散り散りにさせる事もなく、更にこなたを死なせる事もかがみが復讐に堕ちる事も無かった筈なのだ。
 なのは達はその事を強く咎めなかったが自身の行動が最悪な結果を招いた事実に変わりはない。



 体は戦える程回復しても、心が戦えなくなってしまったのだ――





 そんな中、





「どうして……どうして……どうしてそんなに……



 満足そうな顔しているんですか――?」





 かがみの死に顔は信じられない位に満たされた顔をしていた――





 何にせよ、かがみをこのままにしておけない為、ジェットスライガーから降ろそうとしたが――





 操縦席に血で何か書かれているのを見つけたのだ――





「これは……」





 それはかがみがスバルに遺した最期の――










【5】 Lucifer





 『彼女』の頭は恐ろしい程に冷えていた。
 アジトを出た『彼女』――親友を殺した悪魔に復讐する為に仮面ライダーデルタの力を得て魔人――
 いや、悪魔を殺すという意味では天使といった方が良いだろう。とはいえそれは地に堕ちた堕天使ではあるが――
 堕天使となった『彼女』はすぐさま悪魔を探す。ジェットスライガー到着まで待つべきではあったが、彼女はそれを待たず行動を開始した――



 もしかすると、既に『それ』に気付いていたのかも知れない――



 そして程なく、轟音と共に西方向から猛烈な突風が吹き込んできた。それは恐らく先程悪魔が使ったあの技だろう。
 故にその方向に悪魔がいると判断し其処へと向かった。


 それが、自分を信じてくれた者達に対する裏切りなのは理解している。同時に、きっと自分を信じ助ける為に悪魔を止めようとしている者は今の自分の凶行を止める筈だ。
 それを裏切る事もそうだが、彼女の友人である悪魔を殺す事で彼女を悲しませる事が全く心苦しく無いといえば嘘になる。
 それでもこれだけは譲れない。他の皆にだって譲れないものがあるのと同じ様に――

 仇討ちや復讐など誰も望まないのは理解している。そう、これは自分の為の行動でしかない。只の自己満足だという事だ――

 勝算などあるわけがない。体は既にボロボロ、一方の悪魔は先程自分が倒した相手よりも圧倒的に強い――それは先の暴風を見ても明らかだ。
 それでもこの想いだけは譲れない。



『本当に強いのは――!』



 脳裏に浮かぶのはホテルで戦った人の姿を騙った緑色の怪物の言葉――



『――人の、想いだッ!!』



 そう言って、怪物の力を使うことなく想い無しに只得ただけの力に溺れていた自分を打ち破った。



 ああ、まさしくそれは正しかった。今自分を突き動かしているのはベクトルこそ真逆かも知れないが確かに人の想いであるのだから。



 その想いを通す為にも絶対に負ける事は出来ない。だからこそボロボロの体を引きずってでも行くのだ。
 力が足りないならば命を原動力とすれば良い、命でも足りないならば想いを原動力とすれば良い、
 だからこそ、もう1度だけチャンスを与えてくれと――



 堕天使が暴風によって荒廃したエリアに入った瞬間、桃色の光が直撃するのが見えた。
 ああ、きっと悪魔を止める為に彼女が撃ったのだろう。文字通り全力全開の――
 彼女は悪魔も堕天使も助けるつもりだったのだろう。そんな事は百も承知だ――



 だが、堕天使は敢えてそれを裏切るのだ――



 爆心地には悪魔がいた――



 それは最後に見かけた時とは違い随分と見窄らしい姿だった。武器と右手を失い何かの本と宝石に懇願している姿だった――
 嗚呼、こんな奴に我が友は殺されたのか――
 空しさを感じないではないが、止まるつもりはない――






 悪魔の力を奪うべく――堕天使は迷うことなく本と宝石を撃ち抜いた――










【4】 Egoist





「……柊、かがみ」
「見つけたわよ、八神はやて」



 八神はやてはデルタを見上げながら憎悪の目を向けていた。



「何て事をしてくれたんや……何をしたかわかっているんか?」
「何かは知らないけど、それで私やなのは達を殺そうと思ったんでしょ? そんな事素直にさせる馬鹿もいないわよ、只の本にそんな力あるかどうか知らないけど」
「これは只の本やない! 私達家族にとって大切なものだったんや! それを……」



