Mystery Circle 作品置き場

一茶

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nightstalker

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Last update 2008年03月15日

問答  著者:一茶


『それでは、泣き声に耳をすますことは、暖かさの証明になるのだろうか。』
「へ?」
『実験さ。思考実験。考えてみな。』
「泣き声に耳をすます。それが暖かさの証明……」
『命題だよ。AならばB、AだとしたらBが成り立つ。』
「うーん、暖かい人なら泣き声に耳をすますかもしれないね。」
『じゃあ、成り立つと?』
「そうとも言えないよ。私が言ったのはBならばAであって、AならばBじゃないからね。反例が挙げれる以上は正しいなんて言えないよ。」
『その反例っていうのは具体的には?』
「例えば、耳をすますことでその相手よりも優位な立場に立ちたいだけの可能性だってあるはずでしょ?」
『確かにその可能性は考えられるね。』
「でしょ。或いは、その話をブログとかのネタにするために耳をすます可能性だってあるはずよね?」
『それは……実際にありそうで怖いね。』
「で、少なくとも一つの反例が挙げられる以上は、その命題は正しくないことになるんじゃないの?」
『数学的にはね。』
「なにか、不満でも?」
『いや、無いよ。こっちの命題の立て方に問題があったね。』
「……」
『……』
「……じゃぁ、今度はこっちが命題を立てるね。」
『どうぞ。』
「じゃぁ……寂しいと感じるのは恥なのだろうか、って命題。」




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