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Last update 2008年03月14日

既知外  著者:ブラックジョーカー



『僕は今では、十一班の十五番という物体だ。 』
そう呟いてみた。
本当に物質になれれば良いと思う事が最近よくある。
そういう時の対処法はいつも決まっている。

僕はなるべく人が少ない地下道を通って行く。
有機ELのディスプレイが薄暗い地下をぼんやりと照らし、心地よい地下の湿った空気が僕を包む。
しかし、深く潜っても太陽の光は届いていくようだ。
「ああいう人達はね・・・」
「・・・するべきでしょうね。」
最近話題になってる例の事件の事についてニュースキャスターや評論家が議論している。
精神異常者の変死が相次いでいるという不可解な事件だ。
勝手気ままに彼等は語っていた。
彼等は簡単に他者を排除するような言葉を放ち、それに敏感に反応し嫌悪する自分が居る。
結局僕らは他者を排除していかなければ生きていけないのだろうか?
もし排除しないにしても、僕のようにどこかで他者の悪意を敏感に感じて嫌悪してしまう。
僕はちょっと前にそいう事を必死に肯定していくようにしていたが。どうしても肯定しきれなくなっていた。
それに理屈では仕方ないと分かっていても、どうしても彼等を嫌悪してしまう。
そういう自分を認めてしまった時、僕はいつものように耳を被い、目を瞑り、意識を段々内側にもって行く。
外界と内界との差を徐々に広げて行くと、匂いも、暑さも寒さも感じなくなってくる。
暗い静かな闇が広がっている。
嫌悪の波は穏やかな闇に消えていく。
暗黒は僕の空気、この行為は僕の呼吸。
僕はこの行為を常にしていたい。
でも現実的にはそれは不可能。
僕は働き、得た金で命を得ている。
生きている意味なんて見つからない。
でも、死ぬのもなんか違う気がする。
もう少し頑張ってみよう。
僕が死んだら生きている人を否定する事になる。
でも死んでいく人達も否定しない。
そろそろ目を開けよう。
強いフラッシュバックのようなイメージが突然頭に走った。
頭に少し違和感を感じる。
気にせず目を開けて歩く事にした。


地下から地上に上がる。
階段の上は光っていて何か神秘的なもの上にあるんじゃないかと思わせるものの、実際は人ごみの嵐。
人ごみは怖くない、でも自分が何かをするんじゃないかという加害妄想にかられる。
僕は物凄く強い、体格も良い。
子供なんて簡単に殺せる。
大人だってその気になれば簡単。
その癖、僕は守れなかった。
僕は彼女の事だけを考えてひたすら彼女を傷つける者を排除してきた。
その為に強くなり、誰よりも強くなっているつもりでいた。
でもどうしようも無い圧倒的な悪意と怨恨が僕等をばらばらにしてしまった。
この世界には誰かを絶対守れるような確信を持てるほど平和ではなく、悪意に満ちている。
僕はその悪意を憎んだ。
憎しみを憎む・・・本質は一緒。
憎しみは無くならない。
でも・・・周りを見渡してみよう。
僕に周りで歩いている人達は幸せそうに歩いている。
メガネをかけたのっぽなお父さんは幸せそうに娘を肩車している。
気の良さそうな老夫婦は仲良く歩いている。
冷静な人間なんて誰も居ない。
何故なら全ての情報を認識して混乱しない人間は居ないし、どうしようもない事だらけだ。
それでもこうやって幸せそうにしている人達も沢山いる。
世の中は完全な事ばかりじゃない、それでいいじゃないか。
<合格だ。>
<ん?>
<君はこっちの世界に来ても大丈夫だ。君ならいたずらにこっち側の力を使わないだろう。新たなる形への進化を君は望むか?>
<あなたは一体何者なんですか?>
<奥に住む物としか言えない。君達の物質領域とは違う存在だ。我々の領域のいくつかの相互作用によって君達の世界は存在し、組み合わせによって君達に干渉できる。>
<何とも難しくて理解に来るし見ますね。>やっとの事まともな返事が出来た。
<物質に干渉されない。君体の言葉で言うと幽霊みたいなものだ。君達の世界は精神を耕す畑みたいなものさ。>
なるほど、この世界に不条理に出来ていて、それによって悪意が生まれ、それでも屈しない強靭な精神を育てる為にこっちの世界があるという事か。
もう僕がここに居る理由なんて見つからない。
<分かりました。ちょっと用意をしてきます。ちょっと待ってください。>
意識は元に戻った。
どうやら周りの人達が僕をちらちら見ている。
どうやら独り言を言っていたらしい。
足早に家に急ぐ。
散らかった部屋を片付ける。
思い出の詰まった部屋。


どうやら寝てしまったようだ。
昨日の事について考えた。
そういう事か。
今思い浮かんだアイデアにより全てが合致した。
確かに証明はつく、それが正しい答えなのかは分からない。
僕はカーテンを開けたまま寝てしまったようだ。
窓のガラスごしに、太陽が流れ込む。




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