 しかし、何とか冷静さを取り戻し、



「……スバルはどうしたん?」
「今更私の言う事を信じるの?」
「答えろや……」
「心配しなくても殺してはいないわ。暫くは動けないと思うけど……もっとも、貴方には関係ない事よね。
 ところで、その姿は……いや、やめときましょ、大方の予想は付く事だし」



 そう言いながらデルタはデルタムーバーを構える。それを見ながらはやては、



(本当に最悪な事態や……コイツがスバルをどうしたにせよここにいる以上スバルは負けたってことに変わりはない……
 かといって、こんな状態じゃ勝てるわけなんてない……
 くっ、こなた殺した時に得た回復液少しでも温存しとくべきやったわ……何か方法は無いんか……?)



 この局面を切り抜ける方法を考えていた。約2時間ぐらい前は魔力も体力も万全で武器も揃っていたのに今じゃその全てが失われ右手すらも無くなった状態だ。
 放っておいても死ぬ可能性もあるのに、戦う事など出来るわけもない。だが、



(いや……まだ方法はある……さっき私をなのはちゃんが撃ち抜いたってことはまだなのはちゃんは無事や。
 なのはちゃんのことやから、私を拘束する為にすぐに向かってくる筈や。なのはちゃんさえ来ればまだ何とかなる……
 何とかして時間を稼ぐんや……)



 高町なのはが到着すれば、なのはは十中八九デルタを止めると共に自分を助ける。そうなれば幾らでも逆転のチャンスが出来るという事だ。



(なのはちゃんが言っていたな。確かコイツがデルタに変身した理由は……それが確かなら……)



 正直、この悪鬼に頭を下げる事すら耐え難い屈辱だ。それでも、目的を果たす為に敢えてはやては立ち上がり、



「こなたのこと……すまんかったな……」
「……!」



 泉こなたを殺した事についてデルタに頭を下げた。それに反応してかデルタの動きが一瞬止まる。



「今更言っても信じて貰えるとは思えないけど、こなたを殺すつもりは無かったんや……まさかあそこでこなたが飛び出して来るとは思わなかったんや……」



 そう、少なくてもその事は嘘ではない。
 あの時はやての位置からはこなたの姿は確認出来なかった。故にこなたを殺した事に関しては完全に事故だったのだ。



「あの時はリインを殺されたお陰で色々と気が動転していたんや、だからこなたが死んでも悪いなんて思えなかったんや。
 けど、自分でも馬鹿な事したと思ってる……本当にごめんな……」



 あの時はリインフォースⅡを惨殺されて感情的になっていたのも事実だ。だからこそこなたが死んでもそれを悪いとは思えなかった。
 だが、許されざる事に変わりはない。だからこそはやては謝罪を続ける。



「そう……」



 はやての謝罪を聞いて、デルタはわかってくれた様な素振りを見せる。



(よし……何とか踏みとどまってくれた……)



 だが、はやては心の底から謝罪をしているわけではない。確かにこなたを殺した事に関しては悪かったと思っている。
 しかし、はやてにとってこなたの犠牲など今後に尾を引く事項ではない。
 はやてにとって重要なのは家族を助け出す事、その為には何を犠牲にしても立ち止まるつもりは全く無い。
 こなたの犠牲もその過程で発生する犠牲の1つでしかないのだ。
 罪の償いなど全てが終わった後で幾らでもやってやる。プレシア・テスタロッサの技術を手に入れれば幾らでも取り戻せる。
 だが、自分の命が無くなればそれも達成出来なくなる、だからこそ今は生き残る為に謝罪のポーズを取るのだ。



(なのはちゃんが来ればチャンスが出来る、戦うならその隙に離脱すればいいし、戦わないなら隙を見て殺せば良い……こんな所で終わってたまるか……)



