Last update 2007年10月08日
意地の張り合い、その先に…… 著者:知
私にむけられる怨嗟があるとすれば、それは無言の他にない。
私に何を言っても、馬耳東風、のれんに腕押し、豆腐にかすがい、ぬかに釘……私に一番効く攻撃は無言……
長い付き合いでそれがわかっているからか、はたまた、彼女が怒るときの癖か、彼女は終始無言を貫く。
そう頑なに無言を貫かれると、私も意地でも話しかけるもんかという気になってきて、お互いにただただ無言のまま時間だけが過ぎていく。
私に何を言っても、馬耳東風、のれんに腕押し、豆腐にかすがい、ぬかに釘……私に一番効く攻撃は無言……
長い付き合いでそれがわかっているからか、はたまた、彼女が怒るときの癖か、彼女は終始無言を貫く。
そう頑なに無言を貫かれると、私も意地でも話しかけるもんかという気になってきて、お互いにただただ無言のまま時間だけが過ぎていく。
――2時間経過――
喫茶店で向かい合って座っているのに互いに2時間も無言のまま……周りからは相当変に見られているに違いない。
いや……気にしたら負けだ……そう思い、気にしないよう努める。
いや……気にしたら負けだ……そう思い、気にしないよう努める。
――3時間経過――
……私はわざわざ電車で30分以上かけて何をしにここに来たんだろう……
ちらりと彼女の顔色を窺う……全く変化なし……というか彼女は元々が表情の変化が欠しいんだよね。
ちらりと彼女の顔色を窺う……全く変化なし……というか彼女は元々が表情の変化が欠しいんだよね。
――4時間経過――
……店員もよく私達を店から追い出さないものだ……
だって、コーヒー1杯ずつで、お互いに無言のままで4時間も店に居座っているんだよ?店としては甚だ迷惑な客なのに……ちらりと店員の様子を窺ってみる
だって、コーヒー1杯ずつで、お互いに無言のままで4時間も店に居座っているんだよ?店としては甚だ迷惑な客なのに……ちらりと店員の様子を窺ってみる
……明らかに私達を避けてるよ……
――6時間経過――
「すみません……そろそろ閉店時間なのですが……」
おずおずと店員がそう話しかけてきた。
その言葉に彼女は席を立つと何も言わず店を出た。
彼女のいきなりな行動に私も店員も思わず呆然としてしまう
でも……
おずおずと店員がそう話しかけてきた。
その言葉に彼女は席を立つと何も言わず店を出た。
彼女のいきなりな行動に私も店員も思わず呆然としてしまう
でも……
……そうだ、今日は私の奢りだった……
私はそう思い出すと、バックから財布を取り出しお札を1枚店員に渡す
「お釣りは……いらないです……」
お釣りの分はせめてもの迷惑料のつもりだった。
店員が呆然としている間に、私はそそくさと店を出た。
「お釣りは……いらないです……」
お釣りの分はせめてもの迷惑料のつもりだった。
店員が呆然としている間に、私はそそくさと店を出た。
――もう二度とこの店には来れないね――
6時過ぎとはいえ、この時期になると外はもう暗い。
前を見ると彼女が喫茶店にいるときとは違い、笑顔で私を見ている。
前を見ると彼女が喫茶店にいるときとは違い、笑顔で私を見ている。
その笑顔を見ると背筋が凍るのは何故だろう。
今の彼女は誰がどう見ても笑顔を浮かべている。表情の変化が欠しい彼女としては珍しい、満面の笑み……
その笑顔をみて、蛇ににらまれた蛙のように微動だにできない私がいる
正直に言おう、彼女をこれほど怖いと思ったことは今までにない。
いや、今までで一番の恐怖に直面しているのではないだろうか。
今の彼女は誰がどう見ても笑顔を浮かべている。表情の変化が欠しい彼女としては珍しい、満面の笑み……
その笑顔をみて、蛇ににらまれた蛙のように微動だにできない私がいる
正直に言おう、彼女をこれほど怖いと思ったことは今までにない。
いや、今までで一番の恐怖に直面しているのではないだろうか。
私は日記の代わりにその日に強く印象に残ったことを1行で書くようにしている。
日記はすぐに飽きて書かなくなってしまうんだけど、どのように1行で書くのかを考えるのが楽しいからこれはもう2年くらい続いている。
彼女の笑顔を見たとき今日の1行がふと思い浮かんだ
日記はすぐに飽きて書かなくなってしまうんだけど、どのように1行で書くのかを考えるのが楽しいからこれはもう2年くらい続いている。
彼女の笑顔を見たとき今日の1行がふと思い浮かんだ
「喫茶店を出ると、夜がもう行く手一杯に立ちふさがっていて、彼女はこわかった」