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Last update 2007年10月27日

ある街のある夜の物語 著者:真紅


『このみみっちい炎は、マッチ売りの少女だな。何の幻が見える?』

冬の「冷たい」という言葉が当てはまるような街の隅で立ち尽くす少女。

街行く人々は、その少女が差し出すマッチを嫌がり、避け、受け取ろうとしない。

小さく美しい少女は途方に暮れ、余りに余ったマッチの内の一本を擦って灯した。

そのいつかガキの頃に読んだような絵本の世界に男は苦笑いした。

「・・・おいおい、こんな時代にマッチ売りかよ・・・。」

男はため息混じりに少女から目を逸らし、横を通り過ぎようと早歩きになった。

「・・・あの・・・買ってください・・・お願いだから・・・。」

小声で消え行きそうなその弱弱しい声を確かに男は聞いた。

 ・・・そんな少女の声に男はついつい目の前で立ち止まってしまった。

「・・・しまった・・・ここで買わなきゃ俺ただのろくでなしじゃねぇか・・・!!」

男は少女を目の前にした。

少女は15~16、服は少しほつれ、その悲しそうな表情が印象的だ。

「・・・えっと・・・一ついくら???」

少女は悲しそうな表情から一変、笑顔の美しい少女に変わった。

「・・・!!はい!!ありがとうございます!!」

男がマッチを少女から受け取る時、その小さい手に触れた。

その手はとても冷たく、疲れ、痩せ細っている。

男は自然と少女に喋り掛けていた。

「・・・君、いつからここで??(・・・何聞いてるんだ・・・俺・・・)」

少女は、男の問いに笑顔からまた悲しい顔になってうつむく。

「・・・昨日からずっと・・・私お父さんもお母さんもいないからこうやって働かなきゃ・・・。」

 ・・・男も両親がいなく、かつていた妹も生き別れていた。

男はそんな少女を見て、なんだか親近感が沸いてきたのだ。

「・・・なぁ?君の事これから一杯聞かせてくれないか?・・・また来るから。」

 ----それから男は毎日のように少女の下に通った。

最初はぎこちなく、笑顔も無かった少女も、段々と笑えるようになっていった。

男も少女のマッチを買い、話をするのが日課になっていた。

 ・・・またいつもと変わらず男と少女が話している。

男は、何気無く少女に話題を持ち掛けた。

「なぁ、君には兄弟はいないのか??」

その男の問いに少女は笑顔を無理に作りながら話した。

「・・・いました。生き別れた・・・ちょうどあなたぐらいの兄が・・・。」

男もそれに被せる様に話す。

「そうなのか・・・俺にも生き別れた妹がいてな・・・ちょうど君ぐらいだった・・・。」

男はハッとした顔で少女に言った。

「・・・そうだ!!俺を兄貴だと思ってくれていいよ!!その方が話し易いだろうし!!」

少女は男の変わり様に驚いている。男は我に戻り、頬を赤らめた。

「・・・ゴメン。必死だったもんでつい・・・。」

少女はそんな男がおかしくて笑ってしまっていた。

男もその少女の笑顔を見て笑った。

「・・・ありがとうございます・・・兄さん。」

それからまた男は少女の下へと通うのが楽しみになった。

どれだけ嫌な事があっても少女の無垢な笑顔を見ると忘れられる。

毎日毎日通う度、少しずつ変わっていく少女の成長も楽しみだった。

まるで本当の妹と暮らしているみたいで・・・。

ある日、また男は少女に会おうといつもの街角に向かった。

しかし、もう見えてもいいはずのその姿が見えない。

「・・・あれ?どうしたんだろ・・・。」

男は少女がいつも立っていた街角の周りを見渡した・・・どこにもいない。

「・・・一体どこへ・・・。・・・!?これは・・・。」

男の足元にはマッチが1箱落ちていた。あの少女のだ。

古ぼけたマッチ箱を開けると、中には小さな紙が。

「・・・兄さんごめんなさい・・・私はもうここにいれません。」

男はその手紙の始まりを読んで絶句した。

「・・・兄さんが帰ってから私・・・見たの・・・兄さんが落とした兄さんの名刺・・・。」

「兄さん・・・本当の私の兄さんだった・・・とても嬉しかったの・・・でも・・・。」

男は急ぐ自分を抑えつつ、手紙の続きを読む。

「私・・・兄さんを愛してしまった・・・いけないと分かっていても・・・好きになったの。」

「こんな私にあなたの傍にいる資格なんてありません・・・どうか許して・・・愛する兄へ。」

男は無言で手紙を音を立てて握った。

「俺も・・・好きだったんだ・・・妹と重ねていたのに・・・うわぁぁぁぁぁ!!!」

そしてその場に跪き・・・地面を力いっぱい叩いた・・・何度も・・・何度も・・・。

街行く人々はそんな男に目も暮れずただ歩いている。

 ・・・やがて男はフラっと立ち上がり・・・人混みに消えていった。

日は昇る・・・街角にあった小さな愛のドラマを照らすような眩しい笑顔で。

『見慣れたいつもの朝がやってきて、がらんとした風景を当たり前のような顔で包んでいく。』




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