 そう考えた矢先、何かの音が響いてきた。



(よし、なのはちゃんや! これで……)



 そう思い、邪悪なる笑みを浮かべたが、







「言いたいことはそれだけ?」







「え?」







 その瞬間、デルタムーバーからの銃口から光線が発射された。







 それはさながらほんの数時間前展開されたやりとりと似ていた。
 違うのは撃つ側と撃たれる側が逆になった点、
 そして、あの時とは違い銃身を掴む者がいなかった点だ。故に――







 ――光線は何事もなくはやての左手に命中した。







 デルタは更に2度引き金を連続で引き、右足、左足へと連続で光線を撃ち込んだ。







「がっ……はっ……」







 はやてはそのまま倒れ込んだ。そして見た、今やって来たものを――







「な……なんなんや……それ……」







 それはバイクとも戦車ともつかない異様な乗り物だった。



「あんたをブチ殺す為の堕天使の翼って所ね。もっとも、もう必要無いみたいだけど」



 デルタは何事も無かったかの様に言い放った。



(そういやユーザーガイドにそんな事も書いてあった様な……くっ、そんなんでくるんやったらもう少し温存して戦うべきやったわ……)



 仮の話だがスターライトブレイカーの直撃を受けなかったとしても、消耗した状態で先の乗り物ジェットスライガーに乗ったデルタ戦うのは厳しかっただろう。
 故にはやては自身の判断の甘さを呪った。もし、勝負を急がずもう暫くなのはと静かな小競り合いを続けていれば十分に対処出来た。
 だが、今となっては後の祭り、両手足からは血が流れ出しておりもはや立つ事すら出来なくなった。



「運良くなのはが来れば助かるかもしれないわね……」



 デルタは何処かで聞いた様な台詞を口にした。しかしその時とは違い更に言葉を――



「でも、そんな可能性だって与えてあげないわ……バレバレなのよ、アンタの狙いはね!」
「なっ……」



 デルタははやての目論見を見破っていたのだ。



「大体右手を失った時点でアンタは死にかけ、残った道具もさっき私が壊した、そんな状況で助かる方法なんて誰か助けに来てくれる事なのは少し考えれば誰だってわかるわよ!
 おおかたなのはが来てくれるのを期待していたんでしょ?」



 先程までの静かさとは違い力強い声で言葉を紡いでいく。



「そういえば来る途中でヴァッシュの死体見つけたけどアレもアンタの仕業よね? 何でヴァッシュを殺したの?」
「アイツはリインを殺した……だから仇を取ったんや……それについては全く悪いとは思ってへん……」



 そう、ヴァッシュ・ザ・スタンピードはリインを殺害した。だからこそその仇討ちをした。全く後悔していない。



「ふぅ……アンタ、ヴァッシュの事全く理解していなかったでしょ? いや、そもそも理解するつもりもなかったんでしょうね……」
「どういう意味や……?」
「ヴァッシュはスバルやなのは達同様恐ろしい程のお人好しよ? そんなアイツが何の理由も無しに人殺しするなんて思っているの?」
「アイツは凶悪な力を持っていたわ……それでフェイトちゃんを殺したって言っていたし……大方それがまた暴走したんやろ……」
「だったら無力な私殺すよりも先にヴァッシュ殺せば良か……そうだ、もう1つだけ確認させて。千年リング誰が持っていたか覚えている?」
「は?」
「答えないんだったらそれでも良いわ。このまま撃ち殺すだけだから」



 そう言いながら更に腹部に光弾を撃ち込む。



「がばっ……せや……確か……アイツが持って……まさか……」



 この瞬間、はやてはあの瞬間起こった事の真相に気が付いた。
 千年リングの中にはバクラという凶悪な魂がいたらしい。はやてはヴァッシュからそれを聞かされていた。
 恐らく自分達が揉めている隙を突いてヴァッシュの体を一時的に乗っ取りリインを惨殺したのが真相だろう。



