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Last update 2008年03月16日

道の世界  著者:知



「それでも、道は道……なんだよ?」
 私は彼の歩いてきた道を見ながらそう言った。
 その道は綺麗とはいえない。でも、例えどんな道であってもそれは自分自身で苦しみもがきながらも歩いてきた物であることには変わりはない。だから、受け入れなければ前には進めない……受け入れられないから、この世界に来てしまったんだけどね。

『暫く、一人にした方がいいかな』

 彼の様子を見てそう判断した私は彼のいる場所から立ち去った。


「ふぅ……」
 何もない真っ白な場所に戻ると私は大きく息を吐いた。
 あの時から――私にまだ感情が残っていることに気が付いた時から、この世界も様変わりした。何もない真っ白な空間ではなくなった。私のいる場所を除いて。この何もない真っ白な空間が私の原点だから。私のいるこの場所だけは変える気が起こらなかった。

「この世界に迷い込んできた人たちに、何かできることはないか」

 そう考えた瞬間、色々な情報が頭の中に流れ込んできた。
 この世界はあらゆる時間の情報を集めた世界。私はこの世界の管理人だから、私の意思次第で情報を使う事ができるということをそのときになって初めて知った。
 その中にはこの世界についての情報もあった。
 この世界について調べると、真っ白な空間を作り出したのは私だという事がわかった。
 この世界が初めから真っ白で何もない世界だったわけではない、管理人によって色々な形に変化していたようだ。
 歴代の管理人は様々な形でこの世界を管理していた。でも、一つだけ共通していた部分があった。
 それは、この世界を迷い込んできた人に合わせて変化するようにしていたこと。
 この世界に迷い込んでくる人は、元の世界に絶望した人。でも、この世界にずっといることはできず必ず元の世界に戻ることになる。しかし、元の世界に絶望してこの世界に迷い込んできた人が、元の世界に戻っても上手くやっていけるのだろうか?
 答えは凄く簡単。上手くやっていけるはずがない。この世界に迷い込む前と後で何も変わっていないのだから当たり前。
 では、私に何ができるのか……実を言うと、迷い込んできた人の悩みを解決する最善の策を調べることはできる。
 この世界はあらゆる世界のあらゆる時間の情報を集めている世界。それには迷い込んできた人にとっては未来の情報も含まれている。それを調べれば、どうすれば最善なのかすぐにわかるのだ。
 でも、私はそんなことをすることはなかった。最善だとしても、それが本当にその人にとって最善なのかわからないと思ったから。そして、何より、自分で悩んで選んだ道でないと最善ではないと思ったから。

 私はこの世界を迷い込んできた人の今まで歩いてきた道に変化するようにした。そして、その道を見ながら迷い込んできた人と話をするようにした。
 この世界に迷い込んできたという事は、元の世界を絶望してしまうようなことがあり前に進めなくなってしまったということ。
 なら、迷い込んできた人の背中をそっと押すことができないか、そう考えた時に思いついたのが、歩いてきた道を受け入れられるようにするということ。歩いてきた道を受け入れることができたら、前に進めるはずだから。

 これでよかったのか、まだ迷う時がある。最善策を調べる事ができるのだからそれを教えた方がいいのではないか、そう考えてしまう時もある。
 だけど、これでよかったんだって、そう思える部分もある。

 迷い込んできた人がこの世界から元の世界に戻るときの表情、それがこの世界に迷い込んできた時と違って、とても爽やかなものに変わっているから。




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