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Last update 2007年11月10日

Mirror~反転する意味-対となる映像~  著者:AR1


興味深いね。人の心、わたしの心。
覗き見る光と闇。掴み取る同義の魂。
ここにはわたしがいる。そこにはあなたがいる。
あなたはわたし。わたしはあなた。
わたしの意識はあなたに繋がり、あなたの知識はわたしに繋がる。
同時に存在するわたし。同時に確立するわたし。
手を取り合って同じ道を歩くことは叶わなくとも、二人のわたしは同時に踏み出す。


わたしは鏡に語りかける/自分自身を問いかける
「わたしは清らかでありますか?/わたしは汚れていますか?」
鏡はわたしに告げる/わたしに鏡は突きつける

「あなたは清らかである/あなたは汚れている」

今度は理解出来なかった/呑み込もうとして喉元でつっかえた
わたしは思わず反応して/わたしはあくまで慎重に
「どういう意味なんですか?/あなたの言葉の定義とはなんですか?」
鏡の解には興味を惹かれる/鏡の解には恐怖を惹かれる

「私はあくまで〈鏡〉である/私はあくまで〈反射するもの〉である」

鏡の答えは明解で/鏡の答えは難解で
わたしは首を縦に振りつつ/わたしは納得した風を繕いながら
鏡の答えに納得していた/心の底では訝っていた

わたしはもう一度、鏡に向き合う/わたしは本質を問うため鏡に赴く
「すごく分かりやすい答えでした/あなたの言うことはよく分かりません」
鏡は無言で静謐を保つ/鏡は無言を保って応じない
わたしは笑顔で訊く/わたしは眉根を寄せて問い詰める
「どうしたんですか?/答えられない事情でも?」
わたしは鏡に疑問符を浮かべる/わたしは鏡に矛先を向ける
鏡は応えない/鏡は答えない
「なぜ応えないんですか?/あなたには答える気がないんですね」
鏡にわたしの姿が映る/鏡にわたしの分身が生まれる
そこに映りこんだわたしは微笑をたたえる/わたしの分身は落胆を隠さない
そこでようやく、鏡が応える/ここにいたって、鏡が目覚める

「私が映した姿は表面である/鏡に映った姿は裏面である」

鏡の答えは単純だった/鏡の答えは明快だった
鏡の答えは明解で/鏡の答えは難解で
わたしは首を縦に振る/けれども首肯して意味を汲む
鏡の答えは腑に落ちた/鏡の答えに失意を覚える
わたしの表は綺麗なのだと/わたしの裏は汚いのだと
鏡はまたこうも続ける/鏡は淀みなく語尾を付け足す

「表であるから綺麗な訳ではない/裏が汚くない人間など存在しない」

わたしは再び頷かざるを得ない/わたしは気づかされてハッとなる

「あなたの表はたまたま綺麗だっただけのこと/あなたの裏面が鏡に映っただけのこと」

鏡の答えは明解で/鏡の答えは明晰で
さして改めて気づくことではないことで/鏡は新たな価値観を授けてくれて
けれども、鏡によりて答えを得る/己の存在の解を得る


人心の矛盾を解き明かし、矛盾こそが表裏である。
覆すことは不可能な矛盾、当然のようにある齟齬。
鏡の答えは明快だった。なによりも明晰であった。
納得の行く見解。疑問など生じる隙間がない論拠。

そうしてわたしは満足して、鏡の前から床に就く。
これでしばらく、心の喧騒とは無縁となるだろう。
けれども、私は何よりも退屈と、平穏とを怖れた。




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