「せやけど……乗っ取られたりしないって言っていた筈なんや……せやから……」
「それでずっと持たせていたの? 有無を言わさず私を排除しようとしていたアンタにしては随分とお粗末な話ね。
 あのお人好しのスバルが警戒していたの知らないの? アイツ、私が殺し合いに乗っていたのはバクラのせいだって思っていたわよ。
 それ聞いているんだったらもっとちゃんとした対応出来ていたと思うけど?」
「なんや……それじゃまるで私が悪いみたいや……」
「みたいじゃなくてそうだって言っているのよ。
 ハッキリと言ってやるわ、リインを殺したのはヴァッシュじゃなくてアンタよ、八神はやて」



 自分が助けたかった家族を殺した? それははやてにとって耐え難い現実であった。その言葉に衝撃を受けないわけもない。



「な……なしてそんな事になるんや……!?」
「わからない? バクラの存在を知っていてそれを放置したのはアンタ、
 バクラの危険性を知りながらその時無力だった私の方にかまけていたのもアンタ、
 そしてなのは達と揉めた事でバクラに付けいる隙を作ったのもアンタ、
 全部アンタが原因じゃないの?」



 勿論、バクラの存在を甘く見ていたという意味ではスバル達も同罪ではあったし、同時に揉める原因が自分自身にあった事は理解している。
 それでも敢えて其処には触れずはやての落ち度を突き付けていく。



「巫山戯るな……そんなアホな屁理屈が通るかい……」
「ええ屁理屈よ、でもアンタに責任が全く無いとは言わせないわ。今この状況を作ったのはアンタの行動が原因なんだからね」
「違う……アンタがおらんかったら万事上手くいっていたんや……!」



 デルタの言葉にはやては反論する。揉めて隙を作った原因はデルタであったし、なのはとここまで泥沼な戦いをした原因も彼女にある。
 真面目な話、彼女がいなければ綺麗に集団が出来ていたと言っても過言ではないだろう。



「少し前に私に言った事覚えている?
 『全部が全部と言うつもりは無いが、あんたの行動の殆どは決して許されん悪行や』
 そう言っていたわよね?
 そりゃ揉める原因自体は私にあったわ。でも、私が言うのもおかしいけどアンタがあそこでもう少し歩み寄ってくれれば別の結末もあったんじゃないの?
 例えば殺し合い終了まで両手両足を拘束するとかっていう風にね……それだったらなのはだって了承してくれた筈よ?」
「それは……」
「大体なのはとは友達なんでしょ? 少し考えれば揉めるってわかっていてどうしてそんな馬鹿な選択肢を選ぶの?
 馬鹿な選択をしたのはアンタでしょ? それについてまで私に責任押しつけないでくれる?」



 はやての脳裏にクアットロに言われた言葉を思い返す。



『仮にはやてちゃんが運良く合流して私を殺す様言っても同じ事だと思いますわよ。むしろ彼女達と仲違い起こす事になるだけじゃないかしら?』
『でも、仲違い起こすとわかっていて本音を隠さないのはどうなのかしら? 敵である私にすらバレているんじゃ只の大根役者ですわね』



 クアットロは自分を斬り捨てる際、(本人にとっては何時もの調子で馬鹿にしていただけなのだろうが)御丁寧に忠告してくれた。
 そう、クアットロはわかっていたのだ。はやての行動が火種そのものだという事を。
 はやてはそれを一度は理解しようとした。だが本当に理解出来ていたのだろうか?
 いや、理解したつもりになって結局何も変えなかったのだ。その愚かさこそが無用な対立を引き起こしリインを死なせる結果になったという事だ。



「違う……全部アンタが……」



 それでも目の前の堕天使にだけは言われたくはない。故にはやては睨み続ける。



「それからアンタなのはが来るまで時間稼ぎしてたけど、森をこんなにしたって事はなのはを殺すつもりだったんでしょ?
 散々なのはを殺そうとしていて、自分が困った時には都合良く助けを求めるって虫が良すぎない?
 まぁそれでもなのはは助けるでしょうね。あれだけされても右手吹っ飛ばすだけで済ませているんだものね」
「黙れや……」
「私に言ったわよね、
 『スバルやなのはちゃんの良心に付け込んでまた騙すつもりか?』
 その言葉そっくりそのまま返すわ」
「私は騙してなんかいない!」
「黙れ人殺し……!」
「お前が言え……」
「なのはの事だけじゃないわ。アンタ、ヴィヴィオも殺したでしょ?」



 突然ヴィヴィオの名前が出てきた事ではやては一瞬あっけにとられた顔をする。



「え……ヴィヴィオ……どういう事や……?」
「あの場にヴィヴィオがいたでしょ? それも死にかけの状態でね……そんな状態であんな攻撃放たれたらどうなるかなんて考えるまでもないでしょ?」
「いや、ヴィヴィオは……死んでなんかない……」



 はやて自身、あの瞬間ヴィヴィオの存在は完全に失念していたし、それ以降もヴァッシュやかがみの存在に夢中で全くヴィヴィオの存在に気が回らなかった。
 だが、ボーナスの転送が無い事から彼女の生存は間違いない。



「死んで無いから問題ない? 語るに落ちたわね……死んでさえいなければ殺す程痛めつけても構わないって理屈もないでしょ……」



 その声は何処までも冷たく、はやての心に突き刺さる。



「というか……アンタ私を殺す時シグナムを殺したからって言っていたわよね? 確認したいんだけど、彼女自分の為にアンタが手を汚す事を望んでいたのかしら?」
「な……何を……?」
「デルタのシステムでおかしくなってたからあんまり覚えてないんだけど、確かアンタシグナムに罪を償っていこうって言っていた様な気がしたのよね?
 それから考えると、どう考えてもシグナムが仇討ちを望んでいるとは思えないのよね?」



 それはもう1人の自分の話だろう。この堕天使は自分ともう1人の自分が同一人物だと思っているのか? そうはやては考えていた。



「もしかしてシグナムってあんたに人殺しをさせたがる残虐非道なド悪人なのかしら? それなら納……」
「巫山戯るな……それ以上シグナムを侮辱する事は……」
「でしょうね。やっぱりシグナムはそんな事望んでいないわよね……」
「何が言いたいんや……?」
「簡単な事よ、アンタは家族の為とかどうとか言っているけど結局の所自分の為にしか戦っていなかったって事よ」
「なっ……違う、私は……」
「違わないわ、アンタにとっては友達も仲間も部下も全部自分を満たす為の道具でしかないわ! 家族ですらね!」
「違う……違う……」
「だったら何でなのはやヴィヴィオを殺そうとしたの!?
 それはつまりアンタにとって自分の意を沿わない奴はみんな邪魔者なのよ!!」
「違う……それは家族を助け……」
「わからないの!? 家族を言い訳にする事自体が家族に対する冒涜よ! 大体さっきアンタ自身がシグナム達が人殺しを望むわけ無いって言っていたでしょ!? それをアンタは自分から裏切っているのよ!
 こんな奴を守ろうとしたシグナムやなのは……それにスバル達が可哀想よ……」
「五月蠅い……」



『何がきっかけなのかは知らんが、他者を利用し陥れることを嫌い、他者を切り捨てることを嫌い……
 ……たとえ自分が傷つこうとも、その目に映るもの全てを、その手で守り抜こうとしていた』
『お前は――『八神はやて』ではない』



 脳裏にはセフィロスが自分を否定した時の言葉が、
 わかっている。確かに自分はあの時とは変わった。しかしそれは全て家族を取り戻し本来の自分を取り戻す為なのだ。
 その為ならば友人も仲間も部下も全部利用すべきものでしかない。それは奴の言う通りだ。
 だが、この殺人鬼は取り戻すべき大事な家族すら道具もしくは利用すべき対象だと言い切ったのだ。何故そこまで言われなければならないのだ?



「人殺しが……偉そうな事言うな……苛々するわ……」
「そうね……そろそろ終わりにしましょう」



 と、デルタはデルタムーバーを構える。



「安心したわ、あんたがこなたを殺した事を後悔してくれないでいてくれて……これで心おきなく殺せるわ」
「何……?」



「こなたはね……馬鹿みたいにアニメやゲームが大好きだったのよ……
 運動とか得意な癖に夕方のアニメが見られなくなるから部活に入らないぐらいだったのよ……
 本当だったらきっとアイツはこれからも深夜のアニメや日曜の特撮を見て馬鹿みたいにつかさやみゆき達にその事を話す筈だったのよ……」



 何かと思えば遊ぶ事しか考えていない餓鬼ではないか。はやてにとってそんな人間に存在価値など無い。
 正直、ボーナス要因の価値しかない。彼女を殺した自分の判断は間違ってはいないと言える。
 そう、そんな下らない人間の為に命を懸けるなど愚の骨頂なのだ。



「そんなアニメやゲーム如きしか考えてへんなんて……下らん……」
「こなたの侮辱は許さない! アンタに譲れないものがあるのと同じぐらいこなたにだって譲れないものがあった!
 こなたにとっては何よりもアニメとかが大切だったのよ! それを否定なんて誰にも……特にアンタには絶対にさせない!
 そのこなたを虫螻の様に殺したアンタだけは絶対に許さない!」
「仇討ちやって喜ぶ様な下衆なんか、こな……」



「安心して、これはこなたの為なんかじゃない。こなたが殺された事に耐えられない馬鹿な女の只の我が儘よ……アンタと同じね……」







 そう言って、デルタは高く飛び上がる。







「チェック……そう、アンタが好き放題他人の命や想いを踏みにじって来た様に……」







 ――Exceed Charge――







「私もアンタの想いや命を踏みにじるだけ……だから……」







 はやての真上に逆三角垂が形成される――







「眠れ……」







 それはさながら、罪人を罰する断頭台に備えられたギロチンの様に――







「地の底に……!」







 違うのは狙いが首ではなく腹部だという事――







「なんでや……こんなところで終わるんか……」







 不可避の死が迫ったせいかデルタの動きは恐ろしい程に緩やかに感じたた――
 しかし身体は動かない――
 それもその筈、両手両足は潰され腹部からも血が流れており体力も魔力も底をついている――







「私は家族を取り戻したかっただけなんや……人殺しがしたかったわけやないんや……なのに……なんで誰も助けてくれないんや……」







 どんなに懇願しても堕天使は止まらない――
 どんなに懇願しても誰も助けに来ない――
 なのはの体力ははやての攻撃で大幅に削られている。すぐに動ける状態ではない。
 スバルはデルタに倒され当然助けになど来られるわけがない。
 ユーノ・スクライアも今のはやてに手を出せるわけもなく助けに来るわけがない。
 ヴィヴィオについては論外だ。
 天道にしてもはやての攻撃で吹っ飛ばされたまま消息不明。
 助けを来られなくしたのは全てはやての行動が原因なのだ――因果応報、自業自得とも言うべきだ。







『それに―――力さえあれば何でも手に入ると思っているみたいやけどな―――力があった所で本当に大切な物を失う事だってある―――』







 それははやてが力に溺れた愚かな少女に対し口にした言葉だ。だがそれは自分自身では無かっただろうか?
 憑神刀や夜天の書、それからヴァッシュやアギト、そしてこなたを殺したボーナスや魔力を得て天狗になっていたのではないのか?
 結局の所、その為に友達や仲間、そして部下が離れていき、手にしていた武器すらも失ったのではないのか?







「どこで間違えたんや……どうすれば良かったんや……なぁ……?」







 それを答える者はいない。だが、本当ならば彼女は最初からその答えを知っていた筈だった。
 だが、堕ちていく内に何時しか持っていた答えすら見失ってしまったのだ――
 ここにいるのは深く永い哀しみを終わらせた夜天の書の主ではない――
 只の醜い愚者でしかない――
 その愚かなる者になど祝福の風が吹くわけなどない――







 深く――静かに――







「こんな結末……満足でけへんわぁ……」







 堕天使の槌は降ろされた――







【八神はやて(StS)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS 死亡確認】



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